2026.05.21

34カ国、1万人以上を対象とした研究で分かった、感謝の秘訣

大石先生らによる感謝についての最新研究😍メガスタディー(大規模調査)です。

感謝のワークについて、

その効果や、ワークごとの効果、文化や国によってどう効果が違うのか、これまで議論になっていた事も含めて、対規模に調査頂きました。

以下、4ポイントだけ抜き出し😊

ポイント1:感謝は、幸せにつながる

世界各地で感謝のワークを行った所、

幸せの各要素を向上させた😍

効果の大きさ順位は、

1位:ポジティブ感情(Positive Affect)

→34カ国全てで向上!かつ最も効果が出た。

2位:楽観性(Optimism)

→30カ国/34カ国で効果有!

3位:ネガティブ感情(Negative Affect)

→29/34カ国で効果有(ネガティブ感情が減った)!国によるバラつきが大きい。

4位:妬み(Envy)

→27/34カ国で効果有(妬みが減った)。

5位:恩義感(Indebtedness)

→29/34カ国で効果有。だが効果はそこまで大きく無い。

→心理的負債感のこと。感謝と同時に、相手に借りがある、何かを返さなきゃ、という思い。

→日本だと大きそうですが、他の国でも恩義感を感じるところ多いんですね。

6位:人生満足度(Life Satisfaction、SWLS)

→27/34カ国で効果有。

→手法に寄らず国によって効いたり効かなかったり。

⇒ということで、瞬間的なハッピーには効く!

が、人生全体の満足度(主観的ウェルビーイング)に効くかは、一部の国で効かなかった。

ポイント2:感謝を伝えるのは最強。

感謝のワークを6種類実施頂いた所、

最も幸福度が高まったのは、感謝のテキスト。

感謝したい相手にスマホで実際にテキストメッセージを送ってもらうワークです😍

2位:感謝の手紙

感謝したい相手への手紙を書く(ただし相手には渡さなくてもOK)

3位:内観リフレクション

過去1週間で感謝することを3つ書き、「何を受け取ったか」「何を返したか」「さらに何ができるか」を内省

4位:神への感謝

神・高次の存在・スピリチュアルな存在への感謝の手紙を書く

5位:メンタル・サブトラクション

感謝することを5つ書き、そのうち1つについて「もしそれがなかったら自分の人生はどうなっていたか」を描写

6位:感謝リスト

過去1週間で感謝することを5つ書き出す(最もシンプルで古典的な方法)

⇒やはり、伝える、深掘りが大事ですね😊

ポイント3:日本は、感謝の効果が小さい国

これは他の研究でも言われる所ですが、

日本では感謝の効果は小さかった。

ただ、幸せに効かない訳ではないです。

ちなみに順位は↓。北欧も結構効果が小さいですね。

マレーシア > ポルトガル > トルコ > 韓国 > オーストラリア > オランダ > スウェーデン > イギリス > コロンビア > ハンガリー > イタリア > アメリカ > ギリシャ > インド > カザフスタン > ナイジェリア > フランス > ブラジル > ガーナ > デンマーク > 日本 > ポーランド > タイ > マケドニア > ノルウェー > 中国

ただ、一方でうちで測っている幸福度診断Well-Being Circleなどでも、

さまざまなことに感謝する人は、人生満足度含めて幸福度が高いです。

さらに感謝のワークやると幸福度高まるので、ワークのやり方が大事なんじゃなかろうか。

ポイント4:感謝の効果は文化にもよる

文化による感謝の効果への影響もあって、大きな効果は↓でした。

・タイトネス(社会規範の強さ)が高い国では、人生満足度の上昇が小さい

・快楽傾向が高い国では、楽観性の上昇が大きい

・権力格差が大きい国では、人生満足度の上昇が小さい

・宗教性が高い国では、恩義感の上昇が小さい

・GDPが高い国では、恩義感の上昇が大きい

日本は、

タイトネス(社会規範の強さ)がめちゃ高く、

快楽傾向が低く、

権力格差は中程度、

宗教性がめちゃ低く、

GDPは高い。

なので、人生満足度や楽観性は上がりづらく、恩義感は感じやすい。

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感謝の実践が主観的な幸福感に及ぼす影響に関する多国籍大規模研究

A multinational megastudy of the effects of gratitude practices on subjective well-being

Nicholas A. Coles , Annabel V. Dang, Shigehiro Oishi et al.

