人はありのままで愛される自信がないとき、ステータスを求める
ポーランドのSWPS大学ガシオロウスカ・アガタ先生らによる最新研究。
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支配的な地位や、高級ブランド、大邸宅などのステータス追求。
それは、愛への不安が元となり、強烈な競争心や物質主義を経て、そのステータス追求に至る。
ということが5カ国、約4500名への実験で分かったよ。とのこと。
しかも、現状の社会的ステータスによらず、男女ともに。
愛への不安は、そのままの自分では愛されない、という不安ですね。物質主義は、心の充足よりも、購買や消費といった物質的な充足を優先する思想。
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今回の対象に日本はなかったのですが、
ホフステードの6次元モデルにおける男性性(成功やステータスを追い求める)が圧倒的に世界一。
だったので、このステータス追求も、世界トップクラスだと考えられます。
となると、その大元としては、ありのまんまで愛されていない。ということがあるのかも知れませんね。
うーん、ありのままで愛される経験を、日本中に増やして行くには、どうしたら良いものか。。。
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あ、あと由佐先生のメンタルモデルの「価値なし」、に似ていますね。
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不安な願望:愛着不安が同性間競争を通じて地位向上への欲求を煽る
Anxious Aspirations: Attachment Anxiety Fuels Status Strivings Through Intrasexual Competition
Journal of Personality and Social Psychology,2026/4
Agata Gasiorowska(ポーランド、SWPS大学ヴロツワフ校心理学部) , Michał Folwarczny, Tobias Otterbring
[[https://psycnet.apa.org/fulltext/2027-20783-001.html](https://psycnet.apa.org/fulltext/2027-20783-001.html)](https://psycnet.apa.org/fulltext/2027-20783-001.html)
社会的地位を求めることは人間の基本的な動機であるが、地位を求める傾向は個人によって大きく異なる。愛着理論とライフヒストリー理論に基づき、愛着不安が同性間の競争の激化を通じて地位追求を促すという仮説を立てた。5か国にわたる6つの事前登録研究(N = 4,456)において、愛着回避ではなく愛着不安が地位追求を予測することが明らかになった。この関係は、これまで述べられてきた物質主義や一般的な競争心ではなく、同性間の競争(同性のライバルとの競争)によって媒介される。実験的証拠は因果関係を裏付けている。愛着不安を誘発すると、同性間の競争の激化を通じて、高地位の車や家への欲求が高まる。プロセス調整デザインでは、同性間の競争を実験的に操作すると、愛着不安が地位追求に及ぼす影響がそれに応じて増強または減少するが、これは高地位の所有物に限る。これらの効果は男性と女性の両方に当てはまる。私たちの研究結果は、不安型愛着スタイルの人が人間関係における不安を補うために地位を追求し、同性のライバルと競争することでそれを実現することを示しています。この研究は愛着理論を地位追求にまで拡張し、愛着パターンの個人差が人々の地位向上への努力を予測するかどうか、いつ、なぜ予測するのかを明らかにします。
【背景】
本研究(Gasiorowska, Folwarczny, & Otterbring, 2026)は、「なぜアタッチメント不安(※)の高い人がステータス(社会的地位)を強く追求するのか」を、同性間競争という新しいメカニズムで説明しています。
※アタッチメント不安:他者との関係において「見捨てられるのではないか」「愛されていないのではないか」と過剰に心配する傾向
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▼ 出発点:哲学者ド・ボトンの「ステータス不安」
研究の発想の源は、哲学者アラン・ド・ボトンの著書『ステータス不安』(de Botton, 2004) です。彼は、人々が「物質的に成功していないと見られること」への痛みを伴う恐れを抱き、尊厳を取り戻すために必死に社会的階段を登ろうとする現象を描きました。
特に重要なのは、ド・ボトンがその主要因として「lovelessness(愛の欠如)」を挙げたことです。つまり、親密な人間関係の欠如を補うためにステータスを追い求めるという指摘で、これが本研究の理論的な出発点になっています。
