2026.07.31

幸せをお金に換算するWELLBY -日本では、生活満足度1点/年あたり151万円-

幸せをお金に換算するWELLBY
-日本では、生活満足度1点/年あたり151万円-

イギリスには、幸せの値段表とも言われるWELLBYという考え方があります。
これを使えば、
人生満足度(0〜10点)で1年間1点変化すること = 1 WELLBY。
とお金に換算できます。
(2019年価格で1WELLBY=約13000ポンド。約17000ドル。)

まぁ幸せをお金に変換してどうなんだ、という話もありますが、
国や自治体での取り組みでは大切で、
WELLBYを使えば、いくらの投資で、どのくらいの社会的価値を生んだか。を算出したり、比較出来たりします。

で、このWELLBYを日本でも算出したよ!という千葉大学の最新研究😍

日本においては、
1 WELLBY = 151万円❗
生活満足度(0〜10点)で1年間1点変化すること = 1 WELLBY = 151万円の価値があります。
幸福度を高める取り組みは、本当に価値があるんです😍

ちなみに、この考え方をベースに、ちょっと仮説を置いて、ばっくり試算すると、
弊社はぴテックは日本において500億くらいの価値を産みだしています😍(幸福度診断WBCのみで)
なのに、何故・・・😂

そして、他の項目の価格表も作成頂きました😍
※ただし、100点満点から9点満点まで、満点の点数が違うので、
どれが幸せに効くか、という比較は出来ません。
→例えば、何か取り組みを行う際に、参加者のWHO-5が1点向上した!のであれば21.5万円分の価値があるというように使えます。
▼プラスの価値(1点上がるごとの年間価値)
・認知的社会関係資本(地域への信頼・愛着・互酬性):+34.3万円
・WHO-5(心理的ウェルビーイング):+21.5万円
・食品多様性(DVS):+17.3万円
・運動自己効力感(ESES):+13.5万円
・周囲からのサポート実感(MSPSS):+13.3万円
・社会的ネットワーク(LSNS-6):+12.0万円
・運動への態度(EAS):+9.7万円
・ヘルスリテラシー(HLS-Q12):+6.4万円
・デジタルヘルスリテラシー(DHLI):+5.7万円
・食の自己効力感(WEL-SF):+4.6万円
・食の自己効力感(ESEBS):+4.0万円
▼マイナスの価値(1点悪化するごとの年間損失)
・孤独感(UCLA-3):−51.3万円
・不眠(AIS):−24.0万円
・抑うつ症状(PHQ-9):−22.6万円
・PMS症状(PMS-8):−6.9万円
・更年期症状(SMI):−3.8万円
・統制不能な食べ方(TFEQ-UE):−2.3万円
・感情的な食べ方(TFEQ-EE):−2.3万円
▼有意でなかった項目
・意識的な食事制限(TFEQ-CR):+0.4万円(統計的に意味のある関連なし)
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■紹介記事
健康・社会関係・健康行動の価値を「円」で見える化~全国調査で、生活満足度1点・1年間の価値は約151万円と推定~
千葉大学
日本の研究.com,2026/7/30
https://research-er.jp/articles/view/158645
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■論文
The Monetary Value of Health and Health Behaviors in Japan: A Well-Being Valuation Approach
Value in Health , 2026/7/12
https://doi.org/10.1016/j.jval.2026.05.008

