はぴテク相談室:ネガティブケイパビリティ
最近、仕事でもプライベートでも「すぐに答えを出さなきゃ」ってプレッシャーをずっと感じていて、なんか疲れちゃってるんですよね…。白黒はっきりしないと気が済まないというか、曖昧なままにしておくのがすごく苦手で。
それは本当につらいですね。実は「曖昧さが苦手」「すぐ答えを出したくなる」という感覚、現代社会では多くの人が抱えているんです。今日は、そのしんどさのヒントになるかもしれない考え方をご紹介しますね。「ネガティブケイパビリティ」という言葉、聞いたことありますか?
ネガティブケイパビリティ…?なんか名前からして暗そうですけど(笑)、どういう意味ですか?
名前はちょっとギョッとしますよね(笑)。これはもともと19世紀のイギリスの詩人キーツが使った言葉で、「すぐには答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」のことなんです。ネガティブというのは「否定的」ではなく、「余白を持つ・受け取る」というニュアンスに近いんですよ。
なるほど…。でも、答えを出さずに耐えるって、ただ我慢することとどう違うんでしょう?
鋭い質問ですね!関西大学の2020年の論文では、ネガティブケイパビリティを「答えの見えなさや、相反する気持ち、複数の考えが同時にわき出てくるような状態を、自分の中にためて熟成させる力」と定義しています。ただ我慢するのではなく、葛藤をそのまま自分の中で育てていくイメージです。白黒つけようと急ぐのとは逆の動きですね。
熟成させる…なんか味わい深い表現ですね。でもそれって、できる人とできない人がいそうじゃないですか?私みたいに曖昧さが苦手な人間には難しそうで。
確かに個人差はあると思います。心理学の研究では「曖昧さへの耐性(TOA/トレランス・オブ・アンビギュイティ)」というかたちで研究されていて、この耐性が高い人ほど幸福度も高い傾向があるという調査結果もあります。ただこれはあくまで相関の話で、「だから耐性を高めれば幸せになれる」と断言できるわけではないんですが、曖昧さとうまくつきあうことと気持ちの安定には何か関係がありそうだ、というのは見えてきています。
相関なんですね。でも、曖昧さへの耐性って、鍛えたり身につけたりできるものなんですか?
論文の中でも「ネガティブケイパビリティを身につける方法の検討が今後必要だ」と書かれていて、まだ研究途上なんです。ただ同じ論文の中で面白いヒントが出ていて、「無私の状態」つまり自分のジャッジや評価をいったん脇に置く姿勢や、「待つ」という行為がネガティブケイパビリティと関係していると指摘されています。
評価をいったん置く、か…。私、すぐ「これは良い・悪い」って判断しようとしちゃうので、それが疲れの原因の一つかもしれないですね。
そう気づけたのは大きいと思いますよ。論文では、現代社会が「効率・利便性優先」から「多様性や曖昧さを抱える社会」へと変わってきていると言っています。つまり、白黒はっきりつけるスキルよりも、グレーゾーンをそのまま持ち続けるスキルの方が、今の時代に求められてきているということなんです。
グレーゾーンをそのまま持ち続ける…なんか、それだけで少し楽になる感じがします。答えを出さなくていい、って許可してもらえた気がして。
その感覚、とても大事だと思います。「答えのない問いを立てて、それを問い続ける」こと自体に意味がある、と論文でも述べられています。答えを急いで閉じてしまうより、問いをオープンなまま持ち続けることが、不安定で複雑な今の社会を生き抜く力になる、という考え方ですね。
「答えを出せない自分はダメだ」ってずっと思ってたんですけど、もしかしてそれ自体がしんどさの根っこだったのかも。少し視点が変わった気がします。ありがとうございます!
気持ちが少し軽くなったなら嬉しいです。白黒つけられないこと=弱さ、じゃなくて、曖昧さの中にとどまれること=今の時代の力、という見方に切り替えてみるだけで、日々の感じ方が変わってくるかもしれませんね。まだ研究途上の分野ですが、「答えを急がなくていい」という考え方はきっとあなたの味方になってくれると思いますよ。
■ 今日のまとめ
- 「ネガティブケイパビリティ」とは、すぐ答えの出ない状況や曖昧さに耐え、葛藤を自分の中で熟成させる力のこと。ただの我慢とは異なります。
- 心理学では「曖昧さへの耐性(TOA)」として研究されており、耐性が高い人ほど幸福度が高い傾向がある、という相関が報告されています(因果関係ではありません)。
- 評価・判断をいったん脇に置き、答えのない問いをオープンなまま持ち続ける姿勢が、多様性と複雑さを抱える現代社会を生き抜くうえで重要だと考えられています。
■ 出典・注意事項
- 出典:「多様性が求められる現代に必要な能力に関する一考察:曖昧さを抱えた状況を生き抜くためのnegative capabilityの可能性」関西大学臨床心理専門職大学院紀要, 2020年, https://kansai-u.repo.nii.ac.jp/record/15923/files/KU-1100-20200316-05.pdf
- 注意事項①:本論文は概念研究・理論的考察が中心であり、ネガティブケイパビリティを高める具体的方法や評価スケールはまだ研究途上と論文自体に明記されています。
- 注意事項②:TOA(曖昧さへの耐性)と幸福度の関係は相関研究によるもので、耐性を高めれば幸福度が上がるという因果関係が証明されたわけではありません。
- 注意事項③:引用されている知見は主に心理臨床・教育・芸術領域を対象とした文献レビューが中心であり、特定の集団への一般化には限界があります。
研究自体の紹介はこちら😊
ネガティブケイパビリティ
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-04-18-1713477642/