2026.03.23

44幸福感と仕事のパフォーマンス

ウェルビーイングハンドブック_第七章:結果

毎日読めばウェルビーイングの基礎が分かる、ウェルビーイング・ハンドブック紹介シリーズ、第七章😊

六章はリソースで、何が幸せに影響があるのか。

七章はその逆で、幸せだと、どんな影響や効果があるのか。についてです😊

今回は、幸せだと、仕事のパフォーマンスは高まるのか。

結論言ってしまえば、相関関係は多く報告されているが、

幸せ→パフォーマンスのエビデンスはまだまだこれから。

仕事のパフォーマンスって難しいんですよね、、、

幸せ→創造性とかであれば創造性テストとかすれば良いですし、

そういった個人の能力が高まる系は実証しやすいんですが、

そもそも仕事のパフォーマンスを測るってのが難しいというのもあります。

でも一方、例えば積水ハウスさんの先日の発表なんかでも、

幸せ→仕事パフォーマンスの影響なんかは、出てきたりもしています😊

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■ 幸福感と仕事のパフォーマンス Warr & Nielsen (2018)

▼ この論文について

「幸せな労働者は生産性が高い」という考え方(ハッピー・プロダクティブ・ワーカー仮説)を、研究者たちはどこまで実証できているのか。本論文は、個人レベルとグループレベルの両面から証拠を整理し、その限界と今後の課題を論じたレビュー論文です。

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▼ はじめに:なぜこのテーマが注目されるのか

オーストラリア・ニュージーランドの従業員を対象にした調査では、実に92%が「幸せな労働者は生産性が高い」と信じていたと報告されています (Fisher, 2003)。

この考えは関係者全員にとって都合がよいと言われています。雇用者は「従業員の幸福への投資が業績向上につながる」と期待できる。従業員は「幸福は仕事の質を高める」と感じられる。研究者は「経営側にも労働側にも偏らない研究ができる」と主張できる。だからこそ長年にわたって研究が蓄積されてきました (Ledford, 1999)。

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▼ まず整理:「幸福感」とは何か

幸福感(ウェルビーイング)にはいくつかの種類があります。研究を読み解くうえで、これを区別することが非常に重要です。

・コンテキスト・フリー(文脈非依存)な幸福感

 → 人生全体への満足感や、全般的な幸福感のこと。「生活満足度」などがその代表例

・ドメイン特定的な幸福感

 → 仕事という特定の領域に絞った幸福感。「職務満足感」や「仕事上のストレス」などがここに含まれる

・特定要素への幸福感

 → 給与や上司など、仕事の特定の側面への満足感(ファセット満足感)

また、時間的な違いも重要です。

・特性的(トレイト)な幸福感:比較的安定した性格的傾向としての幸福感

・状態的(ステート)な幸福感:短期的・状況依存的な幸福感

さらに、測定の仕方でも2種類があります。

・認知・感情複合型:職務満足感、ワーク・エンゲージメント(仕事への活力・熱意・没頭の状態)、バーンアウト(燃え尽き症候群)などの質問票で測るもの

・感情そのもの:「楽しい」「不安だ」「悲しい」といった直接的な気持ちの報告

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▼ 次に整理:「仕事のパフォーマンス」とは何か

仕事上の行動にも複数の種類があります。

・タスク・パフォーマンス(役割内行動):職務として公式に求められる業務成果

・特定行動:創造性、革新行動、積極的行動(プロアクティブ行動)など、個別に評価される行動

・組織市民行動(OCB):同僚を助ける、新人を指導するなど、正式には求められていないが組織に貢献する行動

・反生産的行動(CWB):備品の破損、怠業、ハラスメントなど、組織に損害を与える行動

・欠勤(absenteeism):無断や長期の欠席など、チームや組織全体に影響を与える行動

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▼ 個人レベルの研究①:職務満足感とパフォーマンス

職務満足感(仕事に対してどれくらい満足しているか)と仕事パフォーマンスの関係を調べた複数のメタ分析(多数の研究を統合した分析)では、相関係数はおよそ .15〜.25 という「小〜中程度」の正の関係が一貫して見られています (Judge et al., 2001; Harrison et al., 2006)。

具体的な知見をまとめると:

・組織市民行動との相関は .15〜.52 と比較的高め (Organ & Ryan, 1995; Ilies et al., 2006)

・反生産的行動とは負の相関(-.25〜-.33)つまり満足感が高いほどこうした行動は少ない (Penney & Spector, 2005)

・欠勤とも負の相関(-.14〜-.25)が報告されている (Harrison et al., 2006)

・仕事の内容そのものや上司への満足感が、タスク・パフォーマンスとより強く関連する傾向がある (Edwards et al., 2008)

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▼ 個人レベルの研究②:ワーク・エンゲージメントとパフォーマンス

