リスクテイカーは幸せなのか?
〜普通だった。外向性や情緒安定性が幸せにつながるが、誠実性や協調性が低いことで不幸せにもつながる。〜
リスクテイカーは幸せなのか?について、3万6千人以上のデータを元に検証頂いた最新研究😍
先日、リスクテイカーは、所得ランク(人と比べた収入)が幸福度に影響しづらい。とあったので、リスクテイクと幸せについて気になっていたら、まさにな最新研究が😍😍
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リスクテイクは、起業家精神やイノベーション、限界への挑戦といった成功と充実につながるものと思われていますが、
一方で、衝動性や無謀な行動が、健康や資産、人間関係を破壊するとも言われています。
結論から言えば、まさにその通りで、
リスクテイク志向と幸せは、あまり関係なかった。
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何故ならば、
リスクテイク志向のある方は、外向性(エネルギッシュさ)や情緒安定性(メンタルタフネス)が高い!
これは幸せにつながる。
が、
リスクテイク志向のある方は、誠実性(まじめさ)や、協調性が低く、
これが不幸せにつながる。
このプラスマイナスが合わさって、結果、影響ほぼなし。
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なので、幸せなリスクテイカーになるには、
リスクをテイクするようなエネルギッシュさや、メンタルタフネスを持ちつつも、
意識して、長期的な計画性(誠実さ)や人とのつながりを大切にする(協調性)と良さそうです。
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Are Risk Takers Happy? A Meta-Analytic Investigation
リスクを冒す人は幸せなのか?メタ分析による検討
2026/5/21
Don Zhang(ルイジアナ州立大学) et al.
https://assets-eu.researchsquare.com/files/rs-9313082/v1/44054f37-05d4-4ead-b18f-1524993e1cbb.pdf
リスクを冒す人は幸せなのか?一時的な気分がリスクを伴う選択にどのように影響するかについては多くの研究がなされてきたが、持続的な特性としてのリスクテイクと長期的な幸福感との関連については、依然として明らかになっていない。本研究では、リスク選好性とウェルビーイングの関係に関するメタ分析(k=61、N=36,659)を報告し、弱い正の相関(r=0.046、95% CI [0.006, 0.087])を確認した。メタ解析的構造方程式モデリングを用いることで、ビッグファイブを介した2つの媒介経路を特定した。1つは、外向性と情緒安定性が正の間接効果をもたらす「主体性経路」であり、もう1つは、勤勉性と協調性の低さが負の間接効果をもたらす「行動経路」である。また、ビッグファイブを調整した後でも、リスク選好性がウェルビーイングに負の直接効果をもたらすことも明らかになった。これらの知見を総合すると、リスク選好性が、異なる性格経路を通じて幸福を促進すると同時に損なうという、そのパラドックス的な性質が明らかになる。
【背景】
■ この研究が立つ「土台」
この論文は「リスクを取る人は幸せか?」という問いを立てていますが、その前に研究者たちが踏まえている既存研究の流れがあります。大きく分けると、(1)従来研究の限界、(2)幸福とパーソナリティの関係、(3)リスク傾向という特性の独自性、(4)幸福の2つのとらえ方、という順番で議論が積み上がっています。
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■ 従来研究の限界 ―「幸せな人はリスクを取るか?」という逆の問い
▼ これまでの研究は「一時的な気分」に注目してきた
従来の研究の多くは、実験室で一時的な気分(ムード)を誘発し、その後のリスク選択(例:賭けを受け入れるか)への影響を観察するものでした。
・Kassas et al. (2022)、Lane (2017)、Stanton et al. (2014)、Yuen & Lee (2003)、Y. Zhang et al. (2020) など
・Marini (2023) のメタ分析(複数の研究結果を統計的に統合する手法)では、誘発された幸福感がリスクテイキングに与える影響は比較的小さいと報告
▼ 「持続的な幸福」を予測因子とした研究も結論が割れている
・Pierno (2024):人生満足度が高いほどリスクを取りやすくなる
・Guven & Hoxha (2015):逆に、幸せな人はむしろリスク回避的(特に金融面)。現在の幸福状態を守るためと解釈
つまり従来の問いは「幸せな人はリスクを多く取るか?(幸福→リスク)」でした。本研究はこれを反転させ、「リスクを取る人(という特性を持つ人)は幸せか?(特性→幸福)」を問います。気分という一時的なものではなく、特性レベルで人生経験(キャリア選択、人間関係、健康行動など)の蓄積を通じて幸福に影響する、という発想です(Mata et al., 2018; Zhang et al., 2019)。
