2025.10.27

「良い行いをする人は良い結果、悪い行いをする人には悪い結果」

という信念は幸せにつながるか?

日本の昔話だと、

良い行いをする人には良い事がおきて、

悪い行いをする人には悪い事がおきますよね。

花咲かじいさんとか。

ではそれを信じることは幸せにつながるの?
という最新のレビュー論文。


ちなみにこの信念の大元は

ヒンドゥー教や仏教におけるカルマの信念です。

結果から言えば、とても面白く、

幸せにも効くし、不幸せにも効く。ということでした。

■ポジティブな効果

①幸福感の向上:良い経験を自分の功徳のおかげと感じ、誇りを持てる

②楽観主義:善行が将来の幸運につながると信じることで前向きになれる

③向社会的行動:他者への寛大さや協力行動が増加

④復讐心の減少:カルマが悪人を罰してくれると信じ、個人的な報復を控える

⑤持続可能な消費:長期的視点や環境意識の向上

■ネガティブな効果

①被害者非難:不幸な人は過去の悪行の報いを受けていると見なしがち

②社会的不平等の正当化:カースト制度などの既存の階層構造を肯定(世代を超えたカルマ)

③うつ症状:自分の不幸を自己責任と捉え、自己批判に陥る

④支援の減少:「自業自得」と判断された人への援助が減る

ということで、幸せにも不幸せにもつながる。

カルマを信じる人は、ポジティブ部分は享受しつつも、

ネガティブ部分を把握してメタ認知できると良さそうです😊


ただ、このネガティブ部分、日本でよく見ますね。。自業自得精神が強いんですよね・・・花咲かじいさんのダークサイド。。。

ーーー

カルマへの信念:道徳的因果関係に関する信念が社会行動をどのように形作るか

Belief in karma: how beliefs about moral causality shape social behavior

Trends in Cognitive Science,2025/10/24

Cindel J.M. White (ヨーク大学)

[[https://www.cell.com/trends/cognitive-sciences/abstract/S1364-6613(25)00252-9?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS1364661325002529%3Fshowall%3Dtrue](https://www.cell.com/trends/cognitive-sciences/abstract/S1364-6613(25)00252-9?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS1364661325002529%3Fshowall%3Dtrue)](https://www.cell.com/trends/cognitive-sciences/abstract/S1364-6613(25)00252-9?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS1364661325002529%3Fshowall%3Dtrue)

DL用(2025/12/13まで)↓

[[https://t.co/deCYBcQlOH](https://t.co/deCYBcQlOH)](https://t.co/deCYBcQlOH)

世界中の何十億もの人々が、人生における出来事はカルマの法則によって決定されると信じている。善行は善い結果をもたらし、悪行は悪い結果をもたらす。これは人間の正義の境界を超越する超自然的な力によるものである。この信念は、世界的な宗教的多様性の重要な側面として心理学研究で次第に認識されつつあり、信者の心理や社会的行動に独特の影響を及ぼす。本レビューはカルマ信仰の特異な認知的特徴を明らかにするとともに、カルマ信仰が個人の幸福や社会的力学に影響を与える肯定的結果(楽観主義、寛大さなど)と否定的結果(抑うつ、被害者非難など)の両方をもたらし得ることを示す近年の実証研究を総括する。

