2026.07.01

人は、いかにして本物のリーダーになるのか

ちょっとズバりウェルビーイングの論文ではないのですが、
人がいかにして本物のリーダーになっていくのか、についてのオランダの最新研究😊
22人のベテラン経営者/管理職に、「リーダーになっていった人生の物語」をじっくり聞き取った、丁寧な研究です。

まず大前提として、
「役職に就くこと」と「自分はリーダーだと実感できること」は、別物。
むしろ正式なリーダーほど、
「リーダーのフリをしてるだけ」
「いつか実力不足がバレそう」
という感覚(=リーダー・インポスター現象)に悩みやすい、と分かっています。
つまり、課長になったのにモヤモヤする、は超あるある。
あなたが特別ダメなわけじゃないんです。

で、研究で分かったのは、
多くの人がそのモヤモヤからスタートして、
何年もかけて「これが自分のリーダーシップだ(オリジナルである感覚)」へ移っていった、ということ。
ポイントは、頭の中の3つの変化。
①リーダー観が広がる
「決断して命令する強い人」だけじゃなく、「傾聴する」「相手の視点に立つ」もリーダーシップだ、と見方が広がる。すると「あれ、自分のこの強み、もうリーダーじゃん」って自分も枠に入れる。
②その広げた像と、自分を噛み合わせる
いろんな人を観察して(最悪な上司も「ああはなるまい」の良い教材)、試して、周りの反応で調整。最初は真似(コピー)から入って、最後は「これは私のやり方だ」になる。
③振り返りで、自分の価値観をはっきりさせる
帰りの車で5分振り返る、散歩する、日記を書く。「自分は何を大事にするリーダーか」が見えると、軸ができてブレなくなる。

そしてもう一つ、地味だけど大事な発見。
リーダーになるって「新しく学ぶ(足し算)」だけじゃなくて、
「古い思い込みを手放す(引き算=アンラーニング)」でもある。
たとえば「リーダーは全部の答えを持ってなきゃ」を手放して、
「より良い問いを立てればいい」に書き換える、みたいな。

という、結果でした😍
リーダーなりたてのモヤモヤの正体は、たぶん「狭い・古いリーダー像」を握りしめたまま、そこに無理やり自分を合わせようとしてる状態。だから「リーダーのフリ」に感じる。
ゴールは、役割に自分を押し込むことじゃなくて、
自分の価値観に合うようにリーダー像のほうを描き直すこと。
そうすれば、フリじゃなく本物になっていく。

ちなみにこの研究、
発達にかかった期間は3〜28年、平均で約15年でした。
半年や1年でモヤモヤしてるのは、むしろ超スタート地点。順調すぎるくらい。

「ちゃんとしたリーダーにならなきゃ」ではなく、
「自分なりのリーダーを、時間をかけて見つけていけばいい」。
そう思えるだけで、ちょっと肩の力が抜けますね😊
そして、そんな本物のリーダーのいる職場は、ウェルビーイングなんだろうなぁ😍
ーーー
偽物から本物へ:組織のリーダーは経験の意味づけを通してどのようにリーダーとしてのアイデンティティを形成し、発展させるのか
From Imposter to Original: How Organizational Leaders Shape and Develop a Leader Identity Through Meaning-Making of Experiences
Sonja Zaar(マーストリヒト大学), Piet Van den Bossche, Wim Gijselaers
Journal of Organizational Behavior,2026/6/1
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/job.70098?af=R
本稿では、正式なリーダーシップの役割を担う人々が、時間と状況を超えた経験の意味づけを通して、どのようにリーダーとしてのアイデンティティを形成し、発展させていくかを論じる。22名の組織リーダーへの詳細な人生物語インタビューから得られた質的データに基づき、写真や物品を用いた情報収集手法、タイムラインマッピングによってデータを補強することで、意味づけられた内容と意味づけの様式がリーダーとしてのアイデンティティの発達にどのように影響するかについての理解を提供する。調査対象となった組織リーダーのほとんどが、キャリアを通じてリーダーとしての自己認識が変化していく様子を描写しており、アイデンティティの不確実性やインポスター症候群から、アイデンティティの一貫性や独自性への感覚へと移行していることがわかった。この変化は、意味づけにおける3つの重要な変化と関連していた。(1)認知的複雑性の発達、(2)スキーマの整合性の発達、(3)自己スキーマの明確化の発達。これらの変化は、リーダーが特定の意味づけの様式(すなわち、認知的アイデンティティ作業)に継続的かつ意図的に取り組むことによって促進された。これらの研究結果は、リーダーのアイデンティティの形成と維持において、スキーマの成長、整合性、統合が重要であることを強調するとともに、深い思考と目的意識を持った行動がアイデンティティ構築の補完的な様式として価値を持つことを示しており、リーダーのアイデンティティ研究に新たな側面をもたらすものである。

役職は人をリーダーにしない 「インポスター(偽物)」から「オリジナル」へと至る、リーダー・アイデンティティ発達の科学 Leadership Research Institute リーダーたちが密かに抱える 「役割との不協和」 目に見える外側の世界: 高い期待、重い責任、意思決定、 社会的地位 隠された内面の世界: 「自分はこの役割にふさわしく ないのではないか」という 不安、インポスター症候群 多くのリーダーは、外見上の成功とは裏腹に「リーダーとしての自己概念」と「与えられた役割」の ギャップに苦しんでいる。外側から行動やスキルを身につけるだけでは、この内なる葛藤は防げない。 「行動」から「認知」へのパラダイムシフト 従来の育成手法 対人関係(Interpersonal)のプロセス スキル、カリスマ性、他者からの承認に焦点を当てる。 他者の期待に合わせるソーシャル・プロセス。 本質的な発達アプローチ 内面(Intrapersonal)のプロセス 意味づけ、認知スキーマの進化、自己の再定義。 自身の「内なる世界」を構築する自己啓発的なプロセス。 3年から28年をかけた「意味づけ」の軌跡 Phase 1: アイデンティティの不確実性 認知の揺直、スキーマの不一致(インドスタート期) Phase 2: アイデンティティの探索 認知の再構築、初期の整合性 Phase 3: アイデンティティのコミットメント 認知の文断化、部分的な統合 Phase 4: アイデンティティの首尾一貫性 認知的機械性、スキーマの完全な整合と明確化(オリジナル状態) 発達には平均15年(3~28年)という長期的な期間を要し、一過性の研修では完結しない。 アイデンティティを駆動する「意味づけ」のエンジン 経験 (Experiences) 個人的な 変化 職業的な 変化 組織的な 変化 意味づけのモード (Modes of meaning-making) アンテナの リフレーミング 調査・実験・ フィードバック の統合 内省的実践 形成された意味 (Meanings made) ユーザーの 古い姿の転換 日日スキーマの 構築きの実施 認識的機構性 の推進 経験(成功や失敗)そのものが人を成長させるのではなく。 経験に対する「意図的な意味づけ(Meaning-making)」のプロセスこそが、リーダーシップの根を深くする 01. 認知的複雑性の発達(Cognitive Complexity) Before / Imposter After / Original 初期の認知:ヒエラルキーと権力 リーダーシップを「絶対的な権限」「唯一の正解を示す こと」と狭く定義する。この硬直した理解と現実の ギャップが、インポスター症候群を生み出す。 進化した認知:関係性とプロセス 経験と学習を経て、リーダーシップを「状況に応じた 系統な関係性のプロセス」として捉え直す。共感や文 脈の理解が重視されるパラダイムへの拡張。 02. スキーマの整合性(Schema Alignment) 外部の理想像(プロトタイプ)への同調から離れ、自身の強みや特性に合わせてリーダー像をカスタマイズし、内面的なフィット感を獲得するプロセス。 完全な模倣(Imitation) 他者のスタイルや、組織の「あるべきリーダー像」に自らを無理やり当てはめている状態。継続と不一致が生じる。 