はぴテク相談室:仕事の質と労働時間と国民性
最近、仕事がしんどくて…。毎日長時間働いているのに、なんか満たされない感じがするんです。もしかして、長く働けば働くほど仕事への満足感って上がるんじゃないかと思っていたんですが、そういうわけでもないのかな、って。
それは辛いですね。実は、116カ国・12万人以上のデータを使った国際的な研究があるんですが、その研究では「週の労働時間と仕事への満足感(知覚された仕事の質)は、国レベルでは有意に関連していなかった」という結果が出ているんですよ。つまり、長く働いたからといって仕事が充実するわけではない、ということが世界規模のデータから見えてきているんです。
えっ、そうなんですか!じゃあ、仕事の充実感って何から来るんでしょう?
この研究では、「知覚された仕事の質」というものを3つの要素で測っています。「仕事が楽しいか」「仕事が自分以外の人々の生活をよくしていると感じるか」「仕事の種類について選択肢があると感じるか」という3点です。そしてこの仕事の充実感と強く関連していたのが、ポジティブな感情・心理社会的な幸福感・楽観性、この3つだったんです。
ポジティブな感情とか楽観性って…なんか性格の話みたいで、自分にはちょっと難しそうです。もともとあまり前向きじゃないので。
気持ちはよくわかります。ただ、研究が示しているのは「もともと明るい性格の人が有利」ということではなく、日常の中でポジティブな感情を経験できているかどうか、が仕事の充実感と結びついているということなんです。性格よりも、日々の「感情の状態」に近いイメージですね。
なるほど。ちなみに、日本って長時間労働のイメージがありますよね。この研究でも日本はそういう位置づけなんですか?
面白い点なんですが、研究の図を見ると日本の労働時間は実は世界の中でほぼ真ん中くらいなんです。ただ、「集団主義・階層意識が強い・個人の自由度が低い・余暇より仕事を重視する文化」の国で労働時間が長い傾向があるとされていて…日本はそのポイントをかなり押さえていそうな文化的特性を持っていますよね。
確かに、「仕事第一」みたいな空気感は感じます。でも、そういう文化だと仕事の充実感も低くなってしまうんでしょうか?
この研究では、知覚された仕事の質(充実感)は、国の文化的特性との関連は「弱かった」とされています。つまり、文化がダイレクトに充実感を決めるわけではないんです。それよりも、個人レベルでのポジティブな感情・幸福感・楽観性との関連のほうがずっと強かった。文化的な環境に左右されすぎない部分も、充実感にはあるということですね。
それは少し希望が持てる気がします。あと、お金持ちの国の人ほど仕事が充実してる、とかはあるんですか? 豊かになれば解決するのかな、と思って。
実はそれも研究で調べていて、「国が豊かであるほど仕事の充実感が高い、という証拠は見つからなかった」という結果なんです。週の労働時間も国の経済指標とはほぼ無関係だったとも書かれています。つまり、豊かさや経済力だけが答えではない、ということが世界規模で示されているんですね。
じゃあ結局、自分の仕事をもっと充実させるには、どんなことを意識すればいいんでしょう?
この研究の知見をもとに考えると、3つのことが鍵になりそうです。一つ目は「仕事に楽しさを見つけられているか」、二つ目は「自分の仕事が誰かの役に立っていると感じられているか」、三つ目は「自分には選択肢があると感じられているか」です。これが充実感の構成要素です。そしてその背景として、日常の中でポジティブな感情を少しでも経験できているかどうかが、全体を底上げしてくれるようです。
「誰かの役に立っている」とか「選択肢がある」という感覚、確かに最近あまり感じられていなかった気がします。少し意識してみようかと思います。ありがとうございました!
気づきがあってよかったです!長く働くことや、国の豊かさよりも、「楽しさ・意義・選択肢」という仕事の質の感覚と、日々のポジティブな感情が充実感と結びついている、という研究結果は、日々の働き方を見直すヒントになりますよね。小さなことでも「今日ちょっと誰かに喜んでもらえた」「自分でこれを選んだ」と感じられる瞬間を大切にしてみてください。
■ 今日のまとめ
- 労働時間の長さと仕事の充実感(知覚された仕事の質)は、国レベルでは有意な関連がなかった。長く働けば充実するわけではないことが、116カ国のデータから示されている。
- 仕事の充実感と強く関連していたのは、ポジティブな感情・心理社会的幸福感・楽観性の3つ。国の豊かさや文化的特性との関連は弱かった。
- 仕事の充実感を構成するのは「楽しさ」「社会への意義」「選択肢の感覚」の3要素。これらを日々意識することが充実感につながる可能性がある。
■ 出典・注意事項
- 出典:Batz-Barbarich et al. (2023). A New Index of Perceived Job Quality in 116 Countries: Associations with Working Hours and Other National Characteristics. Social Sciences, 12(9), 492. https://www.mdpi.com/2076-0760/12/9/492
- データはGallup World Poll(2020年)およびPERSOL社との共同調査をもとにしており、国レベルの集計データによる分析です。個人レベルの因果関係を示すものではありません。
- 本研究は横断的な相関研究であり、労働時間や文化的特性が仕事の充実感を「引き起こす」とは言えません。関連性の有無を示したものです。
- 対象は就労者に限られており、特定の国・地域での回答率の偏りなど、サンプルの代表性に限界がある点にご注意ください。
研究自体の紹介はこちら😊
仕事の質と労働時間と国民性
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-10-24-1698184801/