2023.12.16

はぴテク相談室:世界幸福度ランキングは文化を考慮する必要がある(内田先生ら)

相談者

最近、ニュースで「世界幸福度ランキング」って見かけるんですが、日本って毎年順位が低くて…。日本人って本当にそんなに不幸なんでしょうか?なんか釈然としないんですよね。

はぴテクさん
はぴテクさん

その「釈然としない」感覚、実はとても大事なところを突いていると思いますよ。内田先生ら65人の研究者が49カ国で行った研究でも、まさに同じ問題が指摘されているんです。

相談者

どういうことですか?ランキング自体に問題があるってことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです。今の世界幸福度ランキングは主に「人生満足度(LS)」という尺度で測られています。これはざっくり言うと「自分の人生、どのくらい満足してる?」という個人視点の質問なんですね。これは欧米的な「個人の充実感」を重視する幸福観に合った測り方とも言えます。

相談者

なるほど。でも日本人って、自分だけじゃなくて周りとの関係とかを大事にするイメージがありますよね。

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそこです!この研究では「協調的幸福度(IH)」という別の測り方も使っています。家族や周囲との調和、つながりを感じているかどうか、という観点です。そして面白いことに、48カ国中21カ国では、この「協調的幸福度」の方が「人生満足度」よりも理想とされていたんです。

相談者

21カ国もそっちを理想としていたんですね。日本もそうなんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい。儒教的な文化の影響を受けた集団主義的な国、たとえば日本・中国・韓国などでは、個人の人生満足度よりも協調的幸福度の方が理想化されている傾向が出ていました。さらに細かく見ると、日本は「家族の協調的幸福度」の重みが49カ国中で最も高かった一方、「個人の人生満足度」は最も低かったんです。

相談者

それは確かに日本っぽい気がします…。じゃあ、そこを考慮したらランキングも変わるんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

変わります!この研究では、各国の文化的な特徴を組み込んだ「文化に配慮したウェルビーイング(CS)」という新しい計算方法を作って、ランキングを出し直しました。すると、従来の人生満足度だけのランキングとはかなり順位が違ってきたんです。特に、相互依存・調和・人間関係を大切にする国々のスコアが上がる傾向がありました。

相談者

じゃあ、日本人は本当は「不幸」じゃないのかもしれないってことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

「幸福かどうか」については慎重に言いたいのですが、少なくとも言えるのは、今の主流の測り方が日本人の幸福観をうまく拾えていない可能性がある、ということです。また、この新しい文化配慮型のスコアは、ポジティブな感情との関連が従来の人生満足度スコアよりも強い傾向が確認されています。つまり、「より実態に近い幸福を測れている可能性がある」ということですね。

相談者

それは大事な話ですね。でも、なぜ今まで気づかれなかったんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

幸福研究の主流が欧米を中心に発展してきたこともあり、「個人がどれだけ満足しているか」という個人主義的な視点が研究の基準になりやすかったんです。実際、この研究でも従来の人生満足度スコアは「個人主義」と関連していたのに対し、新しい文化配慮型スコアは個人主義との関連が見られなかったんです。つまり文化的な偏りが少ない可能性が示されています。

相談者

なるほど。じゃあ私たちの日常生活で考えると、どんなことに気をつけたらいいでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

「幸せってこういうものだ」という一つの物差しで自分を測りすぎないことかもしれませんね。自分が家族や友人とのつながりに喜びを感じているなら、それはしっかり「幸福」のひとつです。SNSや報道で見かける「世界的なランキング」は、あくまで一つの測り方による一つの結果に過ぎないんです。自分にとって何が大切かを、焦らず見直してみることが大事なんじゃないかと思いますよ。

相談者

そう言ってもらえると少し楽になりました。「なんで日本人は幸せじゃないんだろう」ってモヤモヤしてたんですが、測り方自体に偏りがあるかもって知れてよかったです。

■ 今日のまとめ

  • 世界幸福度ランキングで使われてきた「人生満足度(LS)」は個人視点の欧米型の幸福観に基づいており、日本のように「周囲との調和・つながり」を重視する文化では実態を反映しにくい可能性がある。
  • 内田先生らの研究では、個人と家族の人生満足度・協調的幸福度の4指標と各国の文化的特徴を組み合わせた「文化に配慮したウェルビーイング(CS)」を提案し、従来のランキングとは異なる結果が得られた。
  • 幸福の測り方は一つではなく、自分の文化・価値観に合った幸福観を持つことが大切。一つのランキングで自分や社会の幸福を決めつけないことが重要。

■ 出典・注意事項

  • 【出典】Uchida, Y. et al. (2023). Introduction to a Culturally Sensitive Measure of Well-Being: Combining Life Satisfaction and Interdependent Happiness Across 49 Different Cultures. Journal of Happiness Studies, Vol.24. https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-022-00588-1

  • 【注意事項①】本研究のデータは主に49カ国の学生サンプルから収集されており、各国の全年齢・全層を代表するものではありません。結果の一般化には注意が必要です。

  • 【注意事項②】文化配慮型スコアとポジティブ感情との関連は相関関係であり、「文化配慮型の測定が幸福を高める」という因果関係を示すものではありません。

  • 【注意事項③】幸福の測定方法は現在も研究途上であり、本研究自体も「文化的理想・世界観は他にも存在し、継続的な研究が必要」と述べています。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
世界幸福度ランキングは文化を考慮する必要がある(内田先生ら)
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-12-16-1702764606/

はぴテクさんのウェルビーイング相談室 文化と幸福・日本的幸福主観的幸福・幸福測定研究方法論・指標

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