2024.05.25

はぴテク相談室:民俗学とウェルビーイング

相談者

最近、なんとなく孤独感があって…。友達もいないわけじゃないけど、なんか薄いつながりしかない気がして。昔の人ってもっとつながりが強かったんですかね?

はぴテクさん
はぴテクさん

その感覚、すごく大事なことに気づいてると思いますよ。実は2024年に江戸川大学から発表された研究で、日本の幸福の捉え方が歴史的にどう変わってきたかを調べたものがあるんです。柳田國男という日本民俗学の大家の考え方をベースにしているんですが、その研究では「イエ(家)」や「ムラ(村)」という単位が、昔は人々の生活の中心だったと指摘されています。つながりの質が今と全然違ったんですよね。

相談者

イエとかムラって、具体的にどういうことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

簡単に言うと、昔は家族だけじゃなくて、地域のコミュニティ全体で生活を支え合っていたということです。冠婚葬祭も近所みんなで行い、困ったときも地域で助け合う。「有縁社会(うえんしゃかい)」って研究では呼んでいるんですが、つながりが生活のインフラそのものだったんですね。

相談者

それが今はなくなってきてるってこと?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです。研究では、現代は「無縁社会」に移行しつつあると表現されています。その背景として、個人主義の広がりや価値観の多様化が挙げられています。自由になった反面、人とのつながりが薄くなったという側面があるということですね。あなたが感じている「つながりが薄い」という感覚は、社会の大きな変化と無関係ではないかもしれません。

相談者

じゃあ昔の人は幸せだったんですかね?万葉集とか清少納言の時代とか。

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究では万葉集、清少納言、鴨長明なども取り上げて、時代ごとの幸福の捉え方の変化を追っています。面白いのは、昔の幸福感も決して単純じゃないんですよね。たとえば万葉集には自然や人とのつながりへの喜びが詠まれている一方で、鴨長明の『方丈記』では、世の無常・はかなさを受け入れることが心の安定につながると描かれています。

相談者

鴨長明って、たしかすごく小さい庵(いおり)に住んでましたよね。あれって幸せだったんですかね?

はぴテクさん
はぴテクさん

そこが面白いポイントで、鴨長明は大きなつながりを手放す代わりに、内面の充足を大切にしたとも読めるんですよね。ただこの研究が強調しているのは、それだけでは不十分だということです。仏教思想でいう「自他幸福」、つまり自分だけじゃなく他者とともに幸せになるという考え方が、社会のベースに必要だと論じています。

相談者

自他幸福…自分の幸せと他者の幸せをセットで考えるということですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそうです。自分だけが幸せであればいいという個人主義とは違って、周りの人の幸せとつながって初めて自分の幸せも成り立つ、という考え方ですね。この研究では、その考え方が日本の民俗的な生活の中にずっと根付いていたのに、現代では薄れてきているのではないかと問題提起しています。

相談者

じゃあ、今の自分にできることって何かあるんですかね。社会全体を変えるなんて無理だし。

はぴテクさん
はぴテクさん

研究自体が「新たな有縁社会を構築すべく」と呼びかけているくらいで、これは個人の努力だけで完結する話ではないんですよね。ただ、日常の小さいところから「自他幸福」を意識することはできると思います。たとえば、薄いつながりと感じている相手と、もう少し深い会話をしてみるとか。つながりって、量より質という面もありますから。

相談者

確かに、表面的な会話しかしてないかもしれないです。深くつながろうとしてなかったかも。

はぴテクさん
はぴテクさん

そう気づけたこと自体がすごく大事だと思います。この研究が示しているのは、幸福感って個人の内側だけで完結するものではなく、他者や共同体との関係性の中にあるという視点なんです。現代の孤独感は、社会構造の変化とも関係しているかもしれない。だとすると、あなたが感じている「つながりの薄さ」は、あなた個人だけの問題ではないとも言えますよ。

相談者

なんか少し、楽になりました。自分がおかしいわけじゃないんだって。日本の幸福感の歴史を知るだけで、こんなに視野が広がるんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそれが民俗学のパワーだと思います!過去の人々の知恵や生き方を知ることで、今の自分の悩みを広い文脈で見られるようになる。この研究も、日本民俗学を通じて「社会の核となる幸福感を見つけ直そう」と呼びかけています。歴史って、ただの昔話じゃなくて、今を生きるヒントの宝庫なんですよね。

■ 今日のまとめ

  • 昔の日本では「イエ」や「ムラ」を核とした有縁社会が生活の中心で、つながりの中に幸福感が根付いていたが、現代は個人主義の広がりとともに無縁社会化が進んでいるとされる。
  • 万葉集・清少納言・鴨長明など古来の幸福観を見ると、時代によって幸福の捉え方は様々だったが、仏教思想の「自他幸福(自分と他者が共に幸せになる)」という視点が共通の核として注目されている。
  • 現代の孤独感は個人の問題だけでなく社会構造の変化とも関係している可能性があり、小さなつながりの質を意識することが一つの手がかりになりうる。

■ 出典・注意事項

  • 出典:柳田國男の幸福論/江戸川大学紀要,2024年5月25日,https://edo.repo.nii.ac.jp/record/2000037/files/DK2024-33.pdf

  • 注意事項①:本研究は文献・思想研究であり、統計的な調査データに基づくものではありません。歴史的・思想的な考察として参照してください。

  • 注意事項②:「個人主義の広がりが孤独死や自殺の遠因」との記述は研究者の論考であり、因果関係が実証されたものではありません。

  • 注意事項③:日本の文化・歴史を対象とした研究であるため、他の文化圏や社会への一般化には慎重さが必要です。

投稿者によるコメント・補足(1件)
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研究自体の紹介はこちら😊
民俗学とウェルビーイング
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-05-25-1716678018/

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