はぴテク相談室:強く暖かいコミュニティの3因子と幸福感。
最近、地域のNPO活動に参加し始めたんですが、なんか思ってたより幸福感が上がらなくて…。みんなと一緒にいると居心地はいいんですけど、それだけじゃ足りないのかなって感じています。
それは興味深いご経験ですね!実はその感覚、研究結果ととても一致しているんですよ。NPOメンバー2,736人を対象にした研究があるんですが、コミュニティの「強さと暖かさ」を3つの要素で測っていて、そのうちの一つ「居心地の良さ」は、幸福感との関連が統計的に有意ではなかった、という結果が出ているんです。
えっ、居心地が良くても幸福感に繋がらないんですか?それはちょっと意外ですね…
そうなんです、少し驚きますよね。この研究では3つの要素を調べていて、①理念への共感と貢献したいという気持ち、②自分が役に立っているという感覚(自己有用感)、③居心地の良さ・所属感、の3つです。①と②は幸福感と有意な関連が見られたのですが、③の「居心地の良さ」だけは幸福感との関連が統計的に確認できなかったんですね。
なるほど…じゃあ、居心地がいいだけじゃなくて、そのコミュニティの目指していることに共感できているかどうかが大事ってことでしょうか?
そうですね、研究の結果はその方向性を示唆しています。「このNPOの理念に共感できる」「貢献したい」という気持ちや、「自分はここで必要とされている」という感覚が、幸福感と関連していたんです。居心地が悪いよりはいいほうが良いとは思いますが、それだけでは幸福感に繋がりにくいのかもしれないですね。
「必要とされている感覚」というのも大事なんですね。でも私、まだ参加し始めたばかりで、あまり貢献できていない気がして…
実はその点についても、この研究で興味深い結果が出ています。NPOに参加して日が浅いメンバーは、長く活動しているベテランのメンバーよりも「自己有用感」が低い傾向が見られたんです。つまり、最初のうちは自分が役立っている実感が持ちにくいのは、ごく自然なことと言えそうです。
あ、それを聞いてちょっとホッとしました。続けていれば変わってくる可能性があるんですね。でも、無理して働きすぎるのも良くないですよね?
鋭いご指摘です!研究では、月間の活動時間が長くなると主観的な健康状態が悪化する傾向が見られていて、特に月100時間を超えると、理念への共感・貢献意欲と居心地の良さの両方のスコアが下がることも分かっています。熱心に関わることは大切ですが、無理しすぎないバランスも重要そうですね。
月100時間って、週25時間以上ですよね。それはたしかに多い…。ちなみに、ボランティアと有給スタッフでも違いがあるんですか?
はい、この研究ではボランティアは有給スタッフよりも「自己有用感」のスコアが低い傾向があることも示されていました。もしかすると、有給で責任ある役割を担っている方が、自分の貢献を実感しやすい場面が多いのかもしれません。ただ、これはあくまで関連性の話で、「ボランティアだから幸福感が低い」という因果関係を示すものではないので、その点はご注意ください。
なるほど。じゃあ私がまず意識すると良いのは、「このNPOの目指すことに自分は共感できているか」「自分が役立てていると感じられているか」を確認することでしょうか?
まさにそうですね!居心地の良い仲間がいることはもちろん素敵なことですが、この研究の結果を見ると、「理念に共感できているか」「自分が必要とされている・貢献できていると感じられるか」という点が幸福感と特に関連していたようです。参加したばかりでまだ実感が薄くても、自分がどんな理念に惹かれてそこにいるのかを意識してみるのも良いかもしれませんよ。
ありがとうございます!居心地だけにフォーカスしてたけど、理念への共感と自分の貢献を意識することが大事なんですね。少し活動への向き合い方が変わりそうです。
■ 今日のまとめ
- NPO活動における幸福感との関連が見られたのは「理念への共感・貢献意欲」と「自己有用感(必要とされている感覚)」の2つで、「居心地の良さ」は幸福感との統計的に有意な関連が確認されなかった。
- 参加して間もないメンバーはベテランより自己有用感が低い傾向があり、最初に役立っている実感が薄くても自然なことと示唆されている。
- 月100時間を超える活動は理念共感や居心地の良さのスコア低下と関連しており、活動量のバランスにも目を向けることが重要。
■ 出典・注意事項
- 出典:村田由紀子ほか「NPOメンバーのコミュニティ感覚が団体への愛着,健康感,幸福感に与える影響―コミュニティ感覚に基づく組織内の認知的ソーシャル・キャピタル尺度の有効性―」ノンプロフィット・レビュー,2024年,advpub,NPR-D-22-00014 https://www.jstage.jst.go.jp/article/janpora/advpub/0/advpub_NPR-D-22-00014/_pdf
- 注意事項①:本研究は横断的な調査データに基づくものであり、各要素と幸福感の間に相関関係が見られたとしても、因果関係(どちらが原因でどちらが結果か)を示すものではありません。
- 注意事項②:調査対象は2016〜2018年に調査に応じた日本のNPOメンバー2,736名であり、他のコミュニティや時代・地域への一般化には限界があります。
- 注意事項③:「居心地の良さ」と幸福感の関連が有意でなかった理由については、本研究内でも明確には結論づけられておらず、今後のさらなる研究が必要な点です。
研究自体の紹介はこちら😊
強く暖かいコミュニティの3因子と幸福感。
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-02-22-1708639206/