2025.07.23

政府は経済成長よりも幸福を優先すべきだ

というルクセンブルグ国立統計経済研究所(STATEC)さんの最新研究。

(Nature Human Behavior掲載)

ーー

ここ40年くらいの世界のデータから見るに、

GDP一人当たり成長率と、

主観的幸福度の変化

の関係を見ると、

先進国でも発展途上国でも、ほぼ関係が無かった。

(発展途上国でも、というのは意外でした。)

ーー

一方で、幸福度を高めていこうという施策は、

実際に幸福度を高める。

しかも、経済成長に向けた施策に比べて、圧倒的に費用がかからない。

(コミュニティベース活動、都市緑化)

ーー

なので、政府は、

経済成長よりも、幸福を目指すべきだよね😍

という話。

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※紹介記事

政府は経済成長よりも幸福を優先すべきだ

作成日 2025年7月16日

https://statistiques.public.lu/fr/actualites/2025/governements-should-prioritze-well-being-over-economic-growth.html

経済成長は公共の議論の中心となっているが、長期的には人々の幸福感を実際には向上させないことが証拠によって示されていると、STATECリサーチのフランチェスコ・サラチーノとケルシー・J・オコナーは、本日Nature Human Behavior誌に掲載された 論文「政府は経済成長よりも幸福を優先すべき」の中で説明している。 著者らはこの明らかな矛盾について説明し、人々が購買力と雇用を深く気に掛けており、これらは成長と関連しているものの、成長によって保証されているわけではないと述べている。実際、お金は不確実性に対して希望を買うことさえできる。問題は、成長がしばしば不平等であり、そのプラス効果が社会的な比較によって損なわれ、成長には汚染や不信感などの環境的および社会的コストが伴うことだ。

人々の生活を向上させるために、政策立案者は幸福に直接焦点を当てるべきです。これは、幸福に直接的かつプラスの影響を与える政策を選択することを意味します。他のアプローチと比較して、このアプローチは人々の日常生活に近い、望ましく共感可能な成果を重視します。そのため、より多くの国民の支持を得られる可能性があります。

幸福第一のパラダイムは、社会目標や環境目標とも整合しています。著者らは、世界中の様々な政策介入から得られたエビデンスに基づき、いくつかの具体的な事例を示しています。例えば、都市緑化プログラムは犯罪を顕著に減少させ、心身の健康状態を改善しました。

政策立案において幸福度を活用するアプローチは複数存在します。経済協力開発機構(OECD)は、更なる活用を促進するため、英国財務省による幸福度を用いた費用便益分析の実施方法に関するガイダンスなど、ベストプラクティスを共有するための知識交換プラットフォームを最近設立しました。

幸福を促進することで、幸福度の向上が社会的、環境的に持続可能な社会につながるという、自己強化的な好循環を開始することもできます。

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※論文(有償)

政府は経済成長よりも幸福を優先すべきだ

Governments should prioritize well-being over economic growth.

Nature Human Behavior (2025/7/16).

**Sarracino, F., J. O’Connor, K. **

https://www.nature.com/articles/s41562-025-02277-4

経済成長は公共の議論で重要なテーマとして取り上げられていますが、必ずしも人々の生活の持続的な向上につながりません。人々の生活を改善するためには、政策立案者は経済成長からウェルビーイングへの重点を移すべきです。私たちは、繁栄し、持続可能で包摂的な社会を育むための具体的な政策例を提供します。

投稿者によるコメント・補足(2件)
コメント 1

DCs:先進国
TCs:移行国(共産主義→資本主義)
ETCs:一部移行国(共産主義→市場のみ資本主義)
LDCs:発展途上国

コメント 2

この論文の基盤となる既存研究について、時系列の流れに沿って詳しく説明いたします。

1. イースタリン・パラドックス:研究の出発点

リチャード・イースタリンの先駆的発見(1970年代~)

