はぴテク相談室:感謝するとwell-beingは高まるのか?
最近、なんとなく毎日がパッとしない感じがして…。ポジティブになりたいんですけど、「感謝しなさい」ってよく聞くじゃないですか。あれって本当に効果あるんですか?なんか精神論っぽくて半信半疑なんですよね。
その疑問、すごく大事だと思います!実は研究者たちも同じ問いをちゃんと科学的に調べているんですよ。2016年のモチベーション研究所の報告書では、感謝とウェルビーイング(心の豊かさや幸福感)の関係を、複数の実験や先行研究をもとにまとめています。精神論じゃなくて、データで見てみましょうか。
おお、ちゃんと研究があるんですね。で、結果はどうだったんですか?感謝すると幸せになれるんですか?
まず大事なポイントとして、「感謝しやすい性格の人(特性感謝が高い人)」はウェルビーイングが高い傾向にある、という相関関係は複数の研究で示されています。ただ、「感謝したから幸せになった」という因果関係はもう少し慎重に見る必要があって、介入実験(意図的に感謝を実践してもらう実験)でも効果が確認されているケースはありますが、結果はバラつきもあります。
介入実験って何ですか?どんなことをやるんですか?
たとえば「感謝を数える」という実験があります。相川・矢田・吉野(2013)の研究では、1日の中で感謝できることをいくつか書き出してもらうというトレーニングを行って、ウェルビーイングへの影響を調べました。牧田(2013・2015)の実験でも同様のアプローチが取られています。また職場での実験(Otsuka & Kawahito, 2012)では、職場環境での感謝介入の効果も検討されています。
感謝することを書き出すだけでいいんですか?それだけで変わるものなんですか?
研究では、感謝の感情が生まれると「肯定的な気持ちが広がり、思考や行動の幅が広がる」という『拡張-形成仮説』で説明されることが多いです。つまり、感謝することで気持ちが少し前向きになり、それが積み重なることで心の余裕や資源が少しずつ育まれる可能性があると考えられています。ただ、これはあくまで仮説の一つで、まだ研究途上の部分もあります。
なるほど。でも「感謝しろ」って言われても、正直ピンとこないこともあって…。たとえば物とか自然に感謝するのと、人に感謝するのって違いますか?
鋭いですね!報告書でもその点が指摘されていて、感謝の対象を「人間」と「人間以外(自然・モノなど)」で区別して考えることが大切だとされています。また、感謝には「感謝の気持ち(感謝感情)」と「ありがとうと伝える行動(感謝行動)」があって、それぞれ効果が違う可能性があります。気持ちだけで終わるのか、相手に伝えるかで、対人関係への影響なども変わってくるようです。
日本人って「ありがとう」を言うのが恥ずかしかったり、そもそも感謝より申し訳なさを感じやすい気がするんですけど、そのあたりはどうなんですか?
まさにその通りで、報告書でも「文化の違い」は重要な考慮点として挙げられています。日本人は何かしてもらったとき、感謝よりも「申し訳ない」という気持ちが先に出やすい文化的傾向があると指摘されています。なので、欧米の研究で効果があったからといって、そのまま日本人に当てはまるかは慎重に考える必要があります。日本人を対象にした研究もまだ積み上げが必要な段階です。
そっか、文化も関係するんですね。じゃあ実際に感謝を習慣にしようとしたとき、何か気をつけることはありますか?
報告書では「感謝スキルのトレーニング」についても触れられています。いくつかポイントをお伝えすると、①感謝を「書き出す」習慣は比較的取り組みやすい方法として紹介されています。②ただ漫然とやるより、具体的な出来事や人を思い浮かべる方が効果的と考えられています。③感謝を誰かに「伝える」行動まで踏み込むと、対人関係にもよい影響が出る可能性があります。ただし、効果には個人差がありますし、すぐに劇的な変化が起きるわけではないことも念頭においておいてください。
ちょっとハードルが下がった気がします。毎日パーフェクトにやらなくてもいいですよね?
もちろんです。研究でも「完璧にやること」が目的ではなく、習慣として少しずつ積み上げることが大切とされています。「今日は一つだけ感謝できることを思い浮かべてみた」くらいでも十分なスタートです。感謝は義務ではなく、自分の気持ちに少し意識を向けるための道具だと思ってみてください。
ありがとうございます。なんか「感謝しなさい」って言葉が重くなくなった気がします。研究ベースで聞くと納得感が違いますね。
■ 今日のまとめ
- 感謝しやすい性格(特性感謝)とウェルビーイングの高さには相関関係が示されているが、「感謝すれば必ず幸せになる」という単純な因果関係ではなく、個人差や文化差も大きい。
- 感謝には『感謝の気持ち』と『感謝を伝える行動』があり、対象も人間か否かで分けて考えることが重要。日本人特有の文化的傾向(感謝より申し訳なさを感じやすい)も考慮が必要。
- 感謝を書き出したり具体的な出来事を思い出す習慣は取り組みやすい方法として紹介されているが、完璧にやることより小さく続けることが大切。
■ 出典・注意事項
- 出典:相川充(2016)「感謝するとwell-beingは高まるのか?」モチベーション研究所報告書 第5号 https://imsar.jp/pdf/imsar05/imsar_05_08.pdf
- 関連研究:相川・矢田・吉野(2013)、牧田(2013・2015)、Otsuka & Kawahito(2012)
- 注意事項①:本報告書で示されている多くの知見は相関関係であり、感謝がウェルビーイングを高めるという因果関係が確定しているわけではありません。
- 注意事項②:介入実験の結果は研究によってバラつきがあり、効果の大きさや持続性には個人差があります。
- 注意事項③:欧米を対象とした研究が多く、日本人への一般化には慎重さが必要です。日本人を対象とした研究はまだ発展途上です。
研究自体の紹介はこちら😊
感謝するとwell-beingは高まるのか?
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-05-06-1715036419/