PNAS,2026/5/11

https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.2537789123

意義

大規模な共同研究において、文化的に多様な34か国から集まった10,696人の参加者を対象に、6種類の短い感謝介入の効果を検証しました。対照課題と比較すると、感謝介入は、気分、主観的な人生観、向社会的な感情のわずかな改善など、理論的に予測されたいくつかの効果をもたらしました。しかし、これらの効果は、感謝の実践方法や国によって異なりました。例えば、既存の証拠に基づくと、新たに無作為に選ばれた国で実施された感謝介入は、ポジティブな感情を改善すると関係者は予想できますが、他の測定結果には影響しない可能性があります。感謝介入が成功する場合と失敗する場合、その理由を説明するために、本研究では12の文化的な違いの役割を詳細に分析しています。

要旨

研究者たちは、さまざまな文化圏の人々が、感謝に関連するさまざまな実践を用いて、感情、人生観、社会関係を変えていることを観察してきた。幅広い異文化間の違いを網羅するように意図的にサンプリングされた34か国(合計N = 10,696)で、6つの短い感謝介入が主観的な気分、人生観、社会的評価に及ぼす影響を実験的に検証した。3つの対照課題と比較すると、感謝の実践は、肯定的感情(d = 0.37)、否定的感情(d = −0.22)、楽観主義(d = 0.24)、生活満足度(d = 0.12)、負債感(d = 0.15)、および羨望(d = −0.16)において、理論通りの改善を即座にもたらした。注目すべきは、これらの効果は、さまざまな感謝の実践(0.00 < τ実践< 0.08)と国(0.10 < τ国< 0.19)によって異なっていたことである。例えば、既存の証拠に基づくと、関係者は、無作為に選ばれた国で実施された感謝の介入がポジティブな感情を改善すると期待できるが、その他の測定された結果には影響しないと期待できる。なぜこのようなことが起こるのかを今後調査するための指針として、12の異文化間の違いの重要性に関する探索的なベイズ推定値を提供する。

