はぴテク相談室:対人支援職のやりがい5因子(医療・福祉・教育)
最近、介護の仕事をしていてなんだかモチベーションが上がらないんです。毎日しんどくて、自分はこの仕事向いていないのかなって思い始めてて…
それは辛いですね。毎日頑張っているからこそ、ふとそういう気持ちになることってありますよね。実は最近、医療・福祉・教育などの対人支援職の方々の「やりがい」について大規模な研究が発表されたんです。約2000人を対象にした日本の研究なんですが、少し聞いてみますか?
はい、ぜひ聞きたいです。やりがいを感じられるようになりたくて。
この研究では、対人支援職のやりがいには大きく5つのパターンがあることがわかったんです。①利用者さんの成長や良い変化を感じること、②感謝されたり信頼されること、③職場でうまく連携できること、④自分が専門家として成長すること、⑤職場から認めてもらうこと、の5つです。どれか、今の仕事で感じられているものはありますか?
うーん…最近は正直あんまりないですね。利用者さんに感謝されることは時々あるかな、くらいで。
その「時々感謝される」って、実はすごく大事なポイントなんですよ。研究では、この5つの要素はお互いに関連し合っているとわかっています。一つを感じ始めると、他のやりがいにも連鎖しやすい、という構造になっているんです。感謝されることが入り口になって、他の要素に広がっていく可能性があるんですね。
へえ、連鎖するんですね。でも5つのうち4つが「他の人との関係」によるものって、介護みたいに人と関わる仕事には合っていそうな気がします。
鋭いですね!まさにその通りで、研究でも5つのうち4つが他者との関係性に関わるやりがいでした。対人支援職のやりがいって、人とのつながりの中に多く存在しているんです。ちなみに、職場の同僚との連携はどうですか?
それが…職場の人間関係がちょっとギクシャクしていて、それもモチベーション低下の原因かもしれないです。
なるほど。それは結構大きいかもしれません。研究では「円滑な協働」、つまりチームでうまく連携できることもやりがいの重要な要素の一つとして出ています。人間関係のもつれがやりがいを感じにくくしているとしたら、それは自然なことだと思いますよ。
そう言ってもらえると少し楽になります。あと、やりがいを感じるとどんないいことがあるんですか?
この研究では、やりがいのスコアが高い人ほど燃え尽き症候群になりにくく、仕事に対して前向きに取り組める状態(ワークエンゲージメント)が高く、仕事に意味を感じやすいという関連が見られました。さらに、仕事への満足感や「この仕事が自分に合っている」という感覚とも関連していたんです。
いいことばかりですね!じゃあやりがいをもっともっと感じるようにすれば完璧ですか?
実は一点、気をつけてほしいことがあって。同じ研究の中で、やりがいスコアが高い人は「仕事の負担感も少し増える」傾向も見られました。また別の研究では、やりがいが高すぎると燃え尽きにつながる可能性も指摘されています。やりがいは大切ですが、自分の気持ちを安定させたり、しっかり休んでリラックスする時間を持つことも同じくらい大切なんですよ。
やりがいを感じすぎるのも考えもの、ということですね。バランスが大事なんだ。ちなみにこのやりがいって、年齢とか性別で差はあるんですか?
研究によると、年齢や男女でのスコアの差はあまりなかったそうです。つまり、どんな年代の方でも、どんな性別でも、この5つのやりがいは共通して関係しているということですね。今日お話した内容を少し整理すると、今のあなたに当てはめてみると、感謝されるという入り口はすでにあるわけですから、そこを大切に受け取ってみることが一つの糸口になるかもしれませんね。
■ 今日のまとめ
- 対人支援職のやりがいには「利用者の成長」「感謝・信頼」「協働」「専門家としての成長」「職場からの評価」の5つの要素があり、互いに連鎖しやすいことがわかっています。
- やりがいを感じやすい人ほど燃え尽き症候群になりにくく、仕事への意味や満足感とも関連していましたが、一方で負担感が増す傾向も見られ、バランスが大切です。
- やりがいの5要素のうち4つは他者との関係性に関わるもので、小さな感謝や信頼を丁寧に受け取ることが、やりがい回復の入り口になりえます。
■ 出典・注意事項
- 近藤孝司(日本大学)「対人援助職版やりがい尺度の作成」心理学研究, 2025, 早期公開 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_96.24212/_html/-char/ja
- 【注意事項】本研究は日本の医療・福祉・教育分野の対人支援職約2000名を対象にした調査であり、他の職種や文化圏への一般化には限界があります。
- 【注意事項】やりがいスコアとバーンアウト・ワークエンゲージメント等との関連は相関関係であり、やりがいを高めることでこれらが改善されると因果的に断言できるものではありません。
- 【注意事項】「やりがいが高すぎるとバーンアウトにつながる」という知見は本研究とは別の研究に基づくものであり、詳細な条件については原著をご確認ください。
研究自体の紹介はこちら😊
対人支援職のやりがい5因子(医療・福祉・教育)
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-08-22-1755900602/