はぴテク相談室:感謝が広がらないのは、誰のせい?
はぴテクさん、ちょっと相談です。私、部署のリーダーをしてるんですが、「みんなもっと感謝し合うチームになってほしいな」と思って、自分から「ありがとう」をたくさん言うようにしてるんです。でも、全然みんなに広がらなくて…。私だけが言ってる感じで、ちょっと疲れちゃいました。
お疲れさまです。まず、ご自分から「ありがとう」を実践されてるって、それ自体がすごく大事な一歩なんですよ。最近の研究でも、リーダーの感謝はちゃんとチームに伝わっていくことが分かっているんです。「トリクルダウン」って呼ばれていて、上の人の感謝が、滴が落ちるように下へ広がっていく現象です。
えっ、そうなんですか?じゃあ私のやり方、間違ってないってこと…?でも現実は広がってないんですけど。
そこなんです。実はこの研究、面白い発見があって。感謝が広がるのは「真似されるから」でも「感情が伝染するから」でもなかったんですよ。
あれ、てっきり私が「ありがとう」って言ってるのを見て、みんなも真似してくれる…っていう話かと思ってました。
多くの人がそう思うんですよね。でも研究で3つの仕組みを競わせて検証したら、勝ったのは「感謝的注意」というものだったんです。難しそうな言葉ですが、要は「あ、これって誰かのおかげなんだな」と気づく注意の向け方のことです。
気づく…注意…?
はい。感謝って、実は「気づくこと」から始まる感情なんです。たとえば、同僚が資料を準備してくれていても、それに気づかなければ「ありがとう」は生まれませんよね。逆に「あ、これ◯◯さんがやってくれたんだ」と気づけた瞬間に、感謝が湧いてくる。
…たしかに。私、「ありがとう」って言葉は連発してるけど、みんなが「何に感謝すればいいか」に気づけてるかは、考えてなかったかも。
そこが核心なんです。リーダーが感謝を示すと、本当はそれが「職場の中の良いこと・お互いの貢献」に部下の注意を向けさせるスイッチになるんです。あなたの「ありがとう」は、ただのお礼じゃなくて、「ほら、ここに感謝すべきことがあるよ」っていう道しるべなんですよ。
道しるべ…。じゃあ私、もっと「何に対して」感謝してるかを、具体的に言ったほうがいいってことですか?
まさに。「ありがとう」だけより、「昨日の急な依頼、◯◯さんが残って対応してくれて本当に助かった、ありがとう」のほうが、周りも「あ、そういうことに気づいて感謝するんだ」と注意の向け先を学べます。注意が向けば、みんなも自然と感謝を感じて、口に出すようになっていくんです。
なるほど…!「ありがとうを言う」じゃなくて「気づきの方向を示す」感覚ですね。
その通りです。あと、もう一つ安心してほしいことが。研究では、感謝は階層を下るほど少しずつ薄まる傾向もあったんです。だから「一回言えば広がる」というより、リーダーが続けることが大事。あなたが疲れちゃった感覚は、自然なことなんですよ。
あー、それ聞いて気が楽になりました。広がらないのは私のせいじゃなくて、もともと「薄まりやすい」ものなんですね。
そうなんです。だから自分を責めなくて大丈夫。「具体的に気づきを示す」ことを意識しながら、無理ない範囲で続けてみてください。それが、チーム全体の関係の良さにもつながっていくことが、研究でも確かめられていますから。
やってみます!「ありがとう」の質を変えてみますね。なんだか前向きになれました、ありがとうございます。
…今の「ありがとう」、まさに何に感謝したか伝わってきましたよ。いい調子です。
■ 今日のまとめ
- リーダーの感謝はチームに「滴り落ちる」ように広がる。でも広がりを担うのは「真似」や「感情の伝染」ではなく、「感謝的注意(誰かのおかげだと気づく注意の向け方)」だった。
- だから「ありがとう」を連発するより、「何に対して感謝しているか」を具体的に示すほうが効果的。それが周りの「気づきの方向」を育てる。
- 感謝は階層を下るほど薄まりやすいので、広がらなくても自分を責めない。リーダーが無理なく続けることが、結果的にチームの関係の良さにつながる。
■ 出典・注意事項
- 出典:Locklear, L. R., Kane, M. E., & Ehrhart, M. G. (2026). Grateful Leaders and Attentive Followers: How Grateful Attention Transmits the Cascade of Gratitude Expressions to Strengthen Coworker Relationships. Journal of Applied Psychology.
- この対話は研究内容をもとにした分かりやすい解説であり、登場人物のやりとりは説明のための創作です。
- 研究は米国の職場・オンライン参加者を対象としたもので、文化や職場環境によって当てはまり方は異なる場合があります。個別の悩みについては、状況に応じた専門家への相談もご検討ください。
論文自体の紹介は、こちら😊
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-06-27-1782522300/