選択的模倣(Selective Imitation) 複数のロールモデルから、自分に合いそうな要素(行動やスキル)だけを選別的に借りてきて組み合わせる段階。 カスタマイズ(Customization) 信頼できる要素が自身の特性(根幹)と完全に融合し、アイデンティティの中に「シップ」と昇華された状態。 NotebookM 03. 自己スキーマの明確さ(Self-Schema Clarity) 期待 評価 正解 義務 他者の目 自己効力感の獲得 オリジナルな声の発見 コアバリューの特定 周囲からの承認と深い内省を通じて、「自分は何を大切にするリーダーなのか」というコアバリューが明確になる。この自己知識の深まりがあらゆる状況下でぶれない基盤を作る。 統合:インポスターから「オリジナル」への昇華 リーダーシップの柔軟な理解 (複雑性の発達) 自分らしさとの融合 (整合性の発達) ORIGINAL 確固たる自己の価値観 (自己スキーマの明確さ) これら3つの認知シフトが連動し統合されたとき、リーダーシップは「演じる役割(Role)」から「自分自身の一部(Identity)」へと変わる。これこそが、インポスター症候群を完全に克服した状態である。 ツール1:アンラーニングとリフレーミング アンラーニング(Unlearning) 「弱みを見てはいけない」「全てを知っていなければならない」といった、古く機能しなくなった固定概念や理想のリーダー像を意図的に手放す。新しい認知を受け入れたためのスペース(土壌)を空ける第一歩。 リフレーミング(Reframing) ネガティブな経験や失敗を、単なる挫折ではなく「自身のリーダー像を洗練させるための成長データ」として再定義する。事象の意味付けを変える視点の転換。 Notebook1M ツール2: 観察・実験・フィードバックのループ Step 1: 観察(Observation) ロールモデルや他者の行動を観察し、 有効な要素を抽出する。 Step 2: 実験(Experimentation) 完璧を求めず、「仮の自分 (Provisional Self)」として新しい 行動を現実世界でテストする。 Step 3: フィードバック (Feedback) 他者からの反応を素直に受け入れ、 自分にフィットする行動様式を選別・ 統合する。 リーダーシップ過頭の中だけで完成しない。試行錯誤を通した現実世界でのテストと、他者からの フィードバックの統合(Selective Imitation)を繰り返すことで、徐々に自分らしさが形成される。 ツール3: 意図的な内省(Reflective Practice)の確保 外部ノイズ ジャーナリング コーチング/ スパーリングパートナー 立ち止まる空間の設計 日々の経験をただ消費するのではなく、外部ノイズを遮断し、自分と向き合い「意味を問い直す」時間を意図的に確保する。 スパーリング・パートナーの重要性 特にマイノリティや女性リーダーの場合、同じジェンダーや境遇を共有できる「スパーリング・パートナー」の存在が重要。特有の葛藤(アンコンシャス・バイアスなど)を言語化し、壁打ち相手となることでアイデンティティ発達を劇的に加速させる。 診断表:進化が「停滞する」リーダーの共通点 リーダーシップの定義 役割と自己の適合感 価値観の提え方 経験の受け止め方 停滞するリーダー (Stalled) 権力・ヒエラルキー重視 (指示と正解を求める) 役割と自己が不一致のまま (演じている感覚が消えない) 組織の価値観と葛藤に苦む 経験を「受動的」に処理 (外発的要因のせいにする) 進化するオリジナルなリーダー 関係性・プロセス重視 (共感と文脈を捉える)
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【背景】
■ この研究が立っている土台 ― リーダーアイデンティティ研究の流れ
この論文(Zaar, Van den Bossche & Gijselaers, 2026)は、組織のリーダーが「自分はリーダーだ」という感覚をどう育てていくのかを、本人の内面の意味づけ(meaning-making)に注目して調べたものです。その前提となっている既存研究を、話の流れに沿って整理します。
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■ そもそも「リーダーアイデンティティ」とは何か
▼ 定義
・リーダーアイデンティティとは「自分をリーダーとして捉える認知的な自己像」であり、関連する知識や価値観を整理し、行動を導くもの、と定義されます(Lord & Foti, 1986; Lord & Hall, 2005)
・※認知的な自己像=頭の中にある「自分はこういう人間だ」というイメージのこと
▼ なぜ重要なのか
・リーダーアイデンティティを持ち、自分のものとして取り込む(内面化する)ことで、人はリーダーの役割を引き受け、維持し、効果的に振る舞いやすくなることが研究で示されています(Day & Sin, 2011; Hannah et al., 2009; Middleton et al., 2019)
・リーダーシップのスキル形成(Miscenko et al., 2017)、リーダーとしての行動(Johnson et al., 2012)、リーダーとしての有効性(Kragt & Guenter, 2018)を支えることも分かっています
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■ ところが「肩書き」と「自己像」は一致しない
▼ 役割を持つこと ≠ リーダーだと思えること
・正式なリーダーの役職に就くことと、リーダーアイデンティティを内面化することは、必ずしも同時に起こりません(Epitropaki et al., 2017)
・リーダーアイデンティティは個人的な自己観であり、人によって異なり、正式な役割とは独立して変わりうるものだからです(Day & Harrison, 2007; DeRue et al., 2009)
▼ むしろ正式なリーダーほど苦しむ
・正式なリーダーの立場にある人ほど、リーダーアイデンティティの内面化が難しいことが示されています(Kark et al., 2022)
・自分がリーダーである確信が持てず、リーダー役にいながら「インポスター(詐欺師)」のように感じ、自己像と役割を折り合わせられずに苦しむ、という現象です(Kark et al., 2022; Lanka et al., 2020; Shamir et al., 2005)
・※インポスター感覚=「自分はこの立場にふさわしくない、いつかバレる」という感覚
・この不一致は、外からは適切に見えても内側では「間違っている」と感じる行動につながり、リーダーの幸福感を損ない、一貫性や本物らしさ(authenticity)を失わせるとされます(Day & Sin, 2011; Kark et al., 2022; Middleton et al., 2019)
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■ アイデンティティはどう作られるのか ― 2つの視点
▼ これまでの研究の主流は「対人的(社会的)」な視点
・リーダーアイデンティティの構築は、人と人との間(対人的)と、個人の内側(個人内)の両方のプロセスが混ざって、時間をかけて進むとされます(Ashforth & Schinoff, 2016; Hammond et al., 2017; Liu et al., 2021; Lord & Hall, 2005)
・既存研究の多くは「対人的・社会構成主義的」な立場をとってきました。集団の力学、関係性のやり取り、外部からの承認がアイデンティティ形成に影響する、という考え方です(DeRue & Ashford, 2010; Epitropaki et al., 2017; van Knippenberg, 2011)
・※社会構成主義=ものごとの意味は人々のやり取りの中で作られる、という考え方
・この立場では、「リーダーとはこうあるべき」という規範的な期待に合致すること、とりわけ「プロトタイプ(典型像)らしさ」への適合が、周囲に認められ自分でもリーダーだと感じられるかを左右する、と考えます
▼ この論文が選んだのは「個人内(内面)」の視点
・著者らは、対人的・社会構成主義的なアプローチは、本人が自分の発達における能動的な主体であることを軽視し、人が社会的環境をどう解釈するかという内的な心理プロセスを見落としている、と指摘します
