はぴテク相談室:職場での暴言とウェルビーイングとパフォーマンス
最近、職場の上司がよく怒鳴ったり、きつい言葉を使うんです。直接言われることもあるし、同僚が怒鳴られているのを見ることも多くて…なんか仕事に集中できないし、気持ちも落ちています。これって気のせいじゃないですよね?
全然気のせいじゃないですよ。それ、研究でもしっかり裏付けられているんです。Christine PoratさんとAmir Erezさんの研究によると、職場で暴言や無礼な扱いを直接受けた人は、処理能力が61%、創造性が58%も低下することが示されています。気持ちが落ちるのも、集中できないのも、あなたの心と脳がきちんと反応しているということなんですよ。
61%も!それはすごい数字ですね…でも私だけじゃなくて、同僚が怒鳴られているのを見ているだけでもきつくて。それも影響あるんでしょうか?
はい、実は「見ているだけ」でも無関係じゃないんです。同じPorath&Erezの2009年の研究では、他の人への暴言を目撃しただけの人でも、処理能力が25%、創造性が45%低下するという結果が出ています。直接言われた場合より数字は低いですが、決して小さくない影響ですよね。
見ているだけでもそんなに…。じゃあ、チームへの影響って全体でどのくらいになるんでしょう?
研究者の試算がまさにそこを示していて、たとえば10人チームで誰か1人が暴言を受けたとします。当の本人は処理能力が60%低下、それを目撃した残り8人がそれぞれ25%低下すると、合計で「2.6人分」の処理能力がチームから失われる計算になります。チーム全体への打撃は想像以上に大きいんです。
2.6人分…それは職場全体にとっても大きな損失ですね。ちなみに、怒鳴っている上司本人はどうなんでしょう?本人はすっきりしているのかな、と思ったりして。
面白い疑問ですね。実はKimさんたちの2024年の研究によると、暴言を言った本人も、罪悪感などのネガティブな感情やストレス反応が増えることが分かっています。「すっきりしている」どころか、ウェルビーイングが下がるんです。ただ、翌日は少し反省して無礼な言動を控える、という行動の変化も見られたそうです。
言った本人も苦しくなるんですね、それは意外でした。あと、周りで見ている人の気持ちへの影響ももう少し聞かせてもらえますか?不安とか怒りとか、自分でも感じているので…
MinerさんとEischeidさん、MinerさんとCortinaさんの研究では、暴言や無礼な行為を目撃した人は、不安・怒り・意気消沈といったネガティブな感情が大きくなり、仕事への満足度や心理的安全性も著しく低下することが示されています。さらに、目撃する頻度が増えるほど「この職場を辞めたい」という気持ちや、組織への信頼の低下が進むという結果も出ています。
心理的安全性まで下がるんですね…。確かに最近、「何か言ったら怒鳴られるんじゃないか」って萎縮している自分がいます。他にも何か影響はあるんでしょうか?
はい、研究ではほかにも、暴言や無礼にさらされたり見たりすると、「誰かを助けよう」という向社会的な行動が減り、逆に攻撃性が増すことも分かっています。職場の雰囲気がどんどん険しくなっていくイメージですよね。受けた人・見た人の幸福度や仕事満足度が下がり、離職意向にもつながっていく。職場全体が悪い方向に引っ張られてしまうんです。
自分だけの問題じゃなかったんですね。でも、上司に直接「やめてほしい」と言える雰囲気でもなくて…。何かできることってありますか?
研究が示しているのは、まず「これは自分のせいじゃない、科学的に影響が出て当然のことだ」と理解すること自体が大事だということです。自分を責めなくていい。そのうえで、研究者たちは「こういったデメリットを職場全体で正しく知ること」が抑止につながると述べています。たとえばチームのミーティングなどで、こういったデータをさりげなく共有できる機会があれば、上司自身が「言った本人も損をしている」と気づくきっかけになるかもしれません。
なるほど、データとして伝えるというのは角が立ちにくいかもしれませんね。今日は「気のせいじゃなかった」と分かっただけでも少し楽になりました。ありがとうございます!
それは良かったです!あなたが感じていた影響は、きちんと研究で確認されているリアルなものです。「職場の暴言は、言われた人だけでなく、見た人も、そして言った本人も含めた全員のウェルビーイングとパフォーマンスを下げる」というのがこの研究の大事なメッセージです。自分の状態を客観的に見つめながら、無理せず過ごしてくださいね。
■ 今日のまとめ
- 職場で暴言を直接受けると処理能力が約61%、創造性が約58%低下することが研究で示されており、「気のせい」ではなく科学的に裏付けられた影響です。
- 暴言を『見ているだけ』の人でも処理能力25%・創造性45%の低下が見られ、目撃が増えるほど仕事満足度・心理的安全性・組織への信頼も低下します。
- 暴言は言った本人のウェルビーイングも下げ、職場全体で向社会的行動の減少・攻撃性の増加など悪循環を生みます。デメリットをデータとして正しく知ることが抑止の第一歩です。
■ 出典・注意事項
- 【出典①②】Christine L. Porath & Amir Erez (2007): 'Does Rudeness Really Matter? The Effects of Rudeness on Task Performance and Helpfulness' – Academy of Management Journal, 50(5), pp.1181-1197
- 【出典③】Christine L. Porath & Amir Erez (2009): 'Overlooked but Not Untouched: How Rudeness Reduces Onlookers' Performance on Routine and Creative Tasks' – Organizational Behavior and Human Decision Processes, 109(1), pp.29-44
- 【関連研究】Cortina et al. (2001), Khan, Elahi & Abid (2021), Miner & Eischeid (2012), Miner & Cortina (2016), Kim, Lanaj & Koopman (2024)
- 【注意事項】紹介した数値(処理能力61%低下など)は実験・調査研究から得られた結果であり、「暴言が原因で必ずこの数値だけ低下する」という因果関係を断定するものではありません。研究の対象集団や実験条件によって結果は異なる場合があります。また、女性への悪影響が大きいという知見など、対象集団の属性によっても効果の大きさが異なることが示されています。
研究自体の紹介はこちら😊
職場での暴言とウェルビーイングとパフォーマンス
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-04-20-1745186849/