はぴテク相談室:ワクワクを追いかけても、満たされないあなたへ
はぴテクさん、ちょっと聞いてもらえますか。私、けっこう充実してるはずなんです。趣味も始めたし、旅行も行くし、仕事でも新しいプロジェクトに手を挙げて。毎日それなりにワクワクはしてるんですよ。でも夜ふと、「なんか、人生に満足してるかって言われると…うーん」ってなるんです。これって贅沢な悩みですかね?
いえいえ、贅沢どころか、すごく本質的な悩みです。実はちょうど、その「ワクワクしてるのに満足してない」現象を説明できる研究が出たばかりなんですよ。今年発表された、ドイツとオランダの合計約3万人を9年間追いかけた大規模研究です。
9年間! それで何が分かったんですか?
一言でいうと、「ポジティブな気分には2種類あって、人生の満足につながりやすさが全然違う」ということです。1つは「心地よさ系」。幸せだなぁ、穏やかだなぁ、安心するなぁ、みたいな気分。もう1つは「エネルギー系」。ワクワクする、やる気満々、活気がある、みたいな気分です。
あ、私が集めてるの、完全に後者だ。
ですよね(笑)。それで研究の結果、人生の満足度と強く結びついていたのは「心地よさ系」の方だったんです。結びつきの強さは、エネルギー系の約2倍。しかも「いつも心地よく過ごしている人」と「人生に満足している人」はかなり重なるのに、「いつも活気がある人」と「人生に満足している人」は、意外なほど重ならなかった。
えぇ…。じゃあ私のワクワク集め、無駄だったんですか?
いえ、そこが大事なポイントで。無駄じゃなくて、役割が違うんです。研究チームの説明はこうです。心地よさ系の気分は「目標が達成できたよ、今いい状態だよ」という完了のサイン。だから人生への満足と直結する。一方、エネルギー系の気分は「目標に向かって進んでるよ」という前進のサインなんです。
前進のサイン…。
はい。だからワクワクは、うまくいってる時にも出るけど、大変なことに挑んで踏ん張ってる最中にも出るんですよ。つまりワクワクしているというのは「今、現在地と目的地の間にいます」という状態。移動中の気分なので、「もう十分満たされてます」という満足の感覚とは別物なんです。
あー…! なんか分かってきました。私、ずっと移動中なんだ。次の旅行、次のプロジェクト、次の趣味って。
そうそう。それ自体は素敵なことです。挑戦や変化の時期には、エネルギー系の気分が推進力になりますから。ただ、移動ばかりで「到着を味わう時間」がないと、満足の方は育ちにくい。相談者さんの「ワクワクしてるのに満たされない」は、まさに教科書通りの状態だったわけです。
じゃあ私は何をすればいいんでしょう? ワクワクを減らす?
減らす必要はなくて、「味わう時間」を足すイメージです。心地よさ系の気分は、感謝すること、achieved(達成したこと)を振り返ること、安心できる人とゆっくり過ごすこと、なんてことのない日常を味わうこと、あたりで育ちます。たとえば旅行なら、次の旅行を予約する前に、「この前の旅、よかったなぁ」と写真を見返してしみじみする時間をとる、とか。
それ、一番すっ飛ばしてるやつです。帰りの電車でもう次を検索してます。
(笑)分かりやすい。しかもこの研究、もう1つ良い知らせがあって。心地よさ系の気分と人生の満足度は「お互いを高め合う」関係にあることも分かったんです。心地よさが増えると満足度が上がり、満足度が上がるとまた心地よさが増える。つまり、しみじみ味わう習慣は、一度回り始めると好循環になる可能性があるんですよ。
アクセルはもう十分踏めてるから、味わう時間をカレンダーに入れてみます。まずは今夜、次の予定を検索する代わりに、今週よかったことを3つ思い出してみようかな。
完璧です。ワクワクは前に進む力、心地よさは満ちる力。両方あってこその、いい人生ですからね。
■ 今日のまとめ
- ポジティブな気分には「心地よさ系」と「エネルギー系」の2種類があり、人生の満足度と強く結びつくのは心地よさ系(結びつきは約2倍)。
- ワクワクは「目標に向かって移動中」のサインなので、それだけでは満足感は育ちにくい。挑戦の推進力としては大事。
- 満足感を育てたいなら、感謝する・達成を振り返る・日常を味わうなど「到着を味わう時間」を意識的にとる。心地よさと満足は互いに高め合う好循環になりうる。
■ 出典・注意事項
- Liu, J., Vittersø, J., Teulings, I. J. E., Nes, R. B., Mayerhofer, L., & Røysamb, E. (2026). Jingle all the way? Pleasant and energized positive affect show differential longitudinal relationships with life satisfaction and personality. The Journal of Positive Psychology. https://doi.org/10.1080/17439760.2026.2701098
- ドイツ(12,520人)とオランダ(17,532人)の全国パネルデータ各9時点を分析した研究です。ただし2種類の気分は別々の国・別々の尺度で測定されており、同一サンプル内での直接比較ではない点に注意が必要です。
- 観察データに基づく研究であり、「心地よさを増やせば必ず満足度が上がる」という因果関係を確定したものではありません。対話中の実践アドバイスは、研究結果から示唆される一つの解釈です。
論文の紹介はこちら😊
「ポジティブな気分」には2種類ある。人生の満足につながるのはどっち?
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-07-16-1784169300/