はぴテク相談室:モラルサークルの国際比較
最近、日本人ってなんか心が狭いのかな…ってモヤモヤすることがあって。ニュースとかSNS見てると、外国人や動物への配慮が薄いというか、自分たちのことしか考えてない感じがして。気のせいですかね?
それ、実はデータでも確認されているんです。2024年に57カ国・約5万人を対象にした国際調査の結果が発表されて、「モラルサークル(道徳の輪)」という概念で各国を比べているんですが……日本はなんと下から2番目だったんです。
え、下から2番目!?それってどういう調査なんですか?
「モラルサークル」というのは、自分が道徳的に気にかける存在の範囲のこと。「自分の家族だけ」から始まって、友人、知人、国民、全人類、動物、植物、さらには岩などの無機物……と16段階で広がっていくイメージです。「あなたはどこまでの存在の幸せを考えられますか?」という感じで測ります。
なるほど!で、日本はどのくらいのスコアだったんですか?
日本のスコアは約6.93。だいたい「自分の国の人々まで」くらいが範囲、という結果です。一方で1位のバングラデシュはほぼ12、つまり「地球上のすべての動物」まで気にかけられているんです。アメリカでもほぼ9で「全人類」くらい。日本が最下位のロシアに次いで低かったのは、確かに驚きの結果ですよね。
バングラデシュが1位なんですね…意外でした。なんでそんなに差があるんでしょう?
この研究では、モラルサークルの大きさと「寛大さ」の間に有意な正の相関があることがわかりました。「寛大さ」の測り方がユニークで、『その国の日給中央値をもらえた時に、何%を慈善団体に寄付しますか?』という質問なんです。バングラデシュは約78%、ドイツは約83%と高く、日本はなんと約20%で最下位グループ。ただし、これはあくまで相関であって、寛大だからモラルサークルが大きくなる、という因果関係が証明されたわけではありません。
でも宗教が強い国もモラルサークルが大きいって聞いたことある気がするんですが、それも関係あるんですか?
鋭いですね!実はここが面白いポイントで、宗教文化の強い国では「寛大さとモラルサークルの相関が弱くなる」という結果が出ています。つまり、宗教圏では個人が特別に寛大でなくても、宗教の教えが「広い範囲の存在を大切に」という方向に行動を向けている可能性があるようです。イスラム教圏は特にその傾向が強かったとのこと。ただこれも相関の話なので、宗教が直接モラルサークルを広げると断言はできません。
じゃあ日本は宗教の影響も薄くて、寛大さも低いから、モラルサークルも小さくなりやすいってことなんでしょうか…。なんか悲しいですね。
そう感じるのは自然だと思います。ただ、この研究で面白いのは「国レベルでは、GDPが高いほど寛大さが低い傾向がある」という点も示されていること。豊かになると寄付の割合が下がるという逆説的な結果で、個人主義の度合いや格差(ジニ係数)は寄付率に影響していなかったというのも興味深いです。
GDPが高いと寛大さが低いっていうのも驚きです。じゃあ豊かさが悪いとも言い切れないし、単純な話じゃないんですね。自分個人としては、どうしたらモラルサークルを広げられるんでしょうか?
研究の背景となった心理学の知見によると、モラルサークルが広い人は「共感的な関心」や「他者の視点に立つ力」が高く、自己犠牲への傾きも強い傾向があると報告されています(Crimston et al., 2016)。また、子どもでもモラルサークルが広いほど寄付行動が多かったという研究もあります。「自分以外の誰か・何かの立場で考えてみる」という小さな習慣が、モラルサークルに関連しているようですよ。
なるほど。自分が「気にかけられる範囲」って、意識次第で変わるかもしれないんですね。日本全体が低くても、個人レベルでは広げていけるということですよね?
そうですね。この研究はあくまで集団レベルの相関を見たものなので、「日本人だからモラルサークルが小さい」と決まっているわけではありません。むしろ、こういうデータを知って「自分はどこまで気にかけられるかな?」と考えること自体が、一歩目になるかもしれません。16段階のスケールで、今日の自分はどのレベルかな?って試してみるのも面白いですよ。
■ 今日のまとめ
- 57カ国・約5万人の調査で、モラルサークル(道徳的に気にかける範囲)と寛大さの間には正の相関が見られたが、因果関係は確認されていない。
- 宗教文化が強い国では、個人の寛大さとモラルサークルの相関が弱まる傾向があり、宗教の教えが別の経路で影響している可能性が示唆された。
- 日本のモラルサークルスコアは下から2番目と低かったが、これは集団レベルの相関データであり、個人差は大きく、個人として意識を広げることとは別の話。
■ 出典・注意事項
- Wang Zheng, Juzhe Xi (2024). 'Beyond borders: The moderating role of cultural religiosity in the relationship between moral circle and generosity.' International Journal of Psychology. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39256926/
- 【注意事項】本研究は相関研究であり、寛大さやモラルサークルの間に因果関係があることを示すものではありません。
- 【注意事項】モラルサークルの測定は16段階の簡易スケール(Moral Circle Scale)が使用されており、より精緻な測定尺度(Waytz et al., 2019; Laham et al., 2017)とは異なります。
- 【注意事項】57カ国のデータを用いた国際比較ですが、各国のサンプル特性や回答バイアス(例:社会的望ましさ)が結果に影響している可能性があります。
- 【参考】より詳細なモラルサークル測定尺度: 'Moral Expansiveness: Examining Variability in the Extension of the Moral World' (2017) https://www.researchgate.net/publication/290157323_Moral_Expansiveness_Examining_Variability_in_the_Extension_of_the_Moral_World
研究自体の紹介はこちら😊
モラルサークルの国際比較
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-07-14-1752534560/