2026.07.30

日本の超幸せ企業ができるまで。 ー伊那食品工業、ネッツトヨタ南国、生活の木、サイボウズ、西精工、石坂産業、CRAZYー

日本の超幸せ企業ができるまで。
ー伊那食品工業、ネッツトヨタ南国、生活の木、サイボウズ、西精工、石坂産業、CRAZYー

日本の超幸せ企業が、どう幸せ企業になっていったかを、
経営者と従業員、合計21人にじっくりインタビューして、構造化した研究です。
(対象企業が、どこも素敵過ぎる・・・日本で本当に幸せ経営をされている所ばかりです。)
半年前くらいの豊川真美先生、保井俊之先生、前野隆司先生の論文😊
日本語の論文なので、是非読んで頂くのが良いかと思います😍
ーー
一応簡単に結果を共有しておくと、
まず、幸せ企業になっていく4つのステップがあった。
全ては経営者から始まる😍😍😍
STEP1:共鳴
まず、経営者の「幸せについての信念」と
従業員自身の幸福感が重なる。
「この会社の目指す世界、いいな」と思えるところから始まる。
STEP2:信頼形成
経営者が理念を繰り返し語り、目線合わせをする。
その過程で「家族のような愛情」と表現されるほどの
信頼関係ができてくる。
STEP3:従業員同士の活動
経営者が一人ひとりを観察し、悩みを直接聞き、
部署を超えてつながる仕組みを作る。
すると今度は、従業員同士が支え合い、成長し合う。
STEP4:風土になる
従業員が自律的に動き、貢献感を得て、
互いに賞賛し合う「生き生きとした風土」が完成。
その風土に共感した人が社外からも集まってくる。
という流れ😍
ーー
そして、そのステップの中身も、
11グループ・46カテゴリー・131概念に整理頂いています。
まぁ、多くは語らず、中身が素敵すぎるので、是非見てみて下さい❗❗
ーー
これめちゃくちゃ素敵なので、本にして欲しいですね。。。
分析ワークシートとか、全131の概念で全部知りたい。
あとは、きっとこのステップの前に、経営者が信念を形作るプロセスがあるのかなぁとも思いました。
これはこの幸せ企業の方の書かれた本とか参照ですね😍
ーー
また、あくまで、超幸せ企業の形成プロセス。言ってしまえば、大谷翔平物語みたいな。
このプロセスに則って、超幸せ企業を目指すのも良いが、
今より少し幸せにしていくことを考えると、別のアプローチもありますね。
ーーー
M-GTAを用いたWell-being経営実践プロセスの構造化―Well-being実践卓越企業7社を対象に―
豊川真美(慶應義塾大学)・保井俊之(武蔵野大学・叡啓大学)・前野隆司(武蔵野大学・慶應義塾大学)
日本システムデザイン学会誌, Vol.6, No.2, pp.27-40, 2026年2月
https://www.sdsj.org/wp-content/uploads/2026/05/J_SDSJ_V06_N2_02A.pdf

