2025.08.10

美学と企業経営

感性・芸術・美という主題を扱う哲学的学問分野である美学が、

どのように規定されてきたかという歴史的背景に注目することで、美学から生まれた芸術と企業経営との接面を事例とともに考察した。

という最新の論文😊

ちょっと骨太ですし、

全62Pの、もはや本ですが、かなり面白いです😍

「経営は総合芸術なり」松下幸之助
松下は、先述の芸術的経営を次のように定義する。それは、善の精神を持ち、いろいろな学問成果としての真理に立脚し、しかもその活動が人をして感動せしめるような躍動的な美しさを持っている、いわば、「真・善・美を生かした経営がほんとうの意味での芸術的経営」であるとしている(松下,1967,99-101;松下,1976,50-51)。

※こちらも、合わせて是非😍

論文でウェルビーイング!第5回「感性とウェルビーイング:『美学』の視点から」

https://www.well-being-design.jp/news/1089/

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企業経営と芸術─ 美学からのアプローチ─

深町浩祥 - 跡見学園女子大学マネジメント学部紀要, 2025/8

https://atomi.repo.nii.ac.jp/record/2000265/files/atomi_manage40_03.pdf

第 1 章では、企業経営と芸術を結びつけるものとして、バウムガルデンが 1735 年に創始した美学に注目し、感性の理論から感性的構想力と悟性の融合へと進化した過程を示した。

美学は開かれた学問として存在し、その定義は常に変化するが、部分と全体(シェリング)、美的感覚におけるゲシュタルトの認知(カッシーラー)、装飾と遊戯への傾向性(シラー)など、企業経営で求められている芸術的思考の理論的根拠が示された。

第 2 章では、実際に経営者としての実績をもつ組織のリーダーが、企業経営における芸術性について言及した論考について検討した。

経営者・経営学者であったバーナードは、客観的判断における限界を示し、実務家としての経験から主観的側面においても一貫性を持たせることで組織を導くことができるとした。そこで彼はリーダーシップにおいては、科学よりも芸術、論理的よりも美学が重要であると言及している。一方、日本の経営者である松下幸之助は「経営は総合芸術」であるとの論考を記し、真・善・美を意識した経営、換言すれば、広い意味での美意識をもって経営にあたることの重要性を説いている。また、バーナードと松下はともに、輪郭を持った全体的なイメージ(ゲシュタルト)を一瞬にして捉える直観的能力の重要性を指摘していた。

第 3 章では、現在の混迷したビジネス環境の中で企業として勝ち残るために、求められている思考方法に注目するとともに、近時のグローバル企業の人材育成の変遷と現状を整理した。

アメリカでは 1990 年代中頃から、直観と芸術的感性の重要性が説かれるようになり、還元主義的・分析的思考教育の限界が認識された。そして、ビジネスが理性的な機能の差別化から感情的な情緒の差別化へ移行する中で、アート思考が注目されるに至った経緯を整理した。また、美術大学の取組を紹介し、企業経営と芸術が相乗効果を生むことが期待されていること、そして、ビジネスを強化する上で神話的物語の創造が最も重要であることを示した。

第 4 章では、企業経営と芸術の接面について、事例をもとに検討した。

大手自動車会社やラグジュアリー企業を事例として、自社の商品に芸術的価値を付与することで究極の情緒的消費を促そうとしていることを明らかにした。また、ラグジュアリー企業と美術館の協業は、芸術史的文脈を重視したものと、商業的要素を重視したものがあることを指摘した。

第 5 章では、現代美術家ありグローバル企業の CEO である村上隆の言説から、企業経営と芸術、美学的企業戦略について考察した。

村上も彼が敬愛するウォーホルも芸術(アート)・貨幣(マネー)・商業(ビジネス)は一体であるとしてきた。一般に芸術と商業が対極にあるとされる原因を福音書の言葉に求めつつ、貨幣や商業を忌む宗教的教義がいかにして、芸術と貨幣・商業の相互作用を創造し受容してきたのかを明らかにした。また、概念とモノの不一致が加速する市場では、芸術が貨幣に変わる機能を果たす可能性について言及した。

第 6 章では、芸術が持つ要素をビジネスに導入することが、現代の物質的に豊かな世の中における企業経営のブレイクスルーであり、その実践的な成功例が LVMH などのラグジュアリーファッション企業であることを記した。そのような現状から、すべてのビジネスがファッションビジネス化する時代が到来する可能性を示した。

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