ワーク・エンゲージメントとは、仕事に対する活力(vigor)・熱意(dedication)・没頭(absorption)が組み合わさった、ポジティブで動機づけられた心理状態のことです。

このエンゲージメントは職務満足感よりも強くパフォーマンスと関連することが示されています。

・タスク・パフォーマンスとの平均相関:.35〜.36 (Rich et al., 2010; Christian et al., 2011)

・組織市民行動との平均相関:.26〜.35 (同上)

・ファストフード企業の日次データでは、エンゲージメントと店舗売上との相関が .34 (Xanthopoulou et al., 2009)

・起業家を対象にした研究では、革新行動との相関が .56 (Gorgievski et al., 2014)

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▼ 個人レベルの研究③:感情とパフォーマンス

仕事に関連した感情(job-related affect)も、パフォーマンスとの関係が確認されています。

・「抑うつ〜熱意」の軸上の感情(ポジティブな気分)は、上司評価のパフォーマンスと .30 の相関 (Staw et al., 1994)

・職務満足感よりも感情(特に活性化した肯定的感情)のほうが、組織市民行動とより強く関連する場合がある (Fisher, 2002; Ilies et al., 2006)

ここで重要なのが「活性化レベル」という概念です。ポジティブな感情の中でも、「熱意・興奮」のような高活性化感情は、「穏やかさ・リラックス」のような低活性化感情よりも、パフォーマンスと強く関連します (Warr et al., 2014)。

・高活性化感情と行動の平均パス係数:.48

・低活性化感情と行動の平均パス係数:-.17(むしろ弱い負の関連)

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▼ 因果関係の問題:「幸福だから成果が出る」とは言えない

ここが論文の核心的な問いです。「相関がある」ことと「原因である」ことは全く別の話です。

考えられる因果の方向性は3つあります。

・幸福感 → パフォーマンス(幸せだからよく働く)

・パフォーマンス → 幸福感(よい成果を出すから幸せになる)

・双方向の影響(両方が互いに影響し合う)

縦断研究(時間をおいて2回以上測定する研究)でも、満足感→パフォーマンスの平均相関と、パフォーマンス→満足感の平均相関はほぼ同値であることが示されています (Harrison et al., 2006; Riketta, 2008)。

さらに第三の可能性として「第三変数」の問題があります。たとえば上司のサポートの質や、個人の性格・能力・価値観などが、幸福感とパフォーマンスの両方に影響している場合、見かけ上の相関が生じます。組織内での厳密な実験は現実的に不可能なため、因果関係を確定することは難しいとされています。

実験室研究(大学生を対象とした誘導感情実験)では、ポジティブな気分を誘発すると、思考の柔軟性・創造性・協力行動・算数課題の生産性(平均12%増)などが向上することが示されています (Oswald et al., 2015)。ただし、この効果は20分程度しか持続せず、職場環境への一般化には限界があります。

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▼ 関連の強さを左右するモデレーター(調整変数)

幸福感とパフォーマンスの相関は、条件によって大きく異なります。以下のような要因が関係の強さを調整することが分かっています。

・裁量の余地(個人がどれだけ自由に行動できるか)

 → 制約が少ない職場ほど、幸福感とパフォーマンスの関連が強い

 → 制約が高い条件では相関がほぼゼロになる場合もある (Bhagat, 1982)

 → メタ分析では、職場の制約の強さと満足感・パフォーマンス相関の間に -.34 の関係 (Bowling et al., 2015)

・パフォーマンスへの報酬(よい仕事が報われると感じるか)

 → 成果連動型の報酬制度がある環境では関連が強まる (Jacobs & Solomon, 1977)

・職位・職種

 → 管理職・専門職の方が一般従業員より相関が高い(.26〜.31 vs .15〜.18)

 (Petty et al., 1984; Judge et al., 2001)

・社会的規範とグループの凝集性

 → 集団の規範が強い場合、個人の感情よりも規範が行動を決定する

・個人の性格(達成欲求、罪悪感傾向、ビッグ5など)

 → たとえば達成欲求が高い人ほど、満足感→パフォーマンスの相関が強い (.32 vs .10) (Steers, 1975)

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▼ グループレベルの研究

個人だけでなく、チームとしての幸福感とパフォーマンスの関係も研究されています。

▼▼ グループの職務満足感

・タスク・パフォーマンスとの平均相関:.29

・組織市民行動との平均相関:.34

・欠勤との相関:-.37

・顧客満足度との相関:.25

(Whitman et al., 2010)

また、グループ内での満足感のばらつきが小さいほど(つまりメンバーが同じ気持ちを共有しているほど)、パフォーマンスとの関連が強まることも示されています。

▼▼ グループのワーク・エンゲージメント

・グループエンゲージメントとタスク・パフォーマンスの間に正の関連 (McClelland et al., 2014; Torrente et al., 2012)