生活満足度 1点↑ 所得と生活満足度の関係 (操作変数法) 等価世帯所得↑ 円換算 同じだけ生活満足度を 変える所得額 各指標と生活満足度の関係 (回帰分析) 健康・社会関係・ 健康行動の各指標 幸福の値札 目に見えない「心の豊かさ」を 経済価値に換算する 川口賢二郎ら(2026)の研究に基づく NotebookLM なぜ、私たちは大切なものを見落とすのか? コーヒー1杯、車1台の値段は誰もが知っています。 しかし、「ぐっすり眠ることや「友人語らいには市場価格がありません。 値段がないものは、社会の政策や予算から見落とされがちです。 The Market プレミアム・ラテ 小時 ¥500 The Problem ぐっすり眠ること 友人語らいこと ¥??? Notebooklm 「医療費」から「幸福度」へ。価値の測り方が変わる。 従来の測り方(医療費アプローチ) MEDICAL BILL [医療費請求書のイラスト] 治療費 + 労働損失 「生きていく上の 本当の苦痛や喜びを無視している」 新しい測り方(ウェルビーイング評価法) [心臓と天秤のイラスト] 生活満足度 への影響 「人が感じる『本当の豊かさ』を 直接測る」 幸福の 幸福の「為替レート」 を計算する 不幸症による 幸福度の低下 同じだけ幸福度を回復 させるのに必要な金額 ¥1,000,000 収入が幸福度に与える影響と、 健康状態が幸福度に与える影響。 この2つを統計的に結びつけることで、 「心の変化」を「日本円」に換算する 画期的なアプローチです。 NotebookLM 新しい幸福の通貨:「WELLBY」 1WELLBY=151万円 1WELLBY(ウェルビー)とは、「1人の生活満足度(10段階)が、1年間、1ポイント上昇すること」の価値。 この研究により、日本における1WELLBYの価値は約151万円であることが判明しました。 日本人1万4,736人のデータを徹底解析 2025年に実施された全国調査。19の健康・行動指標が、私たちの「お財布」 と「心」にどれほどのインパクトを与えるのかを算出しました。 1. 身体的習慣 2. メンタルヘルス 3. 社会的つながり 身体的習慣の「値札」 食の多様性 +17.3万円 不眠症 -22.4万円 バランスの取れた食事は年間17万円以上の価値を生み、、眠れない夜は22万円以上の豊かさを奪っていきます。 メンタルヘルスの「値札」 良好な精神状態 +21.5万円 ☀️ 抑うつ症状 -22.6万円 🌧️ 心の健康状態は、単なる気分の問題ではありません。それは数十万円規模の 明確な「経済的損失・利得」として私たちの生活にのしかかっています。 社会的つながりの「値札」 地域のつながり・信頼 +34.3万円 孤独感 -51.3万円 調査された全19項目の中で、 最も劇的な経済インパクトを 持っていたのは 「人とのつながり」でした。 孤独は、最も高くつく代償です。 Notebook 結論:「孤独のペナルティ」と「コミュニティのプレミアム」 社会・身体的要因のスペクトラム Zero(0万円) -51.3万円 孤独感 地域のつながり +34.3万円 -22.6万円 抑うつ 精神状態 +21.5万円 -22.4万円 不眠症 食の多様性 +17.3万円 Zero(0万円) Glassmorphism Insight Box データを俯瞰すると、一つの真実が浮かび上がります。食事や運動といった身体的な要素よりも、「社会とのつながり」が、日本の幸福経済において圧倒的に大きなウェイトを占めているのです。 この「値札」が社会を変える(SROI分析) 予算の使い道を決める際、これまで「効果が見えにくい」と後回しにされてきた社会的事業が、実は驚異的な投資効果(社会的投資収益率)を生むことが証明できます。 The SROI Flowchart 街が 「コミュニティ 事業」に 1億円 を投資 1,000人の参加者の 「孤独感」が 2ポイント改善 Valuation 1,000人×2pt×51.3万円 約10億円の ウェルビーイング価値 純利益 9億円 以上 つながりへの投資は、 最高の経済政策である。 「幸福」はもはや、曖昧な概念ではありません。 良質な睡眠をとり、心を通わせる友人を持ち、 地域とつながること。 それらは私たち個人にとってかけがえのない財産 であると同時に、社会全体を豊かにする最も 重要な投資です。 詳細な研究データはこちら: ispor.org/wellby-2026
