2026.08.01

はぴテク相談室:思春期の子の「幸せ」は、じわじわ下がる。でも——

相談者

はぴテクさん、ちょっと相談いいですか。中2の娘のことなんですけど…小学生の頃はあんなに楽しそうだったのに、最近なんだか元気がなくて。「学校どう?」って聞いても「別に」ばっかりで。うちの子、何かあったんでしょうか。

はぴテクさん
はぴテクさん

心配になりますよね。もちろん個別の事情は見てあげてほしいのですが、まず一つ、安心材料になるかもしれないデータをお伝えしてもいいですか?

相談者

ぜひお願いします。

はぴテクさん
はぴテクさん

最近、世界中の55万人以上の10代を追いかけた研究をまとめた大規模な分析が出たんです。それによると、思春期の幸福度は「平均して、毎年少しずつ下がる」ことが分かりました。

相談者

えっ、下がるのが普通なんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです。10歳から19歳にかけて、じわじわと。しかも面白いのは、下がり方が「ある年に急にガクッ」ではなく、毎年ほぼ同じペースだったこと。中学入学でドン、とかではないんですね。

相談者

じゃあ、うちの子の元気がないのは…異常じゃない?

はぴテクさん
はぴテクさん

「思春期に気分の張りが落ちてくること自体」は、世界共通の、ごく標準的な発達の姿だと言えます。この研究では性別も、国も、測り方も関係なく、同じパターンが出ました。体の急成長、脳の変化、勉強が難しくなる、人間関係が複雑になる——負荷が積み重なる時期なんです。

相談者

なるほど…。私、「昔はあんなに笑ってたのに」って、小学生の頃と比べちゃってました。

はぴテクさん
はぴテクさん

それ、多くの親御さんがやりがちなんです。でも比べる基準を「小学生の頃の本人」に置くと、どの子も下がって見えてしまう。基準は「思春期はみんな少し下がるもの」に置き直してあげてください。

相談者

ちょっと気が楽になりました。…でも、じゃあ放っておいていいんですか?「みんな下がるなら仕方ない」で。

はぴテクさん
はぴテクさん

そこなんです。この研究にはもう一つ、今度は逆に「放っておかないで」という発見があるんですよ。

相談者

逆の発見?

はぴテクさん
はぴテクさん

幸福度の「順位」はかなり安定している、ということです。つまり、幸福度が高めの子は数年たっても高めのまま、低めの子は低めのまま、になりやすい。この安定度は、性格と同じくらいの強さでした。

相談者

えっ…それって、今低い子は、ずっと低いままってことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

放っておくと、そうなりやすい、ということです。「思春期だから仕方ない」と全員を同じに扱うと、もともとしんどい位置にいる子は、みんなと一緒に下がりながら、低い位置に居続けてしまう。

相談者

うちの子は、どっちなんだろう…。

はぴテクさん
はぴテクさん

だからこそ「変化の向き」と「位置」を分けて見てあげてほしいんです。少しずつ元気が減るのは標準的な変化。でも、友達と全く会わなくなった、好きだったことを全部やめた、眠れていない——そういう「その子の中での大きな変化」や「明らかに低い位置」のサインは、思春期のせいにせず、ちゃんと立ち止まる。

相談者

なるほど、「みんな下がる」と「うちの子が心配な位置にいる」は別の話なんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

その通りです。そしてここに希望もあって。順位の安定性は、大人になるにつれてどんどん固まっていくんですが、思春期の時点では「まだ固まりきっていない」ことも分かったんです。

相談者

固まりきっていない…つまり、まだ変われる?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい。研究者たちも「だからこそ思春期は、幸福度を支える働きかけのチャンスだ」と述べています。大人になってからより、今の方が動かしやすい可能性があるんです。

相談者

具体的には、親は何をすれば…?

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究自体は「何が効くか」までは調べていないので、そこは正直に言っておきますね。ただ、この研究が教えてくれるのは「継続的に見守る価値がある」ということです。一回の「学校どう?」で判断せず、日常の中で長い目で様子を見続ける。「別に」が返ってきても、聞ける関係を保っておくこと自体が見守りになります。

相談者

一発で聞き出そうとしなくていいんですね。ちなみに、最近の子は特にしんどい、みたいな話も聞きますけど…。

はぴテクさん
はぴテクさん

実はこの研究でも、2000年以降に生まれた世代は、前の世代より下がり幅が大きい傾向が出ました。スマホやSNSとの関連が議論されていますが、この研究はスクリーンタイムを直接測っていないので、原因の断定はできません。ただ「今の10代は、親世代の10代より風当たりが強いかもしれない」と思って見てあげる価値はあります。

相談者

自分の中学時代と比べて「それくらい普通でしょ」って言わない方がいい、と。

はぴテクさん
はぴテクさん

素晴らしいまとめです。「下がるのは普通。でも、位置は見守る。そして今なら、まだ動く」——この3つを持ち帰ってもらえたら嬉しいです。

相談者

はい。娘の「別に」に、ちょっと長い目で付き合ってみます。ありがとうございました!

■ 今日のまとめ

  • 思春期の幸福度は、世界共通で毎年少しずつ下がる。急落ではなく、じわじわと。だから「昔と比べて元気がない」こと自体は標準的な発達の姿
  • 一方で幸福度の「順位」は性格並みに安定していて、低い位置の子は低いままになりやすい。「みんなの変化」と「その子の位置」を分けて見守ることが大切
  • 順位の安定性は思春期にはまだ固まりきっていない。つまり今が、幸福度を支える働きかけのチャンス

■ 出典・注意事項

  • Wu, Y.-J., Becker, M., & Scherer, R. (2026). Changes in and Stability of Well-Being During Adolescence: A Systematic Review and Meta-Analysis of Longitudinal Studies Over Two Decades.(プレプリント版1.0、2026年7月31日)

  • 本論文は査読前のプレプリントであり、数値や結論は今後修正される可能性があります

  • 160の縦断研究・55万人超のメタ分析ですが、データは欧州・アジア・北米の高所得国が中心で、16歳未満が大半です

  • 「毎年の低下」は集団の平均の話であり、個々の子どもの経過はさまざまです。対話中の「見守り方」は研究結果からの示唆であり、この論文が介入効果を検証したものではありません。お子さんの状態に強い心配がある場合は、学校や専門機関にご相談ください

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

論文の紹介はこちら😊
10代の幸せ 〜20カ国55万人を追いかけた調査結果〜
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-08-01-1785574320/

はぴテクさんのウェルビーイング相談室 なんとかなる 子ども・若者の幸福感情・レジリエンス

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