はぴテク相談室:福祉学×交通学×ウェルビーイング
最近、母が足腰が弱くなってきて、外出がめっきり減ってしまいました。バスも遠いし、車の免許もないので、「もう外に出なくていい」って言うんです。でも、なんとなく元気もなくなってきている気がして…どうしたらいいんでしょう。
それは心配ですね。お母さんが「外に出なくていい」とおっしゃるのは、移動の手段がないからというだけでなく、「出る気持ち」も一緒にしぼんできているのかもしれません。実は、福祉・交通・心理学を組み合わせた研究がちょうどそのテーマを扱っていて、とても参考になる内容なんです。
福祉と交通と心理学、ですか?なんか幅広いですね。どんな内容なんですか?
はい。この研究は「移動支援をウェルビーイング、つまり『よく生きること』の視点から考えよう」という枠組みを提案しているんです。ポイントは3つの役割分担です。福祉学は『誰が誰を支えるか』、交通学は『どうやって移動するか』、そして心理学は『何のために移動するのか』を担う、という考え方です。
『何のために移動するか』というのが心理学の役割、というのが面白いですね。移動ってただ場所を変えることじゃないんですね。
そうなんです!研究では、移動の背景には「気分転換したい」「思い出の場所に行きたい」「誰かに会いたい」「社会とつながっていたい」「自分の役割を果たしたい」といった、様々な動機があると説明しています。この動機づけが維持されることが、生活の質(QOL)や心理的なウェルビーイングの向上と関連していると示されています。
なるほど…お母さんに「どこか行きたい場所ある?」って聞いてみたことなかったかもしれません。「移動手段どうする?」ってことばかり考えていました。
まさに、そこが大切なポイントだと思います。研究では、高齢期において余暇活動や社会貢献に関する目標を持ち続けることや、動機づけに支えられた社会的なつながりを維持することが、充実した生活を支えるために重要だと示されています。「どこに行きたいか」「誰に会いたいか」「何をしたいか」という気持ちが、移動の出発点になるわけですね。
たしかに…お母さん、昔からの友人のことをよく話すんです。「会いに行けたらな」って。でも交通手段がないから諦めてるみたいで。
その「会いに行きたい」という気持ち、すごく大事です。研究の枠組みで言うと、その動機づけ(心理学)に対して、実際にどう移動するか(交通学)と、誰がどう支えるか(福祉学)が組み合わさって初めて、本当の意味での移動支援になる、ということなんです。
じゃあ、まず「会いに行きたい」という気持ちを大切にしながら、移動の方法を一緒に考えていく、という順番が大事なんですね。
その通りです。研究では「移動できること」は単なる物理的な移動手段にとどまらず、『自分らしく生きるための土台』だと表現しています。地域の資源や人材をうまく組み合わせて、お母さんの「やりたいこと・会いたい人」を起点にした支援を考えていくことが、ウェルビーイングにつながるという視点です。
「自分らしく生きるための土台」かぁ。移動ってそんなに大きな意味を持っていたんですね。お母さんともっとちゃんと話してみようと思います。何がしたいか、誰に会いたいか、って。
ぜひ。「どこに行きたい?」「誰に会いたい?」「何をしたい?」という問いかけが、お母さんの動機づけを引き出すきっかけになるかもしれません。そしてその答えをもとに、地域の移動支援サービスや福祉の制度なども一緒に調べていくと、現実的な一歩が見えてくると思いますよ。
■ 今日のまとめ
- 移動は単なる場所の移動ではなく、『誰かに会いたい』『社会とつながりたい』などの動機づけが背景にあり、その動機を大切にすることが心理的ウェルビーイングと関連しています。
- 福祉(誰が支えるか)・交通(どう移動するか)・心理学(何のために移動するか)の3つの視点を組み合わせることで、より本質的な移動支援が可能になると研究は提案しています。
- 高齢期において目標や動機づけに支えられた社会的つながりを維持することが、充実した生活を支えるうえで重要だと示されており、『何がしたいか』を起点にした支援が鍵になります。
■ 出典・注意事項
- 木村年晶・田村啓子・内山伊知郎「福祉交通学という視座―ウェルビーイングのための移動支援―」『交通科学』56巻2号, 2025年11月. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kokaken/56/2/56_06/_pdf
- 【注意事項】本研究は理論的枠組み(フレームワーク)の提案論文であり、特定の介入効果を実証した研究ではありません。動機づけと生活の質・ウェルビーイングの関連は、既存研究の知見として引用されているものであり、本研究が直接実証したものではありません。
- 【注意事項】フレームワークの適用可能性や効果は、地域の実態・個人の状況によって異なります。研究で示された知見を一般化する際はご留意ください。
研究自体の紹介はこちら😊
福祉学×交通学×ウェルビーイング
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-11-19-1763594103/