投稿者によるコメント・補足(2件)
コメント 1

【背景】
カルマ研究の前提となる既存研究:詳細解説
■■ はじめに:なぜ既存研究が重要か
このカルマ研究は、過去数十年にわたる心理学、認知科学、人類学の知見を統合しています。既存研究を理解することで、なぜカルマが心理学的に重要なのか、どのような理論的枠組みで研究されているのかが明確になります。
ーー
■■ 第1部:宗教の認知科学と文化進化理論
▼ 基本的な理論枠組み
【文化進化論的アプローチ】
出典:
・Baumard & Boyer (2013) "Explaining moral religions" Trends in Cognitive Sciences
・Norenzayan (2016) "Theodiversity" Annual Review of Psychology
・Norenzayan et al. (2016) "The cultural evolution of prosocial religions" Behavioral and Brain Sciences
核心的主張:
・宗教的信念は共通の認知プロセスから文化進化によって生まれる
・多様な超自然的信念が存在するのは、文化的学習によるもの
・「向社会的宗教」は集団の協力を促進するために進化した
▼ 認知的基盤
【1. パターン認識バイアス】
・人間は出来事に意味あるパターンを見出そうとする傾向がある
・偶然の一致を因果関係と解釈しやすい
・この傾向が超自然的信念の基礎となる
【2. 公正さへの欲求】
出典:
・Hafer & Rubel (2015) "The why and how of defending belief in a just world" Advances in Experimental Social Psychology
・Scott (2022) "Reasons things happen for a reason: an integrative theory of teleology" Perspectives on Psychological Science
主張:
・人々は「世界は公正だ」と信じたがる動機を持つ
・目的論的思考(※物事には目的や意図があるという考え方)が広く存在
・超自然的信念は、この公正さへの欲求を満たす
▼ なぜ宗教が向社会性を促進するか
出典:
・Baumard & Boyer (2013) 前掲
・Norenzayan et al. (2016) 前掲
理論:
・道徳的に関心を持つ超自然的存在(神やカルマ)を信じると...
・集団に利益をもたらす向社会的規範への服従が促進される
・説明困難な出来事への説明を提供しつつ、協力を奨励
ーー
■■ 第2部:公正世界信念の研究
▼ 公正世界信念とは
出典:
・Lerner (1980) "The Belief in a Just World: A Fundamental Delusion" Plenum Press(※公正世界信念研究の古典的著作)
定義:
・人々は自分にふさわしいものを得るという信念
・善人には良いことが、悪人には悪いことが起こると期待
▼ 公正世界信念の心理的機能
出典:
・Hafer & Bègue (2005) "Experimental research on just-world theory: problems, developments, and future challenges" Psychological Bulletin
機能:
・予測可能性とコントロール感を提供
・世界を秩序あるものとして理解できる
・不確実性への不安を軽減
▼ 内在的正義の研究
出典:
・Callan et al. (2014) "Immanent justice reasoning" Advances in Experimental Social Psychology
内在的正義とは:
・人の行動と結果の間に因果的つながりを見出す推論
・「悪いことをした人に悪いことが起こるのは当然」という考え方
・明確な人間の介入なしに正義が実現されると期待
研究知見:
・子どもも大人も内在的正義を期待する傾向がある
・カルマ信念はこの傾向を文化的に精緻化したもの
▼ 被害者非難との関連
出典:
・Lerner (1980) 前掲
・Hafer & Bègue (2005) 前掲
メカニズム:
・公正世界信念を維持するために、人々は被害者を非難する
・「不幸な人は何か悪いことをしたはず」と推論
・これにより世界の公正さへの信念を守る
・カルマ信念も同様のメカニズムを持つ可能性

コメント 2

【結果詳細】
■■ はじめに:カルマとは何か
この研究は、世界中で数十億人が信じる「カルマ(業)」の信念が、人々の心理や行動にどのような影響を与えるかを科学的に検証したレビュー論文です。
▼ カルマの基本概念
・良い行いは良い結果を生み、悪い行いは悪い結果を生む
・人間の正義や神の介入を超えた、超自然的な因果法則
・主にヒンドゥー教、仏教、シク教、ジャイナ教などで信じられている
・アジア諸国で特に普及しているが、西洋でもスピリチュアルな信念として存在
ーー
■■ 研究の背景:なぜカルマ研究が重要なのか
▼ これまでの問題点
・宗教心理学では、キリスト教の「神」の研究が中心だった
・カルマのような非西洋的な信念はあまり研究されていなかった
・しかし、カルマは神とは異なる心理的特徴を持つ
▼ 研究の意義
・世界の宗教的・文化的多様性を理解するために不可欠
・個人の幸福や社会的行動に独自の影響を与える
・ポジティブな効果とネガティブな効果の両方がある
ーー
■■ 第1部:カルマを信じる人々
▼ 誰がカルマを信じるのか
・ヒンドゥー教徒や仏教徒など、ダルマ系宗教(※インド起源の宗教群)の信者に多い
・アジア諸国(インド、タイ、シンガポールなど)で特に一般的
・分析的思考が少ない人ほど、直感的に魅力を感じやすい
▼ 文化的学習の役割
・カルマ信念は生まれつきではなく、文化から学ぶもの
・宗教のテキストを読んだり、他者の話を聞いたりして習得
・ただし「世界は公正だ」という直感的バイアス(※偏った見方)を基盤にしている

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