はぴテク相談室:ヒンドゥー教における幸せの概念
最近、なんとなく毎日が楽しくなくて…。仕事もこなしてるし、特に大きな問題があるわけじゃないんですけど、なんか満たされない感じがするんです。何が足りないんだろうって。
そうなんですね。毎日ちゃんとやってるのに、どこかスッキリしない感じ、つらいですよね。実は、ヒンドゥー教の幸福論を心理学的に分析した研究があるんですが、その中に「あ、これかも」と思えるヒントがあって。少し一緒に考えてみませんか?
ヒンドゥー教ですか?なんか宗教っぽくて難しそうですけど…。
そうですよね、最初はちょっと遠く感じるかもしれません。でもこの研究では、ヒンドゥー教の考え方をポジティブ心理学のレンズで読み解いているので、すごく実用的なんです。まず最初に「スカ」と「ドゥカ」という考え方があります。スカが「良い状態・幸福」、ドゥカが「苦しみ」という意味で、まず自分が今どちらにいるかに気づくことから始まる、という考え方です。
今の私はどっちかって言うと…ドゥカに近いのかもしれないですね。苦しいというより、なんか満たされていない感じですが。
その「気づき」自体がとても大事なんです。この研究では、スカ(幸福な状態)の主要な決定要因のひとつとして「すべての人の幸福を願う気持ち」が挙げられているんですよ。自分だけじゃなく、まわりの人も含めた幸せを意識することが、自分自身の幸福感とも関わっているという視点です。
へえ…自分のことばかり考えすぎてたかもしれないです。でも、じゃあ何か行動を変えればいいんですかね?
そこで出てくるのが「シュレーヤス」と「プレーヤス」という二つの選択肢の考え方です。シュレーヤスは「本当に幸福を高める行動」、プレーヤスは「感覚的な快楽として見えるけど、実は罠になりうる行動」と説明されています。たとえば、疲れたからとりあえずSNSを長時間見る、みたいなのがプレーヤスのイメージに近いかもしれません。
あー、それめちゃくちゃ心当たりあります(笑)。じゃあシュレーヤスってどんな行動なんですか?
研究ではその具体例としてヨガや呼吸法なども挙げられています。たとえばヨガのポーズは、筋力や柔軟性の向上だけでなく、ストレスや不安、抑うつ感の軽減と関連していると報告されています。また、呼吸法(プラーナーヤーマ)も、ストレスや怒りの管理に取り入れられている実践として紹介されています。もちろん「絶対にこれをやれば幸せ」という因果関係が証明されているわけではなく、関連が示されている段階ですが。
なるほど。でも、そういう行動を続けていけたとして、その先に何があるんですかね?「満たされた」って感じになれるのかな。
その「先の状態」を、この研究では「サット・チット・アーナンダ」と呼んでいます。三つの言葉から成っていて、サットは「他者との調和のとれた見方や愛・所属感」、チットは「自分の思考・言葉・行動への責任感」、そしてアーナンダが「外部の出来事に左右されない喜びを保てる状態」を指しています。この三つが揃った状態を、幸福の最高のかたちとして位置づけているんです。
「外部の出来事に左右されない喜び」って、すごく理想的に聞こえます。でも正直、そんな境地に達するって難しそうで…。
そうですよね。いきなりそこを目指すんじゃなくて、この研究が示している流れとしては、まず「今の自分の状態に気づく(スカ・ドゥカ)」→「行動を選んでいく(シュレーヤスとプレーヤスを意識する)」→「だんだんとアーナンダに近づいていく」という段階があるイメージです。一足飛びに最高状態を目指すんじゃなくて、今の気づきを大切にするところから、というのがこの考え方の面白いところだと思います。
じゃあ、今日から何か始めるとしたら、何がいいですかね?
まず「気づき」の段階として、「今自分はどんな状態かな?」と一日一回立ち止まってみることが、この研究の枠組みでは第一歩になります。そして行動を選ぶときに、「これはSNSを見るとき一時的に気持ちいいけど、後で後悔しないかな?(プレーヤスかも)」「散歩に出るのは面倒だけど、やったあとは気分が違うな(シュレーヤスかも)」というふうに、自分なりに問いかけてみるのが一つのヒントになりそうです。研究はまだ発展途上の分野でもあるので、「正解」を求めすぎず、自分への観察を楽しむくらいの気持ちで試してみてもいいかもしれませんね。
■ 今日のまとめ
- 「スカ(幸福)」と「ドゥカ(苦)」の気づきから始め、今の自分の状態を観察することが幸福へのスタート地点という考え方があります。
- 「シュレーヤス(本当に幸福を高める行動)」と「プレーヤス(感覚的快楽に見えて罠になりうる行動)」を意識して日々の選択を見直すことが、次のステップとして示されています。
- 最終的な高い幸福状態「サット・チット・アーナンダ」は、他者との調和・自己責任感・外部に左右されない喜びの三つで構成されており、段階的に近づいていくものとして位置づけられています。
■ 出典・注意事項
- 出典:Salagame, K. K. K. (2023). Understanding Hinduism from a Psychological Lens. In Religious and Spiritual Practices in India (2023/8/1). ResearchGate. https://www.researchgate.net/publication/372797904_Understanding_Hinduism_from_a_Psychological_Lens
- 注意事項①:本論文は「論説(概念的章)」であり、実験や縦断調査による因果関係の証明ではありません。ヒンドゥー教の概念と心理学的知見の対応関係を示したものです。
- 注意事項②:著者自身も「ヒンドゥー教内のあまり研究されていない概念と主流心理学との関連を調べるためのさらなる研究が必要」と結論づけており、現時点では仮説・提案の段階の部分が多く含まれます。
- 注意事項③:研究の対象・文脈は主にインドのヒンドゥー教の文化的背景に基づいており、他の文化圏や集団にそのまま当てはまるかどうかは未検証です。
研究自体の紹介はこちら😊
ヒンドゥー教における幸せの概念
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-04-06-1743905588/