2025.01.29

戦時中の幸福度-イスラエルでの研究-

イスラエルのオープン大学のエヤル・ラハヴ先生らの最新研究。

イスラエルでの戦争において、

①主観的ウェルビーイングはどう変化したか。

②戦前に努力をして心を鍛えていた人は、戦中にあっても幸福度があまり下がらないのでは?

** であれば、何を努力していると、幸福度が下がらないのだろう?**

という研究。

キツい話ですし、センシティブではあるんですが、大事な知見。

ちなみに、ワールドハピネスレポートでは、イスラエルは世界5位という。

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1,189人への戦前、戦後の同一人物への調査。27-67歳。

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①主観的ウェルビーイングはどう変化したか。

については、

人生の評価:9.6%低下

人生の意味:2.8%低下

ポジティブ感情:25.5%低下

ネガティブ感情:85.9%増加

と、大幅に低下していた。。。

が、思っていたよりは低下していないような気もします。

ワールドハピネスレポートでは今回の研究で言う"人生の評価"でランキングを出しているんですが、

2021-2023年のイスラエルで7.341。

日本は6.060なので、イスラエルが9.6%下がっても日本より高いですね。。

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②戦前に努力をして心を鍛えていた人は、戦中にあっても幸福度があまり下がらないのでは?

** であれば、何を努力していると、幸福度が下がらないのだろう?**

結果としては、

戦前に努力している人は、戦中も幸せがあまり落ちなかった。

仕事、友人関係、健康、宗教に対して戦前に努力していると、戦中の幸せが高まった(あんまり落ちなかった)。

中でも、宗教は効果が大きかった。

コミュニティへの努力は、むしろ幸福度をより下げた。(コミュニティへの被害で心を痛めるからか?)

ワークライフバランス余暇活動への努力は、関係なかった。

とのことで、

戦争までは起きないですが、辛い出来事でもへこたれない為には、

仕事、友人関係、健康、宗教に努力しておくことは、大事そうです。

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<詳細>

・仕事への努力は意味とポジティブ感情に良い影響

・コミュニティ活動への努力はネガティブ感情に影響

・友人関係への努力はポジティブ感情を高める

・健康への努力は人生の意味に良い影響

・宗教性の高さは全てのSWB要素にプラスの影響

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戦前の快楽資本への投資が戦時中の幸福に及ぼした長期的影響

The Longitudinal Effect of Pre-war Investments in Hedonic Capital on Wartime Well-Being

2025/1/29,Journal of Happiness Studies

戦争前と戦争中の人々の長期的な感情的反応に関する理解にはギャップがある。この論文では、イスラエルとハマスの間の鉄剣戦争が、恐怖や不安を含むイスラエル人の主観的幸福の尺度に与えた影響を分析している。

2つの疑問が検討されている:

(1)変動する傾向にある感情的要素(否定的感情と肯定的感情)と、より安定した要素(全体的な人生評価と人生の意味)は、戦争によってどのように影響を受けるのか?

(2)戦時中の人々の主観的幸福を守るものは何か?

戦争前と戦争中に主観的幸福を報告した1189人の独自の長期データが使用されている。参加者は、健康、友人、コミュニティ、活動的な余暇、仕事自体の価値、ワークライフバランスという6つの生活領域への取り組みを含む、戦前の快楽資本への投資と、宗教心のレベルを報告した。結果では、両方の疑問が解決されている。

まず、主観的幸福のすべての要素が、戦前の尺度と比較して戦中大幅に悪化した。人生の評価は 9.6% 減少し、意味は 2.8% 減少し、肯定的な感情は 25.5% 減少し、否定的な感情は 85.9% 増加しました。

第二に、回帰分析により、ワーク ライフ バランスとアクティブな余暇の改善に割り当てられたものを除き、調査された戦前のすべての取り組みは、戦時中の主観的幸福の少なくとも 1 つの要素に長期的な影響を及ぼしていることが実証されています。

仕事での努力は、意味 ( p < 0.01) と肯定的な感情 ( p < 0.05) の両方に有意に影響します。

コミュニティ内での努力は、否定的な感情 ( p < 0.01) に有意に影響します。

友情における努力は肯定的な感情 ( p < 0.01)に有意に影響し、

健康における努力は意味 ( p < 0.05) に有意に影響します。

結果は、満たされていない期待、社会人口統計、および客観的な戦争関連の制御要因に対して堅牢です。戦前の宗教心は戦時中の主観的幸福感のあらゆる要素に長期的影響を及ぼしており、この結果は差分の差分分析でも確認された。

希望に満ちあふれた働く人が、心折れて挫折するまでーサイを守るレンジャーさんでの調査ー

ケープタウン大学のリンディ・ボタ先生らの最新論文。経営学ジャーナルより。

ズバりウェルビーイングの研究ではないんですが、職場のウェルビーイングを考える上でも大きな示唆があります。

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アフリカのサイを守るレンジャーさんの行動観察研究。

元々、自然を守る森林警備員さん達だったのですが、

サイの密漁が大きな問題となり、

それを防ぐためレンジャーさんたちは軍隊のように戦う組織に変わることになりました。

しかし、その過程で、

初期は、「希望に満ちたヒーロー」として、活気に満ちていたのですが、

なかなか密漁を止めることが出来ず、「諦めの気持ちを持ったシニカルな戦士」になっていってしまったよ。

という話。

その過程では、大きな夢とそれに対する挫折で、自己強化メカニズムが働き、

・二極化(分極化):密猟者や批判者への対立的なアイデンティティ形成

・正常化:苦難や犠牲を戦士のアイデンティティの一部として受容

・シニカルな対処:苦難や犠牲を戦士のアイデンティティの一部として受容

していってしまったよ。

とのこと。

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うーん、示唆される事が多く、実に興味深いです。

個人的には、大きな夢や目標を持ってついた職業の中で、

厳しさや無力感を味わい、心が折れていく。

特に教師や医療関係者で見られる現象に似ているなぁと思いました。

(こうなると、かなり幸福度も低く。回復には、ちゃんと対処しても時間がかかります。)

