先日紹介した最新研究で参照されていた、ELT理論(エピソード的傾聴理論)が面白かったので、
その元となる論文「職場での聞くことの力」の紹介😊2022年の論文で、職場における傾聴の効果や、方法の研究を整理頂いています😍
ー
まず職場で聞くことは、
パフォーマンスの向上(営業成績とr=0.50)、関係性の強化(仕事満足度とr=0.60)、リーダーシップの質(r=0.5以上)
とかなり相関がありつつ、社内のウェルビーイングも促進する😍
相関がかなり高いですね・・・
ー
■質の高い傾聴で必要な要素
その上で、質の高い傾聴で必要な要素は、
①聞き手の見えない行動
・注意:話し手に意識を向ける
・理解:話し手の言っていることを感情も含め理解しようとする
・善意:評価せず、話し手の幸せを望む
※ここが前回紹介したやつですね。
②聞き手の見える行動
・ポジティブな行動:言い換え、感情の反映、適格な質問、相づち、沈黙
・ネガティブな行動:話題を変える、アドバイスの押しつけ、ながら聞き
③話し手の認識と評価
・話し手が「聞いてもらえた」と評価してもらえるように。
(相手がどう感じたか、が大事。)
ー
■聞くことが生み出す創造的な相互作用プロセス
ステップ1:安全と信頼の上昇スパイラル
善く聞く→話し手が心理的安全性を感じる→より自己開示→聞き手の傾聴の質が上がる→加速していく
ステップ2:一体感の創出
1のスパイラルが回っていくと、一体感が生まれる。
(ここでポジティビティ共鳴も起こる)
ステップ3:質の高い傾聴後の永続的な成果
関係性の強化、ウェルビーイングの向上、明瞭性の向上、創造性につながる。
ーーー
職場での聞くことの力
The Power of Listening at Work
Avraham N. Kluger and Guy Itzchakov
Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior Volume 9, 2022
[https://www.annualreviews.org/content/journals/10.1146/annurev-orgpsych-012420-091013](https://www.annualreviews.org/content/journals/10.1146/annurev-orgpsych-012420-091013)
傾聴は、職務遂行能力、リーダーシップ、人間関係の質(信頼など)、職務知識、職務態度、幸福感など、多くの領域で、望ましい組織成果と関連し、またその原因となる可能性が高い。組織成果に対する傾聴の強力な効果についての理解を深めるため、本研究では、傾聴の構成概念、その測定および実験操作、ならびにその結果、先行要因、および調整要因について検討する。我々は、傾聴は、上司と部下、営業担当者と顧客の二者間を含め、聞き手と話し手の両方に利益をもたらす二者間の現象であると提唱する。これまでの研究結果を説明し、新しく検証可能な仮説を生み出すため、我々はエピソード傾聴理論を提唱する。すなわち、傾聴はつかの間の一体感をもたらし、その中で二者間のメンバーは相互に創造的思考プロセスを経る。このプロセスは明晰性をもたらし、斬新な計画の生成を促進し、幸福感を高め、会話相手への愛着を強める。
職場における「聞く力」の絶大な効果 質の高いリスニングは、職場において非常に重要であるなから過小評価されているスキルです。 パフォーマンス、リーダーシップ、人間関係、幸福度の向上を促す主要な原動力となります。 聞くことがもたらす強力な成果 パフォーマンスの向上 r̄ = 0.47 意思担当者の傾聴スキルは、売上と売い関関係があります リーダーシップの強化 r' = 0.71 建設的な傾聴は、リーダーシップ評価における最も強力な予測指子です 幸福度と従業の改善 上位のマネージャーは、部下の教え具合が認識できると高い職場感覚と幸の関関係にあります 聞くことの科学:好循環の仕組み 1. 質の高い傾聴が心理的安全性を生む 話し手は安心感を覚え、本音で話すようになります 2. 本音で話すことで、さらに傾聴が深まる これが二人の間で「ポジティブ・スパイラル」を生み出します 3. スパイラルが「一体感」という状態へ 相互間係、共有の中で発散的思考が生まれる特別な状態です 4. 