【経営者と従業員の共通項】 【①幸福な世界への道をたどり方】 (経営者の幸福についての俯瞰)(経営者が挙げ幸福経営する目的) (従業員の幸くの幸福感) 【経営者と従業員の関係形成】 【Ⅱ 幸福との道】 ↙ ↘ 【Ⅲ従業員が与える従業員による幸くの道標】 【Ⅲ'従業者が示す従業員の改善に左右される】 (経営者が与える従業員による経営判断力) (従業者が示す従業員の改善に左右され (経営の議業く) (経営者が持つ媒体くような幸愛) ↓ ↓ (会社の課くに対する経営者の思い・実欲) (従業員が感じる経営への安心欲) (従業員が感じる従業者の考え方の適切) (従業員の経営に感じる無い) ↓ ↘ ↙ ↓ 【経営者が孤える従業員士の法則】 【Ⅳ 親密と実践い】 【Ⅳ' 従業員とのくつながりと活動】 【Ⅳ'' 繋き広がる】 ↓ ↓ ↓ (経営者による従業員との対話の骨組) (経営者による従業員とのくつながりと活動 (従業者は利他心で発言広げする) (経営者による5従業員の快求の理解) 柱り) ↓ (従業員との一体感) (経営者による多様性を尊重する企業 (従業員間での公式な場(交流) (従業員の間き→親構を気欲い) (従業員による多様性を尊重する企業 (従業員より生じされる会社への安心欲 (従業員も生きられる会社への安心欲 (従業員間による絆の解決) 【Ⅴ 間い・成長する】 ↓ (従業者による道い方行に歩づく長度の偏軸) (経営者による5従業員の教師) ↓ (従業員が成長できる組ねと文化) (従業員の成長に対するポジティブな認め) (従業員の成長量) ↓ 【経営者が従業員を支援側する具層士】 【Ⅵ 自律的に動する5円間】 ←─→ 【Ⅶ 有機欲を感じる具体活動の広がり】 ↓ ↓ (経営者の従業員を支援する姿勢) (経営者が期待する従業員のあり方まま ↓ (従業者による従業員クリティビティ (従業員が成長できる経営者による現場施働) ティーの実装) (従業員間の支援) ↓ (従業員の一体感) (従業員の資質認識) (従業員のやり済いが行動) (従業員の将別な気量施働) ↓ ↓ ←─ 【Ⅹより良い未来を創る】 【Ⅹ 生き生きした具層士】 ↓ ↓ (経営者による従業員の雇用持生・将来不安 (経 ウェルビーイング経営の の構造体系 実践卓越企業7社にかかに学ぶ、 従業員が輝く エコシステムの作り方 M-GTA分析が解き明かす、個人の幸福と組織の成長 を持続させる「関係性のシステムデザイン」 NoteBookLM ウェルビーイングは「施策の羅列」ではなく「波及するシステム」である 【従来の課題】 制度を導入しても風土として定着せず、点在する「福利厚生」に留まっている。 【本研究の解】 経営システムとしての価値向上。経営者の「想い」から始まり、従業員の「自律的活動」へと波及するプロセスの構造化。 10年以上の風土構築と高い主観的幸福度を誇る卓越企業7社 伊那食品工業 課業・勤労・幸福 「いい会社をつくりましょう」 ネットヨ商国 誠実・価値・自己的・ ポジティブな他者関係 「全社員が人と の闘争となるために」 生活の木 健康・美しさ・Wellness 「自然、健康、楽しさの提供」 サイボウズ チームワーク・ インテグリティ・自律的 「チームワークあふれる社会を創る」 西精工 幸福・成長・つながり・感謝 「大家族主義経営」 CRAZY 美しさ・愛・勇気 「美し合うための闘争と奮気」 石坂産業 役割認識・創造性 「自然と美しく生きる」 計21名(経営者・従業員)に対するM-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)による深度ある質的分析を実施。 