投稿者によるコメント・補足(5件)
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【背景】
■この研究の前提となる既存研究
〜なぜ「幸せをお金に換算する」研究が必要だったのか〜
▼1. 出発点:政策の価値を「見える化」したいという要請
・政策の社会経済的インパクトを数量化することは、公共政策の根本課題とされてきた(The Green Book, GOV.UK, 2022)
※Green Book=英国政府が政策評価の方法を定めた公式ガイドライン。この分野の世界標準的な存在
・その代表的手法がSROI分析(Nicholls et al., 2012)
※SROI(社会的投資収益率)=「投資1円あたりどれだけの社会的価値を生んだか」を計算する手法。事業同士の比較ができる
・ただしSROIを行うには、市場価格のない「非市場財」に値段をつける必要がある
※非市場財=健康、孤独の解消、地域のつながりなど、お店で売買されないため価格が存在しないもの
・公衆衛生のアウトカムには市場価格がほとんどないため、価値が過小評価され、資源配分の失敗や投資不足につながる恐れが指摘されてきた(Fujiwara, 2019)
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▼2. 従来の金銭評価手法と、その限界
ここが本研究の問題意識の核心です。「値段のないものに値段をつける」方法はすでに複数あるが、それぞれ弱点があると整理されています。
・疾病費用法(Cost-of-Illness研究)
 治療費や労働生産性の損失を積み上げる方法。例えばうつ病の経済的負担の推計(Greenberg et al., 2015)が有名
 → 弱点:治療費と収入減しか見ないため、生活全体への広い影響を取りこぼす(US EPA, 2024)
・顕示選好法
 ※人々の実際の行動(例:静かな住宅地に高い家賃を払う)から価値を逆算する方法
 → 弱点:「使わなくても存在すること自体に感じる価値(非利用価値)」を捉えられない
・表明選好法(WTP:支払意思額)
 ※「孤独が解消されるならいくら払いますか?」と直接尋ねる方法
 → 弱点:実際にお金を払うわけではないので、金額を過大に答えてしまう「仮想バイアス」が生じる(Murphy et al., 2005; Harrison & Rutström, 2008)
・QALY(質調整生存年)
 ※医療技術評価の世界標準。生存年数を健康状態の質で重みづけした指標(NICE, 2013)
 → 弱点:あくまで「健康関連」の生活の質に限定され、人間関係など幸福のより広い要因を捉えられない(Pettitt et al., 2016)
ーー
▼3. 幸福度評価法(WVA)の登場
・こうした限界を埋める方法として登場したのがWVA(Well-being Valuation Approach:幸福度評価法)(Fujiwara, 2019)
※WVA=大規模調査データを使い、「あるアウトカム(例:孤独)が幸福度に与える影響」と「所得が幸福度に与える影響」を統計的に推定し、両者を突き合わせて「そのアウトカムは所得いくら分に相当するか」を逆算する方法
・WVAの理論的な強みは3点に整理されています
 ・回答者に金額を直接尋ねないため、質問の仕方が答えを歪める「プライミング効果」や、特定の側面だけに注意が向く「フォーカシング効果」を避けられる
 ・実際の経済状況の観察に基づくため仮想バイアスが小さい
 ・医療費や収入だけでなく、その状態が人生に与える影響の全経路を捉えられる(Fujiwara, 2019; Fujiwara & Campbell, 2011)
・本研究が採用した「3段階WVA」の手続き自体も先行研究で確立されたもの(Fujiwara, 2013)
※3段階=①所得→幸福度の因果効果を推定、②健康アウトカム→幸福度の関連を推定、③両者の比から金額(補償余剰)を計算。補償余剰=「その変化と引き換えにしてもよい所得額」のこと
ーー
▼4. 方法論上の難所:「所得と幸福」の因果をどう取り出すか
・WVAの泣きどころは、所得と幸福度の関係に「内生性」があること
※内生性=相関があっても因果とは限らない問題。例えば、明るい性格の人ほど稼ぎも幸福度も高い(第三の要因)、幸福だから稼げる(逆の因果)など
