はぴテク相談室:収入が高い人は、向社会的(人に優しい)である😂
最近、職場の同僚がすごく親切で、しかも仕事もできて収入も高そうなんです。なんか、優しい人って得するようにできてるのかな?って思って…。私は収入も低いし、人に優しくする余裕もなくて、なんか悪循環な気がして。
それ、すごく面白い視点ですね!実はその「優しい人は得をするのか」という問いに、科学的に向き合った研究がいくつかあるんですよ。まず大きなところから紹介すると、76か国・約8万人を対象にした2025年の大規模調査(PNAS NEXUS掲載)では、「収入が高い人・お金の面で安心感がある人ほど、向社会的な行動や好みが強い傾向がある」という結果が出ています。
やっぱり、お金に余裕がある人のほうが優しくなれるってことですか?
その相関(関係性)は確かに見られています。ただ、ここで大事なのが「どっちが先か」という問題です。この研究は横断的なデータ、つまり「ある時点でのスナップショット」を見ているので、「お金があるから優しくなる」とも「優しいからお金が増える」とも断言はできないんです。
じゃあ、「優しい人がお金持ちになる」という方向の証拠はあるんですか?
あるんです!Erikssonらの研究(Journal of Personality and Social Psychology, 2020年)は、欧米の大規模な長期追跡データを4つも使って調べたもので、「利他的な人ほど、その後の収入が増える傾向がある」という結果を報告しています。例えば英国のデータでは、2010年に寄付やボランティアをよくしていた人が、6年後の2016年に年収が有意に増えていたんですよ。
6年後に収入が増える、か…。でも「優しい人が得をする」ってどういう仕組みなんでしょう?
研究自体がその「なぜ」までを明確に解明しているわけではないので断言は難しいですが、長期追跡で「利他的な行動をとる人がその後に豊かになる傾向がある」という関係性は複数のデータで一貫して見られています。人との信頼関係が積み重なるとか、そういった要素が絡んでいる可能性は考えられますが、研究の範囲外なので推測の域を出ません。
「余裕がないと優しくできない」って感覚は正しいんでしょうか?
その感覚を裏付けるような発見も今回の76カ国調査にはあります。「個人の不安定さ」、つまり生活の基本的なニーズを満たすのが難しいと感じている状態は、お金と向社会的な「好み(気持ち)」の関係を弱める傾向があったと報告されています。つまり、生活に不安がある状況だと、人に優しくしたいという気持ちが湧きにくい傾向があるということですね。
じゃあ私が「優しくする余裕がない」と感じるのも、ある意味自然なことなんですね。
そう言えると思います。ただ、面白い点もあって、同じ研究では「不安定な状況にある人は、向社会的な行動(実際に人を助けること)とお金の関係はむしろ強かった」という結果も出ているんです。完全に解釈するのは難しいですが、「余裕がないから一切優しくできない」とも言い切れないようです。
ちょっと意外ですね。あと、「収入が高いと信頼感が下がる」という話も気になりました。
鋭いですね!76カ国調査では、世帯収入が高いほど「他者への信頼」は逆に低い傾向があったと報告されています。ただし、「主観的な経済的幸福感(お金のことで安心できているか)」は信頼とも正の相関があったんです。収入の多さそのものと、お金への安心感は別物で、それぞれ違う形で向社会性と関わっているようですね。
お金がたくさんあっても安心できていないと、信頼しにくくなるってことですかね。
その可能性を示唆するデータではありますが、これも相関関係なので因果関係とは言えません。ただ、「金額の多さ」よりも「経済的な安心感・満足感」のほうが、人との関係や向社会性に広くプラスに関連していた、というのはとても興味深い発見ですよね。
なるほど。じゃあ今の私にできることって何かありますか?
研究が示しているのは、「優しさと豊かさは相互に関連している可能性がある」ということです。今すぐ大きな余裕がなくても、小さな利他的行動(ちょっとした親切など)が長期的にどう影響するかを調べた縦断研究では、利他的な人がその後に豊かになる傾向が複数のデータで確認されています。もちろん「優しくすれば必ず豊かになる」とは言えませんが、「余裕ができてから優しくしよう」と待つ必要もないかもしれませんよ。
■ 今日のまとめ
- 76か国・約8万人の調査で、収入や経済的安心感が高い人ほど、利他性・寄付・ボランティアなど向社会的な行動や好みが強い傾向が確認された(相関関係)。
- 一方、長期追跡研究では「利他的な人がその後に収入を伸ばす傾向」も報告されており、優しさとお金の関係は双方向の関連がある可能性が示されている。
- 経済的な安心感(主観的な満足度)は向社会性の幅広い側面と正の関連があった一方、収入の多さそのものは「他者への信頼」と負の関連も見られるなど、お金の量と質(安心感)は区別して考えることが重要。
■ 出典・注意事項
- 【研究1】Paul Vanags, Jo Cutler, Fabian Kosse, Patricia L Lockwood「Greater income and financial well-being are associated with higher prosocial preferences and behaviors across 76 countries」PNAS NEXUS, 2025年2月4日。https://academic.oup.com/pnasnexus/article/4/2/pgae582/7994572
- 【研究2】Kimmo Erikssonほか「Generosity pays: Selfish people have fewer children and earn less money」Journal of Personality and Social Psychology, 2020年。
- 【注意事項】研究1は横断的(ある時点での)データが中心であり、「収入が高いから向社会的になる」という因果関係を証明するものではありません。研究2は縦断データを用いており時間的な順序は確認されていますが、交絡要因(第三の要因)の影響を完全に排除できるわけではありません。また、対象は欧米・世界76か国のデータであり、日本の個人に直接当てはまるかどうかは慎重に考える必要があります。
研究自体の紹介はこちら😊
収入が高い人は、向社会的(人に優しい)である😂
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-03-11-1741732702/