はぴテク相談室:怒りは、短期的にはパフォーマンスを高めるが、不正の確率が上がり、より自分を守ろう
最近、仕事で大きなプロジェクトを任されたんですが、なかなかやる気が出なくて困っています。締め切りも迫っているのに、どうしても動けないんです。
それは辛いですね。締め切りが迫っているのに動けない感覚、焦りますよね。ちなみに今、どんな気持ちが一番強いですか?焦り?不安?それとも、何かに対してイライラしているような感じもありますか?
そうですね…上司から無茶な条件を押し付けられた感じがして、正直ちょっとイライラしてます。でもそのイライラをどうしたらいいか分からなくて。
実は、そのイライラ=怒りの感情、うまく使えるかもしれないんです。最近の研究で「怒りは困難な目標を達成するうえで、行動を後押しする効果がある」という興味深い知見が出ているんですよ。
えっ、怒りってむしろ良くないものじゃないんですか?
よくそう思われますよね。たしかにポジティブな感情がパフォーマンスを上げるという研究は多いんですが、この研究では怒りもちゃんと機能するということが示されました。特に注目すべきは「難しい課題のとき」に効果が出るという点です。簡単なタスクだと怒りの効果はあまり見られなかったんですが、難しいパズルを解く、ゲームで高得点を出す、投票行動を起こすといった『ちょっと頑張らないといけない状況』では、怒りがある人のほうがより多くの成果を出していたんです。
へー!じゃあ今の自分のイライラは、むしろ追い風になるかもしれないってことですか?
可能性としてはそうとも言えます。ただ、一つ大事な注意点があって。同じ研究で「怒りベースで動くと、不正をしやすくなる」「自分を守る行動が増える」という結果も出ているんです。たとえば賞品を取るという目標に対して、怒りを感じていたグループはチートをする確率が上がったんですね。
怖いですね…自分では気づかないうちにズルをしてしまうってこともあるんでしょうか。
そうなんです。怒りが「目標に向かうエネルギー」になる一方で、「手段を選ばなくなる」「自分を守ることを優先する」という方向にも働きやすくなるんですね。だから怒りをエンジンにするのはいいんですが、長期的に使い続けるのはリスクがある、というのがこの研究の示すところです。
じゃあどう使えばいいんでしょう?怒りをうまく活かしつつ、そのリスクを避けるには?
一つの考え方として、「最初の一歩を踏み出すエネルギーとして怒りを使い、軌道に乗ったら別の動機にシフトしていく」というのがあります。研究者たちも、怒りは短期的には機能的だけど長期には危険性もあると述べています。たとえば起業家の中には、最初は「悔しい」「納得いかない」という怒りで動き始めて、だんだん「これが好きだから」「誰かの役に立ちたい」という志や愛着に移行していく方も多いんです。
なるほど!怒りをずっと燃料にし続けるんじゃなくて、最初の着火剤として使う感じですね。
まさにそのイメージです。今のあなたの「無茶な条件を押し付けられた」というイライラ、それを「だからこそ絶対やり遂げる」という最初の一歩のエネルギーに変えてみてください。そして動き出したら、「このプロジェクトで誰が喜ぶか」「自分が本当に達成したいことは何か」という方向に気持ちをシフトさせていくと、より長続きしやすいと思いますよ。
怒りをうまく使って、でも流されすぎないようにする。なんか自分の感情と上手に付き合えそうな気がしてきました!ありがとうございます。
よかったです!感情は「コントロールするもの」というより「上手に活かすもの」という視点、ぜひ持ってみてください。怒りも含めて、感情はみんな何かの役に立つために存在しているんですよ。プロジェクト、応援しています!
■ 今日のまとめ
- 怒りの感情は、難しい課題や困難な状況に直面したとき、目標達成に向けた行動を後押しする効果があることが研究で示されています(簡単な課題では効果は見られにくい)。
- 一方で、怒りをベースに行動すると不正をしやすくなったり自分を守ることを優先する行動が増えたりするリスクもあるため、長期的に使い続けることには注意が必要です。
- 怒りは「最初の一歩を踏み出す着火剤」として短期的に活用し、動き出したら「誰かの役に立ちたい」「好きだから」といった別の動機にシフトしていくのが、リスクを抑えながら活かす一つの考え方です。
■ 出典・注意事項
- 出典:Daros, A. R., et al. 'Anger has benefits for attaining goals.' Journal of Personality and Social Psychology. American Psychological Association. https://www.apa.org/pubs/journals/releases/psp-pspa0000350.pdf
- 注意事項①:本研究は実験・調査データに基づいており、怒りがパフォーマンスを『必ず』高めるという因果関係を断定するものではありません。状況や個人差によって効果は異なります。
- 注意事項②:研究で示された効果は主に短期的・特定の課題場面でのものです。日常の複雑な仕事環境にそのまま当てはまるとは限りません。
- 注意事項③:不正行為の増加や自己防衛行動の増加といったリスクも同じ研究内で報告されており、怒りの活用には功罪両面があることを踏まえてください。
研究自体の紹介はこちら😊
怒りは、短期的にはパフォーマンスを高めるが、不正の確率が上がり、より自分を守ろう
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-08-16-1723846202/