はぴテク相談室:階層的なチームでこそ、社会的絆の醸成がめちゃくちゃ大事
最近、職場のチームがうまくいってなくて悩んでいます。上司と部下の間に壁があるというか、コミュニケーションがぎこちなくて…。チームビルディングとかやってみたほうがいいんでしょうか?
それは辛いですね。実は2024年にPLOS BIOLOGYという科学誌に載った面白い研究があって、まさにそのヒントになりそうなんです。528人を176の3人グループに分けて、階層のあるチームで「社会的絆」を深めると何が起きるかを調べた実験なんです。チームTシャツを着たり、雑談して共通点を見つけたりといった活動を通じて絆を高めた場合の効果を、脳の神経活動まで測って分析しています。
へえ、脳の活動まで!で、どんな結果だったんですか?
一番驚くべき発見は、「社会的絆を深めると、上司と部下の間のコミュニケーションと結束が特に強くなった」ということです。しかも、リーダーの脳の動きがフォロワーの脳の動きに1〜6秒先行して同期する、いわば「あうんの呼吸」のような現象が観察されたんです。リーダーがフォロワーの反応を予測しながら動いているようなイメージですね。
「あうんの呼吸」が生まれるんですか!でも、それって上司と部下の間だけに起きたんですか?
そこがすごく面白いポイントで、同じ立場同士、つまり部下同士の間では、社会的絆を深めても同様の効果は見られなかったんです。この神経的な同期や、コミュニケーションの頻度・速さの向上は、「立場が違うペア」に選択的に起きた現象でした。
えっ、同僚同士で仲良くなっても意味がないってことですか?
この研究の範囲では「同等の立場同士には同じ効果が出なかった」という話であって、「意味がない」とまでは言い切れないんです。絆を深めること自体が悪いわけではなく、この研究が見ていた「コミュニケーションの頻度・速さ」や「神経同期」という指標では差が出なかった、ということですね。フラットなチームには別のアプローチ、たとえば共通の目標を具体化するといった方法が合うかもしれません。
なるほど。ということは、上司と部下の間に壁を感じている自分の職場には、社会的絆を深めるアプローチが特に効きそうということですね。具体的にどんなことをすればいいんでしょう?
研究の中で例として挙げられていたのは、趣味や好みを共有したり、チームのTシャツを着たり、雑談して共通点を見つけたりといったことです。特別なことでなくても、「お互いのことを知る時間」を意識的につくることが社会的絆につながるようです。ランチを一緒にするとか、業務外の話をする場を少し設けるだけでも変わってくるかもしれません。
確かに、今の職場では上司と雑談する機会がほぼゼロですね…。もう一つ気になったんですが、「内集団への好意と外集団への否定的態度」という話が研究にあったと聞いたんですが、それって副作用みたいなものですか?
鋭い質問です!研究では、地位の違う人同士の神経同期の強さが、「自分のグループへの好意」と「外のグループへの否定的な見方」の度合いと関連していたことも報告されています。つまり、チーム内の絆が強まるほど、チーム外の人に対して冷たくなる傾向との関連が示唆されたわけです。これは因果関係が証明されたわけではなく関連として見られたものですが、チームの結束を高める際には、他部署や社外との関係も大切にするバランス感覚が必要かもしれませんね。
チームが仲良くなりすぎると排他的になるリスクもあるんですね。バランスが大事なんだなあ。
そうなんです。絆を深めることは階層のあるチームにとってとても有効そうですが、「自分たちだけ」にならないよう意識するのも大切そうですね。あと一点補足すると、この研究は実験的に設定された小さな3人グループ(528人)での結果なので、実際の職場のような複雑な環境にそのまま当てはまるかどうかは慎重に考える必要があります。傾向として参考にしつつ、自分のチームの状況に合わせて試してみるのが良いと思いますよ。
研究の限界もちゃんと教えてくれてありがとうございます。まずは上司と少し雑談する機会を作ってみようかなと思えてきました!
それは素晴らしいスタートだと思います!小さな共通点を見つける会話から始めるだけでも、じわじわと変化が生まれてくるかもしれません。チームの雰囲気が少しでも良くなるといいですね😊
■ 今日のまとめ
- 階層のあるチームでは、社会的絆(雑談・共通点探しなど)を深めることで、上司と部下の間のコミュニケーションと結束が特に促進されることが示された。
- 社会的絆はリーダーとフォロワー間に「あうんの呼吸」のような神経的同期をもたらしたが、同等の立場同士にはこの効果は見られなかった。
- チーム内の絆の強まりは外集団への否定的態度とも関連して観察されており、結束を高める一方で他チームとの関係バランスにも意識を向けることが示唆される。
■ 出典・注意事項
- 出典:Hu Y, et al. 'Social bonding in groups of humans selectively increases inter-status information exchange and prefrontal neural synchronization.' PLOS BIOLOGY, 2024年3月19日. https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3002545
- 注意事項①:本研究は実験的に設定された3人グループ(176グループ・528人)での観察であり、実際の職場環境への直接の一般化には限界があります。
- 注意事項②:神経同期やコミュニケーション指標と各要因の関連は相関として報告されており、社会的絆が結果を引き起こすという因果関係が完全に証明されたわけではありません。
- 注意事項③:外集団への否定的態度との関連も相関として示されたものであり、絆を深めると必ず排他的になると断言できるものではありません。
研究自体の紹介はこちら😊
階層的なチームでこそ、社会的絆の醸成がめちゃくちゃ大事
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-03-25-1711407605/