・そこで構成的発達理論(constructive-developmental theory)に依拠し、「意味づけ(meaning-making)」に焦点を当てます(Kegan, 1982; McCauley et al., 2006)
・※構成的発達理論=人は経験の意味の捉え方そのものを、生涯を通じて段階的に複雑化させていく、という発達理論
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■ 鍵となる概念「意味づけ(meaning-making)」
▼ 意味づけとは
・意味づけとは、人が出会った経験を、自分のこれまでの知識や経験に照らして理解していく、内面の認知的プロセスです(Faller et al., 2020; Lord & Maher, 1993; Park, 2010)
・「これは自分にとってどういう意味があるのか?」を評価し、その理解を変化し続ける自己像に取り込んでいく営みです
・だからこそ意味づけは、経験と結果(リーダーアイデンティティの形成など)をつなぐ重要な媒介要因とされ、この研究の中心概念に据えられています(Liu et al., 2021)
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■ 意味づけの「結果(meanings made)」 ― スキーマの話
▼ 意味づけが生み出すもの
・意味づけの結果として生まれる理解を「meanings made(意味づけられた内容)」と呼び、これが思考・動機・行動を導きます(Park, 2010)
・リーダーの文脈では、人が「リーダー」や「リーダーシップ」にどんな意味を与えているか、に関わります(Epitropaki et al., 2017; Zaar et al., 2020)
▼ スキーマとは
・スキーマとは、過去の経験から蓄積された知識や行動のパターンで、考えたり行動したりするときの「型(テンプレート)」として働くものです(Lord & Foti, 1986)
・スキーマは固定ではなく、時間とともにより分化し洗練され、より複雑な認識のしかたへと発達しうるとされます(Ashforth & Schinoff, 2016; Day & Dragoni, 2015)
・人は異なるリーダーシップ関連スキーマを持ち、単純な「役割・権威ベース」の見方から、より高度な「関係性・プロセスベース」の見方まで幅があります(DeRue & Myers, 2014; DeRue & Ashford, 2010; Drath, 2001)
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■ 先行する実証研究 ― 見方が「広がる」ことが土台
▼ リーダー観の変化が発達の基礎になる
・リーダーシップ観(リーダーアイデンティティの意味)の変化と成長が、リーダーアイデンティティ発達の土台になることが、初期の研究で示されてきました(Epitropaki et al., 2017; Zaar et al., 2021)
▼ 具体的な研究例
・Komives et al.(2005)は大学生13名のライフナラティブ面接から、学生のリーダーとしての自己像は、リーダーシップを「外部の他者」「役職」として見る段階から、役職に依らない見方や「内面化できるもの」として捉える段階へと、理解が広がるにつれて発達することを示しました
・※ライフナラティブ面接=人生の物語を本人に語ってもらう面接手法
・Zheng & Muir(2015)は正式なリーダーシップ・プログラム参加者15名を対象に、リーダーアイデンティティの強まりが、狭い「権力ベース・男性的」な見方から、より「女性的・エンパワメントベース」のスキーマへとリーダーシップ観が広がることを伴う、と示しました
▼ 「広げる」だけでなく「揃える」ことも重要
・Zaar et al.(2020)は学部ビジネス学生500名超のナラティブ報告を分析し、リーダーアイデンティティの構築は、スキーマを広げる(複雑化させる)だけでなく、スキーマを揃える(整合させる)ことでもあると発見しました
・つまり「リーダー」「リーダーシップ」「リーダーとしての自分」という3つのスキーマ同士の一致度(スキーマ整合)と、見方の幅・複雑さが、アイデンティティの強さと統合度に結びついていました
・整合度が高く、複雑さが高いほど、リーダーアイデンティティはより強く、より統合されたものになる、ということです
▼ なぜ整合が大事なのか(具体例)
・リーダーシップを「主張の強さ」や「正式な権威」とほぼ同一視している人は、それが自己認識と食い違い、自分をリーダーと見なせず苦しむことがあります
・自分を内省的・協調的・支援的だと思う人は「伝統的なリーダー像に合わない」と結論し、リーダーアイデンティティを引き受けるのをためらいがちです
・しかし、リーダーシップの理解を「傾聴する・他者の貢献を引き出す・協働を育む」ことまで広げると、このズレが解消し始め、自分の既存の強みが「価値あるリーダーシップの形」とすでに一致していると気づける、とされます
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■ 意味づけの「モード(進め方)」 ― 自動か、意識的か
▼ 2つのモード
・意味づけには、ほとんど意識せず習慣的な解釈に頼る「自動的・無意識的」なモードと、努力を要し意図的に解釈し直す「意識的・熟慮的」なモードがあります(Park, 2010)
・自己に関わる挑戦的・新奇な状況に直面したときは、とくに後者の熟慮的な意味づけが重要になります
・リーダーアイデンティティが自己概念の中で目立つ要素になるには、人はこの意識的・熟慮的な意味づけに取り組む必要がある、とされます(Epitropaki et al., 2017)
▼ それが「アイデンティティワーク」
・リーダーアイデンティティ形成に向けたこの能動的・主体的な意味づけは、一般に「アイデンティティワーク」と呼ばれます(Ashforth & Schinoff, 2016; Petriglieri & Stein, 2012)
・アイデンティティワークとは、自分のアイデンティティを形成・修復・維持・強化・改訂するための活動全般を指す広い概念です(Epitropaki et al., 2017)
・その形は、行動的活動(ユーモアや瞑想)、言説的活動(語りや対話)、物理的活動(服装やオフィスの装飾)、認知的活動(自問や省察)まで多岐にわたります(Caza et al., 2018; Ibarra & Barbulescu, 2010)
・Ibarra(1999)の研究は、専門職がより上位の役割に適応する際、ロールモデルを観察して可能な自己像を探り、「仮の自己」を試し、その実験を内的基準や外部フィードバックに照らして評価する、という認知的・行動的アイデンティティワークを行うことを示しました
▼ この論文が絞り込むのは「認知的」アイデンティティワーク
・著者らは、熟慮的な意味づけによってアイデンティティを作る「認知的アイデンティティワーク」に焦点を当てます。これは(1)主体的で(2)自己に向けられた意味づけのことです(Ashforth & Schinoff, 2016; Petriglieri & Stein, 2012)
・先行研究は、こうした熟慮的な意味づけが、経験への意識的な関与(Ashford & DeRue, 2012)や内省・省察の涵養(Petriglieri et al., 2011)を含むと示唆してきました
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■ 残された「空白」 ― だからこの研究をする
・しかし、熟慮的な意味づけの価値を指摘する研究はあっても、体系的な実証研究はまだ乏しい状態でした
・とりわけ「人が時間と状況をまたいで、どのように意味づけのモードに取り組んでリーダーアイデンティティを作るのか」が不明なままでした
・リーダーアイデンティティ発達の文脈でアイデンティティワークを調べた研究はわずかで(Epitropaki et al., 2017)、その中でも意味づけという認知的アイデンティティワークに目を向けた研究はほとんどありませんでした(DeRue & Myers, 2014; Zaar et al., 2020)
▼ そこで立てられた問い
・「意味づけられた内容(meanings made)」と「意味づけのモード」は、リーダーアイデンティティの構築と統合に、どう関わっているのか?