投稿者によるコメント・補足(2件)
コメント 1

■背景
■ Coles et al.(2026)感謝介入メガスタディ ― 研究の前提となる既存研究
このPNAS論文は、34カ国・10,696人を対象とした感謝介入の大規模実験ですが、その背景には長年の研究蓄積があります。著者たちが「なぜ今この研究が必要か」を組み立てた論理の流れに沿って、引用文献を整理します。
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▼ 1. 感謝は文化を超えて見られる行為である
論文の出発点は「感謝という行為は人類に普遍的に存在する」という観察です。
・北シベリアのヤクート族の神への供物から、北米のサンクスギビングまで、感謝の表現は時代・文化を問わず存在してきた(Clay & Stearns, 2020)
・7つの社会を比較した発達研究では、感謝の発達には文化を超えた共通点と文化固有の違いの両方が見られる(Mendonça et al., 2018)
・感謝の動機づけ(なぜ感謝を表すか)には文化的なバリエーションがある(Vishkin et al., 2025)
つまり「感謝は普遍的だが、その表れ方は文化によって違う」という前提が、まず固まっています。
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▼ 2. 感謝が幸福を高める「3つの理論的説明」
なぜ感謝はウェルビーイングを高めるのか。先行研究には主に3つの理論的立場があり、本研究はそのすべてを検証対象にしています。
・(a) 気分・人生観の改善説:感謝は気分や主観的な人生観(楽観性、人生満足度など)を向上させる(Wood, Froh, & Geraghty, 2010)
・(b) 社会的絆の強化説 ―「Find, Remind, and Bind 理論」:感謝は良い関係性を見つけ・思い出させ・結びつける機能を持つ。本研究では「妬み(envy)」の減少として測定(Algoe, 2012)
・(c) 互恵性促進説 ― 進化心理学的視点:感謝は利他行動を生み出す適応として進化した。本研究では「恩義感(indebtedness)」の増加として測定(McCullough, Kimeldorf, & Cohen, 2008)
※ 用語補足:
indebtedness(恩義感/借りがある感覚)= 「お返しをしなければ」という社会的互恵性の動機づけ
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▼ 3. 現状の感謝研究には大きな偏りがある
ところが、現状の感謝研究は決定的にバランスを欠いています。
▽ Choi, Cha, McCullough, Coles, & Oishi(2025)のメタ分析(本研究の直接的な土台)
・典型的な感謝介入研究は「アメリカ人(全体の約50%)が、感謝することを書き出す(blessings counting、全体の約49%)」というパターンに集中している
・このパターンから外れた研究を見ると、文化や手法の違いが大きく結果を左右する
・例:感謝介入の効果は香港では大きく、日本ではほぼゼロという推定
・例:単に感謝を数えると効果は小さいが、「もしそれが無かったら」と想像する手法(メンタル・サブトラクション)を加えると効果は約2倍になる
※ 用語補足:
メタ分析 = 過去の複数の研究結果を統計的に統合する手法
▽ 主流メディアで推奨される幸福法の根拠は実は弱い
・系統的レビューにより、メディアで広く推奨されている幸福法の多くは、エビデンスが思ったほど強くないと指摘されている(Folk & Dunn, 2023)
ーー
▼ 4. 「比較できない」というメタ的問題
著者は、なぜ文化や手法の違いを切り分けにくいのかを、2つの研究の対比で説明しています。
▽ Emmons & McCullough(2003)
・手法:感謝ジャーナリング
・アウトカム:自己報告の感情と健康
・対象:アメリカ人
▽ Chan(2010)
・手法:内観(Naikan)風の感謝実践
・アウトカム:主観的ウェルビーイング
・対象:中国(香港)の教師
→ 2つの研究は「手法」「測定指標」「対象文化」すべてが違うため、何が結果の違いを生んだのかを後から切り分けることが不可能。メタ分析でも限界がある(Coles et al., 2025)。
この「交絡(confounding)問題」を解くには、同じ手法を複数文化で、同じ指標で測る大規模実験が必要 ― これがメガスタディの動機です。
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▼ 5. WEIRD批判と文化的多様性への要請
近年の心理学では、研究対象の偏りに対する批判が強まっています。
・心理学研究の大半は「WEIRD = 西洋・教育を受けた・産業化・豊か・民主主義」の社会に偏っており、文化的・心理的距離を測定・マッピングする枠組みが必要(Muthukrishna et al., 2020)
・西洋で検証された介入を非西洋に持ち込む前に、既存の文化的実践や文脈を考慮すべき(Onie & Daswin, 2021)
・大規模国際共同研究(ビッグチーム・サイエンス)が増えているが、参加国の偏りなど課題も残る(Coles, Takayanagi, Grant, & Basnight-Brown, 2026)
※ 用語補足:
WEIRD = Western, Educated, Industrialized, Rich, Democratic の頭文字。心理学サンプルの偏りを指摘する用語
文化的距離(Cultural Distance)= 2つの国がどれだけ文化的に異なるかを、遺伝学の「固定指数(fixation index)」の手法を価値観調査データに応用して数値化した指標(Muthukrishna et al., 2020 ; 元手法は Nei & Chester, 1983)
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▼ 6. 解決策としての「ビッグチーム・サイエンス」
著者たちは、こうした問題に対する答えとして、多国籍の研究者が同じプロトコルで実験を行う体制を提唱してきました。
・大規模共同研究の必要性(Coles, Hamlin, Sullivan, Parker, & Altschul, 2022)
・科学全体の協調を改善するシステム論(Rasti, Vaesen, & Lakens, 2025)
・大規模共同研究の実践ガイド(Baumgartner et al., 2023)
本研究の「Global Gratitude Collaboration」はこの流れの実践であり、34カ国の研究者が同一プロトコルで実験を行うことで、これまで切り分けられなかった「手法の違い」と「文化の違い」を分離して推定できるよう設計されています。
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▼ 7. 検証対象となった6つの感謝実践 ― それぞれの出典
本研究で比較された6種類の感謝実践は、過去の代表的な研究から選ばれています。
・感謝リスト(Gratitude List):感謝することを書き出す(Emmons & McCullough, 2003)
・感謝の手紙(Gratitude Letter):感謝したい相手に手紙を書く(Walsh, Regan, Twenge, & Lyubomirsky, 2022)
・感謝のテキスト(Gratitude Text):感謝の気持ちを実際にテキストで送る(Walsh et al., 2022)
・内観リフレクション(Naikan Reflection):日本の内観法に類似した内省(Chan, 2010)
・メンタル・サブトラクション(Mental Subtraction):「もしそれが無かったら」と想像する(Koo, Algoe, Wilson, & Gilbert, 2008 ; Caleon et al., 2017)
・神への感謝(Divine Gratitude):神や超越的存在への感謝を書く(Tsang, Medenwaldt, Alwood, Nelson, & Schnitker, 2023)
※ 用語補足:
内観(Naikan)= 吉本伊信が体系化した日本発の自己観察法。「お世話になったこと」「お返ししたこと」「迷惑をかけたこと」を振り返る

