はぴテク相談室:自分自身の道徳は幸せにつながるが、他者に道徳を求め出すと不幸せにもつながる。
最近、ネットで政治家や有名人の不正とか不道徳な行動を見るたびに、ムカムカしてずっとそのことが頭から離れなくて…。正直すごくしんどいんです。自分は道徳的に正しいことを大事にしているだけなのに、なんでこんなに疲れちゃうんでしょう?
それは本当につらいですね。実は、その「しんどさ」の正体を解き明かすヒントになる研究が2025年に発表されたんです。メルボルン大学のTaherさんたちのチームが、「道徳と幸せの関係」を詳しく調べました。その研究によると、「道徳的であること」には大きく2つの種類があることがわかったんです。
2種類?道徳って一つじゃないんですか?
そうなんです、面白いでしょう。一つ目は「道徳的アイデンティティ」といって、『自分自身が誠実でいよう、正直でいよう』という、いわば内向きの姿勢です。二つ目は「道徳的注意深さ」といって、『周りの人の不道徳な行動に気づいてしまう』という外向きの認知のはたらきです。この2つは、幸せへの影響がまったく逆方向だということがわかったんです。
逆方向?どういうことですか?
研究では、「自分が道徳的でありたい」という内向きの姿勢は、幸せと関連していました。なぜかというと、その姿勢が人との社会的なつながりを強める方向にはたらく可能性があるから、と分析されています。一方で、「他者の不道徳に気づいてしまう」外向きのはたらきは、反芻――つまり同じことを何度も頭の中で繰り返し考えてしまうこと――と関連していて、幸せ感の低下とも関連していたんです。
あ…それってまさに私のことです。政治家の発言とか、有名人のスキャンダルとか、見るたびに『なんであんなことするんだ』ってグルグル考えてしまって。
まさにそのグルグルが「反芻」です。研究では14日間の日記調査も行っていて、道徳的注意深さが高い日ほど反芻も増えやすいという個人内の変動も確認されています。つまり、他者の不道徳が目に入れば入るほど、頭の中で繰り返し考えてしまいやすくなる、という関連が見られたんですね。
じゃあ、道徳的に正しいことを気にするのって、やめた方がいいんですか?なんか、そうしたくないというか…。
そこは大事なポイントで、研究が言っているのは「道徳心を捨てましょう」ではありません。自分自身が誠実でいようとする姿勢はむしろ幸せと関連している、と示されています。しんどくなりやすいのは、「他者の行動の不道徳さを見張り続ける」方向に意識が向いているときなんですね。
なるほど…。自分がどうあるか、と、人の行動をジャッジするか、で全然違うんですね。
そうなんです、そこが核心です。ネットで有名人や政治家への道徳的な批判に熱中することは、まさに「他者の不道徳を何度も目にして、頭で繰り返す」状態になりやすい。研究の結果からすると、そういう状態と幸せ感の低下に関連が見られた、ということです。
確かに、批判のコメントとか見ていると、どんどん気分が暗くなりますよね。じゃあ、どっちの方向に意識を向けるといいんでしょう?
研究が示唆しているのは、「自分自身がどう在りたいか」という内向きの問いを大切にすることです。『自分は今日、誠実に過ごせたかな』『身近な人に親切にできたかな』という視点ですね。他者の行動を見張るのではなく、自分の行動や姿勢に意識を向けることが、幸せ感と関連している方向です。
なんか、腑に落ちました。他人の不正をずっと追いかけるより、自分がどう生きるかに集中した方が、自分のためにもなるんですね。
そうですね。それに、別の研究では「道徳的に生きると幸せになれる」と知ることで、人はより道徳的になろうとする、という関連も示されています。だから、道徳の素晴らしさを伝えること自体は良いことかもしれませんが、他者を批判する方向ではなく、『こういう生き方っていいよね』という形で伝える方が、自分にとっても周りにとっても良さそうですよね。ただ、これらはすべて相関の研究ですので、因果関係として断言はできない点は覚えておいてくださいね。
■ 今日のまとめ
- 道徳的であることには『自分がどうあるか(内向き)』と『他者の不道徳に気づく(外向き)』の2種類があり、幸せへの関連が逆方向になることが示されています
- 自分自身が誠実でいようとする姿勢は幸せ感と正の関連がある一方、他者の不道徳を繰り返し考える反芻は幸せ感の低下と関連していました
- ネットで他者の行動を批判し続けることは反芻を増やしやすく、意識を『自分がどう在りたいか』に向けることが幸せ感と関連している方向です
■ 出典・注意事項
- 出典:Taher, T., Goutallier, C., Kirkland, K., & Bastian, B. (2025). The (Un)Happy Moralist? Different Methods of Moral Engagement have Opposing Implications for Wellbeing. Journal of Happiness Studies. https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-025-00918-z
- 注意①:本研究は相関研究であり、因果関係を示すものではありません。『道徳的注意深さが幸せを下げる』と断言できるものではなく、関連が見られたという段階の知見です
- 注意②:研究1はオーストラリアの大学生149名、研究2は118名を対象にした予備的研究であり、対象が限定的です。結果の一般化には慎重さが必要です
- 注意③:著者ら自身も、これらの関係の複雑さと今後のさらなる研究の必要性を強調しています
研究自体の紹介はこちら😊
自分自身の道徳は幸せにつながるが、他者に道徳を求め出すと不幸せにもつながる。
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-06-17-1750185527/