はぴテク相談室:畏敬の念を抱くことは、子供たちがより寛大になる助けになるかもしれない
最近、うちの子(10歳)が自分のことしか考えてないというか、友達とトラブルになっても『自分は悪くない』って感じで…もう少し思いやりのある子に育ってほしいんですけど、何かできることってありますか?
それは親御さんとして心配になりますよね。実は2023年に『サイコロジカル・サイエンス』という学術誌に、子どもの思いやりに関するとても興味深い研究が発表されたんです。キーワードは「畏敬の念(AWE)」です。聞いたことありますか?
畏敬の念…?なんですかそれ?
たとえば満点の星空を見上げて「宇宙って広いなあ…自分ってちっぽけだな」と感じたり、壮大な音楽を聴いて「なんか言葉にできない感動がある」ってなる、あの感覚です。大きなものの前で自分の小ささを感じる体験、と言えばイメージしやすいでしょうか。
ああ、なんとなくわかります。山に登ったときとか、海を見たときとか?
まさにそうです!その研究では、8歳〜13歳の子どもたちに「畏敬の念を感じさせる映像」「楽しい映像」「普通の映像」の3種類を見せて、その後の行動を比べました。すると、畏敬の念を感じた映像を見た子どもたちは、他のグループに比べて、フードドライブ(食料寄付)の作業に長く取り組んだり、難民家族のためにより多くのお金を寄付したりしたんです。
えっ、映像を見ただけでそんなに変わるんですか?すごいですね。でも、なんでそうなるんでしょう?
研究者たちの説明によると、畏敬の念を感じると「自分が小さく感じられ、その分だけ周りの社会的な世界に目が向きやすくなる」とのことです。また、体の反応として「副交感神経」の活動も活発になっていたことが測定されています。副交感神経とは、リラックスして周りと穏やかに関われるときに働く神経のことですよ。
なるほど…体の中でも変化が起きているんですね。ちなみに、自分の周りの友達だけじゃなくて、知らない人にも優しくなるんですか?
そこが特に注目されているポイントで!子どもたちって小さい頃から、自分と同じグループの子は助けるけど、違うグループの子は助けにくい傾向があると言われています。ところがこの研究では、畏敬の念を感じた子どもたちは、難民家族という「自分とは縁遠い存在」にも寄付しようとする行動が増えたんです。研究者たちはこの点を特に強調していました。
それは確かにすごい。じゃあ、実際に家でどうやって畏敬の念を感じさせればいいんでしょう?大自然に毎週連れて行くのはなかなか難しくて…
この研究自体では「アニメ映画の一場面」という、とても身近なものが使われています。壮大な景色や生き物が描かれたアニメや映像、スケールの大きな音楽、国際的な写真集なども、畏敬の念のきっかけになりうると紹介されていますよ。YAMAHAが選んだ「畏敬を感じる音楽集」やナショナルジオグラフィックの写真なども例として挙げられていました。日常の中でも工夫できそうではないですか?
それなら週末に一緒に映像を見たり、音楽を聴いたりするだけでもいいんですね。なんかハードルが下がった気がします!
そうですよ!あとは街の壁画、地元のお祭りの演奏、大きな建物を一緒に眺めるだけでも畏敬の念につながりうると研究者たちは述べています。「すごいね、広いね、なんでだろうね」と一緒に言葉にしてみるのも良さそうですね。
なんか、子どもと一緒に感動を共有するって、それ自体も楽しそうです。やってみます!ちなみに、畏敬の念って子どもだけに効果があるんですか?
今回ご紹介した研究は子ども(8〜13歳)を対象にしたものですが、別の研究では大人でも、健康感アップ・ストレス軽減・創造力向上・思いやりが強くなる・今あるものへの満足度が高まるなど、さまざまな関連が報告されています。ただ、これらはあくまで「関連が見られた」という段階のものも多く、畏敬の念が直接それらを引き起こすと断言できるわけではない点は覚えておいてくださいね。
■ 今日のまとめ
- 畏敬の念(星空・壮大な音楽・感動的な映像などで感じる「自分の小ささ・世界の広さ」の感覚)を体験した子どもは、知らない人にも寄付するなど思いやりのある行動が増える傾向が、実験で確認されています。
- 大自然だけでなく、アニメ映画・音楽・写真・建築など身近なコンテンツでも畏敬の念は感じられるため、日常生活の中で取り入れやすいです。
- 畏敬の念を感じた子どもは副交感神経(穏やかに周りと関わるときに働く神経)の活動も高まっており、体の内側でも変化が起きていることが測定されています。
■ 出典・注意事項
- 【出典】Stamkou, E. et al. 'Awe Sparks Prosociality in Children,' Psychological Science, 2023. https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/09567976221150616
- 【出典】UCバークレー Greater Good Magazine『2023年の「有意義な人生の科学」から得られたトップ10の洞察』2023年12月14日 https://greatergood.berkeley.edu/article/item/the_top_10_insights_from_the_science_of_a_meaningful_life_in_2023
- 【注意事項①】本研究は8〜13歳の子どもを対象とした実験であり、異なる年齢層や文化的背景への一般化には限界があります。
- 【注意事項②】実験で観察されたのは映像視聴直後の行動変化です。長期的に思いやりが育つかどうかは、この研究だけでは断言できません。
- 【注意事項③】「寛大な子どもは学業成績や将来収入が高い」という知見は別の研究によるものであり、本論文の内容ではありません。また相関関係であり因果関係ではありません。
- 【注意事項④】畏敬の念のその他の効果(健康・ストレス軽減など)も、相関として報告されているものが多く、畏敬の念が直接の原因であると確定されているわけではありません。
研究自体の紹介はこちら😊
畏敬の念を抱くことは、子供たちがより寛大になる助けになるかもしれない
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-12-25-1703497280/