2026.02.27

㉘結婚生活と子育て:婚姻・家族生活における幸福感の科学

ウェルビーイングハンドブック_第四章:人口統計学

毎日読めばウェルビーイングの基礎が分かる、ウェルビーイング・ハンドブック紹介シリーズ、第四章😊

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■ 結婚と子育ては幸福をもたらすのか? ── 家族関係と幸福感の科学的レビュー Nelson-Coffey (2018)

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▼ そもそも「幸福」とは?

幸福(主観的幸福感)は、科学的には2つの要素で定義されます。

・認知的側面:「人生に満足しているか」という評価

・感情的側面:ポジティブな感情が多く、ネガティブな感情が少ない状態

また「人生の意味」も重要な概念で、「人生が筋道立って理解できる(一貫性)」「自分には価値がある(重要性)」「目標がある(目的)」の3つで構成されます。幸福感と人生の意味はお互いに深く関連しています(Kashdan et al., 2008)。

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▼ 研究の方法論について

家族関係と幸福の研究では、3つの方法が使われています。

・横断研究:ある時点で「既婚者と未婚者」などを比較するスナップショット的な調査。大規模なデータが使えるが、因果関係(どちらが原因か)は分からない。

・縦断研究:同じ人を長期間追跡し、結婚や出産の前後で幸福感がどう変わるかを調べる。因果に近い情報が得られるが、測定タイミングが結果を左右しやすい。

・日常経験研究(ESM/日記法):スマホなどを使ってリアルタイムで日々の感情を記録する手法。「子どもと過ごしている瞬間の気持ち」のような細かい情報が得られる。

最も信頼性が高いのは、複数の方法が同じ結論を示している場合です。

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■ 第1部:結婚と幸福感

▼ 結婚している人は幸福なのか?

横断研究の結果は一貫しています。既婚者は未婚・離婚・死別した人と比べて、人生満足度が高く、ポジティブ感情が多く、ネガティブ感情が少ない傾向があります。この結果は42カ国にわたる調査でも確認されており、文化を超えた普遍的なパターンといえます(Diener et al., 2000)。

ただし、注意点があります。もともと幸せな人ほど結婚しやすい、という「選択バイアス(幸せな人が結婚を選ぶ)」の可能性もあります。たとえば、大学の卒業写真で笑顔が豊かだった女性は、27歳時点で結婚している確率が高く、52歳時点での結婚満足度も高かったというデータがあります(Harker & Keltner, 2001)。

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▼ 結婚すると幸福感はどう変わる?(縦断研究の知見)

結婚した年には幸福感が上昇しますが、その後2年以内に結婚前の水準に戻る傾向があります(Lucas et al., 2003)。この「幸福感の上昇→回帰」は、人生満足度(認知的側面)に特に見られ、感情的側面(ポジティブ・ネガティブ感情)ではあまり見られませんでした(Luhmann et al., 2012)。

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▼ 結婚"しているか"より「結婚の質」が重要

重要な発見として、単に結婚しているかどうかより、関係の質のほうが幸福感をより強く予測することが示されています。

・93本の研究をまとめたメタ分析では、結婚の質と幸福感の相関は平均r=.37(横断研究)・r=.25(縦断研究)と、かなり強い関連でした(Proulx et al., 2007)。

・不幸な結婚を続けている人は、未婚者より幸福感が低いという結果もあります(Williams, 2003)。

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▼ 男性と女性で結婚の恩恵は異なる?

・男性:既婚かどうかという「状態」が幸福感に影響しやすい

・女性:結婚の「質(関係の良さ)」が幸福感により強く影響する

この背景として、女性は結婚外にも豊富な社会的サポートネットワークを持つため、配偶者への依存度が相対的に低いことが考えられています(Antonucci & Akiyama, 1987)。

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▼ 愛着スタイル(アタッチメント)も影響する

愛着スタイルとは、幼少期の養育体験から形成される、対人関係への基本的な構えのことです。「安定型」「不安型(見捨てられることへの恐怖)」「回避型(親密さを避ける)」の3種類があります。

安定型の人は、結婚生活においてより高い幸福感を経験しやすいことが示されています(Mikulincer & Shaver, 2013)。回避型の人は、パートナーの良い行動に感謝しにくく、ポジティブな感情を表現しにくい傾向があります(Mikulincer et al., 2006)。

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▼ なぜ結婚は幸福に結びつくのか?

