2025.11.12

はぴテク相談室:リーダーシップ,ストレス,及びwell-beingに関する研究の現状と課題

相談者

最近、職場の雰囲気がどんより重くて…上司が常にイライラしていて、部下に当たることも多くて。私自身もストレスを感じているし、チーム全体のやる気も落ちている気がします。上司って、そんなにメンバーの状態に影響するものなんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

それはつらい状況ですね。実は、広島大学の坂田桐子先生が2024年に発表したリーダーシップとストレス・ウェルビーイングに関する展望論文でも、まさにそのことが取り上げられています。25カ国・157のサンプルを分析したメタ分析によると、上司のリーダーシップのスタイルは、メンバーのストレスやバーンアウトと統計的に関連していることが示されています。

相談者

へえ、そうなんですね。具体的にどんなリーダーシップが良くて、どんなのが良くないんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

大きく分けると2種類あります。一つは「変革型リーダーシップ」で、ビジョンを示したり、メンバーの成長を後押ししたり、一人ひとりに気を配るスタイルです。このリーダーシップはメンバーのストレスやバーンアウトと負の関連、つまりストレスが低い傾向と関連していました。もう一つ、「虐待的監督」と呼ばれる、継続的に敵対的な態度をとる上司のもとでは、メンバーのストレスやバーンアウトが高い傾向が見られています。

相談者

「虐待的監督」って、かなり強い言葉ですね…。うちの上司がそれに当てはまるかはわかりませんが、なぜ上司がそういう態度になってしまうんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この論文では、その点も分析されています。リーダー自身がストレスを抱えていたり、心の「資源」が枯渇していたりすると、虐待的な監督行動が促進されることが示唆されています。つまり、上司が先にバテている状態だと、部下に対して攻撃的・非協力的な行動が出やすくなるという関連が見られているんです。

相談者

なるほど…上司も上司でしんどいのかもしれないですね。でも、だからといって部下が割を食うのはつらくて。良い上司のもとだと、なぜメンバーのストレスが下がるんですか?どんなメカニズムがあるんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

いくつかのメカニズムが研究で確認されています。たとえば、変革型リーダーシップは「仕事の意義を感じやすくする」「自己効力感(自分はできるという感覚)を高める」「上司への信頼感を育む」といった経路を通じて、ポジティブな気持ちやストレス低減につながることが示されています。また、「自律性(自分で決められる感覚)」「所属性(つながりの感覚)」「有能性(できる感覚)」という3つの基本的な欲求が満たされることも関連していると示唆されています。

相談者

「上司との信頼関係」って、ひとつのキーワードになりそうですね。そこはどう説明されていますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい、「LMX(リーダー-メンバー交換関係)」という概念で研究されています。簡単に言うと、上司と部下の信頼関係の質のことです。この関係の質が高いほど、ストレスやバーンアウトとの負の関連が強く、実は変革型リーダーシップよりもこの信頼関係の質のほうが、ストレスやバーンアウトとの関連が強いという結果も出ています。

相談者

じゃあ、信頼関係さえ作れれば、けっこうストレスも変わってくるということですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究はあくまで「関連がある」という相関の分析ですので、「信頼関係を作れば必ずストレスが下がる」と言い切ることはできません。ただ、信頼関係の質がウェルビーイングと強く結びついている傾向は確認されています。また、効果の出方は職場の種類や個人の特性によっても違いがあることも報告されています。たとえば、組織への結びつきが弱い人ほど変革型リーダーシップのストレス低減との関連が大きかった、という結果もあります。

相談者

いまの自分の職場状況を考えると、上司が変わってくれるのを待つしかないんでしょうか…?自分にできることはありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この論文は主にリーダーシップ側の研究の整理ですので、メンバー側に何ができるかの直接的な答えは書かれていません。ただ、研究から見えてくることとして、「仕事の中で意義を見つけられているか」「自分でできると感じる場面があるか」「職場の中に信頼できる人との関係があるか」——こうした要素がウェルビーイングと関連していることは示されています。上司との関係だけでなく、チーム全体の雰囲気や同僚との関係も含めて、どこかにそういった要素を探してみることも一つかもしれませんね。

相談者

研究で裏付けられていると、少し整理できた気がします。上司が変わらなくても、自分が感じていることは「気のせいではない」とわかっただけで、少し楽になりました。ありがとうございます。

はぴテクさん
はぴテクさん

そう感じていただけてよかったです。この研究が示しているのは、リーダーシップとウェルビーイングの関連は実際に研究で繰り返し確認されているということです。あなたが感じている重さには、それなりの根拠があります。また、変革型リーダーシップが必ずしもリーダー自身に負荷をかけないかどうかはまだ明確になっていないなど、研究上の未解明な点もあります。一つの視点として活用していただけると嬉しいです。

■ 今日のまとめ

  • ①変革型リーダーシップや上司との高質な信頼関係(LMX)は、メンバーのストレスやバーンアウトと負の関連が示されており、仕事の意義・自己効力感・基本的欲求の充足などを通じたメカニズムも示唆されている。
  • ②リーダー自身のストレスや資源枯渇は、虐待的な監督行動と正の関連があることが示されており、上司の状態がチームに波及するプロセスが研究から見えてきている。
  • ③ただし、これらは相関研究が中心であり「原因と結果」として断言できるものではなく、職場の種類・個人の特性によって関連の強さが異なる場合もあることに注意が必要。

■ 出典・注意事項

  • 坂田桐子(2024)「リーダーシップ,ストレス,及びwell-beingに関する研究の現状と課題」産業ストレス研究,31(2), 183. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jajsr/31/2/31_183/_pdf/-char/ja

  • 【注意事項】本論文は展望論文(既存研究のレビュー)であり、多くの知見は横断研究(ある時点での調査)に基づくため、リーダーシップがストレスを『引き起こす』という因果関係を直接示したものではありません。

  • 変革型リーダーシップの調整効果(組織コミットメントの強さ・職種による違いなど)は特定の集団でのみ確認されたものも含まれており、すべての職場に一般化できるわけではありません。

  • 変革型リーダーシップがリーダー自身のウェルビーイングを損なうかどうかについては、現時点の研究では明確な結論が出ていないと論文内で明示されています。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
リーダーシップ,ストレス,及びwell-beingに関する研究の現状と課題
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-11-12-1762984085/

はぴテクさんのウェルビーイング相談室 やってみようありがとうなんとかなる 職場・働く幸せ感情・レジリエンス

← 検索にもどる