ウェルビーイング・エコシステムの成長ジャーニー(全体像) Phase 1: 経営者と従業員の共通渴 (波紋の起点) Phase 2: 経営者と従業員の信頼関係成 (共鳴の構築) Phase 3: 経営者が支える従業員同士の 活動(ネットワークの拡張) Phase 4: 経営者が従業員を支え顧成する 風土(エコシステムの完成) ウェルビーイング経営は、左から右へ連鎖的に波及する 「4つのフェーズ」を経て、確固たる企業風土へと成長する。 Phase 1:経営者の信念と個人の幸福感が同期する 【幸福な世界の追求】 人生の向上と実益の一致、 他者の幸せに対する考え。 【理念の深い共感】 事業理念の深りと、 経営意識を持った 課題参加。 【個人の幸福感】 自分の在り方の重視。 インサイト:単なる利益追求ではなく、経営者が「幸福を目的化」し、 その理念に従業員が深い共感を示すことが全てのエコシステムの土壌となる。 Phase 2:観察と気遣いが「対等な信頼関係」を育む 経営者の行動 【観察と気遣い】 一人ひとりの想いを観察、組織全体 の把握、他者ないし日常会話。 【愛情と信頼の関係】 役職に左右されない 対等な関係性。 従業員の反応 【安心感と親しみ】 家族のように大切にされる感覚、 真答この実感。 インサイト:経営者の絶え間ない観察と無条件の信頼(LMXの質)が、従業員に圧倒的な心理的安全性をもたらす。 Phase 3:信頼のネットワークが「自律的な活動」を誘発する 【多様な心のつながり】 社外の線の広がり、 部署を越えた深い交流。 【経営者の支援】 問いかけに基づく成長の促進、 自律的活動を促す環境整備。 Management Employee Employee Employee Employee Employee Employee Employee Employee Employee 【自律的に活動する仲間】 切磋琢磨し、互いの強みを活かして ポジティブフィードバック(改善案)を出し合う。 インサイト: 経営者が「共創」を掛けることで、心理的安全性を持つ従業員同士が自律的なネットワーク(TMX)を形成し始める。 Phase 4:風士の完成と「社会的貢献感」への昇華 【生き生きとした風士】 日頃的な特質、互いの良さを 発見する仕組み、組織の一体感。 Enterprise 【貢献感を感じる共同活動】 自分の会社が特別に優れて誇らしい感覚。 社会への直接的な波及。 Society 【貢献感を感じる共同活動】 究極的を応える風生活動、 自分の会社が特別に優れて誇らしい感覚。 社会への直接的な波及。 キーインサイト:ウェルビーイング経営の到達点は「内輪の仲良し」ではない。個人の幸福が「自分が直接社会に 貢献している感覚(社会的貢献感)」と結実し、より良い未来を創り出すエネルギーとなる。 理論的統合:なぜ経営者の行動が組織全体を変えるのか? ステップ1:LMXの質の向上 経営者の信念・姿勢・職践により、 従業員と経営者の目双な関係(Leader- Member Exchange)が構築される。 ステップ2:心理的資本の蓄積 従業員は心理的安全と自己効力感を 強得し、プロアクティブに行動し始める。 ステップ3:TMXへの伝播 従業員同士の信の高い相互作用(Team- Member Exchange)が誘発され、組織全体 のウェルビーイングが相乗的に高まる。 結論:優れたLMXがTMXを誘発
📊 wellbeing経営_カテゴリー概念一覧_企業事例付きv2_1.xlsx ダウンロード ↓
投稿者によるコメント・補足(5件)
コメント 1