・その解決策として先行研究が用いてきたのが操作変数(IV)法
※操作変数法=「所得には影響するが、幸福度には所得を通じてしか影響しない」変数を使って因果効果だけを取り出す統計手法
・操作変数の候補として、宝くじの当選(Fujiwara, 2013)や親の学歴(Fujiwara & Campbell, 2011)が使われてきた。親の学歴が子の所得に影響することは実証されている(Lee et al., 2024)。本研究は親の学歴を採用
ーー
▼5. WELLBYという共通単位の提案
・近年、幸福研究と政策をつなぐ単位としてWELLBYが提案された(Frijters et al., 2024)
※WELLBY(幸福調整生存年)=「人生満足度(0〜10点)が1点、1人で1年間変化すること」を1単位とする指標。QALYの幸福版
・英国財務省はすでにGreen Bookの補足ガイダンスでWELLBYを政策評価に組み込み、1 WELLBY=約13,000ポンド(2019年価格、約17,000ドル)という基準値を設定している(HM Treasury, 2021)
・つまり英国には「幸福の値段表」が既にあるが、日本にはなかった——これが本研究の直接の空白地帯です
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▼6. 先行研究による推定値の蓄積
本研究の結果の妥当性を判断する物差しとして、所得→幸福度の係数の先行推定値が参照されています。
・英国パネルデータ+宝くじ当選をIVに用いた推定:1〜7点尺度で1.10(0〜10点換算で約1.84)(Fujiwara, 2013)
・離散選択実験に基づく推定:1〜7点尺度で1.25(換算で約2.08)(Dolan & Fujiwara, 2016)
・英国データ+家財保険をIVに用いた推定:0〜10点尺度で2.20(Himmler et al., 2020)
→ 本研究の2.27はこれらと整合的な水準
個別アウトカムについても先行研究があります。
・うつのWVA評価(Andrén, 2023)、同じ健康状態でも手法により価格が変わる問題の検証(Powdthavee & van den Berg, 2011)——いずれも欧州・英国データ
・社会的サポートの価値:香港での検証(Chan & Wong, 2022)、日本での生活満足度アプローチによる検証(Yodo & Uchida, 2022)
・睡眠不足の経済損失の国際比較(Hafner et al., 2017)
・ヘルスリテラシーの低さが生むコストの系統的レビュー(Eichler et al., 2009)
※ヘルスリテラシー=健康情報を入手・理解・活用する力
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▼7. なぜ「日本独自の値段表」が必要なのか
・幸福の金銭価値は文化によって異なりうる。特に、他者との相互依存を重んじる文化圏では、情緒的サポートの意味や効果が独立性重視の文化圏と異なることが示されている(Uchida et al., 2008)
・社会的結束を重視する日本では、社会的孤立やメンタルヘルスの影響が欧米と異なる可能性があり、国別の価値セットが必要——というのが本研究の立論です
・日本でのWVA適用例は、多重役割を担う女性の健康損失の評価(Kumagai, 2021)や、コロナ禍の子育て労働者の健康損失の評価(Kumagai et al., 2025)など個別テーマでは存在したが、19の健康・行動アウトカムを包括的に金銭化した研究は本研究が初
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■まとめ:既存研究の流れ
・政策評価には非市場財の金銭化が必要(Green Book; SROI)
・従来法(疾病費用法・WTP・QALY)には各々の限界
・WVAがその限界を補う手法として確立(Fujiwara系の一連の研究)
・WELLBYという共通単位が登場し、英国では基準値も整備(Frijters et al., 2024; HM Treasury, 2021)
・しかし幸福の価値は文化依存(Uchida et al., 2008)で、日本の包括的な値段表は空白
→ そこで本研究:日本初の「健康・幸福の円建て価値カタログ」の作成へ