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▼ ステータス追求は人間の基本動機である
・Anderson et al. (2015) は、ステータス追求が文化や社会経済的背景を超えて、人間の基本的動機であると論じました。
・Barkow et al. (1975) や Van Vugt & Tybur (2015) は、進化心理学の視点から、社会的階段を登ることは生存と繁殖に有利であると指摘しています(資源へのアクセス、配偶者からの魅力など)。
・Anderson et al. (2012) によれば、ステータスの高さは幸福感、自尊心、身体的健康と正の相関を持ち、抑うつや不安、恥とは負の相関を持ちます。
ただし、人によってステータス追求の強さには大きな差があり、その差を生むメカニズムを探ることが本研究の課題でした。
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▼ アタッチメント理論の基礎
アタッチメント理論は、Bowlby (1969) と Ainsworth (1989) に始まり、Hazan & Shaver (1994) によって成人の対人関係に拡張されました。
・乳幼児期に主要な養育者との関係を通じて獲得した対人スキルが、その後の親密な関係の持ち方を形作ります。
・成人のアタッチメントは、「アタッチメント不安」と「アタッチメント回避」という2つの軸で測定されます (Fraley et al., 2000)。
アタッチメント不安の特徴 (Mikulincer & Shaver, 2003):
・対人関係への過敏さと過剰な気遣い
・常に安心感や情緒的な近さを求める
・拒絶や見捨てられに敏感に反応する
アタッチメント回避の特徴 (Mikulincer & Shaver, 2016):
・自律性を重視し、感情的な距離を取る
・自己依存を好む
・社会的フィードバックへの反応が弱い (Hepper & Carnelley, 2010)
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▼ アタッチメント不安と「補償行動」のつながり
アタッチメント不安の高い人は、不足した愛情や承認を「物」や「ステータス」で補おうとする傾向があることが、複数の研究で示されてきました。
・Lee & Shrum (2012):アタッチメント不安の高い人は、注目を得られないとき、ステータス商品を消費して目立とうとする。
・Cassidy & Berlin (1994):アタッチメント不安の高い人は注目を求める傾向が強い。
・Norris et al. (2012)、Keefer et al. (2012)、Sun et al. (2020):アタッチメント不安は「物への愛着」や物質主義(※)と結びつく。
※物質主義:人生の幸福や成功を「モノを所有すること」に置く価値観
特に重要な先行研究:
・Gasiorowska et al. (2022):アタッチメント不安が顕示的消費(※)を予測し、その効果は物質主義によって媒介される、という結果を相関研究で示しました。本研究は、この知見をさらに発展させたものと位置づけられます。
※顕示的消費:他人に見せつけるための消費(高級ブランドを公の場で身につけるなど)
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▼ ライフヒストリー理論(LHT)の枠組み
本研究は、ライフヒストリー理論 (Ellis et al., 2009; Belsky et al., 1991) も部分的に援用しています。
LHTの基本的な考え方:
・幼少期の環境(不予測性、競争、投資の量)が、人の行動戦略を形作る
・不安定で予測困難な環境で育った人ほど、脅威への過敏さや、競争への構えを身につける
ただし著者らは、LHTを「速い/遅い」の単純な二分法として使うことを慎重に避けています。Frankenhuis & Nettle (2020) による批判を踏まえ、「関係の不予測性が、脅威への警戒、社会的ライバル意識、配偶関連の競争への準備性を高める」という限定的な前提のみを採用しています。
そして、Dunkel et al. (2016) や Fernandez et al. (2019) によれば、不安定な環境ほどアタッチメント不安が生じやすい、という対応関係があります。
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▼ 同性間競争(intrasexual competition)の研究
同性間競争とは、同性のライバルを「社会的・配偶上のライバル」として認識する傾向のことです (Buunk et al., 2017; Hill et al., 2013)。
本研究の核心となる先行研究:
・Fernandez et al. (2019):アタッチメント不安(回避ではなく)が同性間競争を予測する。
・Barbaro et al. (2016):アタッチメント不安の高い男女は、ライバルに対して操作的・攻撃的な戦術を使う。
