はぴテク相談室:残業を増やすか、飲み会に行くか。孤独の値段の話
はぴテクさん、ちょっとお金の相談なんですけど…いいですか?
お金の相談を幸せの専門家にするの、実はかなりセンスいいですよ。どうしました?
最近、収入を増やしたくて、残業と休日の副業をがっつり入れてるんです。でも正直しんどくて。友達の誘いも断り続けてるし、睡眠も削ってるし…。これって合ってるのかなって。
なるほど。ちょうどぴったりの研究があります。日本の成人14,736人を調べて、「健康や人間関係って、お金に換算するといくらなの?」に答えを出した、日本初の研究です(Kawaguchi et al., 2026)。
えっ、人間関係に値段がつくんですか?
つけたんです。理屈はシンプルで、「収入が増えると幸福度がどれくらい上がるか」と「例えば孤独だと幸福度がどれくらい下がるか」を大規模データで測って、両方を突き合わせる。すると「孤独は年収いくら分の損失か」が逆算できるんです。
おお…。で、孤独っていくらだったんですか?
孤独感が1点悪化するごとに、年間マイナス51万円相当。調べた項目の中でダントツの損失でした。うつ症状(1点あたり約23万円)の2倍以上です。
51万…!じゃあ僕、友達の誘いを断り続けて孤独になってたら、副業で稼いだ分が吹き飛んでる可能性が…?
そういう計算になりますね。逆にプラス側で一番大きかったのは、地域への信頼やつながりで、1点あたり年間プラス34万円相当。病気系より「つながり系」の金額が大きいのが、この研究の面白いところです。
睡眠はどうなんですか?削ってるんですけど…。
不眠は1点あたり年間マイナス24万円相当。実はうつ症状とほぼ同じ重さなんです。睡眠を削って稼ぐのは、金額に換算しても普通に損、ということですね。
うわぁ…。でも、ちょっと待ってください。「幸福度が1点下がる」って言われても、それがどれくらい大事なのかピンとこなくて。
いい質問です。この研究では「幸福度1点×1人×1年」の価値も計算していて、約151万円でした。人生満足度って0〜10点で測るんですが、その1点にはそれくらいの重みがある、と。
1点で151万…。思ったよりずっと大きいですね。
はい。だからこそ英国政府は、この単位を使って政策の予算配分を決めているんです。「この事業は孤独をどれだけ減らすから、いくらの価値がある」と計算できるので。
なるほど…。じゃあ僕の場合、収入を増やす努力自体が間違いってことですか?
いえ、そこは誤解しないでほしいところで。この研究、収入が増えると幸福度はちゃんと上がることも確認しています。お金は大事なんです。問題は「何と引き換えに稼ぐか」ですね。
何と引き換えに…。
今のあなたは、つながりと睡眠を売って収入を買っている状態です。でも売っているものの値段が、買っているものより高い可能性がある。それが数字で見えた、ということです。
たしかに…。副業の収入、月数万円ですもん。年間51万円の孤独と24万円の不眠を差し出してたら、完全に赤字だ。
ちなみに小さいところだと、いろんな食品を食べる「食事の多様性」もプラス17万円相当でした。忙しいと食事も単調になりがちですが、あれも地味に価値があるんですよ。
最近ずっとコンビニの同じやつです…。じゃあ具体的には、どうすれば?
全部やめる必要はないです。まず、断り続けている誘いを月に1〜2回は受ける。次に、睡眠を削る日を減らす。稼ぐ努力は続けていい。ただ「つながりと睡眠は削らない」を予算のルールにする感じです。
削っちゃいけない経費、みたいな。
まさに。ひとつ正直に言っておくと、この研究は一時点の調査なので、「孤独だから幸福度が下がる」のか「幸福度が低いから孤独を感じる」のか、因果の向きは完全には確定できません。金額も「だいたいの目安」です。
それでも、桁がわかるだけで判断は変わりますね。数万円のために51万円を手放すのは、さすがにやめようって思えました。
それが分かれば十分です。お金で買えないものに値段をつけてみたら、一番高かったのは人間関係だった。なかなか良い結論だと思いませんか。
■ 今日のまとめ
- 日本初の研究で、孤独は年間約51万円の損失、地域とのつながりは約34万円の価値に相当。「つながり系」の金額は病気系を上回る大きさだった
- 不眠の損失(約24万円)はうつ症状とほぼ同等。睡眠を削って稼ぐのは金額換算でも割に合わない
- 収入を増やすこと自体は幸福度を上げる。問題は「何と引き換えに稼ぐか」——つながりと睡眠は削らない経費として扱うのが良さそう
■ 出典・注意事項
- 出典:Kawaguchi, K., Takeuchi, H., Nakagomi, A., Ide, K., & Kondo, K. (2026). The monetary value of health and health behaviors in Japan: A well-being valuation approach. Value in Health. https://doi.org/10.1016/j.jval.2026.05.008
- 全国の成人14,736名を対象としたインターネット調査。金額は「幸福度への影響を所得換算した理論値」であり、実際に支払われるお金ではありません
- 一時点の横断調査のため因果関係は確定できず、金額は目安として解釈する必要があります。また回答者は男性・大卒者がやや多く、全人口への一般化には注意が必要です
- 対話中の金額は1点変化あたり・年間の概数です(孤独−51.3万円、認知的社会関係資本+34.3万円、不眠−24.0万円、うつ症状−22.6万円、食品多様性+17.3万円、1 WELLBY≒151万円)
論文の紹介はこちら😊
幸せをお金に換算するWELLBY -日本では、生活満足度1点/年あたり151万円-
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-07-31-1785489060/