【背景】
▼ 1. 出発点:なぜ今「well-being経営」なのか
この論文の背景には、大きく3つの流れがあります。
・企業経営の価値向上の中心概念として、well-being経営が注目を集めている(Krekel, Ward & De Neve, 2019)
・企業の経営システムは社会の主要なシステムのひとつであり、その機能向上は社会全体に影響する(Seidl & Mormann, 2015)
・その機能向上の方法論として、ウェルビーイングを「陽に」(=明示的に、正面から)考慮するシステムデザイン方法論が提案されている(前野・前野・保井, 2021; 井上ほか, 2025)
※well-being(ウェルビーイング)とは:生き生きとしている心的状態(Clifton & Harter, 2022)、人生全般にわたるポジティブな心理的機能(西田, 2000; Ryff, 1989)、自分の人生に対する評価(Diener & Suh, 2000)、良好な心の状態(OECD, 2013)などと定義される概念です。この論文は複数の定義を併記しています。
経営者のリーダーシップの重要性(Barnard, 1968)や、企業経営をシステム構築として捉える意義(高橋, 2016)はすでに知られていましたが、「well-being中心のシステムデザインによる企業経営の構造化」という研究はまだ蓄積が始まったばかり——これがこの論文の出発点です。
ーー
▼ 2. 政策的な後押しと日本の現状
・well-being経営(経営者と従業員のwell-beingを明示的に考慮した経営。前野, 2023)は、人的資源管理(HRM:人を「資源」として採用・育成・評価する経営の仕組み)の重要課題とされる(Guest, 2017)
・経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」も、従業員のwell-beingを高める視点を経営に取り込む必要性と、それが中長期的な企業価値の向上に寄与することを指摘(伊藤, 2022)
一方、日本の現状は厳しいものがあります。
・日本の就労者のwell-beingは、世界18カ国・地域の主要都市の中で低位にとどまる(パーソル総合研究所, 2022)
・日本の就労者は内向き志向でキャリア自律性が低く、職業生活における幸福感を低下させる組織文化があるとされ、欧米以上にwell-beingのあり方を考える必要がある(上出・大坊, 2012)
つまり「必要性は高いのに、実態は低い」——だからこそ経営システムがウェルビーイングデザインの主要な対象になる、という論理です。
ーー
▼ 3. 従業員のwell-beingは業績につながる、という知見
well-being経営の実証的な土台となる研究群です。
・従業員のwell-beingの高さと勤務先企業の業績には正の相関がある(De Neve, Kaats & Ward, 2023)
・well-beingが高い従業員は、生産性が平均31%高く、創造性は約3倍、顧客から高評価を得る可能性も高い(Lyubomirsky, King & Diener, 2005)
・well-beingが高い従業員はプロアクティブに行動する(Cooper-Thomas et al., 2014)
※プロアクティブな行動とは:指示を待つのではなく、積極的に環境に適応し、自らイニシアチブを発揮して組織の使命を果たし問題を解決するふるまいのこと(Leavitt, 1988)。
ここから一歩進んで、「企業は社員のwell-beingを追求する責任を持ち、それを実現する存在である」という考え方も台頭しています(坂本, 2017)。この立場に立つと、業績と従業員のwell-beingの両立を目指す経営アプローチが重要になります(森永, 2019)。
