2024.02.15

はぴテク相談室:幸福の最大化は奇妙な生き方である

相談者

最近、幸せになろうと頑張りすぎて逆に疲れてしまっています。ポジティブな感情を保とうとしたり、人生満足度を上げようとしたり…。なんか、幸せを「最大化」しようとしすぎてるのかもしれないです。これって正しいアプローチなのでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

それは疲れますよね。実は、その「幸せを最大化しなきゃ」という発想自体を問い直す、とても興味深い研究が2024年に発表されました。内田先生ら数十人の研究者が書いた論文で、タイトルがずばり『幸福の最大化は奇妙な生き方である』というんです。

相談者

え、幸せを最大化するのが「奇妙」ってどういうことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究では、「幸せを常に最高レベルに保とうとする」考え方は、実は西洋・高学歴・工業化・豊か・民主主義という特定の社会、英語でWEIRD(ウィアード)と呼ばれる社会に特徴的なものだと指摘しています。そしてWEIRDは英語で「奇妙」という意味でもあるので、「幸福の最大化はWEIRD(奇妙)なやり方」というわけです。

相談者

じゃあ、そういう社会以外の人たちは幸せを追いかけていないんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

追いかけていないわけではないんですが、「常に最大化しよう」とはしていない、ということのようです。この研究では大規模なデータを再分析して、幸せを最大化しようとする傾向はWEIRDとみなされる社会に強く、それ以外の社会ではそこまで高い幸福レベルを「理想」としていないことが示されています。

相談者

なるほど。でもそもそも、幸せってどうやって測るんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

これまでの幸せ研究では主に「主観的幸福度」という概念が使われてきました。これは大きく、①人生にどれくらい満足しているか(生活満足度)、②ポジティブな感情の多さ、③ネガティブな感情の少なさ、の組み合わせで測るものです。この定義のおかげで研究がグッと進んだのですが、この論文はそれだけでは幸せのすべてを捉えられないと主張しています。

相談者

他にどんな要素があるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究では、幸福感のほかに、「意味を感じること」「調和」「スピリチュアリティ」「家族とのつながり」「相互依存的な幸せ」なども幸せの要素として挙げています。そして面白いのは、これらが必ずしも一緒に高まるわけではないという点です。たとえば、誰かのために疲れ果てるほど尽くすと、自分の「意味感覚」は高まるかもしれないけれど、「幸福感」は下がるかもしれない、という例が論文中に挙げられています。

相談者

それは確かに経験があります!誰かの役に立てたときって充実感はあるけど、ぐったりすることってありますよね。じゃあ、どれかひとつを最大化しようとするのがそもそも無理があるということ?

はぴテクさん
はぴテクさん

そういう見方ができると思います。この研究では、幸せのいろんな要素はたしかに関連し合っているけれど、部分的には独立していて、どれかを最大化すれば他も自動的に上がるわけではないと述べています。さらに、幸せの「理想のレシピ」は人によって、文化によって、時代によって違う可能性があるとも言っています。

相談者

「理想のレシピが人によって違う」というのは、なんか少し気が楽になる言葉ですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

そうですよね。この研究のポイントのひとつは、各要素についてある程度のポジティブなレベルを目指すのは合理的だけれど、すべてについて最高レベルを追求することが普遍的な目標である必要はない、と言っていることです。つまり、「まあまあ幸せ」を目指すことが、実はとても理にかなっている場合もある、ということです。

相談者

幸せを最大化しようとすることに、なにかデメリットはあるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この論文では「幸福最大化の機会費用」という概念も扱っています。また、幸福を最大化しようとする社会レベルの傾向と、アルコールや薬物の消費・乱用、躁状態の広まりとの関連も研究として調べています。ただし、これはあくまで国レベルの相関関係であって、個人レベルで「幸せを目指すと依存症になる」という因果関係を示すものではないと論文自身も注意を促しています。

相談者

それは大事な注意ですね。では、この研究から私の日常生活へのヒントとして、どんなことが言えますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

大きく3つお伝えできると思います。まず、「幸せを常に最大化しなければ」というプレッシャー自体が、特定の文化的な考え方に基づいているということを知っておくこと。次に、幸せには「生活満足度」だけでなく「意味」「つながり」「調和」など多様な要素があって、それぞれのバランスは人によって違っていいということ。そして、すべての要素を最高にしようとするのではなく、自分なりのバランスを探ることが、この研究の視点からは合理的だといえます。あなたが疲れてしまっていたのは、もしかしたら「最大化」を目指しすぎていたからかもしれませんね。

■ 今日のまとめ

  • 「幸福の最大化」は普遍的な正解ではなく、WEIRD(西洋・高学歴・工業化・豊か・民主主義)社会に特徴的な考え方であることが、大規模データの再分析から示されています。
  • 幸せには生活満足度・ポジティブ感情だけでなく、意味・調和・つながりなど多様な要素があり、それらは関連しつつも部分的に独立しているため、どれかを最大化しても他が自動的に上がるわけではありません。
  • 幸せの「理想のレシピ」は人・文化・時代によって異なる可能性があり、すべての要素を最高レベルにしようとするのではなく、自分なりのバランスを探ることが合理的だと研究は示唆しています。

■ 出典・注意事項

  • 出典:Uchida et al. (2024). Happiness Maximization Is a WEIRD Way of Living. Perspectives on Psychological Science. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/17456916231208367

  • 注意①:本研究における幸福最大化とアルコール・薬物使用や躁状態との関連は、国レベルの相関関係であり、個人レベルの因果関係を示すものではありません(論文自身もエコロジカル・フォールシー=生態学的誤謬に注意するよう明記しています)。

  • 注意②:理想的な幸福レベルに関する分析は生活満足度を主な指標としており、幸せのすべての側面を網羅しているわけではありません。

  • 注意③:メキシコ湾流などの地理・生態学的要因とWEIRD文化の関係についての議論は仮説的な提案であり、確定的な因果関係として示されたものではありません。

投稿者によるコメント・補足(1件)
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研究自体の紹介はこちら😊
幸福の最大化は奇妙な生き方である
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-02-15-1707991363/

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