2026.05.27

所得が幸せに効くのでは無い、周りと比べた所得の順位が幸せに効くのだ

〜しかし、周りとのつながりが充実している人は所得の順位も効きづらい〜

オックスフォード、ウェルビーイングリサーチセンターのヤン先生らの最近の研究😊

所得は幸せに効くと言われています。

が、それは実際の収入が効くのか、富の格差が効くのか、他者と比べた所得(所得ランク)が効くのか?

109カ国で調査をした所、他者と比べた所得(所得ランク)が最も幸せに効いていました。

実際の収入に比べると、なんと14倍以上の影響力。

実際の収入ではなく、所得を人と比べることが幸せに効いてしまっているんですね。

しかしですね、

国レベルで見ると、

ボランティアや地域活動への参加度(市民参加指数)が高い国は、所得ランクも幸せにあまり効かない。

確かに北欧とかは所得と幸せに何の関係もない国もありますね。

一方で、

心の豊かさよりも、金銭や物品のような物の豊かさを大事にする物質主義(マテリアリズム)が高い国は、

所得ランクがかなり幸せに効く。

個人レベルで見ても、

参加しているコミュニティへの満足度や、ボランティアや地域活動をする人、国や制度への信頼が高い人は、

所得ランクも幸せにあまり効きません。

面白い所では、リスクを取れる人(リスク選好)が高い人も、所得ランクが幸せに効きづらかったです。

アントレプレナーシップとかにも通ずるのかな。

まとめると、収入よりも所得順位が幸せに効く。

が、そもそも周りとのつながりが充実している人などは所得順位もあまり効かない。

とのことでした😊

所得の順位は、誰かが落ちれば誰かが上がるゼロサムゲームなので、つながりやアントレプレナーシップを育んで行きたいですね😍

まぁ、うちの幸福度診断なんかでも、所得への満足度は幸せに効きますが、

感謝とか自分らしさとか、心理的要素に比べると、あまり効かないです。

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109か国における社会的地位と所得順位および幸福度との関係

Social status and the relationship between income rank and well-being in 109 nations

**Edika Quispe-Torreblanca, Jan-Emmanuel De Neve & Gordon D. A. Brown **

Nature Communications ,2026/2

https://www.nature.com/articles/s41467-026-69729-x

幸福度は所得と関連している。しかし、低所得者の幸福度が低いのは、経済的な相対的剥奪感、あるいは所得順位の低さに伴う社会的地位の低さを反映している可能性がある。本稿では、109か国、9万人以上の個人を対象としたギャラップ・ワールド・ポールのデータを用いて、相対的所得剥奪感と所得順位の両方を特殊なケースとして含む一般モデルを検証する。80%の国において、主観的幸福度は、絶対所得や相対的所得剥奪感よりも、国内の所得順位とより強く関連している。所得順位係数は、物質主義が最も強い国では3倍以上大きいが、社会資本が高い国では小さい。市民参加が最も高い国では、所得順位と幸福度の関連性は約80%小さい。複数の調査年で結果が再現され、所得に関連する社会的地位と主観的幸福度との関連性は、社会資本が低い場合に強くなるという見解と一致する。