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■ 幸福を決めるのは「安定したパーソナリティ」
▼ 幸福の大部分は性格特性で説明される
幸福は安定したパーソナリティ特性に大きく左右されることが確立しています(Anglim et al., 2020; Lucas, 2007)。
▼ 特に重要な2つの特性(=「幸福な性格」)
ビッグファイブ(性格を5因子でとらえる代表的モデル:開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向)の中で、メタ分析が特定した中心的な特性は次の通りです(Steel et al., 2008; Strickhouser et al., 2017)。
・情緒安定性(神経症傾向の逆):最も頑健な幸福の予測因子
・外向性:それにほぼ匹敵する強さ
・誠実性と協調性:小さめだが安定したプラスの関連
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■ リスク傾向は「ビッグファイブの外」にある独自の特性
▼ ビッグファイブだけでは捉えきれない
パーソナリティにはビッグファイブの枠外にも独自の変動があり、リスクテイキングはしばしば独立した特性として現れます(Paunonen & Jackson, 2000)。
▼ 「状況依存」から「安定した特性」へという見方の変化
かつてはリスクテイキングを状況ごとの現象とみなす研究が多かった(Hanoch et al., 2006; Weber et al., 2002)のですが、現在では「状況を超えて安定した個人差(=リスク傾向)」とする見方が主流になっています(Frey et al., 2017; Highhouse et al., 2017)。
・ビッグファイブはリスク傾向の分散のわずか22%しか説明しない
・リスク傾向はビッグファイブを超えて、様々なリスク行動を予測する独自の分散を持つ(Highhouse et al., 2022; Zhang et al., 2026)
▼ ここに本研究の「逆説」が生まれる
リスクを取る人の性格プロフィールは、幸福にとって矛盾した混合物になります(Highhouse et al., 2022; Joseph & Zhang, 2021)。
・幸福と関連するプラスの特性:開放性(r = .30)、外向性(r = .24)、情緒安定性(r = .13)
・幸福を下げるマイナスの特性:協調性が低い(r = −.16)、誠実性が低い(r = −.12)
※ r は相関係数。−1〜+1の値をとり、絶対値が大きいほど関連が強い
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■ そもそもリスク傾向はなぜ幸福と関わるのか
▼ 「望むリスクを取れること」自体が幸福の一部かもしれない
・Thunström et al. (2025):約50%の人が自分のリスク選好に不満を持ち、その多くが「自分はリスクを取らなさすぎる」と感じている。この理想と現実のギャップが低い人生満足度と強く相関
・Ayadi et al. (2017):リスク志向は人生を豊かにする「並外れた経験(extraordinary experiences)」の蓄積につながりうる
▼ ただしリスクの種類によって効果は異なる
・Baláž & Valuš (2020):「純粋なリスク」(例:ギャンブル)と「能力ベースのリスク許容」(例:計画的な移住、スキル習得)を区別。後者はスキルや自己効力感の蓄積を通じて人生満足度にプラス、前者は弱いかマイナス
・Zhang & Smith (2025):計算されたリスクスタイルは、起業のようなポジティブな行動を、犯罪のようなネガティブな行動より促す
本研究はこうした「リスクの種類」レベルの議論ではなく、「リスク傾向という一般的な性質に伴う性格特性が、どう幸福と結びつくか」という性格メカニズムのレベルを扱う点で差別化を図っています。
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■ 2つの幸福のとらえ方 ―ヘドニックとユーダイモニック
幸福研究では伝統的に2種類を区別します(Chen et al., 2013; Joshanloo, 2019)。
・ヘドニック(快楽的)幸福=主観的幸福(SWB):人生満足度(認知的評価)と、ポジティブ/ネガティブ感情のバランス
・ユーダイモニック(自己実現的)幸福=心理的幸福(PWB):自律性、人格的成長、人生の目的といった、より深い「繁栄(flourishing)」の次元
本研究は、2つの性格経路(後述の「主体性経路」と「行動経路」)がこれら2種類の幸福に異なる関わり方をする可能性を、仮説ではなく探索的な問いとして扱っています。
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■ まとめ ―既存研究から本研究の問いへ
これらの土台を踏まえ、本研究は次の構図を組み立てます。
・リスク傾向は安定した特性であり、ビッグファイブとは独立した独自性を持つ
・その性格プロフィールは幸福にとってプラス面とマイナス面が混在する「逆説」を抱える
・そこで、外向性・情緒安定性を通じた「主体性経路(プラス)」と、低い誠実性・協調性を通じた「行動経路(マイナス)」という2つの経路に分解して説明する
