2025.11.30

はぴテク相談室:日本のシューマッハーとも言われる故・井上信一先生の仏教経済学

相談者

最近、仕事でお金のことばかり考えてしまって、なんか疲れてしまっています。もっと豊かに生きたいのに、お金を稼ぐことが目的みたいになってしまって…。何か考え方のヒントってありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

それは多くの方が感じる悩みですよね。実は最近、とても興味深い研究が出まして。仏教の考え方を経済に応用した「仏教経済学」を日本で先駆的に研究された井上信一先生の思想を振り返る論文(辻井清吾先生、佛教経済研究、2025年)が発表されたんです。井上先生はイギリスの経済学者シューマッハーと並べて語られるほどの方で、「日本のシューマッハー」とも呼ばれていました。

相談者

仏教と経済って、なんか意外な組み合わせですね。どういうことなんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうですよね!シューマッハーは「スモール・イズ・ビューティフル」という本で有名で、「大きければ良い・もっと稼げば良い」という近代経済学の考え方に疑問を投げかけた人です。井上先生も同じように、「お金や物をどんどん増やすことが豊かさだ」という考え方を仏教の視点から問い直そうとされていました。

相談者

仏教の視点から、というのはどういう意味ですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

井上先生の思想の核心のひとつが「財は世界からの預かりもの」という考え方です。自分が稼いだお金や持っている財産は、自分だけのものじゃなくて、社会や自然、つまり世界全体から一時的に預かっているものだ、という見方ですね。だから、それをどう使うか、どう循環させるかが大切だ、という発想につながります。

相談者

「預かりもの」か…。それは面白い見方ですね。でも、現実的にはお金がないと生活できないし、稼がないといけないじゃないですか。

はぴテクさん
はぴテクさん

おっしゃる通りで、井上先生も「稼ぐな・お金はいらない」と言っていたわけではありません。仏教経済学は、経済活動そのものを否定するのではなく、「何のために経済活動をするのか」という目的や価値観を問い直すものです。近代経済学が「効率・利益の最大化」を中心に置くのに対して、仏教経済学は「人間や生き物の苦しみを減らし、よりよく生きること」を中心に置こうとします。

相談者

なるほど。目的が違うんですね。具体的にはどう違うんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

たとえば、近代経済学では「消費は多いほど豊か」と考えがちですが、仏教経済学では「必要なものを、必要なだけ、大切に使う」ことに価値を置きます。「足るを知る」という感覚に近いですね。井上先生はこうした考えを、日本の伝統的な仏教思想と結びつけながら体系化しようとされていたんです。この論文はその思想の構築と変遷を丁寧に整理しています。

相談者

「足るを知る」かあ。今の私には耳が痛い言葉かもしれません(笑)。でも、そうは言っても周りはみんな競争しているし、取り残される不安もあって…。

はぴテクさん
はぴテクさん

その不安、すごくリアルですよね。この研究が示しているのは、そういう「競争・拡大・最大化」という価値観自体が、ひとつの時代の「思い込み」かもしれない、ということです。仏教経済学は、その思い込みをいったん外して「本当に何が自分にとって、社会にとって大切なのか」を考え直すための視点を提供してくれます。ただしこれはあくまで思想・哲学的な研究ですので、「この考え方を持てば幸せになれる」と証明されているわけではない点はお伝えしておきますね。

相談者

それでも、こういう視点を知るだけでも少し楽になる気がします。「預かりもの」という発想、なんか肩の荷が下りる感じがして。

はぴテクさん
はぴテクさん

それは素敵な受け取り方ですね。「自分が全部背負って、全部自分のものにしなければ」という感覚から、「世界から預かって、上手に流していく」という感覚に少しシフトするだけで、お金との関係が変わってくるかもしれません。井上先生の思想は、そういう日常の感覚レベルにまで届く経済観だったと、この論文は伝えています。

相談者

仏教経済学って、今の時代にもっと広まってほしいですね。この論文、私も読んでみようかな。

はぴテクさん
はぴテクさん

ぜひ!論文は駒澤大学のリポジトリで無料公開されています。難しそうに見えて、井上先生の思想はとても人間的で温かみのある内容です。「経済って何のためにあるんだろう」と立ち止まって考えたいとき、きっと良い道しるべになると思いますよ。

■ 今日のまとめ

  • 「財は世界からの預かりもの」という井上信一先生の仏教経済学の核心的な考え方は、お金や財産を自分だけのものとして抱え込むのではなく、社会・自然から一時的に預かり循環させるものとして捉え直す視点を提供しています。
  • 仏教経済学は経済活動を否定するのではなく、「効率・利益の最大化」ではなく「苦しみを減らしよりよく生きること」を中心に置くという、目的や価値観の問い直しを促す思想的立場です。
  • 「足るを知る・必要なものを大切に使う」という感覚は、競争・拡大を当然とする現代の経済観をいったん外し、自分にとって本当に大切なものを見つめ直すきっかけになりえます。

■ 出典・注意事項

  • 辻井清吾「井上信一にみる仏教経済学の構築と現在までの変遷」佛教経済研究、2025年11月、駒澤大学学術機関リポジトリ公開(https://komazawa-u.repo.nii.ac.jp/records/2034183)

  • 注意事項①:本研究は思想史・哲学的な文献研究であり、特定の行動や考え方が幸福度や経済的成果を向上させるという因果関係を実証したものではありません。

  • 注意事項②:井上信一先生の思想の紹介・整理が中心であり、仏教経済学全体の主張や現代経済学との比較検証を網羅したものではありません。

  • 注意事項③:論文の閲覧数が少ない段階(執筆時点で7回)のため、学術コミュニティでの評価・引用状況はまだ限られています。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
日本のシューマッハーとも言われる故・井上信一先生の仏教経済学
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-11-30-1764471634/

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