ーー
▼ 4. どうすれば実現するのか:経営者の役割と「関係性」の研究
・well-being経営の実現には、経営者が率先垂範する(自ら手本を示す)ことが効率的(Clifton & Harter, 2022)
・各種施策により企業と従業員の間に良好な雇用関係が構築され、従業員のwell-beingが向上し、個人と組織の成果に結実する——というモデルが提示されている(森永, 2023)
そして近年、well-being経営の研究アプローチとして注目されているのが、組織内の「関係性」に着目する2つの理論です。
・LMX(Leader-Member Exchange:リーダー・メンバー交換関係)研究——経営者と従業員の関係を「リーダーとフォロワー」の二者関係と捉え、その関係の質を分析する理論(Graen & Uhl-Bien, 1995)。質の高いLMXは従業員のwell-beingに効果的(Epitropaki & Martin, 2005; Gerstner & Day, 1997)
・TMX(Team-Member Exchange:チーム・メンバー交換関係)研究——チームを中心とした組織内の、メンバー同士の社会的交流の質を探求する理論(Kamdar & Van Dyne, 2007)。well-beingが高い従業員はTMXが高く、プロアクティブ行動も多い(Boudrias et al., 2021)
ざっくり言えば、LMXは「上司(経営者)との関係の質」、TMXは「仲間同士の関係の質」に注目する研究系譜です。
ーー
▼ 5. 何がまだ分かっていないのか:研究のギャップ
ここまでの知見は豊富に見えますが、著者らは4つの限界を指摘します。
・組織「全体」に着目した研究は多くない(小川ほか, 2019)。ここでの組織全体とは、多数のサブシステムが相互作用する複雑システム(complex system:要素同士が絡み合い、全体の振る舞いが単純には予測できないシステム)を指す(高橋, 2000)
・概念的な枠組みを提示する研究はある(Guest, 2017; 森永, 2023)ものの、包括的な「構造化」はこれから
・well-being経営の「形成プロセス」に関する研究の蓄積は萌芽段階(森永, 2019)。これまでの研究の多くは一時点での横断的分析(ある瞬間のスナップショットを分析する方法。時間的な変化やプロセスは捉えられない)にとどまる(Crook et al., 2011; 一守, 2022)
・研究の中心は、個別企業のwell-being施策の事例報告や構成要因の提示(上田, 2023; 2024)、理念経営と企業風土の文脈での概念提示(佐野・若林, 1987)、経営者の経営哲学に関する文献(天外, 2008)などで、一般的なモデルの可視化・構造化を体系的かつ統合的に行ったものはない
なお、著者らはwell-being経営と「健康経営」の違いも明確にしています。健康経営が従業員の身体的健康を主眼とするのに対し、well-being経営は職場や人生での「良好な状態」「満たされた状態」を目標とし、同僚を含むステークホルダー(利害関係者)との関係の中での幸福感の醸成に重きを置く(上田, 2023)、という区別です。
ーー
▼ 6. そこで本研究は
以上を踏まえて、この論文の位置づけはこうなります。
・複数のwell-being経営実践企業を「横断的に」分析し
・経営者と従業員、従業員同士の「相互作用」を軸に
・well-being経営の実践プロセスの一般的なモデルを可視化・構造化する