投稿者によるコメント・補足(2件)
コメント 1

【背景】
■ 本論文の出発点となる大きな問い
▼ 問い
所得が高い人ほどウェルビーイング(主観的幸福感)が高い、という関係は繰り返し確認されてきた。ではなぜ高所得の人は幸せなのか?
この「なぜ」を巡って、これまでに大きく3つの立場が提案されてきた。
・絶対所得アプローチ
 → 所得そのものの額が重要だとする立場
・相対所得アプローチ(平均比較型)
 → 周囲の平均所得との差が重要だとする立場
・相対剥奪アプローチ
 → 自分より上にいる人との所得の隔たり(金額の大きさ)が重要だとする立場
・ランクベース(社会的地位)アプローチ
 → 自分の所得が分布の中で何番目か、という順位そのものが重要だとする立場
本論文はこれらを統合的に比較する枠組みを構築している。
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■ 流れ①:絶対所得アプローチの系譜
「結局のところお金そのものが人を幸せにする」という素朴で強い仮説。
・Stevenson & Wolfers (2013)
 所得とウェルビーイングの関係には飽和点(これ以上稼いでも幸福が増えない上限)はない、と主張した代表的研究。
・Jebb, Tay, Diener, & Oishi (2018)
 世界164カ国を分析し、ある程度の上限はあるものの、地域差が大きいことを示した。
・Killingsworth, Kahneman, & Mellers (2023)
 「7.5万ドルで飽和する」とした以前の研究と、飽和しないとした研究を比較・統合し、対立を調停した有名な論文。
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■ 流れ②:相対所得アプローチの登場
「絶対額ではなく、誰かと比べての自分の位置が大事」という発想。さらに3つの下位タイプに分かれる。
▼ 平均比較型
他者の平均所得と自分の所得の差が重要。
・Clark & Oswald (1996)
 経済学における相対所得アプローチの代表的論文。
▼ 相対剥奪型(Relative Deprivation)
自分より上にいる人との所得差の総量が重要。「上に誰かいるだけ」ではなく「どれだけ上にいるか(金額の大きさ)」を重視するのが特徴。
・Stouffer et al. (1949)
 第二次世界大戦中の米兵調査『The American Soldier』で「相対剥奪」概念を提示した古典。
・Runciman (1966)
 社会学における相対剥奪論の体系化。
・Yitzhaki (1979)
 ジニ係数と相対剥奪を結びつけ、相対剥奪を定量化するYitzhaki指数を提案した経済学の古典。
・Smith, Pettigrew, Pippin, & Bialosiewicz (2011)
 社会心理学における相対剥奪研究のレビュー。
・Kuo & Kawachi (2023)
 上方比較(自分より上の人との比較)が健康・幸福にどう影響するかを実証。
・Hounkpatin, Wood, & Brown (2020)
 各種の相対剥奪指標を行動データで比較した研究。
▼ ランクベース型(順位型)
分布内の自分の順位そのものが重要。金額の差は関係なく、上に何人いて下に何人いるかだけが効く、という考え方。
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■ 流れ③:ランクベース(社会的地位)アプローチ = 本論文が支持する立場
▼ 出発点
・Boyce, Brown, & Moore (2010)
 『Money and happiness: Rank of income, not income, affects life satisfaction』。本論文の理論的中核。所得の絶対額ではなく所得の順位(ランク)が生活満足度を予測することを示した、ランクベース仮説の代表論文。
▼ 後続の単一国研究
ランクベース仮説は少なくとも8カ国の単一国研究で確認されてきた。
・Clark, Kristensen, & Westergård-Nielsen (2009)
 デンマークの小地域内での所得順位と経済満足度。
・Wood, Boyce, Moore, & Brown (2012)
 17年間・3万人のコホート研究。低所得とメンタル不調の関係はランクで説明できる。
・Brady, Curran, & Carpiano (2023)
 米国における健康・ウェルビーイングへの相対所得 vs 絶対所得の予測力比較。
▼ 複数国を対象にした唯一の先行研究
・Macchia, Plagnol, & Powdthavee (2020)
 24カ国を対象に、不平等が大きい国ほど所得ランクとウェルビーイングの関連が強いと報告。本論文はこれをさらに109カ国へ拡張し、不平等の調整効果については「年によって不安定」と部分的に修正している。
▼ 関連する不平等研究
・Kelley & Evans (2017)
 68社会・20万人超のデータで、国レベル不平等は集計レベルのウェルビーイングとほぼ無関係だと示した。
・Quispe-Torreblanca, Brown, Boyce, Wood, & De Neve (2021)
 平等な国ほど、同じ所得増加によるウェルビーイング向上が大きい。
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■ 流れ④:ランク仮説を支える周辺の理論
▼ 社会経済的地位(SES)と健康の格差勾配
・Adler et al. (1994)
 社会の中での「相対的な位置」が健康に効く、という主観的SES研究の出発点。
・Marmot et al. - Whitehall II研究
 英国公務員研究で、職階による健康格差を示した古典。
▼ ステータス欲求
・Anderson, Hildreth, & Howland (2015)
 地位(ステータス)への欲求は人間の根源的動機だとレビュー的にまとめた論文。
▼ 認知プロセスとしての順位判断
・Stewart, Chater, & Brown (2006)
 Decision by Sampling(サンプリングによる意思決定)モデル。人は記憶からサンプルを取り出し、「今の対象が他のサンプルより上か下か」を数えるだけで価値判断をする、という認知モデル。ランク仮説の心理学的土台。
・Brown & Walasek (2023)
 Decision by Samplingの最新整理。
▼ 社会的比較理論
・Festinger (1954)
 社会的比較理論の原典。人は自分と似た他者と比較しがち。
・Anderson, Kraus, Galinsky, & Keltner (2012)
 Local-ladder効果。国全体の地位より、身近な集団内での地位がウェルビーイングに効く。
▼ 損失回避
・Boyce, Wood, Banks, Clark, & Brown (2013)
 所得についても損失回避が働き、上方比較が下方比較より強い効果を持ちうる。
▼ 不平等回避
・Fehr & Schmidt (1999)
 経済学における不平等回避モデル。自分より上にも下にも不平等があると効用が下がる、という枠組み。