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【研究内容】
この論文(Kawaguchi et al., 2026)の本体部分(方法・結果・考察)を、話の流れが分かるように整理しました。
■研究の内容
〜日本初「健康と幸福の円建て価値カタログ」はこう作られた〜
▼1. 方法:誰に何を聞いたのか
・2025年2〜3月、楽天インサイトのパネル(登録者200万人超)を使った全国インターネット調査
・日本の年齢・地域分布に合わせた割当抽出で、20〜79歳の成人14,736名を分析対象とした
※割当抽出=母集団の構成比(年齢・地域など)に合わせて回答者を集める方法。ネット調査の偏りをある程度補正できる
・回答者の負担を減らすため、対象者をランダムにグループA(7,350名)とグループB(7,386名)に分け、別々の質問セットに回答してもらった
・測定したのは5領域・19アウトカム。すべて検証済みの心理尺度を使用
 ・メンタルヘルス:WHO-5(心理的ウェルビーイング)、PHQ-9(抑うつ症状)
 ・社会的健康:LSNS-6(社会的ネットワークの大きさ)、認知的社会関係資本(地域への信頼・愛着・互酬性)、UCLA-3(孤独感)、MSPSS(周囲からのサポート実感)
 ・健康行動:不眠(AIS)、運動への態度・自己効力感、食行動5種(統制不能な食べ方、感情的な食べ方、意識的な食事制限、食の自己効力感、食品多様性)
 ※自己効力感=「自分はそれをうまくやれる」という自信のこと
 ・ヘルスリテラシー:一般(HLS-Q12)とデジタル(DHLI)
 ・女性の健康:PMS(月経前症候群)症状、更年期症状(SMI)
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▼2. 方法:どうやって「円」に換算したのか(3段階の推定)
・幸福度の指標は人生満足度(0〜10点)「全体として、あなたは自分の人生にどのくらい満足していますか」。頑健性チェック用に幸福感も同じ尺度で測定
▼第1段階:所得→幸福度の因果効果を推定
・前回の解説で触れた「内生性」問題(明るい性格の人は稼ぎも幸福度も高い、など)に対処するため、父親・母親の学歴を操作変数として2段階最小二乗法(2SLS)で推定
※2SLS=操作変数を使って因果効果を取り出す代表的な統計手法。「親の学歴→本人の所得→幸福度」という経路だけを抽出する
・所得は世帯人数で調整した等価世帯所得の対数を使用
※対数を使う理由=所得の効果は「100万円の増加」ではなく「所得が2倍」のような比率で効くため(限界効用逓減:稼ぐほど1円の重みが減る)
▼第2段階:各健康アウトカム→幸福度の関連を推定
・19の尺度それぞれについて、幸福度への影響の大きさ(係数)を回帰分析で推定
・年齢、性別、婚姻状態、就業状態、持ち家、家族数、子ども数、都市規模など9つの変数を統制
▼第3段階:金額(補償余剰)の計算
・第1段階と第2段階の係数の比から、「その健康変化は所得いくら分に相当するか」を計算
・基準となる所得は、2024年国民生活基礎調査の中央値ベースで276万円(等価世帯所得)に設定
・信頼区間はブートストラップ法(1万回の再抽出)で算出
※ブートストラップ法=データから何度も再抽出して推定を繰り返し、結果のブレ幅を測る方法
・あえて1本の式にまとめず3段階に分けた理由も明記されています:健康変数を所得推定式に入れると操作変数の前提が崩れる恐れがあること、予測所得と健康指標の相関で推定が不安定になること(多重共線性)の2点
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▼3. 結果①:土台となる所得→幸福度の関係
・回答者の平均年齢51.1歳、男性61.3%、人生満足度の平均は5.9点(10点満点)
・操作変数の診断統計はすべて基準をクリア(弱操作変数の懸念なし)
※弱操作変数=操作変数と所得の関係が弱すぎて推定が信頼できなくなる問題。F統計量10以上が目安とされ、本研究は89.2と41.2
・対数所得→人生満足度の係数は2.27(父親学歴IV)
・意味:所得が約2.7倍になると人生満足度が2.27点上がる、という強さの関係
・この値は先行研究(換算値1.84〜2.20)と整合的
・注目点:操作変数を使わない通常の回帰では係数0.53と大幅に小さい。著者らは、IVが捉えるのは「親の学歴が所得に効いた人々」の効果(局所平均処置効果)であり、全人口の平均とは異なりうると注意しています
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▼4. 結果②:19アウトカムの値段表
・19アウトカム中18が人生満足度と有意に関連(p<.001)。唯一の例外は意識的な食事制限(TFEQ-CR)
▼プラスの価値(1点上がるごとの金額)
・認知的社会関係資本:+34.3万円(最高額)
・WHO-5(心理的ウェルビーイング):+21.5万円
・食品多様性:+17.3万円
・運動自己効力感:+13.5万円
・周囲からのサポート実感(MSPSS):+13.3万円
・社会的ネットワーク(LSNS-6):+12.0万円
・ヘルスリテラシー:+6.4万円
▼マイナスの価値(1点悪化するごとの損失)
・孤独感(UCLA-3):−51.3万円(最大の損失)
・不眠(AIS):−24.0万円
・抑うつ症状(PHQ-9):−22.6万円
・PMS症状:−6.9万円
・更年期症状:−3.8万円
・統制不能な食べ方・感情的な食べ方:各−2.3万円
・重症ケースを二値(該当/非該当)で見ると金額はさらに大きく、重度抑うつ(PHQ-9が10点以上)は約367〜373万円、社会的孤立は約145〜147万円の損失に相当
▼WELLBYの値段
・1 WELLBY(人生満足度1点×1人×1年)=約151万円(約1万ドル)
・英国の基準値13,000ポンド(約1.7万ドル)よりやや低め。著者らは所得水準、幸福の回答スタイルの文化差、操作変数の違いを理由として挙げています
