はぴテク相談室:地理学的な都市居住者の幸せ
最近、引っ越しを考えているんですが、どんな街に住むと幸せになれるんでしょうか?なんか漠然とした悩みなんですけど…
いい悩みですね!実は「住む街と幸せの関係」を科学的に調べた研究があるんです。仙台近辺にお住まいの約1,700人を対象にした調査で、「あなたは幸せですか?」という質問への回答と、住んでいる街の環境との関係を詳しく分析したものです。引っ越し先を考えるヒントになるかもしれませんよ。
へえ、面白そうです!街のどんな要素が関係していたんですか?
この研究で分かったのは、「住民が主観的に感じる3つのこと」が幸福感に直接つながっていたということです。それは①近所の利便性(買い物や移動のしやすさ)、②安全性(治安や安心感)、③コミュニティ意識(地域のつながりや一体感)の3つです。
なるほど。でも「利便性」とか「安全性」って、客観的な数字じゃなくて、感じ方の問題ってことですか?
まさにそこがこの研究の面白いポイントなんです!実際の人口密度や施設の数などの「客観的な数字」だけじゃなくて、住民が「便利だな」「安全だな」「つながりがあるな」と感じるかどうか、という認知の部分が、幸福感に直接影響していたんです。客観的な環境は、その感じ方を通して間接的に幸福感に影響している、という構造が見えてきたんですよ。
じゃあ、実際にコンビニが多い街とか、人口密度が高い都会的な街は幸せになれるってわけじゃないんですね?
そうなんです。「都市のコンパクトさ」(人口密度が高い・施設が多い・道が整っているなど)は、「利便性の感覚」を高めることで幸福感につながる経路はあったんですが、同時に「安全性の感覚」を下げる面もあって、全体としての効果は統計的に確認できなかったんです。一概に「都会なら幸せ」とは言えない、ということですね。
じゃあ、逆に注意したほうがいい街の特徴って何かありましたか?
はい。研究では「地理的剥奪」という指標も調べています。これは近隣の社会経済的な困窮度、つまり貧困や失業率が高いエリアかどうかを示すものです。この指標が高い地域では、利便性・安全性・コミュニティ意識のすべてが下がり、その結果として幸福感も下がる傾向が確認されました。街の社会経済的な状況は、住民の幸せと無関係ではなさそうです。
コミュニティ意識って、具体的にはどういうことですか?街を選ぶ前から意識できることなのかな?
コミュニティ意識とは、「この地域に仲間がいる」「地域のことが気になる」「一員だと感じる」といった感覚のことです。この研究からは、コミュニティ意識が幸福感と関連していることが示されています。街を選んだ後に、近所の人と関わったり、地域のイベントに参加したり、ボランティア活動をしたりすることが、このコミュニティ意識を育てる行動につながるかもしれませんね。
引っ越し先を選ぶときは、利便性だけじゃなくてコミュニティのことも気にしてみます。でも、この研究は仙台限定ですよね?他の地域でも同じことが言えますか?
鋭い質問です!この研究は仙台都市圏が対象なので、他の地域や国でも全く同じ結果になるかは分かりません。また、インターネット調査なので、ネットを使わない方や特定の属性の方が回答に含まれていない可能性もあります。ただ、「利便性・安全性・コミュニティ意識が幸福感に関連する」というメカニズム自体は、他の研究でも似た方向性が見られることが多いので、参考にする価値はありそうですよ。
まとめると、引っ越し先を選ぶときと、引っ越した後に何を意識すればいいんでしょう?
この研究から言えることを整理すると、①街の客観的なスペックだけでなく「自分がそこで便利・安全・つながりがあると感じられそうか」を想像してみること、②街の社会経済的な状況(困窮度)も幸福感と関連している可能性がある点を頭に入れること、③引っ越し後は地域イベントや近所づきあい、ボランティアなどを通してコミュニティ意識を育てていくことが、幸福感と関連している可能性があることですね。一気に全部は難しくても、できることから試してみてください!
■ 今日のまとめ
- 住んでいる街への「利便性・安全性・コミュニティ意識」という3つの感覚が、幸福感と直接的に関連していた
- 人口密度や施設数などの客観的な都市環境は、これら3つの感覚を通して間接的に幸福感と関連しており、「都会なら幸せ」とは一概に言えない
- 近隣の社会経済的な困窮度(地理的剥奪)は、3つの感覚をすべて下げる方向で幸福感と関連していた
■ 出典・注意事項
- 出典:梅田ほか「都市居住者の主観的幸福感に関連する近隣の客観的・認知的環境要因の分析」季刊地理学 76巻3号、2024年10月、https://www.jstage.jst.go.jp/article/tga/76/3/76_106/_pdf/-char/ja
- 注意①:本研究は相関関係の分析であり、特定の環境が幸福感を直接「引き起こす」因果関係を証明したものではありません
- 注意②:対象は仙台都市圏のインターネット調査回答者(2021年、有効回答1,731票)であり、他の地域・年代・属性への一般化には限界があります
- 注意③:主観的幸福感は1〜5段階の1項目で測定されており、幸福感の多面的な側面を完全に捉えているわけではありません
研究自体の紹介はこちら😊
地理学的な都市居住者の幸せ
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-12-21-1734819003/