老年的超越とウェルビーイング
ちょっと昔の雑誌より。
②老年的超越の心理的 well-being との関連の検討
老年的超越と人生満足感などの心理的 well-beingとの関連はいくつかの研究で示されている.Tornstamは一貫性の次元が現在の人生に対する満足度と関連することを示している2)
また,日本高齢者を対象とした研究においても,一貫性次元と人生満足感の間(r=.40)9),および宇宙的次元と主観的幸福感との間(r=.26)15)に有意な関連が見られた.
老年的超越の一貫性次元は自分に関する過去の出来事をポジティブにとらえなおすという自我統合の内容であり,人生満足感も高いことが考えられた.また,人生の意味(Life of meaning)の感覚は年齢や性別,身体的問題やソーシャルサポートについて統制しても,老年的超越の宇宙的次元と正の関連が示されている13)
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一方,老年的超越と心理的 well-being の関係は身体的な問題がある場合により強調されることを示す研究もある.
増井らは,超高齢期の心理的 well-beingの維持における老年的超越の役割を検討するために,生活機能が低下した超高齢者の心理的 well-being と老年的超越との関係を検討した3)
85 歳以上の超高齢者 155 名(平均年齢 88.4 歳)に対して,生活機能および心理的 well-being の 3 つの指標,健康度自己評価,うつ状態,主観的幸福感を用いて,クラスター分析により参加者の分類を行った.
その結果,3 つのクラスターが抽出され,生活機能も心理的 well-beingも高い群(56%),生活機能が低く心理的 well-beingも低い群(低機能低 WB 群:21%),そして,生活機能が低く心理的 well-being が高い群(低機能高 WB群:23%)の 3 群に分類されることが分かった.
そこで,低機能低 WB 群と低機能高 WB 群について,両群で有意差があった年齢,同居形態,ADL,外出頻度を共変量として JGS の下位尺度得点の比較を行った.
その結果,低機能高 WB 群は「内向性」,「社会的自己からの脱却」,「無為自然」の得点が低機能低WB 群よりも有意に高いことが示された.
これらの結果は,Erikson らが論じたように,超高齢期の身体機能の低下の際の心理的 well-being を維持には老年的超越が高いことが必要であることを示すものであった.
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老年的超越
2016,日老医誌
https://jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/perspective_53_3_210.pdf
老年的超越とは
老年的超越(gerotranscendence)とは,高齢期に高まるとされる,「物質主義的で合理的な世界観から,宇宙的,超越的,非合理的な世界観への変化」を指す1)2)
.この概念の提唱者であるスウェーデンの社会学者Tornstam は離脱理論,精神分析理論,禅の知見など取り入れこの理論を構築した.