・この問いに答えることで、リーダーアイデンティティ発達の、強力だが見えにくい層に光を当てる、というのがこの研究の狙いです
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■ まとめ ― 前提研究の3つの柱
・(1)リーダーアイデンティティは重要だが、肩書きがあっても内面化は難しく、インポスター感覚が生じやすい(Kark et al., 2022 ほか)
・(2)従来研究は「対人的・社会的承認・プロトタイプ適合」を重視してきたが、本研究は「個人内の意味づけ」に注目する(構成的発達理論; Kegan, 1982 ほか)
・(3)リーダー観の「広がり(複雑化)」と「整合(スキーマアラインメント)」が発達の土台であり(Zaar et al., 2020 ほか)、それを駆動するのが意識的な「認知的アイデンティティワーク」である(Epitropaki et al., 2017 ほか)

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【研究内容】
■ 方法(Method)
▼ なぜ「質的研究」なのか
・この研究が知りたいのは「リーダーが内面でどう意味づけをして、自己像を作っていくか」という、本人の頭の中の動きです
・こうした内面のプロセスは、数値で測る構造化された手法では捉えにくいため、質的・解釈的なアプローチが選ばれました(Yin, 2011)
・※質的研究=数値ではなく、語りやテキストの内容を深く読み解く研究手法
▼ ナラティブ(語り)理論の視点
・とくに「ナラティブ理論」の視点が用いられました(Lieblich et al., 1998)
・※ナラティブ=人が自分について語る「物語」
・ナラティブ理論では、自己についての語りを「意味づけのシステム」とみなします。語りは本人の根底にある認知的スキーマを映し出し、価値観・信念・アイデンティティを伝える、と考えます(Kegan, 1982; Lieblich et al., 1998)
・語りは「事実の記録」ではなく「語られた時点で機能している意味づけ」として扱われます。つまり、出来事が起きた当時、または後になって、本人が何を意味あるものと考えたかが分かる、ということです(Shamir et al., 2005)
・この見方は「リーダーアイデンティティ発達は一生かけて続く旅」という研究の前提とよく合います
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▼ 調査対象者(Participants)
・目的的サンプリングで、研究者のエグゼクティブ育成のネットワークから意図的に選ばれました(Yin, 2011)
・※目的的サンプリング=ランダムではなく、研究目的に合う人を意図的に選ぶ手法
・条件は「正式な上級管理職」かつ「勤続15年以上」。豊富な経験から、挑戦も成功も蓄積した時間軸のデータを得るためです(Patton, 2015)
・バイアスを避ける工夫として、著者らの授業を受けたことのない人を選び、半数以上は著者らの大学などのリーダーシップ育成プログラムを受けていない人にしました(共通の枠組みを内面化した人ばかりにならないようにするため)
▼ サンプル数の経緯(ここが興味深い点)
・最初に14名を面接。質の高い質的研究に必要な「飽和」と多様性を得るのに適切な人数とされます(Guest et al., 2006 ほか)
・※飽和=新しいコードやテーマが出てこなくなり、データが出尽くした状態
・コーディング後、飽和に達したと判断。ところが分析中、女性リーダー2名の語りだけがリーダーアイデンティティの発達を示さず、他と異なるパターンだと気づきました
・この違いを深く理解するため、女性リーダーを中心にさらに8名を追加面接。再コーディングしても新しいコードは出ませんでした
▼ サンプルの内訳
・全員がオランダ国籍の上級管理職(CEO、マネージングディレクター等)、業種は金融・医療・コンサル・新メディア・教育など多様
・女性10名、男性12名の計22名
・勤務経験18〜40年(平均28年)、正式なリーダー経験は平均17年、年齢は40代前半〜60代前半
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▼ データ収集(Data Collection)
・半構造化面接を、第一著者がオランダ語・対面で全件実施
・※半構造化面接=決まった質問を軸にしつつ、話の流れで柔軟に深掘りする面接
・特徴的なのが「スキーマ誘発技法」の併用です。頭の中のスキーマを引き出すには、それを呼び起こす手がかりが必要だからです(Schyns et al., 2011; Wofford et al., 1998)
・対象者は事前に、自分のリーダーシップ発達の人生を振り返り、「持続的な変化を象徴する」写真・画像・物を最大5つ用意するよう求められました。仕事でも私生活でも、ポジティブでもネガティブでもよい、とされました
・これは「写真誘発法」(Harper, 2002)と「物誘発法」(Willig, 2017)の組み合わせで、記憶や感情を呼び起こし、通常の面接では出てこない語りを引き出す狙いです
・面接ではライフナラティブ法(Riesmann, 2008)と会話型の質的面接の手順(Brinkmann & Kvale, 2015)を採用。面接者は控えめに話し、中立を保ち、傾聴に努めました
・面接の冒頭で、持参した物を時系列(タイムライン)に並べてもらいました。このタイムライン化も誘発ツールとして使われ、写真・物・タイムラインの3つで方法論的トライアンギュレーション(複数の手法による裏付け)を図っています(Sheridan et al., 2011; Patton, 2015)
・面接は約1時間(35〜80分)、全件録音し逐語的に文字起こし
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▼ データ分析(Data Analysis)
・演繹的・帰納的アプローチを組み合わせました(Miles & Huberman, 1994)
・※演繹的=理論に基づく事前のコード枠を使う/帰納的=データから新しい発見を探る。両方を併用
・テーマ的ナラティブ分析(Riesmann, 2008)に沿って、何度も読み込み、一次コードと暫定カテゴリを記録。コード頻度の過大評価を防ぐため、段落単位で分析しました
・コードをテーマにまとめ、上位カテゴリに統合。常に比較しながら分析する手法(constant comparative analysis)で、回答同士をつなぎました(Yin, 2011)
・厳密さの確保のため、著者チームは隔週で会議し、確証バイアスや早すぎる結論を防ぎました
・※確証バイアス=自分の仮説に合う情報ばかり集めてしまう偏り
・支持の度合いはコード頻度で測り、頻度が7を超え、かつ全体の50%以上の語りに含まれるテーマを「十分に支持された」と判断(Carsten et al., 2010)
・頻度の低いコードも質的に確認し、過小評価を防止。その結果、「女性のスパーリングパートナー(対話相手)」という低頻度コードを、既存のテーマ(省察的実践)の一部として強調することにしました。少数でも、性別が一致した対話相手が女性のリーダーアイデンティティ発達を支える、という洞察が得られたためです
・矛盾するテーマは「解決すべき問題」ではなく「複雑さのレンズ」で検討。例として、女性リーダー2名が発達を示さなかった事実を、多様性を捉えるために結果に含めました
・分析中、理論や文献を参照する「理論的トライアンギュレーション」も実施
▼ 信頼性を高める追加手続き(Tracy, 2010)
・メンバーチェック:面接対象者に文字起こしを確認してもらう
・第一著者は研究日誌をつけて省察し、バイアスを抑制(Buhr & Weissbrod, 2025; Nadin & Cassell, 2006)
・独立したコーダーがコーディングを再実施。サンプルの65%をコードし、一致度はコーエンのκ(カッパ)=0.83で「実質的な一致」と判定(Cohen, 1960)
・※コーエンのκ=2人の評価者の判定がどれだけ一致するかの指標。0.81以上は高い一致とされる
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■ 結果(Findings)
▼ 全体像:リーダーアイデンティティは「ゆっくり・動的に」育つ
・対象者は「リーダーシップの発達には時間がかかる」(N8)、「継続的なプロセス」(N11)と語り、明確な始点・終点のない、絶え間ない動きとして描きました
・最も深い発達は中年期(30〜60歳)、つまり「目的駆動の発達」段階に起きたとされ、個人の発達タイムラインは3〜28年と幅がありました(Liu et al., 2021)
・最初の正式なリーダー職を「決定的な瞬間」(N18)「転換点」(N6)と振り返る人が多い一方、発達は単一の劇的経験に依存せず、人生・仕事・組織にまたがる多様な経験の積み重ねで進んだ、と強調されました(死別や誕生、キャリアの転機や失職、組織の再編・縮小・拡大など)
▼ 発達を支える3つの「意味づけられた内容の変化」
・多くのリーダーで、自己像は3つの根底的な変化に結びついて発達していました
・(1)認知的複雑さの発達
・(2)スキーマ整合の発達
・(3)自己スキーマの明確さの発達
・これらは独立して起きるのではなく、相互に関連し、共進化しながら反復的に発達しました
ーー
▼ 結果(1):認知的複雑さの発達(Development of Cognitive Complexity)
・※認知的複雑さ=ものごとを、より広く・多面的・豊かに捉えられること
・初期は、リーダーシップを「組織内の階層的な権威の地位」、リーダーを「権力序列で正式な地位にある人」と、狭く伝統的に捉えていました。「明確なビジョンを持つ」「決定し命令する」「固定の構造を与える」といった特徴で語られます