コメント 2

【研究内容】
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■ 本研究が立てた3つの問い
▼ 問い1:所得ランク(順位)は、本当に絶対所得よりウェルビーイングと関連が強いのか?
過去のランク仮説の論文の多くは単一国データに依存しており、絶対所得と所得ランクの相関がほぼ1.0で、両者を区別できなかった。これを複数国データで検証する。
▼ 問い2:「所得ランク(社会的地位)」と「相対剥奪(上の人との金額差の総量)」のどちらが、よりウェルビーイングを説明するのか?
両者を同じ枠組みで直接比較した研究は、これまで複数国レベルでほぼ存在しない。
▼ 問い3:所得ランクの効果は、社会関係資本(地域とのつながりや市民参加の豊かさ)が高い国では弱まり、市場志向・物質主義が強い国では強まるのか?
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■ データと分析の概要
▼ データ
・Gallup World Poll(GWP:ギャラップ社が約140カ国で行う世界共通調査)
・109カ国、約60万人(除外後で90,000人超を主分析に使用)
・2013年〜2024年の6ラウンドを使用(短期・中期の安定性を見るため)
▼ ウェルビーイング指標
・生活評価(Cantril Self-Anchoring Striving Scale:0〜10点で「今の人生は何点か」を答える尺度。世界幸福度報告でも使われる代表的指標)
・5年後の予測生活評価
・ポジティブ感情(楽しさ・笑い)
・ネガティブ感情(悲しみ・怒り・心配・ストレス)
▼ 主要な独立変数
・絶対所得(対数変換した世帯所得、PPP調整済み:物価水準を国際比較できるよう調整した値)
・所得ランク(自国内での所得順位を0〜1にスケーリング)
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■ 一般化モデル(本研究の核となる枠組み)
本研究の最大の方法論的貢献は、絶対所得・相対剥奪・ランクをすべて1つの式の特殊ケースとして表現できる一般化モデルを作ったこと。
▼ モデルの3つのパラメータ
・α:下方比較(自分より下の人)の重み
・δ:上方比較(自分より上の人)の重み
 → δ > 1 なら損失回避(上の人との差を強く意識)
・γ:距離感受性(金額差をどれだけ重視するか)
 → γ = 0:金額差は無関係、純粋なランクだけが効く
 → γ < 0:自分に近い所得の人ほど影響大
 → γ > 0:遠い所得の人ほど影響大(=相対剥奪に近い)
▼ ネストされたモデル比較
γ を 0 に固定すればランクのみのモデル、γ を自由にすればより複雑なモデルとなる。フィット(適合度)の良し悪しを比較することで、どの仮説が支持されるか判定できる。
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■ 分析1:絶対所得 vs 所得ランク
▼ 方法
複数国の横断データを使い、共線性(多重共線性:説明変数同士が強く相関しすぎて区別できなくなる問題)を回避。国内の所得ランクと絶対所得の相関は通常0.97だが、本研究の枠組みでは0.50まで下がった。
個人特性(年齢、性別、学歴、雇用、健康、婚姻、居住地)と国レベル特性(健康支出、失業率、都市化率、ジニ係数、再分配水準)を統制したOLS回帰(最小二乗法による回帰分析)で推定。
▼ 結果
・絶対所得と所得ランクを同時に投入すると、絶対所得は有意でなくなり、所得ランクのみが有意。
・所得ランクの係数は0.97 → 所得分布の最下位から最上位まで上がると、生活評価が約1点上昇。
・この効果は「大卒の効果」の2倍、「フルタイム雇用 vs 失業」の差の約半分。
・ポジティブ感情・ネガティブ感情・5年後の予測生活評価でも、有意なのは所得ランクのみ。
・低所得国・高所得国いずれの群でも、所得ランクのみが有意(低所得国では係数がやや大きい)。
・例外的に、世帯規模で調整した所得ランクは有意でなくなる。
 → 解釈:人は「世帯規模調整済みの目に見えない指標」ではなく、社会で語られる素の所得を比較に使っているらしい。
▼ 含意
所得とウェルビーイングの関係は、絶対額そのものではなく、社会内での順位を通じて働いている。
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■ 分析2:所得ランク vs 相対剥奪
▼ 方法
一般化モデルを最尤推定(Maximum Likelihood Estimation:データを最も生成しそうなパラメータを選ぶ統計手法)で各国別に推定。
・損失回避の検証:γ = 0 に固定して δ を推定
・距離感受性の検証:δ = 1 に固定して γ を推定
▼ 結果1:損失回避はあるか?
・平均的に δ = 1.55(上方比較を強く重視する傾向)。
・しかし88カ国のうち55カ国で「δ は1と有意に異ならない」。
・年をまたいだ安定性も低い。
 → 解釈:所得の上方比較が下方比較より重い、という強い証拠は得られなかった。
▼ 結果2:距離感受性はあるか?
・大多数の国で γ は0と有意に異ならない。
・つまり「自分より上に2万ドル多く稼ぐ人が1人」も「自分より上に5万ドル多く稼ぐ人が1人」も、ウェルビーイングへの影響はほぼ同じ。
 → これは相対剥奪仮説(金額差が大事)ではなく、純粋ランク仮説(人数だけが大事)の支持。
▼ 結果3:モデル比較
BIC(ベイズ情報量規準:モデルの良さを評価する指標。小さいほどよい)で比較したところ:
・2022-23年:88カ国中81カ国で、シンプルなランクモデルが最良。
・2023-24年:88カ国中79カ国で最良。
▼ 結果4:ランクの効果の国内での安定性
連続する2年間の所得ランク係数の相関は r = 0.75、10年離れても r = 0.39。
 → 国内では比較的安定したパターン。

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