コメント 2

【研究内容】
▼ 1. 方法:誰に、何を、どう聞いたのか
◆ なぜM-GTAなのか
本研究の目的は「従業員のwell-beingが向上するプロセス」の解明です。プロセス(時間とともに変化していく過程)や思考を解明するには、数値ではなく語りを分析する質的研究法が適しています。
そこで採用されたのが M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)です(木下, 2007; 2020)。
※M-GTAとは:インタビューデータを繰り返し比較しながら「概念」を抽出し、概念間の関係を整理・統合して、人間の行動や相互作用が変化・展開していくプロセスを理論として導き出す分析手法。データに根ざして(grounded)理論を作るのが特徴で、複雑な人間現象の研究や、結果の実践活用に向いているとされます。
◆ 対象企業の選定:4つの条件
「従業員のwell-beingが高い企業」を客観的に選ぶため、4条件を設定しています。
・(1)従業員幸福度または従業員満足度が一般的な企業より高い
・(2)理念にwell-beingと関連する事柄が含まれている
・(3)時間をかけて風土を構築している(創業10年以上)
・(4)社会的評価がある
条件(3)の根拠が丁寧で、ウェルビーイングが組織文化として根づくには複数年の継続的取り組みが不可欠という指摘(Ehnert, 2009; Kramar, 2014)、良い経営の確立には10〜20年を要する(坂本, 2017)、組織風土の形成には10年以上を要する(鎌形ほか, 2001)といった先行研究を総合しての設定です。
条件(1)(4)の判定には、3つの賞・ランキングの受賞歴が使われました。
・ホワイト企業大賞:生きがい・倫理風土・幸福度・心理的安全性に関する質問が40問中30問を占めるアンケートを全社実施する賞
・働きがいのある会社ランキング:世界約60カ国・7000社超が参加する世界最大の従業員アンケート調査。3年以上かつ3位以内の入賞を条件とした
・日本で一番大切にしたい会社大賞:従業員とその家族、外注先・仕入先、顧客、地域社会、株主の5者を幸せにしながら業績が向上する会社を顕彰する賞
◆ 選ばれた7社と21名
伊那食品工業、ネッツトヨタ南国、生活の木、サイボウズ、西精工、石坂産業、CRAZYの7社。いずれもwell-being経営の実践で著名な企業です。
対象者は各社の経営者(7名)と従業員(各社2名・計14名)の合計21名。従業員は部署や世代による思考の偏りを避けるため、年齢と所属部署が異なる2名ずつを選出しています。
◆ 調査と分析の手続き
・2022年5月〜9月に半構造化面接(質問票をベースにしつつ、対話の流れに応じて追加質問もする面接法)を実施
・質問項目は、倫理風土モデル(Martin & Cullen, 2006)、職業生活における幸福因子尺度(井上ほか, 2022)、日本人就労者用プロアクティブ尺度JPPS-14(西山, 2008)、生きがい意識尺度Ikigai-9(今井ほか, 2012)、貢献感尺度(橋本, 2015)など、既存の尺度研究に基づいて設計
・面接の逐語記録から概念を抽出し、「理論的飽和化」(データを追加しても新しい概念が出てこなくなる状態。分析の完了目安)に達するまで分析
・客観性の担保のため、質的研究で博士号を持つM-GTA有識者3名から途中経過のフィードバックを受けた
ーー
▼ 2. 結果:11のカテゴリーグループと4段階のプロセス
分析の結果、131概念 → 46カテゴリー → 11カテゴリーグループが導出されました。以下、カテゴリーグループを《》で示します。
◆ 11のカテゴリーグループ
・《I 幸福な世界の追求とあり方》
・《II 理念と経営の追求》
・《III 経営者と従業員の愛情と信頼の関係》
・《IV 観察と気遣い》
・《V 従業員同士の多様な心のつながり》
・《VI 縁を広げる》
・《VII 問い成長する》
・《VIII 自律的に活動する仲間》
・《IX 貢献感を感じる共同活動の広がり》
・《X より良い未来を創る》
・《XI 生き生きとした風土》
そして、経営者と従業員の関係性が変化していくプロセスは4区分にまとめられました。
・〔1〕経営者と従業員の共通項
・〔2〕経営者と従業員の信頼形成
・〔3〕経営者が支える従業員同士の活動
・〔4〕経営者が従業員を支え醸成する風土
◆ ストーリーライン:プロセスの流れ
論文のストーリーライン(結果全体を一つの物語として記述したもの)を要約すると、こうなります。
・第1段階:共鳴
最初に従業員のwell-beingが生じるのは《I 幸福な世界の追求とあり方》に触れるとき。経営者の幸せに関する信念や経営目的と、従業員が持つ幸福感が「共鳴」する。つまり、価値観の共通項を従業員が見出すときにwell-beingが向上する。
・第2段階:信頼形成
経営者は《II 理念と経営の追求》の中で、従業員に理念の理解や「先を見通す力」「経営判断力」を期待し、理念の目線合わせを行う。従業員が理念の理解を深める過程で経営者とのつながりが深まり、《III 愛情と信頼の関係》——論文の表現では「家族のような愛情」——が構築される。従業員は「経営者から関心を持たれ、声をかけられている」という実感を持つ。