・時間とともに、見方が広がります。リーダーシップを「関係的なやり取り・社会的プロセス」と捉えるようになり、「もう階層的なリーダーシップではなく、何かを実現するためのプロセスを率いること」(N7)と語られました
・リーダー像も「親」や「パートナー」、正式な肩書きはなくとも実質的に多くの人を率いる人(N10)まで広がり、「問いかける」「傾聴する」「巻き込む」「視点を取る」「共感」といった特徴を含むようになりました
・この広がりを促したのは、従来の見方の限界を突きつけられた経験です
・例:30歳の駆け出しの頃、相手にやり方を変えるよう一方的に告げ、3時間も責め立てられた。そこから「相手(ステークホルダー)の視点に立つ必要がある」と学んだ(N5)
・リーダーシップは「主張と承認(claiming and granting)」の社会的プロセスであり、フォロワーに認証されて初めて成り立つと気づいた、とされます(DeRue & Ashford, 2010)
・「正しくても、受け入れられなければ何も達成できない」(N2)、「命令ではなく、人として受け入れられることから始まる」(N8)
・この変化を支えた意味づけのモードが「アンラーニング(学びほぐし)」と「リフレーミング(捉え直し)」です
・※アンラーニング=これまでの見方を手放し、別の見方に開いていくこと
・「話すのをやめて聴くべきだと気づいた…発達したいなら手放す必要がある」(N1)
・※リフレーミング=出来事の意味を、視点を変えたり前向きな側面を見出して捉え直すこと
・「孤独だと感じたが、その負の感情を、一歩引いてよく聴き次の一手を決められる、という非常に前向きな感情に翻訳した」(N11)
・結果として、絶対的な唯一の真実ではなく複数の可能性を見て、状況に応じて柔軟に対応できる「認知的硬直から認知的柔軟性へ」の移行が起きました(Lord & Hall, 2005; Drath, 2001)
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▼ 結果(2):スキーマ整合の発達(Development of Schema Alignment)
・※スキーマ整合=「リーダー観」「リーダーシップ観」と「リーダーとしての自分」の間の一致度が高まること
・これを支えたのが「観察」「実験」「フィードバックの統合」です
・観察:ロールモデルを観察し、自分と比べる。良い手本(positive role model)からは「こうありたい」を、悪い手本(negative role model)からは「こうはなりたくない」を学ぶ。例として、上司の非倫理的な振る舞いを見て「リーダーとしてどうありたくないか」を学んだ語り(N5)
・実験:観察した内容を試す。「仮の自己」を、職場・教育・家庭など異なる場面で試す。「息子が生まれて、人を率いるのは子育てとよく似ていると気づき、その技法を職場で意識的に応用したら驚くほどうまくいった」(N8)
・フィードバックの統合:試した振る舞いが他者にどう映ったかの率直な意見(求めた・求めない双方)から、自分の強み・弱み、他者への影響を学ぶ=リーダーとしての自己認識が深まる
・例:問題対応で長時間労働に陥った際、先輩から「他人の心臓発作を自分の心臓発作にするな」と助言された(N5)
・例:「構造」を絶対視していた人が、HRマネージャーと上司から「構造を目的でなく手段と見て、緩めて手放す必要がある」と気づかされた(N1)
・このプロセスは「完全な模倣 → 選択的模倣 → カスタマイズ」へと進みます
・最終的には、複数のロールモデルの良い部分を選び取り、折衷的に組み合わせて「自分のもの」にし、本物のスキーマ整合(authentic alignment)を作り上げます
・集団規範や手本に合わせるのではなく、主体性を発揮して、内的に定義した志や価値観に沿って整合させた点が重要です(Hibbert et al., 2017)
・「最初は知識リーダーと自分を比べていたが、ある時それを手放し、自分のやり方を信頼し始めた。やってみると本当にうまくいって、これは自分のやり方だ、という最高の感覚を得た」(N7)
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▼ 結果(3):自己スキーマの明確さの発達(Development of Self-Schema Clarity)
・※自己スキーマの明確さ=「リーダーとしての自分」が自己概念の一部として明確になり、一貫した安定した自己感が得られること
・ただし、この道のりは平坦ではありませんでした
・初期、とくに最初のリーダー職では「場違い」「役割に属していない」と感じる人が多くいました。同僚から上司への移行で、「同僚であろうとし続けてしまった」(N2)。これはアイデンティティの分離・分化という、統合に至る初期段階に似ています(Ibarra et al., 2010; Day & Lance, 2004)
・「役割の基準や期待に達していない」「常に自分が有能だと証明し続けねば」という不確かさも語られました。28歳で初めて率いた人は「異質な存在として、訝しげな目で見られた」(N7)
・これは「アイデンティティの不確かさ」(Lanka et al., 2020)であり、「リーダー・インポスター現象」(自分はこの役割に十分でないという感覚)に似ています(Kark et al., 2022)
・時間とともに、見方が広がりスキーマが整合してくると、リーダーであることに居心地よさを感じ始めます。社会的に定義された役割期待に合わせ、能力を証明し続ける必要性が薄れ、「自分らしい探索」の余地が生まれます
・「以前なら200人を率いることに全力を注いだが、今は人数はどうでもよくなった」(N12)
・この移行を後押ししたのが「社会的承認」と「省察的実践」です
・社会的承認:他者(多くは上司)が、リーダーとしての努力に価値を認め、機会・責任・自律性を与えること。昇進や新しい機会の提供など(DeRue & Ashford, 2010)
・「準備した原稿を捨て、自分のやり方で語ったら大きな反響があり、ある人物から『うちで働いてほしい』と言われた」(N2)
・これが信頼となり、リーダーとしての自己効力感(自分はやれるという感覚)を生みました。「あのリーダーの信頼を得た…君ならできる、と」(N7)、「ものすごく自信がつく」(N8)
・省察的実践:経験を評価・分析し、自分の理解や思い込みを問い直す活動
・「日記を書く」「ハイキング」「ただ座る」など。「川のそばにただ座り、周囲の喧騒から距離を置いて物事を見つめ直した」(N10)
・省察は主に自分の行動・思考・態度・動機に向けられ、「なぜそうするのか」を解きほぐすために行われました(N6, N8, N12)
・「帰りの車でいつも振り返る。何がうまくいったか、なぜか、別のやり方はあったか」(N18)、「とにかく省察を、毎日、絶え間なく」(N2)
・「導かれた省察」、とくにコーチングも頻繁に言及されました。「外部コーチに相談し、大いに助けられた」(N9)。「コーチが鏡を掲げてくれた…分析は得意だが行動に移せない自分に気づき、行動を始めるきっかけになった」(N11)
・女性リーダー数名は「女性の省察パートナー」の利点を挙げました。男性優位の環境で「女性でありリーダーである」とはどういうことかを共有でき、ジェンダーの不一致に対処する基盤になった、とされます(N10)
・省察的実践は「自己知識(self-knowledge)」も深めました。自分にとって重要な能力・動機・感情・価値観を見極めることです
・「この画像は私の表現。インスピレーション、ビジョン、決意、楽しさ、共に、の5語が私そのもの」(N11)
・自己効力感と自己知識が高まることで、リーダーは本来の自分に深く入り込み、より明確で自信のある「リーダーとしての声」を持つようになります
・「今は自分自身、自分の誠実さ、価値観から行える。20年前は他者を観察し吸収していたが、今は真正性(authenticity)から率いる。他者を真似るのでなく、自分のままで取り入れる」(N8)
・これが「アイデンティティのコミットメント」となり、統合への道を開きます。リーダーであることが自己概念のより中心的な部分になり、「今は自分の肌に馴染んだ、より調和した人間に見えるはず」(N14)
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▼ 結果(4):リーダーアイデンティティ発達の「不在」
・対照的に、女性2名は発達を示しませんでした。彼女たちも多様な変化や複数のリーダー職を経験していたにもかかわらず、です
・(1)認知的複雑さなし:一貫して階層的な見方を保持。「権威的」「指示的」「決定する」、リーダーシップは「孤独な地位」「権力」「ステータス」。「リーダーは生まれつきで、学べるものではない。私にはそれがない」(N13)
・(2)スキーマ整合なし:むしろ不整合を明言。「彼は権威的で人に関心があるから良いリーダー。私は人に関心がないし、ステータスにも興味がない。それがジレンマ」(N13)
・(3)自己スキーマの明確さなし:自己効力感や価値の明確化が見られず、自己疑念を表明。「他人は私を10点満点で7〜8と評価するが、自分では著しく不十分だと評価する」(N13)
・人としての価値観と「リーダーに必要だと考える価値観」の葛藤も。「人間味のある人だったのに、ビジネスライクになり『心がなくなった』と言われた」(N4)
・さらに、リーダー役への両義的な感情と動機の欠如も。「リーダーシップは役割の一部だが、自分で選んだものではない。ずっと嫌だった…その意欲がない」(N13)
・他のリーダーが「主体性」を示し原因を自分の内に置く(内的統制)のに対し、この2名は外的統制を強調。経験を「自分に降りかかったもの」と語り、成長の機会とは捉えませんでした。リーダー職に就いたのは「単なる偶然」、続けるのは「本当の情熱のための収入確保の必要」(N13)
