はぴテク相談室:カールロジャース先生とポジティブ心理学
最近、職場でコーチングを受けているんですが、コーチが『あなたを信じています』とか『あなたの気持ちに寄り添います』ってよく言うんです。でも正直、それだけで何かが変わるのかな?って半信半疑で…。コーチングってそういう『雰囲気』が大事なんですか?
なるほど、『雰囲気だけじゃないの?』って感じてしまうんですね。その疑問、すごく大事だと思います!実はその『寄り添う姿勢』には、カール・ロジャースという心理学者が提唱した『パーソン・センタード・アプローチ(PCA)』という考え方が深く関わっているんです。今日はその話を一緒に見ていきましょう。
パーソン・センタード・アプローチ?なんか難しそうですね…。どういう考え方なんですか?
簡単に言うと、『人はもともと自分で成長できる力を持っている』という考え方です。だからコーチやカウンセラーが答えを押しつけるんじゃなくて、その人の力を引き出せるような環境を作ることが大切、という発想なんです。そのために特に重視されるのが、①共感(相手の気持ちをちゃんと理解しようとすること)、②無条件の肯定的配慮(どんな状態でも相手をそのまま受け入れること)、③真実性(自分自身にも相手にも正直でいること)の3つなんです。
なるほど!じゃあ最近よく聞く『ポジティブ心理学』とはどう違うんですか?ポジティブ心理学って『幸せを科学する』みたいなイメージがあって、なんか別物な気がして。
鋭い!実は関西大学の研究者が2023年にまとめた論文(Kandai Psychological Reports 第23号)で、まさにその比較が論じられているんです。結論から言うと、PCAとポジティブ心理学は『目指すゴールは共通している』部分があるんです。どちらも人が充実して生きることや、よりよく機能することを大切にしています。
ゴールが同じなんですね!じゃあ何が違うんですか?
大きな違いの一つが『科学のとらえ方』です。ポジティブ心理学はデータや統計を使って『幸せになりやすいパターン』を明らかにしようとします。一方でロジャース自身は、『人が最適な状態に近づくほど、その行動を予測したりコントロールしたりするのは難しくなる。だから心理学は予測の科学ではなく、理解の科学であるべきだ』と述べているんです。つまり、1人の人をデータで一般化するより、その人をじっくり深く理解することを大事にしているわけです。
『予測の科学』じゃなく『理解の科学』か…。なんかその言葉、ジーンときますね。でも、どちらが正しいとか優れているとかあるんですか?
この論文では、どちらが正しいと断定するのではなく、『ゴールが共通しているからこそ、協力し合える可能性がある』という立場をとっています。ただ同時に、『最適な状態』という言葉の意味や、科学のとらえ方がそもそも違うかもしれない、という疑問も残る、と正直に書かれています。どちらか一方が完全に正しい、というより、それぞれの強みを活かして組み合わせていく視点が大事、ということですね。
なるほど。じゃあ私がコーチングを受けるときも、そのコーチの『寄り添い方』はやっぱり意味があるってことですか?
PCAの考え方に基づけば、共感や無条件の肯定的配慮といった姿勢は、あなた自身が自己理解を深めたり、自分で選択する力を育てたりする環境を作ることに関わっていると考えられます。ただ、この論文でも『他者を援助するためには、まず自分自身に対して援助関係を作れること』という考え方は一つの仮説であり、今後も研究が必要とされています。つまり『絶対こうなる』とは言い切れないのが正直なところです。
コーチ自身もちゃんと自分と向き合っているかどうかが大事ってことですね。じゃあ逆に私自身が職場で誰かをサポートするときにも、こういう考え方って使えますか?
とても良い視点です!この論文では、PCAの考え方を社会や組織の活動に取り入れようとするとき、『個人レベルなのか、チームや組織レベルなのか』という視点で目的を考えることが重要だと指摘されています。あなたが誰かをサポートするときも、まず『この人個人に寄り添いたいのか、チーム全体をよくしたいのか』を意識すると、アプローチの仕方が変わってくるかもしれませんね。
なるほど、スケールによって使い方が違うんですね。今日の話、すごくスッキリしました!コーチングで感じていたモヤモヤが少し晴れた気がします。
それは良かったです!PCAもポジティブ心理学も、どちらも『あなたが自分らしくよりよく生きること』を大切にしているという点では同じ方向を向いています。コーチングを受けるときも、『なんでこのアプローチを使っているんだろう?』って少し考えてみると、より深く活かせるかもしれませんよ。
■ 今日のまとめ
- パーソン・センタード・アプローチ(PCA)は『人はもともと成長する力を持っている』という考えに基づき、共感・無条件の肯定的配慮・真実性の3つを大切にする。
- PCAとポジティブ心理学は『人がよりよく機能すること』というゴールを共有しているが、科学のとらえ方(予測か理解か)や人間観に違いがあり、完全に同じではない。
- PCAの考えを職場や組織に活かすときは、個人レベルか集団レベルかを意識して目的を考えることが重要とされている。
■ 出典・注意事項
- 出典:「パーソン・センタード・アプローチについてポジティブ心理学的観点からの考察: Joseph (2015) の論考を中心に」Kandai Psychological Reports 心理学叢誌 第23号, 2023年12月9日 / Joseph(2015)の論考をもとにした理論的考察論文
- 注意事項①:本論文は実験や調査データではなく、既存の理論・論考をレビューした考察論文です。因果関係の実証ではありません。
- 注意事項②:『他者を援助するには自分自身への援助関係が必要』という考え方は、論文内でも『仮説』として位置づけられており、今後の研究が必要とされています。
- 注意事項③:PCAとポジティブ心理学の比較は理論レベルの議論であり、特定の個人や状況に直接あてはまるとは限りません。
研究自体の紹介はこちら😊
カールロジャース先生とポジティブ心理学
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-12-09-1702158605/