はぴテク相談室:パラドキシカル・リーダーシップは幸せにつながる。
最近、職場のリーダーシップについて悩んでいるんです。うちの上司って、「効率よくやれ!」って言ったかと思えば「もっと新しいことに挑戦しろ!」って言ったりして、方針がぶれてるなぁってモヤモヤしてて…。おかげで仕事に満足できてない気がします。
それは確かにモヤモヤしますよね。でも実は、そういった「一見矛盾しているように見える2つのことを同時に大事にする」リーダーシップが、メンバーの幸せにつながるという研究があるんですよ。「パラドキシカル・リーダーシップ」って聞いたことありますか?
パラドキシカル…?ちょっと難しそうな名前ですね。どういうものなんですか?
「パラドックス」って矛盾とか逆説って意味なんですが、このリーダーシップは「AかBかどちらかを選ぶ」んじゃなくて、「AとBのバランスをとりながら両方を大事にする」というスタイルなんです。東洋の中庸的な考え方に近いですね。たとえば「効率重視」と「創造性重視」って一見矛盾してるじゃないですか。でも、今週は効率8・創造性2、来月は効率5・創造性5、みたいにバランスをとって進めていく、そんなイメージです。
なるほど!「どっちかにしてよ!」じゃなくて「両方をうまく使い分けていく」ってことですね。でも、それって本当に働く人の幸せにつながるんですか?
そうなんです。2023年にオランダで行われた研究で、287人の社会人を対象に約半年間かけて調べた結果、パラドキシカル・リーダーシップは仕事の満足度・キャリアの満足度・人生全体の満足度と長期的にプラスの関係があることが示されたんですよ。ただし、これは相関関係で、直接の原因とまでは断言できないので念のため。
半年かけて調べたんですね!でも、なんでそういうリーダーシップが満足度につながるんでしょう?
面白いことが分かっていて、「雇用不安の感じ方」が間に入っているんですよ。パラドキシカルなリーダーが「矛盾しているけど両方大事にしよう」と筋道を立てて示してくれると、メンバーは「自分の仕事は大丈夫かな、いつ切られるかも…」という不安が和らぎやすい。その不安が減ることで、仕事やキャリアへの満足感につながっているという経路が研究で確認されたんです。
確かに!上司の方針がコロコロ変わると「この会社大丈夫かな、自分のポジションなくなるかも」って不安になりますよね。逆に「矛盾してるのは分かってるけど、こういうバランスでやるよ」って言ってくれると安心できる気がします。
まさにそこです!「矛盾してる!」と感じること自体は変わらないんですが、リーダーがそれを認識したうえでバランスを示してくれると、メンバーの「意味が分からない、怖い」という感覚が減るんですよね。研究ではこれを「センス・メイキング理論」、つまり「物事の意味をつかめると不安が減る」という考えで説明しています。
なるほど〜。じゃあ、私の上司の場合、「効率と創造性、両方やれ」と言っているのは、うまくバランスをとろうとしているのかもしれないけど、その「なぜそのバランスなのか」の説明がないからモヤモヤするのかも?
鋭いですね!パラドキシカル・リーダーシップのポイントは、矛盾を認識しつつ「今はこのバランスでいくよ、なぜなら〜」と示すところにあります。単に「両方やれ」だけだとただの無茶ぶりですが、「矛盾しているのは分かっている、だからこそ今のバランスはこう」と伝えることで、メンバーが状況の意味をつかめるんです。
そうか!じゃあ上司に期待するだけじゃなくて、私自身も「この矛盾は今どんなバランスでとれているんだろう」って考え方をしてみるといいかもしれませんね。
それはすごく良い視点だと思います!研究はリーダー側の行動に着目していますが、「矛盾を二者択一で解こうとしない」という考え方自体は、自分の仕事の捉え方にも活かせそうですよね。ただ研究で証明されているのはリーダーシップとメンバーの満足度の関係なので、個人の思考法としての効果はまた別の話ではありますが。
研究の範囲をちゃんと教えてくれてありがとうございます!上司への見方も変わりましたし、自分でも「AかBか」じゃなく「AとBのバランス」で考えてみようと思います。なんかモヤモヤが少し楽になった気がします!
それは良かったです!今の激動の時代って、職場に矛盾した要求が溢れていますよね。でもその矛盾を「どっちかに決めろ」と戦わずに、「両方を抱えながらバランスをとる」という視点が、じわじわと幸せにつながってくる可能性があるってことですね。
■ 今日のまとめ
- 「パラドキシカル・リーダーシップ」とは、矛盾する2つの方針をどちらか一方に決めるのではなく、バランスをとりながら両立させるリーダーシップのスタイルです。
- オランダの287人を対象とした約半年間の研究で、このリーダーシップは職務満足度・キャリア満足度・人生満足度と長期的なプラスの関係が示されました(相関関係であり因果とは断言できません)。
- その背景には「雇用不安の緩和」が介在しており、リーダーが矛盾を認めたうえでバランスの理由を示すことで、メンバーが状況の意味をつかみやすくなり、不安が和らぐという経路が確認されています。
■ 出典・注意事項
- 【出典】Li, X., et al. (2023). Paradoxical leadership and employee well-being in turbulent times: A time-lagged study. Frontiers in Psychology, 14. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1148822
- 【注意事項①】本研究はオランダの様々な組織に勤める287人を対象としたコンビニエンス・サンプリング(任意参加型の標本抽出)であり、結果をすべての国・職種・文化に一般化することには限界があります。
- 【注意事項②】パラドキシカル・リーダーシップと満足度の間に確認されたのは相関関係です。リーダーシップが直接の原因で満足度が上がると因果的に断定はできません。
- 【注意事項③】研究者自身も、媒介効果(雇用不安を経由する経路)をより厳密に検証するにはさらに多くの時点でのデータ収集が必要と述べています。
研究自体の紹介はこちら😊
パラドキシカル・リーダーシップは幸せにつながる。
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-11-26-1701036008/