2025.06.23

はぴテク相談室:所得の格差を感じていることは、実際の格差よりも幸福度を低下させる。

相談者

最近、ニュースで格差の話題をよく見るんですが、なんか自分より稼いでいる人と比べてしまって、なんとなくモヤモヤするんですよね。実際に生活が苦しいわけじゃないのに、なんでこんなに気になるんだろうって思って…。

はぴテクさん
はぴテクさん

それ、すごくよくある感覚だと思います。実は最近、まさにそのモヤモヤに関する面白い研究が出たんですよ。ドイツのマンハイム大学のジョン先生たちが2025年に発表した研究なんですが、「実際の格差」よりも「格差をどう感じているか」の方が、幸福度との関係がずっと強いという結果が出たんです。

相談者

え、そうなんですか?実際の収入の差よりも、感じ方の方が大事ってことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです。この研究では41カ国のデータを分析しているんですが、ジニ係数っていう「実際の所得格差の大きさ」を表す数字と幸福度の間には、はっきりした関係が見られなかった。一方で、「自分の国の格差はどのくらいだと思うか」という認識の強さと幸福度の間には、相関係数0.84という非常に強い関係が見られたんです。

相談者

0.84って、すごく大きい数字ですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい、かなり大きいです。相関係数は最大で1なので、0.84というのは「かなり強い関係がある」と言える数値です。ただ、これはあくまで「関係がある」という話で、「格差を感じると必ず不幸になる」と断言できるものではないので、その点はご注意を。でも、感じ方がそれだけ幸福度と結びついているというのは、注目に値しますよね。

相談者

なるほど。でも、「格差を感じる」というのは、なんとなく「自分より稼いでいる人と比べてしまう」ことと同じですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

近い感覚だと思います。この研究では「認知された格差の大きさ」というのを見ているんですが、社会全体の収入の開きをどのくらい大きく感じているか、という点が焦点です。あなたが「あの人より稼いでいない」と比べる感覚も、その延長線上にあると言えそうです。ちなみに、この研究では「格差は不公平だ」という価値観とは切り離して分析していて、それでも「感じる格差の大きさ」が幸福度と関係していたんです。

相談者

「不公平だ」という気持ちとは別に、単純に「差が大きいと感じること」自体がしんどいってことなんですね。なぜそうなるんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究の背景にある理論では、いくつかの説が挙げられています。ひとつは「地位への不安」です。格差が大きく見えると、自分の社会的な立場がより意識されて、「取り残されるかも」という慢性的な心配が生まれやすい、という考え方です。もうひとつは「人への信頼が下がる」という説で、格差が大きいと感じると「あの人はずるして成功したんじゃないか」という疑念が生まれやすくなり、周りの人を信頼しにくくなる、というものです。

相談者

たしかに、格差をすごく感じているときって、なんか社会全体がギスギスして見える気がします。それと、この研究って一時点だけの話ですか?時間が経っても同じことが言えるんでしょうか。

はぴテクさん
はぴテクさん

鋭いご質問です!この研究では2009年から2019年の10年間の縦断データ、つまり同じ人々を時間をかって追った分析もしているんです。その結果、2009年の時点で格差を大きく感じていた人は、2019年の幸福度も低い傾向があったことが示されています。ただ、縦断研究でも因果関係を完全に証明するのは難しいので、「感じる格差が幸福度を下げた」と言い切れるわけではないことは覚えておいてください。

相談者

そうなんですね。じゃあ実験もやったって書いてありましたが、それはどんなものだったんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

302人を対象にした実験で、「格差が大きいと感じさせる情報」と「そうでない情報」をランダムに見せて、その後の幸福感を比べたんです。結果として、格差を大きく感じた人は幸福感の一部の側面で低下が見られました。「部分的に」とされているのは、すべての幸福感の指標で差が出たわけではないからです。でも、感じ方を少し変えると幸福感に影響が出る可能性を示している点は興味深いですよね。

相談者

なんか、実際にお金が増えるより、感じ方を変える方が幸せに近道な気もしてきました。でも、感じ方ってそう簡単に変えられるものなんでしょうか。

はぴテクさん
はぴテクさん

難しい問いですよね。この研究自体はその「どう変えるか」の方法まで踏み込んでいるわけではないんですが、ひとつ研究から言えることとして、実際の格差の大きさよりも「自分がどう認識しているか」の方が幸福度との関係が強い、というのは大きなヒントだと思います。たとえば、自分が何と比べているのか、比べる対象や見ている情報を意識してみることは、感じ方に影響する可能性があるかもしれません。

相談者

SNSとかで富裕層の生活ばかり見ていると、余計に格差を大きく感じてしまいそうですね。なんか、腑に落ちた気がします。今日はありがとうございました。

はぴテクさん
はぴテクさん

そうですね、何と比較するかが感じ方を大きく左右しますよね。この研究が示しているのは、格差の「数字」そのものより「自分がどう受け取っているか」の方が幸福度と密接に関係しているということ。生活が客観的に苦しいわけでないのにモヤモヤするのは、あなたの感覚がおかしいのではなく、それだけ認知の影響が大きいということでもあります。今日お話しした研究のポイント、少しでも参考になれば嬉しいです!

■ 今日のまとめ

  • 実際の所得格差(ジニ係数)よりも、格差をどのくらい大きく「感じているか」の方が、幸福度との相関が強いことが示された(r=0.84)。
  • 10年間の縦断データでも、格差を大きく感じていた人はその後の幸福度が低い傾向が見られた(ただし因果関係の断定は難しい)。
  • 実験では格差の感じ方を操作すると幸福感の一部に影響が出ており、認知(受け取り方)が幸福度に関係する可能性が示唆されている。

■ 出典・注意事項

  • 出典:Melvin John, Herbert Bless & Michaela Wänke (2025). 'What You See is What You Get: The Effect of Perceived Inequality on Subjective Well-Being.' Journal of Happiness Studies. https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-025-00905-4

  • 注意事項①:国レベルの分析(研究1)は相関研究であり、「格差を感じること」が幸福度を下げると因果的に断言できるものではありません。

  • 注意事項②:縦断研究(2009→2019年)も関係の方向性を示唆しますが、他の要因の影響を完全に排除できているわけではありません。

  • 注意事項③:実験(研究3)は因果関係の一部を示唆しますが、幸福感のすべての指標で効果が確認されたわけではなく、「部分的な裏付け」とされています。

  • 注意事項④:対象はドイツを中心とした41カ国のデータや欧州のサンプルが中心であり、文化や社会制度の異なる地域への一般化には限界があります。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
所得の格差を感じていることは、実際の格差よりも幸福度を低下させる。
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-06-23-1750703303/

はぴテクさんのウェルビーイング相談室 なんとかなるありのままに お金・経済と幸福主観的幸福・幸福測定

← 検索にもどる