2025.03.18

はぴテク相談室:「ウェルビーイング」の解剖 : 哲学的考察

相談者

最近「ウェルビーイング」って言葉をよく聞くんですが、正直よくわからなくて…。幸せになりたいとは思うんですけど、そもそも「幸せってなに?」ってなってしまって、何から考えればいいのか途方に暮れています。

はぴテクさん
はぴテクさん

それ、すごく大事な疑問だと思いますよ!実は哲学の世界でも「ウェルビーイング(幸福・よく生きること)って何だろう?」という問いは長年議論されてきたんです。武蔵野大学の一ノ瀬正樹先生の論文でも、この問いをとても丁寧に解きほぐしています。まず「ウェルビーイング」という言葉、英語でwell-beingと書くんですが、日本語の「幸福」とは少しニュアンスが違います。「よく(well)存在している(being)状態」という感じで、人生全体がうまくいっている状態を指す、と考えるとイメージしやすいですよ。

相談者

なるほど、「幸せ」よりも広い感じなんですね。でも「人生がうまくいっている」って、人によって全然違いますよね?お金がある人もいるし、友達がたくさんいることが大事な人もいるし…。

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそこが哲学的な核心なんです!一ノ瀬先生の論文では、ウェルビーイングを大きく分けると「主観的なもの」と「客観的なもの」があると整理されています。主観的なウェルビーイングは「自分が幸せだと感じているかどうか」、つまり本人の内側の感覚が基準です。一方、客観的なウェルビーイングは「健康である」「知識がある」「友人関係がある」といった、本人の気持ちとは独立して外から評価できる要素のことです。どちらが「本当の幸せ」なのかは、まだ結論が出ていない、深い問いなんです。

相談者

面白いですね!でも「自分が幸せだと思えばいい」だけでは、なんか物足りない気もします。たとえば、毎日ゲームだけして満足している人は本当に幸せなのかな、って。

はぴテクさん
はぴテクさん

鋭い!それがまさに論文で紹介されている「経験機械」というSF的な思考実験につながります。哲学者ロバート・ノージックが考えたもので、「どんな快楽や満足感も与えてくれる機械に繋がれた人生と、現実の人生、どちらを選ぶか?」という問いです。多くの人は現実の人生を選ぶと言われています。これは、「気持ちよく感じること(快楽・満足)」だけがウェルビーイングではないかもしれない、ということを示唆しているんです。

相談者

確かに!機械に繋がれた幸せは、なんか違う気がします。じゃあ、ウェルビーイングって結局どんな種類があるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

論文では8つのタイプが紹介されています。たとえば「快楽・苦痛の不在」「欲求の充足」「客観的な善いもの(知識・友情・健康など)」といった分類です。どれか一つが正解というわけではなく、それぞれに長所と短所があって、研究者の間でも今も論争が続いています。つまり「幸せの正解は一つじゃない」というのが哲学の正直な答えなんですよね。

相談者

なんか、答えが出なくてモヤモヤする気もしますが…(笑)。でもその論争って具体的にどんな感じなんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

例えばこんなジレンマです。ある人が「自分は幸せだ」と心から感じているけれど、実は重要な事実を知らないまま(例:パートナーが浮気しているなど)だとしたら、その人はウェルビーイングが高いと言えるのか?という問いです。「主観的に幸せ」と「客観的に良い状態」がズレるとき、どちらを優先すべきかという論争ですね。これは「ウェルビーイングをめぐる論争」として論文でも丁寧に扱われています。

相談者

うわ、それは確かに難しい…。知らない方が幸せってこともあるけど、でもなんかすっきりしないですよね。あと「イルビーイング」って言葉も気になりました。

はぴテクさん
はぴテクさん

いい気づきですね!イルビーイング(ill-being)は、ウェルビーイングの反対、つまり「悪くある状態・不幸な状態」のことです。一ノ瀬先生の論文では、ウェルビーイングを考えるためにはイルビーイングとセットで考えることが重要だと指摘しています。幸せとは何かを考えるとき、不幸や苦しみとは何かを同時に考えることで、より立体的に理解できるわけです。

相談者

なるほど、幸せだけ追いかけるんじゃなくて、不幸のことも理解することが大事なんですね。あと「社会のウェルビーイング」という視点もあるんですか?個人だけじゃなくて?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです!論文では個人のウェルビーイングだけでなく、「社会のウェルビーイング」という概念も扱われています。個人が幸福であっても、社会全体として不公平や苦しみがあれば、それはウェルビーイングが高いとは言えないという考え方です。「自分だけよければいい」ではなく、社会のあり方とのつながりの中で幸福を捉えようとしているんですよね。これは現代の福祉政策やまちづくりなどにもつながる視点です。

相談者

なんか、「ウェルビーイング」って思ってたより深くて哲学的なんですね…。難しいけど、自分なりに「何が大切か」を考え続けることが大事なのかな、と思えてきました。

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそれが一番大切なことだと思います!哲学的考察の面白いところは、「正解を出す」ことよりも、「問い続けること」に価値があるところです。「自分にとって何が本当に大切か」「どんな状態が自分にとってよく生きていることか」を考え続けること自体が、ウェルビーイングへの歩みだと言えるかもしれません。一ノ瀬先生の論文も、答えを押しつけるのではなく、一緒に考えるための地図を示してくれている、そんな論文です。ぜひ自分なりの「幸せの地図」を描いてみてくださいね。

■ 今日のまとめ

  • ウェルビーイングには「主観的(自分が感じる幸せ)」と「客観的(外から見た良い状態)」の2つの側面があり、どちらが本質かは今も哲学的議論の途中です。
  • 「経験機械」の思考実験が示すように、気持ちよさや満足感だけがウェルビーイングではない可能性があり、8つのタイプに分類されるほど多様な考え方が存在します。
  • ウェルビーイングはイルビーイング(不幸な状態)とセットで考えること、また個人だけでなく社会全体の視点も含めて捉えることが重要とされています。

■ 出典・注意事項

  • 一ノ瀬 正樹「『ウェルビーイング』の解剖:哲学的考察(1)」武蔵野大学人間科学研究所紀要, 2025年3月14日. https://mu.repo.nii.ac.jp/record/2000533/files/humansciences14_03.pdf

  • 【注意事項】本論文は哲学的・概念的考察であり、実験や調査による因果関係の検証ではありません。ウェルビーイングの定義・分類については研究者間で今も議論が続いており、唯一の正解が示されているわけではありません。また、論文で紹介されている思考実験(経験機械など)はあくまで概念整理のためのツールであり、現実の行動指針を直接示すものではありません。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
「ウェルビーイング」の解剖 : 哲学的考察
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-03-18-1742338545/

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