・グループエンゲージメントが高い店舗では、顧客へのサービス品質が高い (Salanova et al., 2005)

・グループ・エンゲージメントと成員のグループ業績知覚の間に相関 .86 (Mäkikangas et al., 2016)

▼▼ グループの感情的トーン(集団的な気分の色合い)

・グループ全体でポジティブな気分が共有されているほど、チームのパフォーマンスが高い (Tanghe et al., 2010)

・ただし例外もある。グループ外部からの脅威による否定的感情は、むしろ結束力を高めてパフォーマンスを向上させることがある (Knight & Eisenkraft, 2015)

・プロジェクト中盤での共有ポジティブ気分が、完了段階でのパフォーマンスと関連する (Knight, 2015)

・感情の多様性が大きいグループ(メンバー間の気分のズレが大きい)は、業績が低い傾向がある (Barsade et al., 2000)

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▼ 今後の研究課題

著者たちが指摘する重要な課題をまとめます。

・幸福感とパフォーマンスだけでなく、第三変数(上司の行動・職場環境・個人特性など)を含めた多変数モデルの研究が必要

・調整変数(モデレーター)の研究を理論的枠組みに基づいて体系化すること

・「幸せで高業績」「不幸で低業績」の典型パターンに当てはまらない人(約15%)の特性解明

・グループ研究では、グループサイズ・タスクの複雑さ・仮想チームvs対面チームなどの影響を検討すること

・ユーダイモニア的幸福感(充実感、意味、自律性など)をパフォーマンス研究に取り込むこと

・幸福感とパフォーマンスの非線形関係(一定以上の幸福感では関連が弱まる可能性)の検討

・幸福感とパフォーマンスの両方を同時に高める介入プログラムの開発と評価

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▼ 著者の結論:慎重だが確信ある立場

本論文は、因果関係を断定することを避けながらも、次のように述べます。

「日常的な実感と実験的証拠の両方が、幸福感が時にパフォーマンスに影響することを示唆している。ただしその影響は比較的小さく、他の変数も重要であり、因果の方向は複数ありうる」

つまり「幸せな労働者は生産的か」という問いへの答えは「おそらくそうだが、関係は弱く複雑で、条件次第」というものです。

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Wellbeing and Work Performance

By Peter Warr & Karina Nielsen, Institute of Work Psychology, University of Sheffield

本章では、「幸福な労働者=生産的な労働者」という仮説に関する研究を概観する。この仮説は、ウェルビーイングの高い個人や集団は、ウェルビーイングの低い個人や集団よりも職務において優れたパフォーマンスを発揮することを示唆している。我々は、文脈に依存しないウェルビーイングや職務に関連するウェルビーイングといったさまざまな類型を検討し、職務内行動や職務外行動の観点から、また創造性や主体性といった具体的な活動を通じて、職務パフォーマンスを考察する。個々の労働者を対象とした研究では、例えば職務満足や特定の感情といった形態のウェルビーイングに焦点を当てた場合、パフォーマンスとの間に小~中程度の横断的および縦断的な関連性が示されている。また、これらの関連性の潜在的な調整変数に関する研究も検討し、相関の強さは、例えば個人の裁量権の有無、職務等級、良好なパフォーマンスから期待される利益などに依存することが判明した。しかし、実際の職場組織における適切に統制された実験が欠如しているため、因果関係の方向性を特定することは不可能である。集団レベルのウェルビーイングに目を向けると、集団の感情的トーンもまた、業績と中程度の関連性があることが判明している。メンバー数などの一部の集団特性が重要なモデレーターとして示唆されているが、潜在的なモデレーターに関する集団レベルの研究は極めて稀である。本章の締めくくりとして、今後の研究における望ましい展開を提案し、この分野における因果的影響に関する全体的な考察を提示する。

キーワード:パフォーマンス、ウェルビーイング、仕事、感情、満足度、エンゲージメント、グループ

投稿者によるコメント・補足(3件)
コメント 1

●MUFGさんのレポート😊
従業員ウェルビーイングと企業業績の分析
https://www.facebook.com/groups/wellbeinginfo/permalink/1890144805129542/

コメント 2

●オックスフォードさんのレポート
アメリカの上場企業1600社超のデータから、幸せな働く人がいる会社はパフォーマンスが高い。
https://www.facebook.com/groups/wellbeinginfo/permalink/1461122678031759/

コメント 3

●積水ハウスさんのレポート
個人の業績が良いから、評価されて待遇が良くなって、幸せになるのか、
幸せだから、業績が良くなるのか。
実際に検証してみた所、
もちろんどちらもあるのですが、
幸せだから、業績が良くなる。の効果の方が1.5~2倍くらい高かった😊
https://www.facebook.com/groups/wellbeinginfo/permalink/1981106876033334/

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