2026.04.08

はぴテク相談室:59主観的幸福感の地理的変動

相談者

はぴテクさん、こんにちは。最近、なんとなく今の街に住んでいることに違和感を感じていて。友達もそれなりにいるし、仕事もまあ普通なんですけど、なんか「ここじゃない感」がずっとあるんです。これって気のせいなんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

こんにちは!その「ここじゃない感」、すごく大事な感覚かもしれませんよ。実は、「どこに住むか」が幸福感に関係しているという研究があるんです。Rentfrow(2018)という研究者がまとめた論文では、幸福感は地域によってかたまって分布していて、しかも「住む場所と自分の性格の相性」が幸福感に影響している可能性があることが示されています。

相談者

えっ、住む場所と性格の相性!?そんなことが関係あるんですか?どういうことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

ロンドンの216地区を対象にした研究(Jokela et al., 2015)が面白いんですよ。たとえば「好奇心が強くて新しいことが好き」な性格の人は、人口密度が高くて文化的に多様な地域に住んでいるときに幸福感が高く、逆に「人への思いやりが強くて協調性が高い」性格の人は、緑が多くて家族向けの環境のほうが幸福感が高かったという結果が出ています。

相談者

それ、すごく面白いです!私、わりと新しいことや色々な文化に興味があるタイプなんですよね。今住んでいる街って、正直かなり落ち着いた郊外で、あまり刺激がなくて…。それが違和感の原因なのかも?

はぴテクさん
はぴテクさん

その可能性はあるかもしれませんね!ちなみに、別の研究(Oishi, Talhelm, & Lee, 2015)では、外向的な人は海のある環境を好み、内向的な人は山を好む傾向があって、自分が好む環境に住んでいるほど生活満足度が高い、という関連も報告されています。「自分の性格やニーズに合った場所」かどうかが、じわじわ幸福感に影響しているようなんです。

相談者

じゃあ、引っ越せば幸せになれる、ってことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

うーん、そこは慎重に考えたいところです。研究では「性格に合った場所に住んでいる人は幸福感が高い傾向がある」という関連が示されているのですが、「引っ越せば必ず幸せになる」という因果関係まではまだ分かっていないんです。Rentfrowの論文自体でも、地域の幸福感と様々な指標の関係について、どちらが原因でどちらが結果かは明確でないケースが多い、と書かれています。

相談者

なるほど、そこは正直に教えてくれてありがとうございます。でも、住む場所が自分に合っているかどうかを考えてみること自体は意味がありそうですね。他にも「どこに住むか」で幸福感に関係しそうなことってありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい、もう一つ面白い研究があります。自分の性格が近隣住民の性格と似ているほど自己評価が高まるという研究(Bleidorn et al., 2016)や、政治的・宗教的な価値観が近い人々と同じ地域に住んでいると、帰属感や場所への満足感が高く、引っ越したいという気持ちが低くなるという研究(Motyl et al., 2014)もあります。つまり「周りの人たちと自分がどれだけ似ているか」も関係しているみたいなんです。

相談者

「周りの人との価値観の近さ」か…。今の街、確かに周りと価値観が合わないなと感じることが多くて。それも「ここじゃない感」につながってるのかもしれません。ちなみに、社会的な環境って幸福感に関係しますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

関係あります!フラミンガム研究という大規模な研究(Fowler & Christakis, 2008)では、なんと「友人の友人の友人」、つまり3人介した関係の人の幸福度が、自分の幸福度とも関連していることが示されました。周りの人の感情や雰囲気が、じわじわ自分にも波及する「社会的影響」というメカニズムがあるようです。

相談者

3人も介した関係まで!それはびっくりです。じゃあ、幸福感が高い人たちのいる地域に移ると、自分も影響を受ける可能性があるということですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究ではそういった関連が示されていますね。ただ、これも相関の話なので「移動すれば必ずそうなる」とは言えないのが正直なところです。また、この研究分野にはひとつ大きな限界もあって、研究の対象が主に「住む場所を自分で選べる立場の人たち」に偏っているんです。住む場所を選べない状況にある人々については、まだ十分に研究されていません。

相談者

そうか、「選べる」前提の話なんですね。それは大事な視点ですね。なんか、今日話を聞いて、「ここじゃない感」をもう少し自分の性格や価値観と照らし合わせて考えてみようという気持ちになりました。ありがとうございます!

はぴテクさん
はぴテクさん

それはよかったです!「自分はどんな環境にいるとエネルギーが湧くか」「どんな人たちと一緒にいると心地よいか」を少し掘り下げてみるだけでも、いろんなことが見えてくるかもしれませんよ。住む場所を変えることだけが答えではないですが、「今の場所と自分の相性」を振り返ること自体は、とても意味のある問いだと思います。

■ 今日のまとめ

  • 幸福感は地理的にかたまって分布しており、国・州・地区レベルで一貫したパターンがある
  • 「選択的移住(自分に合う場所への移動)」「社会的影響(周りの人からの感情の波及)」「生態学的影響(物理的環境との相性)」という3つのメカニズムが関係している可能性がある
  • 自分の性格やニーズ、価値観に合った場所に住んでいる人ほど幸福感が高い傾向があるが、因果関係は明確ではなく、今後の研究が必要

■ 出典・注意事項

  • Rentfrow, P. J. (2018). Geographical variation in subjective well-being. In E. Diener, S. Oishi, & L. Tay (Eds.), Handbook of well-being. Salt Lake City, UT: DEF Publishers.

  • 関連研究:Jokela et al. (2015); Oishi, Talhelm, & Lee (2015); Fowler & Christakis (2008); Bleidorn et al. (2016); Motyl et al. (2014); Lucas et al. (2014)

  • 【注意事項】本研究で示されているのは地域の幸福感と各指標の「関連(相関)」であり、因果関係が確立されているわけではありません。論文著者自身も因果的性質の解明は今後の課題と明記しています

  • 【注意事項】研究対象はWEIRD(白人・高学歴・工業化・裕福・民主主義)な国や地域のサンプルに偏っており、住む場所を自分で選べない人々の状況は十分に反映されていません。結果をすべての人に一般化することには限界があります

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
59主観的幸福感の地理的変動
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-04-08-1775685606/

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