辛い状況が続くと、それに適用するようにアイデンティティが形成されていってしまう。

今回のレンジャーさんと似たような現象が起きている気がします。

・二極化:問題のある生徒/そうでない生徒とか、敵味方とか。

・正常化:長時間労働や精神的疲労を、仕事の一部として受容

・シニカルな対処:皮肉やブラックユーモアの発達。陰口とかにも繋がりますね。

バーンアウトの3条件にも似ていますね。

①情緒的消耗(疲れ切る)、②脱人格化(感情を捨て機械的になる、周りも機械的に扱う)、③達成感の低下(無力感、無気力感)

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こうなる前に、↓あたりが重要だなぁ〜と思います。(個人的に。)

・小さな成功体験と、成功体験の称賛

・対話、自分の心の中を話し合う。解決しなくとも良い。

・複雑な環境の受容。

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■AIサマリー(高校生にも分かるように。)

この研究は、アフリカのサイを守る「レンジャー」たちの変化について調べたものです。

最初、レンジャーたちは自然を守る ranger(森林警備員)として働いていました。でも2012年に、サイの密猟(違法な狩り)が大きな問題になり、レンジャーたちは軍隊のような戦う組織に変わることになりました。

当初、レンジャーたちは「密猟者と戦って、サイを守るヒーロー」として、希望を持って新しい役割に取り組みました。

しかし、いくら頑張っても密猟は止まらず、レンジャーたちは徐々に変化していきました:

  • 密猟者を「絶対的な敵」と考えるようになった

  • 苦しいことを「当たり前」と受け入れるようになった

  • 冗談や皮肉で現状に対処するようになった

つまり、「希望に満ちたヒーロー」から「諦めの気持ちを持った戦士」に変わっていったのです。

この研究は、組織が一度決めた方法がうまくいかなくても、なかなかその方法を変えられなくなることがあるという教訓を示しています。これは環境保護だけでなく、様々な社会問題の解決にも当てはまる重要な発見です。

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■AIサマリー

2025年に発表されたこの研究論文は、

南アフリカの野生動物保護区でレンジャーたちが、サイ密猟と戦う中で「希望に満ちたヒーロー」から「シニカルな殉教者」へと変容していく過程を分析しています。

主な発見:

  1. 2012年、保護区は密猟対策として軍事的アプローチを採用し、レンジャーたちに戦士としてのアイデンティティを付与

  2. 当初レンジャーたちは希望と楽観性を持ってこの新しい役割を受け入れた

  3. しかし、密猟阻止に失敗し続けたにもかかわらず、以下の3つの自己強化メカニズムにより軍事的アプローチへの執着が続いた:

  • 二極化:密猟者や批判者への対立的なアイデンティティ形成

  • 正常化:苦難や犠牲を戦士アイデンティティの一部として受容

  • シニカルな対処:失敗に対してダークユーモアと運命論で対応

この研究は、組織が複雑な危機に直面した際、アイデンティティ形成の経路依存性により不適応な対応に陥る可能性を示しています。特に、単純な解決策が通用しない「グランドチャレンジ」と呼ばれる複雑な社会問題に取り組む組織に当てはまることを指摘しています。

研究は5年間のエスノグラフィー調査(2015-2019年)に基づき、インタビュー、観察、文書分析を通じて行われました。

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希望に満ちた英雄から冷笑的な殉教者へ:アイデンティティワークと不適応論理による経路依存的同一化

From Hopeful Heroes to Cynical Martyrs: Identity Work and the Path-Dependent Identification with Maladaptive Logics

2025/1/2,Journal of Management Studies

Lindie Botha, Ralph Hamann

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/joms.13173

学者たちは長い間、制度的論理とアイデンティティの星座の持続と変化の両方に注目してきたが、明らかな不適応性やその結果生じる感情的激動にもかかわらず、組織のメンバーが論理に固執する理由と方法についてはあまりわかっていない。サイの密猟に対する自然保護団体の準軍事作戦の5年間の民族誌に基づいて、私たちはプロセスモデルを導入し、危機によって引き起こされた新しい論理の採用とそれに伴うアイデンティティ作業が、希望に満ちた英雄主義を冷笑的な殉教と不適応な論理への執拗な関与に傾かせる経路依存的効果をもたらし、組織に悪影響を及ぼす可能性があることを示す。私たちは、この経路依存性の自己強化メカニズムとして機能するアイデンティティ作業の3つの形式、すなわち分極化、正常化、および冷笑的対処を特定した。制度、アイデンティティ作業、識別、経路依存性に関する研究の交差点を詳しく説明し、当初は高く評価されていたアイデンティティが、危機に直面した組織の硬直性に寄与する経路依存のメカニズムによって、より暗く機能不全のバージョンに変化する仕組みを説明します。

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