はぴテク相談室:日本人は内なる平和が崩れやすい
最近、なんとなく心が落ち着かなくて…。仕事のこととか、将来のこととか考えると、ざわざわした感じが消えないんです。これって、私だけじゃないんですかね?
それは辛いですね。実は、あなたのその感覚、データでも見えてきているんですよ。ハーバード大学のティム・ロマス先生たちが2025年に発表した研究で、22カ国・約20万人を対象に「内なる平和」を調査したんです。「内なる平和」とは、自分の思考や感情と穏やかに調和できている状態のことです。日本はこの調査で22カ国中14位で、68%の人しか「よく・いつも内なる平和を感じる」と答えていなかったんです。
68%って、思ったより低いですね。他の国はどうなんですか?
一番高かったのは香港で89%!トルコは49%と最も低かったです。日本の68%は22カ国の中央値72%よりもやや低い水準でした。面白いのは、「内なる平和」はもともと仏教などの東洋的な概念と深く結びついているにもかかわらず、日本がトップではなかった点です。そして、日本の場合、特に「状況によって内なる平和が大きく揺れやすい」という特徴が浮かび上がってきたんですよ。
状況によって揺れやすい、というのはどういうことですか?
この研究では、学歴や雇用状況によって「内なる平和」がどれくらい変わるかを国ごとに調べています。日本では、学歴の違いで内なる平和に最大21%もの差が出ていました。これは調査した22カ国の中で最大の差なんです。南アフリカでは学歴による差がわずか1%だったのと比べると、日本がいかに際立っているかが分かりますよね。
え、学歴でそんなに変わるんですか。仕事はどうですか?私、今の仕事が不安定で…。
そこも重要なポイントです!雇用状況による差は日本でなんと34%で、これも調査国の中で最大でした。ケニアやスペインでは雇用状況による差が6%程度だったのと大きく違います。つまり、「働いているかどうか」「どんな仕事をしているか」によって、日本人の内なる平和はとても大きく影響を受けやすい、ということがデータで示されているんです。あなたの「仕事のことでざわざわする」という感覚は、日本特有の傾向と重なっているかもしれません。
なるほど…。じゃあ、年齢とかでも違いがあるんですか?私、40代なんですけど。
実は40代については、この研究でも特に言及されているんです。世界全体では、年齢を重ねるほど内なる平和が高まる傾向があります。18〜24歳では68%、80歳以上では86%という具合に。ところが日本では、40代が最も内なる平和が低い年代の一つとして名指しされているんです。就職氷河期やバブル崩壊後の時代を経験した世代と重なることも、背景として考えられそうですね。
それを聞いてなんか…少し「自分だけじゃないんだ」って思えてきました。でも、男女でも違いがあったりしますか?
ありますよ!これも日本の興味深い特徴で。世界全体では男性(74%)のほうが女性(72%)より内なる平和がわずかに高い傾向があります。でも日本は逆で、女性71%に対して男性は64%と、男性のほうが低いんです。日本の男性が仕事や社会的プレッシャーによって内なる平和を乱されやすい状況にある可能性を示唆するデータと言えるかもしれませんね。ただし、なぜそうなのかの「理由」はこの研究では断言されていません。
そうなんですね。じゃあ、内なる平和を高めるためのヒントって、この研究から何か得られますか?
研究では、宗教や信仰のコミュニティへの参加も内なる平和と関連していることが示されています。非参加者では68%、週1回以上参加している人では80%という差が見られました。「信仰」そのものというより、定期的に集まって心を落ち着ける場や時間を持つことが関係しているのかもしれません。また、退職者(78%)が失業・求職中の人(63%)より高いことから、「先が見えない不安定さ」が内なる平和を下げやすい可能性もデータは示しています。
なんか、自分の状況がデータで説明されていく感じがして、不思議と少し楽になってきました。「内なる平和が揺れやすい」のは、私の弱さじゃなくて、日本という環境の特徴でもあるんですね。
そうです!この研究は「あなたが弱い」のではなく、「日本という文脈では内なる平和が揺れやすい構造がある」ということを示しています。内なる平和という概念自体、仏教をはじめ東洋では2000年以上大切にされてきたものなんです。心がざわざわするのは自然なことで、それに気づいている時点で、もうすでに自分の内側に目を向けられているということでもありますよ。
ありがとうございます。データって冷たい感じがしていたけど、こうやって話してもらうと、なんか自分のことを理解するヒントになるんですね。
■ 今日のまとめ
- 日本人の「内なる平和」は22カ国中14位(68%)で、学歴(最大21%の差)や雇用状況(最大34%の差)によって特に大きく揺れやすいことがデータで示されています
- 日本では40代が最も内なる平和が低い年代の一つで、男女差も世界と逆(女性>男性)という独自の傾向があります
- 心がざわざわしやすいのは個人の弱さではなく、日本特有の社会的・文化的文脈と関連している可能性をこの研究は示しています
■ 出典・注意事項
- Tim Lomas et al.「Demographic Variation in Inner Peace Across 22 Countries: A Cross-National Analysis of the Global Flourishing Study」Journal of Happiness Studies, 2025年5月6日 https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-024-00822-y
- 【注意事項】本研究は横断的な調査データに基づく相関研究であり、学歴・雇用状況・性別・年齢と内なる平和の関係は「関連がある」ことを示すものであって、因果関係(原因と結果)を証明するものではありません
- 【注意事項】調査対象は22カ国・約20万人ですが、各国の標本が必ずしも全国民を代表しているとは限らず、結果の解釈には一定の限界があります
- 【注意事項】「内なる平和」の測定は単一の質問項目(自分の思考や感情と調和していると感じる頻度)に基づいており、概念の多面性を完全に捉えているとは言えない点にもご留意ください
研究自体の紹介はこちら😊
日本人は内なる平和が崩れやすい
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-05-13-1747172980/