・第3段階:従業員同士の活動へ
信頼を土台に、経営者は日常的に《IV 観察と気遣い》を行う(従業員の調子を直接観察する、一人ひとりの想いを傾聴する、悩みを直接聞く)。さらに《V 従業員同士の多様な心のつながり》を作るため、部署を超えて自由につながる仕組みを整える。従業員は社外にも信頼を広げ《VI 縁を広げる》。経営者の問いかけと教育で《VII 問い成長する》文化が生まれる。
・第4段階:風土の醸成
《VIII 自律的に活動する仲間》が育つ。ポジティブフィードバック(改善案)が従業員同士から上がり、切磋琢磨し、やり遂げる行動が起こる。経営者は「積極的フォロワー型リーダーシップ」——先頭で引っ張るのではなく、従業員の決断を後ろから支える姿勢——を目指す。組織全体に《IX 貢献感を感じる共同活動》が広がり、従業員には「自社が特別に優れて誇らしい」という感覚と特別な貢献感が芽生える。福利厚生の刷新など《X より良い未来を創る》動きが双方向に起こり、賞賛の仕組みを通じて《XI 生き生きとした風土》が生まれる。この風土が社外からの共感者を集め、《I》に還流して持続的なサイクルになる。
インタビューの生データも印象的です。たとえば「悩みがあるんですよねと言ってて、顔色も悪くて辛そうだと…2万円渡して『はい、これで遊んできて。仕事しちゃダメ。パソコン預かるから』」といった経営者の語りが、【経営者が従業員の悩みを直接聞く】という概念の具体例として示されています。
ーー
▼ 3. 考察:LMXとTMXのレンズで読み解く
考察では、前回整理した2つの関係性理論が分析枠組みとして使われます。
※LMX(リーダー・メンバー交換関係):リーダーとメンバーの二者関係の質に関する理論。TMX(チーム・メンバー交換関係):チームメンバー同士の相互作用の質に関する理論。
◆ 4区分をLMX/TMXで解釈すると
・第1区分(共通項):経営者の信念に従業員が共感し、自分との共通点を見出す。これがLMXの質を高める基盤になる(Nguyen & Shih, 2025)
・第2区分(信頼形成):直接の質の高いコミュニケーションを通じ、家族愛に似た信頼関係を築く。愛情と信頼を軸とする「高いLMX」が生まれるプロセス
・第3区分(従業員同士の活動):経営者が制度や態度で従業員を支援し、成長機会を提供する。仕事の過程で成長機会がもたらされる職場環境は、well-being向上の重要な要素(Spreitzer et al., 2005)
・第4区分(風土):経営者の支援的姿勢が続く。支援的なリーダーシップ行動は助け合う風土と正の相関がある(Li & Fischer, 2007)
そして、従業員が社外も巻き込んで自律的に活動し貢献感を得る行動は、TMXが高まった結果として生じる行動(Seers, 1989)と解釈されます。最終的に賞賛し合う風土が醸成され、well-beingとパフォーマンスが持続的に高まる(Krekel et al., 2019; Schein, 2010)。
つまり全体の構図は「LMXの高まりがTMXの質を醸成し、両者の相乗効果が生まれる」——経営者との縦の関係が先に育ち、それが仲間同士の横の関係を育て、両方が回り出す、という順序です。
◆ もうひとつの興味深いメカニズム
経営者の姿が従業員にとって憧れの存在となり、尊敬が追随を動機づける。やがて「尊敬する人物のように自己を発達させよう」とする自己ピグマリオン過程(尊敬する他者をモデルに、自分で自分を成長させていく心理過程。武藤, 2017)が促され、具体的な指示がなくとも行動できるようになる——という成長促進の説明もなされています。
◆ 本研究の意義
・萌芽段階だったwell-being経営の「形成プロセス」を、概念的枠組みの提示(Guest, 2017; 森永, 2023)を超えて構造化した
・LMX・TMX理論の視点から、経営者と従業員の関係性が時間的経緯とともに変化するプロセスを解明した。これは「関係性の質の変化とwell-beingへの影響の解明」という先行研究の課題提起(Martin et al., 2023)への応答でもある
・今後well-being経営を目指す企業への明示的なベンチマーク(到達目標の目安)となる
ーー
▼ 4. 結論と今後の課題
◆ 結論として示されたこと(論文の挙げる学術的貢献5点)
・従業員のwell-beingが向上するプロセスの可視化・構造化
・11カテゴリーグループ・46カテゴリー・131概念の導出
・LMX・TMX理論に基づく経営者と従業員の関係のダイナミクスと施策の特徴の解明
・well-being経営における経営者と企業風土の「支援的な特徴」の抽出
・構成要因としての「社会的貢献感」(個人が社会とのつながりを感じる感覚)の重要性の提示
◆ 今後の課題
・well-being経営が組織文化として定着するまでの年限の詳細な検討
・外部評価を受けていない優良企業の探究
・海外の優良企業との比較

