2026.01.04

はぴテク相談室:許しても記憶は消えないが、悲しみは消える

相談者

はぴテクさん、ちょっと聞いてもいいですか。昔、親友だと思っていた友人にひどいことをされて、もう何年も経つのに、思い出すたびにモヤモヤしてしまうんです。「許せばいいんだろうな」とは頭では思うんですけど、許すって何なのかよく分からなくて…

はぴテクさん
はぴテクさん

そのモヤモヤ、すごくよく分かります。何年も経つのに思い出してしまう、辛いですね。実は2025年に、まさにその「許し」について調べた面白い研究が出ているんです。今日はそれをもとにお話ししてみますね。まず最初に一つ聞かせてください。「許す」って聞いて、どんなイメージがありますか?

相談者

うーん…「もうあのことは忘れました、気にしてません」みたいな感じ、でしょうか。でも正直、記憶は全然消えないし、それが許せない自分はダメなのかな、とも思ってしまいます。

はぴテクさん
はぴテクさん

そのイメージ、実はとても多くの人が持っているんです。「許す=忘れること」というイメージですね。でも研究では、ちょっと違う結果が出ているんです。この研究は、許しにはもともと2つの説があって論争されていました。一つは「記憶自体がぼやけるから気持ちも薄れる(エピソード減退説)」、もう一つは「記憶はそのまま残るけど、感情だけが変わる(感情減退説)」というものです。今回の研究結果は、後者の②感情減退説を支持するものでした。

相談者

えっ、記憶は消えなくていいんですか?それはちょっと意外でした。でも「感情だけが変わる」って、どういう感じなんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

「あのとき、こんなことをされた」という出来事の事実はちゃんと覚えている。でも思い出したときに感じる感情の強さや、ネガティブな感じが軽くなる、というイメージです。研究では、許しが進むにつれて、過去の記憶に伴う感情的な強度や否定的な感覚が和らいでいくことが確認されました。「事実は知っている、でもそこまで胸が痛まない」という状態に近いかもしれません。

相談者

なるほど…。じゃあ「許した後も記憶が残っていること」は、おかしいことじゃないんですね。少し安心しました。でも、その感情の変化って、相手のことを「いい人だった」と思い直すということなんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

鋭い質問ですね!研究によると、感情が和らいでいくにつれて、相手に対して「もう少し慈悲深い気持ちを持てる」「復讐したいとか、避けたいという気持ちが薄れる」という変化が報告されています。ただ、これは「相手が正しかった」とか「いい人だった」と思い直すこととは別のことです。あくまで自分の中の感情の重さが変わる、というイメージに近いです。

相談者

「復讐したい気持ちが薄れる」というのは分かる気がします。最初はひどい目に遭わせてやりたい、くらいに思っていたのが、今はもうそこまでは思わないですし。でも「許す」って、相手に謝ってもらわないといけないものですか?相手はもう連絡も取れない人なので…

はぴテクさん
はぴテクさん

実はこの研究の文脈でも、また許し研究全体の文脈でも、許しは「相手の謝罪が必須ではない」とされています。許しは相手との関係を回復させることではなく、自分の内側で起きる感情の変化のプロセスだ、という見方がこの分野では一般的なんです。だから相手が謝らなくても、連絡が取れなくても、自分の感情の変化という意味での「許し」は起こりえるということになります。

相談者

それを聞いてちょっと楽になりました。「許す=相手との和解」じゃないなら、自分の中だけで完結できるものなんですね。でも実際には、どうしたら感情が変わっていくんでしょうか?何かコツみたいなものはありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

今回の研究は主に「許しが起きたときに何が変わるか」を調べたもので、「どうすれば許せるか」という方法論まで踏み込んだものではありません。なので「これをすれば許せる」とは言い切れないんです。ただ研究が示していることは、「感情の変化が先にある」ということです。つまり、頭で「許そう」と決めるよりも、その出来事に伴う感情の強さが自然に和らいでいくことが、許しのプロセスと結びついているようです。今あなたが「以前ほど復讐したいとは思わない」とおっしゃっていましたよね。もしかしたら、その変化自体がすでに許しのプロセスの一部かもしれませんよ。

相談者

そう言ってもらえると、少し違って見えてきます。「許せていない自分はダメだ」と思っていたけど、気づかないうちに少しずつ変わっていたのかもしれないんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

そうですね。この研究はあくまで「許しと記憶の感情的変化の関係」を調べたもので、許せないことを責める研究ではまったくありません。何年も経って、以前ほどの激しい感情がなくなってきているとしたら、それはあなたの中で何かが変わってきているサインかもしれないですね。「完全に許さなければ」と自分を追い詰めなくていい、ということも、この研究の文脈では言えると思います。

相談者

ありがとうございます。「記憶が残っていても、感情が変わることが許し」という考え方は、私にはすごく腑に落ちました。自分を責めすぎずに、少しずつ向き合っていこうと思えてきました。

■ 今日のまとめ

  • 許しは「忘れること」ではなく、「出来事の記憶は残りつつ、それに伴うネガティブな感情の強さが和らいでいくこと」と研究では示されています。
  • 許しが進むにつれて、相手への復讐心や回避したい気持ちが薄れていくことが報告されていますが、これは相手を「正しかった」と認めることや、謝罪・和解とは別のプロセスです。
  • 許しは自分の内側で起きる感情変化のプロセスであり、相手の謝罪がなくても、また意識的に「許そう」と決めなくても、少しずつ進んでいく可能性があります。

■ 出典・注意事項

  • Fernández-Miranda, G., Stanley, M., Murray, S., Faul, L., & De Brigard, F. (2025). The emotional impact of forgiveness on autobiographical memories of past wrongdoings. Journal of Experimental Psychology: General. https://doi.org/10.1037/xge0001787

  • 髙田菜美 (2016). ゆるし研究の概論. 関西大学紀要論文. https://kansai-u.repo.nii.ac.jp/records/11911

  • 【注意事項】本研究は、許しと記憶・感情の変化の関連を調べたものであり、「許せば必ずこうなる」という因果関係を直接証明するものではありません。

  • 【注意事項】研究の対象集団や方法論の詳細によって、結果の一般化には限界があります。すべての人・状況に同様の結果が当てはまるとは限りません。

  • 【注意事項】「どうすれば許せるか」という具体的な方法論は本研究の範囲外であり、この研究から直接的な実践法を導くことはできません。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
許しても記憶は消えないが、悲しみは消える
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-01-04-1767556654/

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