・これは、女性にとって、リーダーシップに伴う「男性的な期待(自他からの)」が発達を妨げる要因になりうることを示唆します
・ただし著者らは、事例が非常に少ないため、この違いは慎重に解釈すべきだと断っています
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■ 考察(Discussion)
▼ 全体のまとめと2つの図
・大半のリーダーは「アイデンティティの不確かさ・インポスター感覚」から「アイデンティティの一貫性・オリジナルである感覚」へと移行しました
・著者らはこれを「スキーマの成長・整合・統合」という段階的プロセスとして理論化します
・図2:時間軸の発達(不確かさ → 探索 → コミットメント → 一貫性)
・図3:意味づけの循環的プロセス(経験 → 意味づけのモード → 意味づけられた内容)
▼ 時間と引き金(Time and Triggers)
・発達は数年がかりの緩やかなプロセスで、期間は3〜28年(平均約15年)。従来は理論的に語られてきた時間的側面に、期間とばらつきの実証的知見を与えました(Day et al., 2021; Liu et al., 2021)
・引き金や関係的・文脈的影響は、孤立した出来事ではなく「累積的な発達プロセス」の一部として、発達の速度と方向の両方を左右する、と拡張されました
▼ 意味づけのモード(Modes of Meaning-Making)
・発達が起きたのは、意識的・熟慮的な意味づけに取り組んだリーダーでした。「深く考えること」と「目的を持って行動すること」が相補的なモードとして働いた、とされます
・アンラーニング・リフレーミング・省察的実践は内省を促し、感情の認知的コントロール(認知的感情調整)にもつながりました(Jordan & Lindebaum, 2015)
・観察・実験・フィードバックの統合は、Ibarra(1999)の「仮の自己」の実験や、熟達には意図的・体系的な努力が要るとする「意図的練習(deliberate practice)」の文献とも重なります(Ericsson et al., 1993 ほか)
・Lanka et al.(2020)はロールモデルや危機的出来事が触媒に、組織構造やアイデンティティ拒絶が障壁になると示しましたが、本研究では、意味づけに継続的に取り組んだ人は障壁(とくに不確かさ)を乗り越えられ、取り組まなかった2名は乗り越えられなかった、とされます
・つまりリーダーアイデンティティは、単なる経験の蓄積や役割の遂行ではなく、「能動的な語りの作り直し」を通じて経験が意味あるものになることで育つ、と結論づけられます
▼ 意味づけられた内容(Meanings Made)
・著者らは「スキーマの成長と整合」という二重の認知プロセスを詳細化しました(Zaar et al., 2020)
・整合は「不整合・人工的整合 → 本物の整合」へと進む。認知的複雑さが発達しなかった人は、整合が「人工的整合」止まりで、役割は演じても場違い感が続いた、とされます
・※人工的整合=表面上は役を演じられているが、内面の自己像とはまだ食い違っている状態
・第3の変化「自己スキーマの明確さ」は、とくに「個人的価値の明確化」を通じて、不確かさ・インポスター感覚から一貫性・オリジナル感覚への移行をもたらしました。これは複雑さと整合が発達した人にのみ起きました
・3つの変化は共進化し互いを強め合い、リーダーアイデンティティの「強さ・意味・統合」を同時に高めた、とまとめられます
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■ 理論的貢献(3点)
・(1)外部承認・関係性・集団力学を重視してきた従来観に対し、「個人内の意味づけ」を中核に据えた。発達はプロトタイプ(典型像)への適合より、自己参照的・実験的で、内的な志と価値観に導かれると示し、「適合とは自分を役割に合わせることだけでなく、リーダー観そのものを自分の価値観に沿って作り直すことでもある」と person-role fit 議論を拡張(van Knippenberg, 2011; Hall, 2012 ほか)
・(2)リーダーアイデンティティを「強さ」一本ではなく「強さ・意味・統合の動的な相互作用」として再概念化。強いだけのアイデンティティは虐待的リーダー行動と関連しうる(Johnson et al., 2012)、統合が弱いとストレスや健康リスクが増す(Weiss et al., 2018)という先行研究を踏まえ、「どれだけ強いか」から「どれだけ一貫的・意味的・統合的に構築されているか」へと問いを転換
・(3)意味づけのモード、とくに「アンラーニング」を中心的な機構として前景化。従来の「学習(足し算)」中心の見方に対し、発達は「古い思い込みの能動的な解体(引き算・再構築)」にも等しく依存すると主張。「すべての答えを持たねば」を手放し「より良い問いを立てる」へ作り直すような営みです
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■ 実践的示唆(3つのレバー)
・(1)プロトタイプ脱中心化:「理想のリーダー像」への適合を促す従来型の育成は、内面の作業を見落とし発達を制約しうる。自分の価値観に根ざした語りを作る余地(省察・アンラーニング・リフレーミング)を作るべき。コーチングが有効で、「あなたにとってリーダーシップとは?」といった問いが助けになる
・(2)認知的シフトの中心化:スキルや行動という「外側の作業」偏重を見直し、認識・前提・正統性・価値観と格闘する「内側の作業」を取り入れる。ジャーナリング、マインドフルネス、事後レビュー、メンタリングや実験の機会を。本研究の手法(ライフナラティブ、写真・物・タイムライン)自体も育成ツールになりうる
・(3)アンラーニングの重視:制御・確実性・自己完結を強調する「受け継いだリーダー観」に苦しむ新任リーダーにとくに有効。失敗を振り返り、背後の古い信念(例「すべての答えを持たねば」)を特定し、新しい枠(例「より良い問いを立てる」)に書き換え、ロールプレイで練習する、といった介入が提案されています
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■ 限界と今後の研究
・(1)単一時点・回顧的データのため、動的プロセスがやや静的に見え、因果は推論できない。縦断的・反復測定・プロセス追跡型の設計が望まれる。LMX(リーダー・メンバー交換=上司部下の関係の質)やリーダーシップ有効性との関連も今後の課題
・(2)内省偏重で、集団・関係・文脈の力学を十分に捉えられていない。組織規範や権力関係が、どの経験に注目しどう解釈するかを左右する。多層的・文脈埋め込み型の設計が必要
・(3)目的的サンプリングとオランダのリーダーという偏り。発達に開かれた人に偏った可能性があり、他国籍・非正式なリーダー・多様な社会経済背景には一般化しにくい。人種・階級・組織的地位といった複数のアイデンティティの交差(インターセクショナリティ)や、構造的不平等の視点も今後必要
・ジェンダー差も今後の有望なテーマ。女性2名で発達が起きなかった背景として、経験を「脅威」と捉える傾向(Bataille & Vough, 2022)、高いインポスター感覚(Kark et al., 2022)、パラドックス・マインドセットの必要(Zheng et al., 2018)、男性的なリーダー像との葛藤などが、推測的に挙げられています
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■ 結論
・リーダーアイデンティティの発達は、認知的複雑さ・スキーマ整合・自己スキーマの明確さの成長に結びつき、アンラーニングとリフレーミング、観察・実験・フィードバックの統合、省察的実践への継続的・熟慮的な取り組みに支えられる
・「スキーマの成長・整合・統合」と、「深く考えること・目的を持って行動すること」という相補的なアイデンティティワークの価値を示した
・リーダーには「何をするか」だけでなく「どう考え、何者であるか」を理解することが必要だ、と締めくくられます

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対話形式での紹介はこちら
はぴテク相談室:「リーダーのフリ」がしんどいあなたへ
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-07-01-1782881340/

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■付録_インタビュー手順
この度は、本調査にご参加いただき、誠にありがとうございます。このインタビューの目的は、あなたのリーダーシップ育成の軌跡を形作った、人生における重要な出来事についてより深く理解することです。インタビューは録音され、後日文字起こしと分析を行います。文字起こしされたインタビュー内容は、ご確認・承認いただくためにメールにてお送りいたします。本調査で収集した情報は匿名化され、結果が個人や組織に結び付けられることはありません。それでは、インタビューを開始する前に、何かご質問はございますか?
ーーー
①お持ちいただいた品物を、時系列順にテーブルの上に並べてください。そして、それぞれの品物について、いつ(例:時期と年齢)どこで(例:職場、家庭環境)その出来事が起こったのかを簡潔に記してください。
②それでは、あなたの思い出を時系列で並べた最初の項目に移りましょう。この瞬間について、あなたの物語をお聞かせください。
・何をしたの?
・どう感じましたか?
・そこにいたのは誰だったのか?
・あなたは何をしたのですか?あるいは、何がきっかけで行動を起こしたのですか?
・どのような効果がありましたか?あるいは、どのような気づきが得られましたか?