なぜ同性間競争がステータス追求につながるのか:
・Eső et al. (2010):資源が不足すると、同性間でのステータスをめぐる競争が激化する。
・Griskevicius et al. (2006, 2007, 2012):配偶動機が活性化すると、ステータスを高める行動が誘発される。
性差について:
・女性は美容や評判操作などのタクティクスを使う傾向 (Blake et al., 2018; Reynolds et al., 2018)
・男性は顕示的消費やリスクテイキングなど、より直接的なステータス誇示を行う傾向 (Wilson & Daly, 1985; Otterbring et al., 2018)
・ただし Y. Wang & Griskevicius (2014) によれば、男女ともに顕示的消費を「ステータスの合図」「同性ライバルへの牽制」として使う点は共通している
【研究内容】
本研究 (Gasiorowska, Folwarczny, & Otterbring, 2026) は、6つの事前登録研究(5カ国、合計N=4,456)からなる大規模なパッケージ研究です。相関研究→媒介研究→実験研究→因果連鎖の検証、という順番で証拠を積み上げていく構成になっています。
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■ 研究の全体的な流れ
▼ 全6研究の戦略
※moderation-of-process design:媒介変数そのものを実験的に操作することで、「Aが原因でBが生じ、それがCを引き起こす」という因果連鎖を検証する強力な実験デザイン (Pirlott & MacKinnon, 2016)
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■ 研究1:基本モデルの検証(イギリス・南アフリカ)
▼ 目的
アタッチメント不安が、ドミナンス型(支配)のステータス追求と結びつき、その関係が同性間競争によって媒介されることを示す。プレスティージ型(威信)では同様の関係が見られないことを確認する。
▼ 方法
・参加者:イギリス516名、南アフリカ452名(最終N=968)
・尺度:
・ECR-R(アタッチメント不安・回避を測る36項目)(Fraley et al., 2000)
・ICS(同性間競争尺度、12項目)(Buunk & Fisher, 2009)
・DPQ(ドミナンス・プレスティージ尺度、15項目)(Körner et al., 2023)
▼ 結果
・アタッチメント不安は、ドミナンス型ステータス追求と有意に正の関連 (β=.32)
・アタッチメント回避はドミナンスとは関連せず、プレスティージ型と有意に負の関連 (β=-.32)
・同性間競争を介した間接効果:不安→同性間競争→ドミナンスは有意 (β=.11)。プレスティージ経路は有意でない
・両国で同様の結果が得られ、社会経済的に大きく異なる国でも頑健
▼ 解釈
即時的な承認欲求を満たしやすいドミナンス型は、関係への過敏さを持つ不安型のニーズに合致する。一方、長期的な評判構築を要するプレスティージ型は、即時的な不安解消には向かないため、結びつかないと考えられます。
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■ 研究2:物質主義と異性間競争を排除(イギリス)
▼ 目的
先行研究 (Gasiorowska et al., 2022) では、アタッチメント不安→物質主義→ステータス消費という経路が示されていました。本研究では、物質主義を統制しても同性間競争の経路が独立に成立することを示す。さらに、「単に競争心一般が高いだけではないか」という疑問を、異性間競争を別の媒介として投入することで検証。
▼ 方法
・参加者:イギリス615名(Prolific Academicでオンライン調査)
・追加された変数:
・物質価値尺度 (Richins, 2004)
・異性間競争(同性ではなく異性をライバル視する尺度)
・主観的・客観的SES(社会経済的地位):MacArthurの梯子(※)と世帯所得
※MacArthurの梯子:「自分は社会のどの位置にいるか」を1〜10の梯子で自己評価する尺度 (Adler et al., 2000)
▼ 結果
・アタッチメント不安からステータス追求への総合効果は有意 (β=.45)
・3つの媒介経路を比較すると:
・物質主義経由:β=.15(有意)
・同性間競争経由:β=.14(有意)
・異性間競争経由:β=.04(有意でない)
・物質主義を統制しても、同性間競争の経路は独立に成立
・主観的・客観的SESによる調整は、予測に反していずれも有意でなかった
・性別による調整も見られなかった(男女で同じパターン)
▼ 解釈
アタッチメント不安からステータス追求への経路として、物質主義と同性間競争は同じくらい強い独立した経路を持っている。ただし、競争相手は「同性」であることが本質的で、異性ではない。
AIさんに動画解説頂きました😊
https://youtu.be/vlkHdTmNX1E