コメント 3

■ 実際のインタビュー発言例
概念【経営者が従業員の悩みを直接聞く】の分析ワークシートより(表3)
※発言者はすべて経営者です。A=社長(在籍5年)、B=社長(7年)、D=社長(19年)、F=専務取締役(20年)、G=社長(4年)
ーー
▼ パターン1:従業員が直接相談に来る
・B社長
「(私のところに直接)『ちょっといいですか?〇〇さんちょっとお時間いいですか?』と(話に来ます)。実はこうこうこうで悩みがあって。お互い人間同士なんで、そこは相性というか考え方の違いであったり、けど、退職とかではなくてそんな時に部署移動したり。…色んな相談があります」
・G社長
「人生の相談も話しますよ。…悩みをぶつけてくれれば解消するのは得意なタイプだということはみんな知っているので、何かあったらとりあえず〇〇(経営者)さんに話してみようかと来てくれます」
ーー
▼ パターン2:まず聞く、に徹する
・D社長
「応じるかどうかというのは別にして、とりあえずちゃんと聞きます。落ち着いて聞きますということ」
・D社長
「それは個別ミーティングの時に。こんなこと困ってるんですということもあるし、僕に頼み事がある人はどんどんそれも会議してくれるし。ミーティングは1対1もありますし、2対1とかいうのも多いです」
ーー
▼ パターン3:日常の細やかな接点から拾う
・F専務
「従業員の誕生日には『おめでとう』を伝えたりとか、そういった些細なコミュニケーションをしながら、仕事の悩みも個人での生活の悩みも聞きながら。それが、仕事の悩みで解決できることならば会社としても支援しながら」
・F専務
「本人のお気持ちを聞き取りながら対応した」
ーー
▼ パターン4:聞いたうえで、具体的に動く
・F専務(活躍の場を変えた例)
「〇〇(施設名)の中ではキッチンがあり、圧倒的に技術力、腕前が高い人がいて、その人を越えられるというのは相当の時間がかかる。そこで戦わせても難しいので、違う分野で力を発揮してもらおうと。それが、代表が自ら声をかけて…」
・G社長(強制的に休ませた例)
「例えば悩みあるんですよねと言ってて、顔色も悪くて辛そうだと。仕事もためてて休み取れなさそうだと昔だと2万円渡して、『はい、これで遊んできて。仕事しちゃダメ。パソコン預かるから』みたいな」
ーー
▼ パターン5:言いにくい相談の「調整役」に入る
・A社長
「そういう場合は結構私は調整に入ったりするんですけど、僕ですよね、ちょっと部長には言えないので社長お願いしますとか」
・A社長
「やっぱり厳しくなっちゃうので、話し合いにならないみたいですね。いいにくいみたいですね下からは」
・A社長
「だからそこに私が入ることによって、こう言わせて話し合いをして、それプラス、そうですね私は権限があるので、いう裁判所が最高裁判官みたいな」
ーー
▼ 研究者の理論メモ(表3に併記された分析上の気づき)
・悩みの種類は多様である。業務の悩みだけではなく、プライベートな相談も受ける
・直属の上司にできない相談を、「斜め上」の関係として経営者に相談する
・悩みを聞くときは傾聴に徹する
・非公式のオープン・ネットワーク組織である
ーー
▼ この表から読み取れること
M-GTAでは、こうした複数の生の発言(ヴァリエーション)を集めて「定義」を与え、概念として命名します。この表3は、【経営者が従業員の悩みを直接聞く】という一見シンプルな概念の裏に、
・直接来てもらう(B、G)
・傾聴に徹する(D)
・日常接点から拾う(F)
・聞いたら動く(F、G)
・上下の間の調整役になる(A)
という会社ごとに違う実践のかたちが束ねられていることを見せてくれます。「悩みを聞く」が制度ではなく、経営者それぞれの人柄と工夫で成立している点が印象的です。

コメント 4

会話形式での紹介はこちら😊
はぴテク相談室:制度より先に、やることがあった話
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-07-30-1785397680/

コメント 5

動画形式での紹介はこちら😊
https://youtu.be/phXyIwQKZh0

論文紹介 やってみようありがとうなんとかなるありのままに 職場・働く幸せウェルビーイング経営・人的資本

← 検索にもどる