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▼5. 結果③:頑健性チェック
・幸福感を使っても、母親の学歴をIVにしても、平均所得ベース(361万円)でも、本人の学歴を統制しても、結果の方向と序列は維持された
・唯一の注意点:3段階ではなく所得と健康を同時に1本の式で推定すると、19中17は方向が一致したが、食行動2尺度(統制不能な食べ方・感情的な食べ方)は符号が反転した。この2つの金額は特に幅を持って見る必要がありそうです
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▼6. 考察:この結果は何を意味するのか
▼メンタルヘルスと人間関係の重さ
・最大の損失は孤独、次いで抑うつ。英国・欧州のWVA研究(Andrén, 2023; Powdthavee & van den Berg, 2011)と同じパターン
・社会的つながりの価値の高さは香港・日本の先行研究(Chan & Wong, 2022; Yodo & Uchida, 2022)とも一致
・社会的結束を重んじる日本では、つながりを育む政策の社会的リターンが高い可能性を著者らは指摘
▼健康行動の新規の値づけ
・不眠の損失(−24.0万円)は抑うつ(−22.6万円)に匹敵。睡眠不足の経済損失を示した国際比較(Hafner et al., 2017)と整合的
・食品多様性や運動自己効力感のプラスの価値は、生活習慣と幸福をつなぐ研究(Firth et al., 2020など)と整合的
▼食行動の興味深い分かれ方
・「統制不能な食べ方」「感情的な食べ方」はマイナス、「意識的な食事制限」は関連なし
・食の乱れ(制御の喪失)は心理的不調のマーカーだが、意識的なコントロール自体は幸福度と独立——という文献(Yavorivski et al., 2025)と整合的な結果
▼WTPとの方法論的な違い
・WTPが測るのは選択の瞬間の「決定効用」、WVAが測るのは実際の生活での「経験効用」
※決定効用=選ぶときに予想する満足。経験効用=実際に味わう満足。人間はこの2つがよくズレる
・WVAは慢性状態への「適応」(人は悪い状態にも慣れる)を織り込める点で補完的
▼政策への使い方(具体例)
・論文中の試算:ある自治体が1億円を投じて1,000人の孤独感(UCLA-3)を2点下げるプログラムを実施した場合、総便益は約10億円、差し引き9億円超の純便益
・こうした計算により、保健・福祉・都市計画など部門をまたいだ予算の優先順位づけが根拠を持って行えるようになる
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▼7. 限界:著者ら自身が挙げる注意点
・横断研究のため因果の確定はできない。特に第2段階(健康→幸福度)は操作変数なしの推定で、逆の因果(幸福だから健康)や第三の要因の影響が残る
・操作変数の前提(親の学歴は所得を通じてのみ幸福度に影響)が破られている可能性。健康知識の伝達や遺伝など別経路がありうる(本人学歴を統制しても結果は安定、とのチェックはあり)
・IVの推定値は「親の学歴が所得を左右した層」の効果で、全人口への一般化には注意が必要
・ネットパネル調査のため、デジタルアクセスが限られる層に一般化しにくい。男性(61.3% vs 全国48.6%)と大卒(53.3% vs 23.1%)が過剰代表
・所得→幸福度の勾配は一律と仮定したが、実際は幸福度が低い人ほど勾配が急(追加分析で確認済み)。つまり、つらい状況にある人にとっての金銭価値はもっと大きい可能性
・幸福度も健康も自己申告のため、回答スタイルの共通性で相関が過大になる共通方法バイアスの恐れ
※共通方法バイアス=同じ人が同じ形式で答えることで、本来より関連が強く見えてしまう歪み
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■まとめ
・日本初の、19の健康・行動アウトカムの包括的な円建て価値カタログが完成
・1 WELLBY=約151万円という日本版の基準値が得られた
・孤独(−51.3万円/点)と抑うつ(−22.6万円/点)の損失が最大級で、社会関係資本(+34.3万円/点)の価値が最高——「つながり」の重みが金額で示された
・SROIや費用便益分析に使える共通の物差しとして、保健・福祉・まちづくりを横断する政策評価の土台になる
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※各項目を比較するには、以下が参考になるかと思います。

▼1SDあたりの金額(参考)
・PHQ-9(抑うつ):−164.5万円
・UCLA-3(孤独感):−143.4万円
・AIS(不眠):−125.8万円
・MSPSS(サポート実感):+104.5万円
・WHO-5:+102.9万円
・SMI(更年期症状):−85.1万円
・認知的社会関係資本:+74.5万円
・WEL-SF:+67.7万円
・LSNS-6(社会的ネットワーク):+66.3万円
・ESES(運動自己効力感):+64.8万円
・PMS-8:−64.3万円
・DHLI:+56.4万円
・TFEQ-EE(感情的な食べ方):−55.2万円
・HLS-Q12:+54.6万円
・EAS(運動への態度):+49.2万円
・TFEQ-UE(統制不能な食べ方):−45.8万円
・ESEBS:+37.1万円
・DVS(食品多様性):+36.2万円
・1SDで見ると、抑うつが孤独を抜いてトップの損失になります。「現実的に起こる程度の変化」で比べるとメンタルヘルスの重さが際立つ、というのがこの見方の含意です

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動画解説はこちら
https://youtu.be/Z5pWK95qPlw

論文紹介 主観的幸福・幸福測定地域・自治体ウェルビーイング研究方法論・指標

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