双方が新たな気づきと強い絆を得る 会話から新しい価値、幸福の向上、より良い関係が生まれます 聞く力:組織の隠れた競争優位性 なぜ「傾聴」がパフォーマンス、リーダーシップ、そしてウェルビーイングを根本から変えるのか Based on the research of Kluger & Itzchakov, Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior, 2022. 🎯 NotebookLM 「聞くこと」の驚くべきROI パフォーマンスの向上 ρ = 0.47 • 営業成績との相関: ρ = 0.47(ある研究では ρ = 0.50) • 創造性との相関: r = 0.39 • 組織市民行動(OCB)の向上 • 医療連関脳歌や労働災害の減少 リーダーシップの質 r = 0.71 • リーダーシップ評価との相関: 最も弱いもので r = 0.50 • 変革型リーダーシップとの相関: r = 0.56 • 部下からの配慮評価との相関: r = 0.71 関係性の強化 r = 0.60 • 信頼、親密さ、関係満足度の向上 • 部下の離職満足度との相関: r = 0.60(上司との関係においても) ウェルビーイングの促進 ↓ • バーンアウトの減少 • 心理的安全性の向上 • 従業員エンゲージメントの向上(上司のスマ ホいじり「ポス・ファビング」はエンゲージ メントを低下させる) では、これらの成果を生み出す「質の高い傾聴」とは何か? 一般的な「アクティブリスニング」のテクニック論を超えて。傾聴は3つの連動する要素で構成される。 1. 聞き手の「見えない」行動 (Unobservable Behaviors) ・注意(Attention):話し手のメッセージに集中する度合い。 ・理解(Comprehension):話し手の認知・感情のフレームを理解する能力。 ・善意(Benevolent Intention):評価せず、話し手の心理的成長を助けようとする意図。 2. 聞き手の「見える」行動 (Observable Behaviors) ・ポジティブな行動:言い換え、感情の反射、的確な質問、相槌、沈黙。 ・ネガティブな行動:話題を変える、アドバイスの押し付け、ながら聞き(スマホなど)。 3. 話し手の「認識と評価」 (Speaker's Perceptions) ・「聞いてもらえた」という話し手の主観的な全体評価。 ・これが、組織における様々な成果の直接的なつながけとなる。 変化のエンジン:エピソード的傾聴理論 なぜ傾聴がこれほど強力な効果を持つのか?そのメカニズムを解き明かす理論的フレームワーク。 • 傾聴の効果は、単一の行動ではなく、会話の中での「エピソード」の積み重ねによって生まれる。 • この理論は、傾聴がどのようにして話し手と聞き手の両方に利益をもたらす「ダイアド(二人組)現象」であるかを説明する。 • これから、この理論が描き出す「創造的な相互作用のプロセス」をステップごとに見ていく。 ステップ1:安全と信頼の「上昇スパイラル」 →加速:このプロセスが繰り返され、スパイラルは加速的に上昇していく。 →聞き手の変化:話し手の「心に触れた」聞き手の傾聴の質がさらに向上する。 →行動の変化:安全性を感じた「は、自己開示し、より本心(authentically)で話すようになる。 →話し手の変化:話し手「は心理的安全性(psychological safety)を感じる。 起点:聞き手「が話し手「の話を真摯に聞く。 NoteBookLM ステップ2:一体感(Togetherness)の創出 スパイラルの頂点で、二人組は特別な心理状態に達する。 定義 一体感(I-Thou)とは、二人組の間に生まれる一過性の化学反応で あり、心の出会いである。哲学者マルティン・ブーバーの言う「我-汝」(I-Thou)の関係に近い。 構成要素 • 注意の共有(Shared Attention):共通の視点から世界を見る。 • 現実の共有(Shared Reality):内的な状態(思考、感情)を共有する。 • ポジティブな共鳴(Positivity Resonance):肯定的な感情、相互の記憶、行動や生体リズムの同調。 