はぴテク相談室:高齢者施設の利用者が推し活することで幸せに
最近、母が入っている高齢者施設のスタッフから『推し活を取り入れてみませんか?』と言われたんですが、正直ピンとこなくて…。要介護の高齢者が推し活って、本当に意味があるんでしょうか?
お気持ち、よく分かります!「推し活って若者のものでしょ?」って思いますよね。実は最近、高齢者施設の利用者さんを対象にした、とても興味深い研究が発表されたんですよ。京都大学の内田由紀子先生たちが、要介護状態にある高齢者施設の利用者さんが地元のJリーグクラブを応援する活動に参加することで、幸福度がどう変わるかを調べたんです。
へえ、要介護の方を対象にした研究なんですね。どんな活動をするんですか?
「Beサポ!(Be supporters!)」という活動で、簡単に言うと地元のサッカークラブを一緒に応援しよう、という取り組みです。施設に居ながらでも参加できる形で、『推し』の存在を作ってワクワクしてもらう、というものですね。そしてこの研究で注目されているのが、幸福度が段階的に進んでいく、という点なんです。
段階的に、というのはどういうことですか?
活動に参加していくにつれて、少しずつ幸福度が上がっていく様子が確認された、ということです。急にドカンと変わるんじゃなくて、応援活動を続けていく中で、じわじわと良い状態になっていくイメージですね。ウェルビーイング、つまり『身体的・精神的・社会的に良い状態』の中でも、特に『社会的に良好な状態』に着目した研究なんです。
社会的、というのが気になりました。推しを応援することが、なぜ社会的につながるんでしょう?
良い気づきですね!サッカークラブを応援するって、一人でこっそりやるというより、他の利用者さんやスタッフと『あの試合どうだった?』『次は勝てるかな?』って話題が生まれやすいんです。共通の『推し』を持つことで、自然と会話や交流が増える。それが『社会的なつながり』につながっていくと考えられています。
なるほど!でも、推し活って度が過ぎると良くないという話も聞いたことがあって、そこが心配なんですが…。
鋭いですね。実は研究者の方も同じ点を気にしていて、極端な推し活になりすぎると逆に幸福度が下がることがある、という研究もあるんです。特に社会的な交流が少ない人が、極端な推し活に頼りすぎてしまうケースが懸念されています。ただ今回の取り組みは、施設スタッフや他の利用者さんと一緒に応援するという形なので、孤立した推し活ではなく、みんなで盛り上がる仕組みになっているのがポイントだと思います。
一人で没頭するんじゃなくて、みんなで応援するから良いんですね。母はサッカーに詳しくないんですが、それでも楽しめるものでしょうか?
詳しくなくて全然大丈夫だと思いますよ。むしろ『地元のチームを応援する』という、ゆるやかな共通の目標があるだけで十分です。試合の勝ち負けを語り合う必要もなく、『今日試合だって』『頑張れ〜』という気持ちを持てるだけで、日常にちょっとしたワクワクが生まれますよね。この研究が珍しいのは、要介護状態の方という、これまであまり注目されてこなかったグループを対象にしている点でもあります。
確かに、お母さんの毎日に小さなワクワクが増えるのは嬉しいですね。でもこれって、サッカーじゃないと効果がないんでしょうか?
今回の研究はJリーグクラブを応援するという特定の活動を調べたものなので、『サッカーじゃなければ効果が出ない』とは言えません。研究から分かるのはあくまでこの活動の中での結果です。ただ、共通の応援対象を持って、周りの人と一緒にワクワクを共有するという仕組み自体が大切なのかなと思います。
なるほど、仕組みが大事なんですね。施設のスタッフさんの提案、少し前向きに考えてみようかという気になってきました!
それは嬉しいです!まとめると、今回の研究で分かったのは、①高齢者施設の要介護の利用者さんが推し活をすることで幸福度が段階的に高まる様子が確認されたこと、②社会的なつながりというウェルビーイングの側面に着目した点が特徴的であること、③ただし極端な推し活より、みんなで一緒に応援するような形の方が良さそうという視点も大切、ということです。お母さんにとって、毎日に小さなワクワクが増えるといいですね!
■ 今日のまとめ
- 高齢者施設の要介護の利用者が地元サッカークラブを応援する活動に参加することで、幸福度が段階的に高まっていく様子が確認された
- 推し活の効果として特に注目されているのは『社会的に良好な状態』へのつながりで、共通の応援対象を通じた交流が生まれやすい点がポイント
- 一方で極端な推し活は逆効果になる可能性もあるため、一人で没頭するのではなく周囲の人と一緒に楽しむ形が大切
■ 出典・注意事項
- サントリーウエルネス株式会社 プレスリリース(2024年11月22日)『高齢者施設の利用者の幸福度が「推し活」とともに段階的に進展することを確認』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000075017.html 研究代表:内田由紀子(京都大学 人と社会の未来研究院)、藤本まなと(大阪公立大学)、中尾嘉宏(サントリーウエルネス生命科学研究所) 第43回日本認知症学会学術集会にて発表(2024年11月)
- 【注意事項】本研究は特定の施設で実施された活動(Beサポ!)に参加した要介護高齢者を対象としており、すべての高齢者や推し活全般に同じ効果があるとは言えません。また幸福度との関係性を確認した研究であり、推し活が幸福度を高めるという因果関係を示すものではありません。サッカー以外の応援活動への効果については本研究の範囲外です。
研究自体の紹介はこちら😊
高齢者施設の利用者が推し活することで幸せに
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-11-22-1732312801/