③それでは、時系列順に並べた2つ目の出来事についてお伺いします。この出来事についても、ぜひお話をお聞かせください。
・何をしたの?
・どう感じましたか?
・そこにいたのは誰だったのか?
・あなたは何をしたのですか?あるいは、何がきっかけで行動を起こしたのですか?
・どのような効果がありましたか?あるいは、どのような気づきが得られましたか?
(この一連の質問は、その後、持参された他の品物についても繰り返された。)
④これらの出来事を振り返ってみて、それらの出来事をきっかけに、あなたが始めた仕事のやり方やパターンの変化にはどのようなものがありますか?
・いくつか例を挙げてください。
・なぜこんなことをしたのですか?
・それはあなたに何をもたらしましたか?何がうまくいきましたか?
・最も影響力があった、あるいは最も大きな課題となった瞬間はどれでしたか?また、その理由は?
⑤なぜこれらの瞬間を選んだのですか?
・これらの瞬間はあなたにとってなぜ重要だったのですか?
・なぜこれらの瞬間が、その時点で重要だったのか、詳しく説明していただけますか?
・あなたのリーダーシップ能力の成長を加速させた瞬間はどれですか?また、その理由は?
⑥かつてあなたをよく知っていたけれど、何年も会っていなかった人に、偶然ばったり会ったと想像してみてください。その人はあなたにどんな変化を見るでしょうか?
⑦ご自身のリーダーシップ育成の過程から得た重要な教訓として、他者に伝えたいことは何ですか?
⑧リーダーシップ育成という観点から、あなたの将来像はどのようなものですか?
・あなたにとって、まだ学ぶべき新しい瞬間が世の中にはあると思いますか?
・あなたは、どのような瞬間からまだ何か新しいことを学べると思いますか?
ーーー
これでインタビューは終了です。このインタビューに関して、何か追加でお伝えしたいことはありますか?ご協力ありがとうございました。

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■インタビューにおける発言集
■ 3.1 認知的複雑さの発達(①リーダー観が広がる)
▼ N7
・「だからもう階層的なリーダーシップではなく、むしろ何かを実現するためのプロセスを率いることなんです。… 年月を経て、私はどうやらそういった事柄について違うふうに考えるようになったようです。」
▼ N10
・(リーダー像の広がりについて)「正式には階層的なリーダーシップの役割を持っていないのに、非公式には … 多くの人を率いている」人たち。
▼ N5
・「私はそこにいました、30歳くらいの駆け出しで、彼女たちにやり方を変えなければいけないと言おうとしていたんです。… どんな反応が返ってきたか想像できるでしょう … あの女性たちに殺されそうになりました。3時間ほど締め上げられたんです。でもこれで学びました … 自分をステークホルダー(利害関係者)の視点に置く必要があるんだと。」
▼ N2(認識の変化)
・「リーダーとしての役割で成長すると、すべてをコントロールできるわけではないと気づきます。… すべてをコントロールしようとすると、人の成長を妨げてしまう。… 私が常に心がけているのは … すべての合理性や分析に加えて、共感も含めることです。人が大事だということ。たとえメッセージが事実として正しくても、人々はそのメッセージを受け入れる必要がある。それが、この数年で学んだ教訓です。… いくら正しくても、受け入れられなければ何も達成できないのです。」
▼ N8(認識の変化)
・「ある時、人を抱える部署を任されます。すると機能的で指示的であろうとする … 私が彼らにどうやるか、どうやってほしいかを伝えなければ、と。それから、もしこれをうまくいかせたいなら、受け入れられる必要があると気づき始めるんです。そしてそこから始まる。命令を出すことから始まるのではなく、人として、人間として、そしてその地位において、受け入れられることから始まるのです。」
▼ N1(アンラーニング)
・「それが、私が他の視点に開かれていない状態につながっていました。… 話すのをやめて、聴き始めたほうがいいと気づかせてくれました。この相手を駆り立てているものは何か?どうすれば別の洞察や結果にたどり着けるか? … 発達したいなら、手放す必要があるのです。」
▼ N11(リフレーミング)
・「私は孤独を感じていました。トップで孤独だと。… それからこんな気づきがありました。そう、自分は孤独だと感じているけれど、これは同時に、一歩引いてより良くズームインし、より良く聴いて、次の進路を決められるということでもある、と。だから私はこの状況の否定的な感情を、とても肯定的な感情へと翻訳したのです。これで何かできる、と。」
▼ N2(認知的柔軟性)
・「私は今、同じものを見ても、それを違うふうに見ます。… 絶対的な真実などというものはなく、状況に合わせる必要があるのです。」
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■ 3.2 スキーマ整合の発達(②その広げた像と、自分を噛み合わせる)
▼ N5(観察・ネガティブなロールモデル)
・「この4年間の私の上司は … そこから、自分は決してこういうリーダーにはなりたくない、ということを学びました。… ある規範や価値観が完全に踏みにじられていて … 例えば … 取締役会の前でプレゼンしなければならないとき、私は事前にスライドを送るのですが、彼は自分の見方で良すぎると思う5枚を抜き取り、私を否定的に見せる残りの5枚だけを私にプレゼンさせるんです … しかも私に相談もなしに!それで私は取締役会全員の前に立ち、これは私のスライドじゃない、と思うわけです … そういう類いの小細工です。私に知らせず直属の部下たちと会って、これから何をすべきか指示したり … 人を排除したり … そういう破壊的なリーダーシップスタイルの結果を目の当たりにするんです。… 私は学びました。リーダーとして、こうした事柄にもっと意識的になろうと。だからチームで非倫理的な振る舞いや、まともでないこと、人を押しのけるようなこと、何であれ品位を欠くことを見たら、私は激しく反応し、徹底的に議論します。」
▼ N7(実験)
・「だから私はただ実験を始めたんです … よし、これを実行に移そう、とにかくやってみよう、と思って。… 試行錯誤を通じて多くを学びました。」
▼ N8(実験)
・「息子が生まれた後 … 人を率いるということは、責任を引き受けるという事実に影響されるんだと気づき始めました … 人を率いることは、すべての面ではないにせよ、子どもを育てることとかなり似ているんだ、と。それで、ある技法を使って … 鏡のように映し始める … 職場の特定の状況で意識的に応用する。すると驚いたことに、本当にうまくいくんです。」
▼ N5(フィードバック)
・「突然、私が責任者になり、前任者が作った問題を引き継いで解決しなければならなくなりました。… 一連の問題があって … 一つ解決するとまた別のが出てくる … それで何をし始めるかというと、もっと速く走り始めるんです。1日10〜12時間働き始め、それから16時間になり、そんなとき、ある先輩が私を脇に呼んでこう言いました。一つだけアドバイスをやろう。他人の心臓発作を、自分の心臓発作にするな、と。」
▼ N11(自己認識)
・「私はかなり強い意見を持っていますが、他の人がそれに異を唱えることはまったく構わない、むしろ好きなくらいです … でも、私はそれを、交渉の余地がないかのような形で、あるいはそう受け取られるように提示してしまう。家でも、MBAでも、そうだと気づいたんです。」
▼ N1(自己認識)
・「彼らはこう言いました。あなたのやっていることは素晴らしい、人事評価ではいつも、とても良い、優秀だ、と。だから改善の余地はそこにはなかった。でも私はすべてを固定された構造の中でやっていました。"構造"が私にとっての魔法の言葉だったんです。そして人事マネージャーと部長が私に気づかせてくれた。あなたのやっていることは結構、私たちはとても満足している。でも、もし成長したいなら、緩めて手放す必要がある、と。構造を最終目標ではなく、目標に到達するための手段として見る必要がある、と。」
▼ N7(自分のやり方へ)
・「ほら、その年齢ではまだ、他人が自分をどう思うかにとても影響されやすいんです。… だからあの知識リーダーたち、最初は自分を彼らと比べて、自分に一体何が提供できるだろう、と思う。でもある時、それを手放すんです。自分のやり方を信頼し始める … 自分なりのやり方を。… するとそれがうまくいくと分かる。価値を加えられると思っていたところで、実際に加えられているんだと。これがとてつもなく良い感覚をくれる。これは自分のやり方だ、と。… 今ではこれは本当に私のものです。」