重要な機能 この状態の中で、二人の心は普段は経験しないレベルの「発散的思考(divergent thinking)」を行い、新しい知識を共創する。 ステップ3:エピソード後の永続的な成果 「一体感」の経験は、会話が終わった後も両者に具体的な利益をもたらす。 関係性の強化 (Strengthened Attachment): パートナーへの愛着が強まり、 将来の協力関係の基盤となる。 明晰性の向上(Clarity): 自身の考えや態度が明確になる。内省が促進される。 ウェルビーイングの向上 (Heightened Well-being): 認識的・関係的なニーズが 満たされ、幸福感が高まる。 新たな計画の創出 (Novel Plans): 問題解決のための新しい、より 適応的な計画が生される。 Notebookly これほど強力なのに、なぜ「聞くこと」はこれほど難しいのか? 傾聴のポジティブな効果を阻害する、個人と状況に起因する要因。 聞き手側の障壁(Listener-Side Barriers) • 地位への懸念(Status Concerns):聞くことは相手に威信を与えるが、自らの支配的地位を希薄化させる可能性がある。 • 変化への恐れ(Fear of Change):真に相手を理解すると、自分自身が変わる必要があるかもしれないという無意識の恐怖。 • 二次的外傷リスク(Secondhand Trauma):困難な話を聞くことによる精神的ストレス(r̄ = 0.15のメタ分析結果)。 話し手側の障壁(Speaker-Side Barriers) • 個人の特性(Individual Differences):回避型愛着スタイルの人は、傾聴がもたら
元論文紹介
https://www.facebook.com/groups/wellbeinginfo/permalink/2095750957902258/
【背景】
■ 研究の出発点と問題意識
この論文の著者たちは、傾聴が職場で非常に重要なスキルとして認識されているにもかかわらず、組織心理学や組織行動論の分野では比較的注目されてこなかったという問題を指摘しています。
そのため、マーケティング、看護、法律、ソーシャルワーク、社会心理学、臨床心理学、教育学など、多様な分野の研究を統合してレビューしています。
ーー
■ 傾聴の定義に関する既存研究
▼ 定義の難しさ
Worthington & Bodie (2018)は、「傾聴」という用語が非常に多くの意味で使われているため、単一の定義を提供することは有用ではないと指摘しています。そのため、研究の文脈ごとに定義すべきだとしています。
▼ 本研究の焦点
この論文では「会話における傾聴」に焦点を当て、以下を除外しています:
ーー
■ 傾聴の構成要素に関する理論
▼ Carl Rogersの理論(1951年)
傾聴研究の基礎となる最も重要な理論的枠組みは、Carl Rogers(1951)による来談者中心療法(クライエント中心療法)の理論です。
Rogersは傾聴の本質的な要素として以下を提示:
・注意(attention):話し手のメッセージに焦点を当てる程度
・理解(comprehension):話し手の認知的・感情的枠組みを採用することに成功する程度。これは「話し手の靴を履く」ような共感的理解を意味します
・善意的意図(benevolent intention):判断せずに、話し手が心理的に成長する(自分で洞察を得て、自分で問題を解決する)ことを助けようとする意図
Rogersは、この態度が技術よりも重要であると警告しました。単なるテクニックとしてのパラフレーズ(言い換え)などは、適切な態度に基づかなければ効果がないとしています。
出典:Rogers (1951), Rogers & Roethlisberger (1991[1952])
ーー
▼ 観察可能な傾聴行動
Itzchakov et al. (2017)の研究は、リスナーの観察不可能な行動(注意、理解、善意的意図)が観察可能な行動に影響を与えることを示しています。
観察可能な良い傾聴行動の例:
・パラフレーズ(言い換え):話し手の言葉を自分の言葉で言い換える(Nemec et al. 2017)