コメント 2

■研究内容
■ 1. 研究方法
▼ 1-1. 全体デザイン
・34カ国の研究者が、同一プロトコル(共通の手順)でブラウザベースの実験を実施
・最長で約20分のオンライン実験、最大15言語で提供
・参加者は同意後、9つの条件のうち1つに無作為に割り当てられた(ランダム化比較実験)
・課題の直後に質問紙への回答を行い、即時的な変化を測定
※ 用語補足:
メガスタディ = 通常の研究より圧倒的に大規模(参加者数・国数・条件数)で、複数の介入を一度に比較する研究形式
ーー
▼ 1-2. 国のサンプリング ― 34カ国の選定方法
・文化的距離指数(Muthukrishna et al., 2020)を使用し、アメリカからの文化的距離が広く分布するように選定
・「アメリカに近い国(カナダなど)」「中程度に異なる国(ドイツなど)」「大きく異なる国(カザフスタンなど)」をバランス良く含めた
・最終的に34カ国を選定(日本も含まれる)
・既存研究で利用可能な約100カ国の文化的バリエーションのうち、平均69%(最小51%、最大87%)をカバー
※ 用語補足:
文化的距離 = 遺伝学の「固定指数(集団間の遺伝的隔たりを示す指標)」を、世界価値観調査のデータに応用して算出された、国同士の文化的隔たりの数値
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▼ 1-3. 参加者
・募集前総数:15,499人
・除外基準:
・調査の95%未満しか完了していない(4,725人)
・従属変数を全て完了していない(76人)
・実施地が記録されていない(2人)
・最終分析対象:10,696人(男性43%、女性55%、その他/未回答2%、平均年齢31.80歳、SD=12.60)
・募集方法は国によって異なる(コミュニティ告知、オンラインパネルなど)― これは後ほど「限界」で重要になる
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▼ 1-4. 9つの条件(感謝6条件 vs 統制3条件)
▽ 感謝条件(6種類)
・感謝リスト:感謝することを書き出す
・感謝の手紙:感謝したい相手に手紙を書く
・感謝のテキスト:感謝の気持ちを実際にテキストで送信する
・内観リフレクション:内観法に類似した内省
・メンタル・サブトラクション:「もしそれが無かったら」と想像する
・神への感謝:神や超越的存在への感謝を書く
▽ 統制条件(3種類)
・無処置(測定のみ):何もせず質問紙のみ
・出来事リスト:最近起こった出来事を書く
・興味深い出来事リスト:最近の興味深い出来事を書く
注:「日常の悩みを書く」という統制条件は、それ自体がウェルビーイングを下げ、感謝介入の効果を過大評価させるため、意図的に除外している(Dang et al., 2026)
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▼ 1-5. 測定したアウトカム(6つ)
20の形容詞について、現在の心理状態にどの程度当てはまるかを7件法で回答。
・ポジティブ感情:happy、joyful、pleased、content、satisfied(α=0.92)
・ネガティブ感情:sad、depressed、nervous、anxious(α=0.85)
・楽観性:optimistic、hopeful(α=0.81)
・妬み(envy):envious、bitter、jealous(α=0.74)
・恩義感(indebtedness):indebted、obligated(α=0.39 ― 後述の重要な問題点)
・人生満足度:Satisfaction With Life Scale 5項目(Diener et al., 1985)(α=0.88)
※ 用語補足:
α(クロンバックのα)= 尺度の内的一貫性(項目同士がどれだけ揃って同じものを測っているか)の指標。0.7以上が望ましいとされる
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▼ 1-6. 分析戦略
中核となる分析はランダム効果メタ分析。各国・各実践について、感謝条件と統制3条件平均の差を効果量(Cohen's d)で算出し、合計1,224個の効果量を推定。
モデル式は概念的に以下のような形:
d ~ β0 + μ_practice + μ_country + ε
・β0:全体の平均効果
・τ²_practice:実践間のばらつき
・τ²_country:国間のばらつき
→ 実践と国を同時にランダム化することで、両者の影響を分離して定量化できるように設計
※ 用語補足:
効果量 Cohen's d = 群間の平均差を標準偏差で割った値。目安として、0.2=小、0.5=中、0.8=大

論文紹介 ありがとうなんとかなる 感謝・親切・向社会性主観的幸福・幸福測定文化と幸福・日本的幸福

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