2025.01.29

はぴテク相談室:戦時中の幸福度-イスラエルでの研究-

相談者

はぴテクさん、最近すごく仕事が辛くて…。最初は「この仕事で世の中を良くしたい!」って気持ちで頑張っていたんですが、なかなか思うような結果が出なくて、だんだんやる気もなくなってきたんです。それに、なんか最近、職場の同僚の愚痴とかにも乗っかってしまうようになって、自分がイヤになっています。

はぴテクさん
はぴテクさん

それは辛いですね。その気持ち、実はとても多くの人が経験することなんです。じつに興味深い研究があって、南アフリカでサイを密猟から守るレンジャーさんたちを長期間観察した研究なんですが…聞いてもらえますか?

相談者

サイのレンジャーさん?なんか意外なところから来ましたね(笑)。でも気になります、聞かせてください。

はぴテクさん
はぴテクさん

このレンジャーさんたち、もともとは自然を守る森林警備員だったんですが、サイの密猟が深刻になって、軍隊みたいな戦う組織に変わることになったんです。最初はみんな「サイを守るヒーローになるぞ!」ってすごく希望に満ちていた。でも密猟はなかなか止まらない…。そうするうちに、少しずつ変化が起きていったんです。

相談者

どんな変化が起きたんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究では3つの変化のパターンが見えてきました。①「二極化」:密猟者や自分たちを批判する人を、絶対的な敵として見るようになる。②「正常化」:苦しいこと、辛いことを「戦士なんだから当たり前」と受け入れてしまう。③「シニカルな対処」:皮肉や冷めた冗談で現実に対処するようになる。…どれか、心当たりありませんか?

相談者

あ…全部ある気がします。問題のある人を「あの人はダメだ」って決めつけたり、長時間働くのを「仕事ってそういうもんだよね」って思うようになったり、同僚と愚痴を言い合ったり…。でもそれって、どうしてそうなっちゃうんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究によると、これは「大きな夢と、それに対する繰り返しの挫折」が組み合わさることで起きやすいようです。つまり、最初の志が大きければ大きいほど、現実とのギャップが辛い。そのギャップに適応しようとして、心が無意識にこういう方向に変わっていく…と研究者たちは分析しています。あなたが最初にすごく情熱を持っていたからこそ、起きやすいことでもあるんですよ。

相談者

なるほど…。じゃあこうなったら、もう回復できないんでしょうか。なんか自分が変わってしまったようで怖いです。

はぴテクさん
はぴテクさん

研究自体は「こうすれば回復できる」という方法まで示してはいないのですが、この変化のメカニズムを「知る」こと自体がまず大事な一歩だと思います。あと、別のイスラエルでの大規模研究が、辛い状況を乗り越えるヒントを教えてくれています。聞きますか?

相談者

はい、ぜひ聞きたいです!

はぴテクさん
はぴテクさん

イスラエルで戦争が起きた前後に、同じ1,189人を追跡調査した研究です。戦争中はもちろん幸福度が大きく下がった。でも注目したいのは、戦争前から特定のことに力を入れていた人は、戦中も幸福度があまり下がらなかったという結果です。その特定のこととは、「仕事そのものへの取り組み」「友人関係」「健康」「宗教性」の4つでした。

相談者

宗教性って、信仰を持っていないとダメってことですか?私はあまり宗教に馴染みがなくて…。

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究はイスラエルという特定の文化・社会で行われたものなので、「宗教性」の効果をそのまま別の文化に当てはめるには注意が必要です。ただ、宗教が持つ「意味のつながり」「共同体感覚」「信念の軸」といった要素が、あらゆる面の幸福度と関連していたことは興味深いですよね。宗教でなくても、自分の中に「信じられる何か・軸」を持つことと近いかもしれません。

相談者

なるほど。仕事への取り組みと友人関係と健康ならできそうです。でも今は仕事が辛くて、友達に会う気力もなくて…どこから始めればいいでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

レンジャーの研究の中でヒントになる視点があって、「小さな成功体験を積む」「自分の気持ちを誰かと話す(解決しなくていい、ただ話すだけでも)」「複雑な現実をそのまま受け入れる」ことが大切だと研究者は示唆しています。まず友人に「最近しんどい」と話してみるだけでも、友人関係への取り組みになりますよ。健康も、今日いつもより10分多く寝るとか、小さなことで十分。一気に変えなくていいんです。

相談者

そっか。完璧にやろうとしていたかもしれないです。小さなことからやってみます。今日話してすごく楽になりました。自分がおかしくなったわけじゃなくて、そういうメカニズムがあるんだって分かっただけで、ちょっと気持ちが楽です。

■ 今日のまとめ

  • 「希望→挫折→シニカル化」という変化は、南アフリカのレンジャー研究で示された自己強化メカニズムによるもので、大きな志を持つ人ほど起きやすいと分析されています。
  • イスラエルの追跡調査では、戦前から「仕事」「友人関係」「健康」「宗教性」に取り組んでいた人は、極限状態でも幸福度の低下が小さかったという関連が示されています(因果関係ではなく相関です)。
  • 今からできることは「小さな成功体験を積む」「気持ちを誰かに話す」「複雑な現実をそのまま受け入れる」という視点で、仕事・友人・健康の領域に少しずつ関わっていくことです。

■ 出典・注意事項

  • 【研究1】Lahav, E. et al. (2025). 'The Longitudinal Effect of Pre-war Investments in Hedonic Capital on Wartime Well-Being.' Journal of Happiness Studies. Published 2025/1/29. / イスラエル在住の27〜67歳1,189人を対象にした戦前・戦中の縦断調査。特定の文化・社会背景(イスラエル)での結果であり、他の文化圏への一般化には注意が必要。宗教性の効果は文化的文脈に依存する可能性があります。相関研究であり、各要因が幸福度を直接高める因果関係が示されたわけではありません。

  • 【研究2】Bota, L. et al. (2025). ケープタウン大学による南アフリカのサイ保護レンジャーを対象とした行動観察研究。経営学ジャーナル掲載。/ 特定の組織・文化・職種(野生動物保護レンジャー)を対象とした質的観察研究であり、結果を他の職種や状況に直接当てはめる際には慎重さが必要です。観察・記述研究であり、因果関係の証明ではありません。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
戦時中の幸福度-イスラエルでの研究-
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-01-29-1738188002/

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