なお論文中の「経路(pathway)」は、ある特性が別の特性を時間をかけて変化させる因果の連鎖ではなく、安定した特性同士がどう相関しているかという統計的な関連パターンを指す点に注意が必要です(著者自身が明記しています)。
【研究内容】
■ 全体の流れ
この研究は、まず「リスク傾向と幸福の相関」を単純に測り(主分析)、次に「その関係がなぜ生まれるのか」をビッグファイブを介した2つの経路で分解する(媒介分析)、という二段構えになっています。結論を先取りすると、「単純な相関はほぼゼロに近いが、それは正反対の2つの効果が打ち消し合っているからだ」という発見が中心です。
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■ 方法
▼ 何を集めたか(文献検索)
・PsycINFO、PsycARTICLES、Web of Science、ProQuest という心理学系データベースを検索
・「リスク傾向(特性として)」と「幸福(ウェルビーイング)」の両方を測定した研究を対象に
・2023年8月の初回検索で3,914本がヒット
・PRISMA(系統的レビューの選別手順を可視化する標準フロー)に沿って段階的に絞り込み
・最終的に 39サンプル、61効果量、総サンプル数36,659人 に到達
※ 効果量(effect size)=関連の強さを表す数値。1つの研究から複数(リスクや幸福の測り方が複数あるため)取れることがあり、サンプル数より効果量の数が多い
▼ どう分析したか
・ランダム効果モデル(研究ごとに真の効果が異なる前提で統合する手法)で相関を統合
・信頼性補正:測定の誤差を考慮して相関を「割り増し」補正する手続き。観測された相関 ÷(各尺度の信頼性の平方根)で計算(Wiernik & Dahlke, 2015)
・相関係数はフィッシャーのz変換(統計処理しやすい形への変換)を経て統合し、最後に相関に戻す
・出版バイアス(良い結果ほど世に出やすい偏り)を調べるため、ファネルプロットやトリム・アンド・フィル法を実施
・下位グループ分析:幸福の種類別/リスク測定の種類別(自己報告か行動課題か)/出版状況別 に分けて検討
▼ 2つの経路をどう検証したか(MASEM)
・メタ分析的構造方程式モデリング(MASEM):複数研究から作った相関行列を使い、変数間の経路を一括で推定する手法(Cheung, 2015)
・リスク傾向→各ビッグファイブ特性→各幸福指標、という媒介モデルを構築
・媒介(mediation)=AがBを経由してCに影響する関係。ここでは「リスク傾向が性格特性を経由して幸福に関わる」構図
・各特性経由の間接効果(媒介経由の効果)と直接効果(ビッグファイブを統制した後に残るリスク傾向そのものの効果)を算出
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■ 結果
▼ 主分析 ―単純な相関はほぼゼロ
・リスク傾向と全体的幸福の補正済み相関は ρ = 0.046(95%信頼区間 [0.006, 0.087])
・統計的にはぎりぎり有意だが、実質的にはほぼ無視できる小ささ
・しかも有意になったのは補正済みの値のときだけ
・研究間のばらつき(異質性)は大きい(I² = 91.8%。値が高いほど研究結果がバラついている)
※ ρ(ロー)=補正済みの平均相関、信頼区間=真の値が含まれると考えられる範囲
▼ 幸福の種類別
・最も強い関連はネガティブ感情(r = 0.131)。ただしこの指標は逆コード(値が高いほどネガティブ感情が低い)なので、「リスク傾向が高いほどネガティブ感情が低い」傾向
・他の幸福指標(心理的幸福、人生満足度、ポジティブ感情、仕事満足度など)はサンプルが減るため弱まり、有意ではなくなった
▼ リスク測定の種類別・出版状況別
・自己報告でも行動課題でも結果はほぼ同じ
・出版済み研究の方が未出版データよりやや効果が強いが、どちらも小さい
・出版バイアスは小さく、結論を大きく変えるものではないと判断
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■ 結果の核心 ―「抑制(suppression)」の発見
▼ 正反対の効果が打ち消し合っている
単純な相関がほぼゼロなのは「無関係だから」ではなく、プラスとマイナスの経路が統計的にほぼ相殺しているためでした。これを抑制(suppression)と呼びます(MacKinnon et al., 2000; Rucker et al., 2011)。
▼ 媒介分析の結果(間接効果の内訳)
心理的幸福・人生満足度・ポジティブ感情・仕事満足度のいずれでも、ビッグファイブ全体を経由した間接効果の合計はプラス、一方でビッグファイブを統制した後の直接効果はマイナス、という一貫したパターンが出ました。
・主体性経路(プラス):外向性が最も強いプラスの媒介(例:ポジティブ感情で β = 0.078)。低い神経症傾向(=情緒安定性)も一貫してプラスに寄与
・行動経路(マイナス):低い誠実性が一貫してマイナスに寄与。協調性は小さくマイナスかほぼゼロ
・開放性は例外的で一貫せず:心理的幸福やポジティブ感情にはプラス、人生満足度や仕事満足度にはマイナス
※ β(ベータ)=標準化された効果の大きさ
つまり「リスクを取る人が少し幸せそうに見える」のは、リスクテイキングそのものではなく、それに付随する性格特性(外向性・情緒安定性)のおかげ、という構図です。