明確な統合理論はまだ存在していませんが、候補となるメカニズムとして以下が挙げられています。

・人間の根本的な「つながりへの欲求」を満たすこと(Baumeister & Leary, 1995)

・配偶者からのソーシャルサポート(社会的支援)が精神的健康を守ること(Cohen, 2004)

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▼ 同棲・同性婚との比較

同棲と結婚を比べると、結婚のほうが幸福感が高い傾向はありますが、差がない研究もあります。また、宗教的・社会的に同棲に否定的な文化ほど、この差(コハビテーションギャップ)は大きくなります(Lee & Ono, 2012)。

同性カップルについては、研究数はまだ少ないですが、関係の質を予測する要因(信頼・コミュニケーションなど)は異性婚と変わらないことが示されています(Kurdek, 2005)。

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■ 第2部:子育てと幸福感

▼ 子どもを持つと幸せになるのか?── 研究結果は一致しない

子育てと幸福感の関係は、結婚よりもはるかに複雑です。横断研究の結果は、

・親のほうが幸福(Nelson et al., 2013)

・親のほうが不幸(McLanahan & Adams, 1987)

・差がない(Rothrauff & Cooney, 2008)

と研究によってバラバラです。さらに「親のほうがポジティブ感情もネガティブ感情も多い」という結果もあります(Deaton & Stone, 2014)。子育ては複雑な役割であり、単純に「幸福か不幸か」では語れないのです。

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▼ 縦断研究・日常経験研究ではどうか?

縦断研究では、出産前後に幸福感が一時的に上昇し、その後低下するパターンが見られます(Dyrdal & Lucas, 2013)。

日常経験研究では、親は子どもと過ごす時間に非親者より高いポジティブ感情と人生の意味を感じていることが示されています(Nelson et al., 2013; Nelson-Coffey et al., 2017)。

「子育て中の感情は低い」という有名な研究(Kahneman et al., 2004)がありますが、この研究は親でない人も含めた平均値を使っており、親だけで比べると子育て中はむしろポジティブ感情が高いという結果になります。

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▼ 父親と母親で異なる経験

父親は子どもを持つことで幸福感が高まりやすいですが、母親は子どもがいる女性といない女性で幸福感に差が見られないか、むしろ低い傾向があります(Nelson et al., 2013)。

この差の理由として、

・母親は一人で子どもと過ごす時間(ソロ育児)が長い

・母親は基本的なケアや家事が多く、父親は遊び・余暇が多い

・遊びが最もウェルビーイングを高め、基本的ケアは幸福感を下げやすい(Musick et al., 2016)

・母親のほうが仕事と育児の両立に罪悪感を感じやすい(Borelli et al., 2017)

といったことが挙げられています。

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▼ 親の幸福感を高めるもの・下げるもの

Nelson et al.(2014)がモデルを提案しています。

幸福感を高める要因:

・人生の意味の感覚

・ポジティブ感情

・自律性・有能感・つながり(心理的ニーズの充足)

・社会的役割の充実感

幸福感を下げる要因:

・ネガティブ感情

・経済的ストレス

・睡眠不足・疲労

・夫婦関係満足度の低下

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▼ 養子縁組・ステップファミリー・同性カップルの親

・養子縁組の親と実の親の間に、心理的幸福感の有意な差は見られていません(Borders et al., 1998)。

・ステップファミリーの研究結果も一致していませんが、家族の絆・凝集性(家族が仲良く機能しているか)のほうが、家族形態そのものより幸福感を強く予測します(Lansford et al., 2001)。

・同性カップルの親は、むしろ幸福感が高い傾向があることが複数の研究で示されています。同性愛者の父親は異性愛者の父親より人生満足度が高く(Erez & Shenkman, 2016)、レズビアンの母親は抑うつ症状が少ない傾向があります(Stacey & Biblarz, 2001)。

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■ まとめ

・結婚と幸福感の関係は比較的一貫しており、既婚者はより幸福な傾向があるが、その効果は時間とともに薄れる。

・「結婚しているかどうか」より「関係の質」が幸福感に与える影響はより大きい。

・子育てと幸福感の関係は複雑で、親は感情の振れ幅が大きく、誰にとっても単純に「幸福をもたらす」とは言えない。

・家族形態(養子・ステップ・同性婚)は、それ自体が幸福感を決定するわけではなく、家族内のプロセスや関係の質が鍵となる。

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Married...With Children: The Science of Well-Being in Marriage and Family Life

By S. Katherine Nelson-Coffey, Sewanee: The University of the South

結婚と親になることは、人生において最も重要な関係性の一つであり、人々に大きな喜びをもたらす一方で、計り知れない失望を経験させる機会も数多く提供する。本章では、横断研究、縦断研究、日常体験研究の証拠に基づき、結婚と親になることが幸福感と関連しているかどうか、その関連性のメカニズムと理由について、現在の理解を概説する。また、家族構成が結婚と幸福感、親となることと幸福感の関連性に及ぼす影響についても考察する。現在の証拠は結婚と幸福感の関連性を比較的強固に支持しているが、親となることと幸福感の関連性ははるかに複雑である。最後に、今後の研究に向けたいくつかの提言を述べる。

キーワード:家族、結婚、親となること、幸福感、幸福

書籍要約 ありがとう 人間関係・恋愛子ども・若者の幸福主観的幸福・幸福測定

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