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■ 3.3 自己スキーマの明確さの発達(③振り返りで、自分の価値観をはっきりさせる)
▼ N2(同僚から上司へ)
・「私は同僚から部署長になりました。私は一番若い同僚で、それから長になったんです。それは時に奇妙な、いや気まずい状況でした。だから私は、上司というより同僚であろうとし続けたんです。」
▼ N7(アイデンティティの不確かさ)
・「28歳で初めて率いる立場になって … 少し奇妙な状況でした。私は知識ではなく、コンピテンシー(能力)で選ばれた最初のリーダーだったんです … 異質な存在、そう見られていました。それは感じ取れました。かなり長い在籍年数のリーダーが多くいて。会社の平均年齢は、確か40から45くらい。だから、アルゴスの目(=用心深く厳しい視線)で見られていたんです。」
▼ N12(役割期待からの解放)
・「最初は200人を率いていて、今は100人、いずれは20人だけかもしれません。そして、私はこのほうが好きだと気づいたんです。… 100人、200人、300人を率いても、もう気にならない。もう関係ないと感じるんです。あの頃なら、これに全力で飛びついていたでしょう。でも今は、もうそうではない。」
▼ N2(社会的承認)
・「毎年、私たちはニューイヤー・レセプションを開きます。600〜700人ほどが出席します。私はそのために準備していました … スピーチをするために … 暗記するほどでした。それからこう思ったんです。準備した原稿には従わない、と。ただ物語を語って、自分のやり方でやろう、と … それがどうやら会場にかなりのインパクトを与えたようで、それほどまでに、[人名]が後で私のところに来てこう言ったんです … うちに来て働いてほしい、と。… 大きなインパクトでした。」
▼ N7(自己効力感)
・「私はあのリーダーの信頼を得ました … 私はこう信じています、あなたならこれができる、と。」
▼ N8(自己効力感)
・「それはあなたに大きな自信を与えてくれます。」
▼ N10(個人的な省察)
・「それは私にとって、こう思った瞬間でした。ここにただ座ろう、何もない、ただ水、あの川があるだけ、そして時間に流れに任せよう、と。周りのすべての喧騒から距離を取って、物事を見つめ直せるように。」
▼ N8(内省)
・「それから私は内側に focus を当てます。自分ならどう見るか、どう感じるか、どうするか、と。」
▼ N12(影響の見極め)
・「リーダーとしての自分はどうか、人は私をどう見ているか、私は人にどんな影響を与えているか?」
▼ N6(「なぜ」を解きほぐす)
・「自分は今どこにいるのか、これはどこへ向かうのか、なぜ私はこれをやっているのか?」
▼ N18(継続的な省察)
・「私はこれを定期的にやります。帰り道、車の中で。一日を振り返るんです。何がうまくいったか?何が私をあまり幸せにしなかったか?それは私のせいだったか?別のやり方ができたか?」
▼ N2(省察の勧め)
・「私がいつも人に言うのは、省察しなさい!ということです … 絶え間なく … 毎日 … その省察を求めなさい、と。」
▼ N9(導かれた省察・コーチング)
・「私はこれを外部のコーチと話し合いました。それが大いに助けになりました。」
▼ N11(コーチング)
・「私のコーチ。彼女は私に鏡を掲げてくれたと思います。分析はうまくいっている、でも次は実行を、と。… 分析が並外れて得意 … でもそれを行動に移せない … その問いを投げかけてくれて … 私はこう思いました、これだ、本当に自分の強みから見て、これは自分が追い求めたいことなのか、と。そしてそれを実際にやること。それが私にとって、物事を始める引き金になったんです。」
▼ N10(女性の省察パートナー)
・「もう何年も一緒に働いている同僚が … 似たような発達を経てきました。彼女も現場から中間管理職、マネジメントチームへと移り、今もなお直属の同僚です。そして私は、彼女が私にとって非常に重要だったと信じています。なぜなら、異なる地位への移行に関するあらゆる経験や感情を分かち合うことができたからです。私たちは二人とも男性優位の環境で最初の女性で、中間管理職になりました。どうやってそれをやるのか?それは何を意味するのか?どうやってチームを率いるのか?男性か女性かは関係あるのか?同僚の輪とどう関わるのか? … 彼女は、これらすべてのことを、長年にわたって一緒に省察できた相手だったと思います。」
▼ N11(自己知識・価値観)
・「この[画像]は私の表現です … 自分をリーダーとして描写するために … なぜ私が自分のすることをするのか、を。… この画像には5つの言葉があります … それは、インスピレーション、ビジョン、決意、楽しさ、そして"共に"です … そしてそれが私です。… 人が同意するかどうかは問題ではありません。重要なのは、私がプレゼンし、見せ、話すとき、あなたが私を見たとき、いつもその5つの側面を認められる、ということです。」
▼ N8(真正性)
・「今ではそれを、自分自身から、自分の誠実さから、自分の価値観や規範から行えます。… 10年、20年前は … 私はほとんど吸収するばかりで、他人がどうやるかを観察していました … 今は真正性から率いています。他人の中で自分が称賛するものをよく見ますが、それをコピーはしない。自分のままでいて、それをどう活かせるか、どう統合できるかを見ようとします。」
▼ N14(統合された自己)
・「人が今の私を見るとき、彼らは自分の肌に馴染んでいる、より調和した人間を見るでしょう。」
▼ N11(オリジナルである感覚)
・「それは私の人生の中で、上司やマネージャー、ディレクターを見て、ああ、こうやるんだ、これがマネージャーやディレクターになったときに期待されることなんだ、と思うのをやめた瞬間でした。… 私はそれから自分を信頼し始めました。私には確かなものがある、私は何かのために立っている、それを伝える必要があるんだ、と。… それは私が選択をした瞬間でした。私はあのマネージャーやあのディレクターにはなりたくない、私は私でいたい、私には提供できるものがある、と。… 気づいたんです、もしこれをやらなければ、私には付加価値がない。ただコピーして、自分を変えようとするだけになる。そんなことは望むべきじゃない、と。… だからもし2年前にあなたが私に尋ねていたら、私は"リーダー"と"私"を同じ文の中で使うことさえできなかったでしょう、そんな勇気はなかった。でも今は、自分がそうだと発見したのです。」
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■ 3.4 リーダーアイデンティティ発達の不在(※本物のリーダーにまだなれていない人の発言)
▼ N13(リーダーは生まれつき、という信念)
・「それは自分の中にあって、やるか、やらないか。私の中にはなくて、やらなければならないからやっているだけ。でも本当に率いること、それは無理です。私はそれを信じていない、ただ信じていないんです。」
▼ N13(スキーマの不整合)
・「彼はとても権威的です … でも彼は人に関心がある。私は関心がない。だからそれが彼をより良いリーダーにしているんだと思います。… 彼は私よりずっと権威的です … とにかく、彼は関心があるから … より効果的なんです。… ステータスも私にはまったく興味がない … そしてそれが、いわばジレンマなんです。」
▼ N13(自己疑念)
・「もし他の人に私が効果的なリーダーかと尋ねたら、彼らはたいてい私を7から8(0から10の尺度で、10が優秀)と評価します。一方、私自身は、自分を著しく不十分だと評価しています。」
▼ N4(価値観の葛藤)
・「私は人間味を大事にする人間です … でも、もっと直接的にならなければなりませんでした … 私はそのことを他の2人とも話しました。彼らは、人間味のある人だった私が、こんなにビジネスライクになってしまったのは残念だ、と言いました。でも、あの頃は、私も人間味のある人でいられた。すべてを計算して、より効率的で効果的にする必要なんてなかった。… それで彼らは言ったんです。私たちはあなたを失った、あなたはいつも時間管理に追われていて、心のない人になってしまった、と。」
▼ N13(役割への両義性・動機の欠如)
・「私はリーダーシップをやっています、それは私の地位の一部だから。でも、それは私が選んでやっていることではありません。これをとても重要だと思う人たちがいますが、私はいつもそれを嫌だと思っていました。… 私にはその意欲がないんです。」
▼ N13(外的統制・偶然)
・(リーダーの地位に就いたことを)「単なる偶然のなりゆき」、(その地位にとどまっていることを)「本当の情熱のための収入を得るための必要性」にすぎない、と表現。

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