はぴテク相談室:プラセボでも、ストレス・不安・抑うつを大幅に下げる(通常の介入と同等に。)
最近、仕事のストレスや将来への不安がずっと続いていて…。なにか試してみたいけど、いろんな方法があって何が効くのか正直よくわからなくて、迷っています。
それは辛いですね。ストレスや不安がずっと続くと、消耗しますよね。実は最近、ちょっと面白い研究が出ていて、もしよければ紹介させてください。「これって本当に意味があるのかな?」という気持ちが、効果そのものに大きく関わっているかもしれない、というお話です。
え、どういうことですか?気持ち次第で変わるってこと?
そうなんです。2024年に発表された研究で、「プラセボ」、つまり有効成分がまったく入っていないダミーの錠剤を飲んでもらったら、ストレス・不安・抑うつが2週間でかなり下がった、という結果が出たんです。しかも面白いのが、参加者には最初から「この錠剤には何も入っていませんよ」とちゃんと伝えた上での話なんです。
え!?嘘だと知っていても効いたんですか?それはどのくらい効いたんでしょう?
数字で言うと、「効果量」という研究の指標で、不安はd=1.14、抑うつはd=1.11、全般的なストレスはd=1.30という値が出ました。これ、3ヶ月かけて行うオンラインの認知行動療法プログラムと同じくらい、場合によってはそれ以上の数値なんです。たった2週間で、ですよ。
すごいですね…!でも、なんで偽物の薬だと知っていても効くんでしょうか?
研究者たちの見方では、「自分は今、ストレスに対処するために何かをしている」という行動と、プラセボ効果についてちゃんと学ぶこと、この2つが組み合わさって体や心に働きかけるのではないか、と考えられています。この研究では、参加者にまずプラセボ効果を説明するビデオを見せて、「こういうメカニズムで効果が出る可能性があります」と伝えた上で錠剤を飲んでもらっていました。
なるほど、ただ飲むだけじゃなくて、「なぜ効くか」を理解してから飲んだんですね。じゃあ私が日常でやっている運動とか瞑想とかも、「これは効くはずだ」と信じてやると、より効果が出やすいということですか?
この研究から直接そこまで言い切ることは難しいのですが、「信じて取り組む姿勢」が少なくともストレスや不安の軽減と無関係ではなさそう、という示唆はありますね。別の研究(Baker et al., 2022)でも、気分が良くなるという期待を持つと、感情の処理においてポジティブな方向に変化が見られたという報告があります。
じゃあ、何か新しいことを始めるときは、まず「これは効く」と思い込むことが大事なんですね。でも、それって自分をだますことにならないですか?
いい気づきですね。今回の研究のすごいところは、「だましていない」のに効いた、という点なんです。「これは偽物です、でもプラセボ効果というメカニズムで実際に効果が出ることが研究で分かっています」という透明な説明をした上で効果が出ています。なので、自分をだますというより、「効果のメカニズムを理解して、それを活用する」というイメージが近いかもしれません。
それは納得感があります。ちゃんと理由があって信じる、ということですね。ただ、この研究って61人という少人数ですよね。どのくらい信頼できるものなんでしょうか?
鋭いですね。研究者自身も「今後、より大規模な研究が必要だ」と論文の中で述べています。今回はCOVIDパンデミック中の中程度のストレスを持つ人が対象で、61人という小さなグループです。なので「この結果が全員に当てはまる」とは言い切れません。あくまで「有望な結果が出た」という段階の研究です。
わかりました。じゃあ今の私にできることとして、何か意識できることはありますか?
この研究から得られるヒントとして、三つ考えてみましょう。一つ目は、何かストレス対策をするとき、なぜそれが効くのかを少し調べて理解してから始めること。二つ目は、「どうせ意味ないかも」と思いながらやるより、「これは効果があると研究で示されている」と意識しながら取り組むこと。三つ目は、小さな行動でも「今、自分はちゃんとケアしている」という感覚を大切にすること。この研究が示しているのは、こうした姿勢がストレスや不安の軽減と関連している可能性がある、ということです。
ありがとうございます。「信じる根拠を持って取り組む」という考え方、とても参考になりました。なんか少し気持ちが楽になった気がします!
■ 今日のまとめ
- 「偽物の薬と知っていても効く」という非欺瞞的プラセボ研究が示すのは、ストレス・不安・抑うつへのケアにおいて、取り組みへの理解と信頼感が大切な要素である可能性があるということ。
- 効果量の数値は2週間という短期間で、3ヶ月間のオンライン認知行動療法と同程度という結果だったが、対象者61人と少なく、特定の状況下での研究であるため、結果をそのまま全員に当てはめることはできない。
- 何かストレス対策を始めるときは、「なぜ効くのか」を理解した上で取り組むこと、そして「自分は今ケアしている」という行動の感覚を持つことが、効果を引き出す一つのカギになるかもしれない。
■ 出典・注意事項
- 【主な出典】Schaefer, M. et al. (2024). Remotely administered non-deceptive placebos reduce COVID-related stress, anxiety, and depression. Applied Psychology: Health & Well-Being. https://iaap-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/aphw.12583
- 【関連研究】Baker, et al. (2022). Placebo induced expectations of mood enhancement generate a positivity effect in emotional processing.
- 【関連研究】Friehs, et al. (2022). オープンラベル(偽薬と知らされた状態)より、本物と伝えられたプラセボの方が効果が高いという報告。
- 【注意事項①】本研究は61人という少人数を対象としており、研究者自身も大規模な追試が必要と述べています。結果を過度に一般化しないようご注意ください。
- 【注意事項②】本研究で示されたのは「プラセボ群と対照群の差(相関的な比較)」であり、プラセボが直接ストレスを下げるという因果関係が証明されたわけではありません。
- 【注意事項③】対象はCOVID-19パンデミック中に中程度のストレスを抱えていたボランティアです。異なる集団や状況にそのまま当てはまるとは限りません。
研究自体の紹介はこちら😊
プラセボでも、ストレス・不安・抑うつを大幅に下げる(通常の介入と同等に。)
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-08-24-1724537403/