基本的な発見

  • イースタリン・パラドックス:国内では富裕な人ほど幸せだが、国全体が豊かになっても国民全体の幸福度は向上しない現象
  • 専門用語解説:「パラドックス」とは一見矛盾するように見える現象のこと
    論文での引用

    「Recent research by the pioneering economist Easterlin indicates that even if there is a long-run impact of growth, it is negligible」
    出典

  • Easterlin, R. A. & O'Connor, K. J. (2022) in Handbook of Labor, Human Resources and Population Economics (Springer)
  • 図1のデータもこの研究から引用(67カ国、1981-2019年のデータ)

研究の意義

この発見は経済学の基本前提「経済成長→国民の幸福向上」に根本的な疑問を投げかけた

2. 主観的ウェルビーイング(SWB)研究の発展

概念の確立と測定方法

専門用語解説

  • 主観的ウェルビーイング(SWB):個人が自分の人生をどの程度満足しているかを自己評価する指標
  • 客観的指標(GDP、平均寿命など)に対する主観的指標

重要な発展

  • 世界価値観調査(World Values Survey)
  • 欧州価値観調査(European Values Study)
  • これらにより国際比較可能なデータ蓄積

現在の普及状況
論文によると:

  • EU全加盟国がSWBの公式統計を保有
  • 160カ国以上で一貫した測定実施

3. 理論的説明の発展

A. 社会比較理論

理論の概要

  • 人々は絶対的な豊かさより、他人との比較で満足度を判断
  • 自分の収入が増えても、周囲の収入も同様に増えれば満足度は向上しない
    経済成長への含意
  • 経済成長により全体の所得が上昇
  • しかし相対的地位は変化しない
  • 結果として幸福度の向上は相殺される

B. 適応理論

基本概念

  • ヘドニック適応:人々は環境の変化に慣れ、感情の基準線に戻る傾向
  • 所得増加による幸福感も時間とともに薄れる

C. 希望と不安の理論

重要な研究
Pleeging, E., Burger, M. & van Exel, J. (2021) Journal of Happiness Studies, 22, 2075–2102
発見

  • 希望を統計的に考慮すると、所得とSWBの関連が大幅に減少
  • 富裕層と貧困層のSWB格差が大幅に縮小
  • お金は「将来への不安に対する私的保険」として機能
    論文での引用

    「This is why the association between income and SWB decreases once hope is accounted for, and the SWB difference between rich and poor reduces considerably」

4. 雇用とウェルビーイング研究

雇用の多面的価値の発見

主要研究
Layard, R., Clark, A. & Senik, C. (2012) World Happiness Report (UN Sustainable Development Solutions Network)
雇用がSWBに与える影響

  1. 経済的機能:収入源
  2. 社会的機能:社会参加、帰属感
  3. 心理的機能:アイデンティティ形成、目的意識
  4. 構造的機能:日常生活への構造提供
    重要性

    「Employment gives structure to daily life, is a source of social interaction and participation in society, and fosters a sense of belonging」

5. 経済成長の負の側面に関する研究

A. 環境問題との関連

CO2排出と経済成長の関係

  • 論文の図2で示される「Our World in Data」のデータ分析
  • 1970年以降、CO2排出量とGDP成長の強い相関
  • 大きな景気後退期のみがCO2排出減少の時期

B. 社会的信頼への影響

重要研究
Bartolini, S. & Sarracino, F. (2024) Handbook of Labor, Human Resources and Population Economics (Springer)
発見

  • 不平等な経済成長は社会的信頼を減少させる
  • 社会的信頼の低下は犯罪増加、政策compliance低下などの連鎖反応を引き起こす
    専門用語解説
  • 社会的信頼(Social Trust):社会の成員同士が互いを信頼する程度
  • Policy Compliance:国民が政府の政策に従う度
論文紹介 なんとかなる 主観的幸福・幸福測定お金・経済と幸福地域・自治体ウェルビーイング

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