・感情の反映:話し手の感情を言葉にして返す(Nemec et al. 2017)
・適切な質問:関連性のある(理想的にはオープンエンド型の)質問をする(Huang et al. 2017, Van Quaquebeke & Felps 2018)
・明確化や繰り返しの要求:必要に応じて(Lycan 1977)
・受容性のレシピに従う:ヘッジング(断定を避ける表現)など、非判断的な態度を示す(Yeomans et al. 2020)
・沈黙を保つ:話し手が話し終えた後、数秒間沈黙する(Curhan et al. 2021)
・繊細な質問をする(Hart et al. 2021)
ーー
▼ バックチャネル応答の理論
Bavelas et al. (2000)が提唱した概念で、リスナーが話し手の流れを中断せずに、関心や注意を示す言語的・非言語的反応のことです。
2種類があります:
・一般的バックチャネル:単に話し手に続けるよう促すもの(うなずき、「うんうん」などの相づち、話し手の方に体を向けるなど)
・特定的バックチャネル:話し手の語りに合致した形で理解を伝えるもの(恥ずかしい話に顔をしかめる、冗談に笑うなど)
Bodie et al. (2014)は、これを「非言語的即時性(nonverbal immediacy)」として研究しています。
ーー
▼ 悪い傾聴行動
以下のような行動は傾聴が悪いことを示します:
・話題を変える
・焦りを伝える口調
・求められていないアドバイスをする
・二重課題(スマートフォンを見るなど)
・会話から物理的に離れる
・眉を上げる(話し手を疑い、応答を準備していることを示す)
ただし、傾聴は「形成的構成概念」です。つまり、特定の行動が必要条件でも十分条件でもないということです。例えば、アイコンタクトがなくても良い傾聴は可能(電話など)ですし、タイミングの良いアドバイスは良い傾聴と解釈されることもあります(Zenger & Folkman 2016)。
ーー
■ 傾聴の効果に関する主要研究
▼ 職務パフォーマンスへの影響
■ マーケティング分野のメタ分析
Itani et al. (2019)のメタ分析(16研究、N=3,780):
個別研究では:
■ スタートアップ企業の定性研究
Sarfati et al. (2020)によるブラジルのスタートアップ企業の質的研究:
創業パートナーの少なくとも1人が積極的に傾聴しなかった場合、起業家の1人が去るか、事業が失敗するかのいずれかの結果になったと報告しています。
ーー
▼ 組織市民行動(OCB)への影響
組織市民行動とは:役割外の自発的な協力行動のこと
Lloyd et al. (2015)のドイツでの研究:
従業員による上司の傾聴の認識が、組織市民行動と正の相関を示しました。
Schroeder (2016):
潜在的な交絡変数を統制しても、この効果は維持されました。
Kluger et al. (2021)のイスラエルでの研究:
従業員によるチームメイトの傾聴の認識が、援助的組織市民行動と正の相関を示しました。
ーー
▼ 反生産的行動の抑制
■ 医療過誤訴訟との関連
Levinson et al. (1997):
患者と医師の対話から客観的にコーディングされた傾聴の質が、プライマリケア医師の医療過誤訴訟と負の相関を示しました(外科医では同様の傾向だが有意ではなかった)。
Hagihara & Tarumi (2007)の日本の研究:
医師が患者や家族に傾聴したり説明したりした証拠がない場合、日本の裁判所が医師を医療過誤で有罪とする可能性が高いことを発見しました。ただし、傾聴と説明の役割を分離していません。
■ 職場での安全性
Zierold (2016):
小売業やサービス業で働く10代の若者を対象とした研究で、仕事で怪我をしたと答えた人は、上司が自分の話をよく聞いてくれなかったと報告する傾向が高いことを発見しました。
動画で解説頂きました😊
https://youtu.be/yrJz0q3tHTg
本研究のウェルビーイング小話はこちら😊
はぴテク相談室:職場での聞くことの力
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-11-29-1764375543/