はぴテク相談室:コンフォートゾーン理論と実践共同体
最近、上司から『コンフォートゾーンを出ろ』ってよく言われるんですけど、正直プレッシャーで…。そもそもコンフォートゾーンって何なんでしょう?出ないといけないものなんですか?
それはプレッシャーに感じますよね。まず「コンフォートゾーン」という言葉について整理しましょう。実はこれ、ビジネスの世界ではよく使われる言葉なんですが、きちんと理論的に定義・検証された概念やフレームワークではないんです(Brown, 2008)。関西学院大学の松本先生の2024年の論文でも、その点がはっきり指摘されています。
え、そうなんですか!なんかすごく定番のアドバイスみたいに言われるのに、ちゃんとした理論じゃないんですね。じゃあもともとはどこから来た考え方なんでしょう?
もとはアウトドアや登山などの「冒険教育」の現場から生まれた考え方なんです。そこでは、人の学びや成長には快適な範囲(コンフォートゾーン)の外にある「チャレンジゾーン」に踏み出すことが大事だ、という経験則として使われてきました。そこから徐々にビジネスの世界にも広まっていったんですね。
なるほど、冒険教育が源流なんですね。でも「とにかく外に出ろ」って言われると、どこまで出ればいいのかよく分からなくて、かえって不安になります…。
その感覚はとても自然です。実は「ストレッチゾーン(適度な挑戦ゾーン)」と「パニックゾーン(過度な不安・恐怖ゾーン)」という区別もあって、コンフォートゾーンをただ飛び出せばいいわけじゃないんです。無理に踏み込みすぎると逆効果になる可能性もある、という考え方も論文の中で整理されています。
ストレッチゾーンとパニックゾーンがあるんですね。じゃあ職場の「心理的安全性」ってよく聞く言葉もコンフォートゾーンと関係あるんですか?
鋭いですね!松本先生の論文では、心理的安全性とコンフォートゾーンの関係も整理されています。心理的安全性が高い職場は、チームの中で安心して発言や行動できる、ある種の「コンフォートゾーン」として機能すると考えられます。ただし、ただ居心地がいいだけでなく、そこから挑戦も生まれるような場であることが大事だという議論もされています。
安心できる場があってこそ、挑戦もできる…ということでしょうか。でも私の職場はそういう安心感があまりない気がして、それで「外に出ろ」と言われても余計きつく感じるのかもしれません。
それはとても大事な気づきだと思います。論文では「越境学習」という考え方も紹介されていて、これは自分が普段いる場の境界を越えて学ぶことを指します。ただ、そのための出発点となる安心できる場所(コンフォートゾーン)があってこそ、越境が意味を持つという整理がされています。安心できる基盤がない状態での「外に出ろ」は、設計として不完全かもしれませんね。
じゃあ、コンフォートゾーンって「出るべき悪いもの」じゃなくて、大事な場所でもあるということですか?
その通りです!松本先生の論文では、「実践共同体(コミュニティ・オブ・プラクティス)」、つまり同じ仕事や関心を持つ人たちが学び合うコミュニティそのものを「コンフォートゾーンの一つ」として位置づけることを提唱しています。実践共同体が安心して学べる場であり、そこを起点にさらなる挑戦へとつながっていく、という考え方です。
実践共同体がコンフォートゾーン、というのは面白い発想ですね。そういうコミュニティがあると、外に出るのも怖くなくなりそうです。でも、どんな実践共同体でもいいんでしょうか?
論文では、コンフォートゾーンとしての実践共同体には「求められること」があるとも述べられています。ただ仲良しの居場所になるだけでなく、メンバーが学びや成長を感じられる場であることが重要とされています。安心感と成長の機会、両方のバランスが大切なんですね。
なるほど〜。「コンフォートゾーンを出ろ」という言葉だけを受け取るんじゃなくて、まず安心できる場(コンフォートゾーン)をちゃんと持つことが大事なんですね。少し気持ちが楽になりました!
よかったです!まとめると、コンフォートゾーンは「捨てるもの」ではなく「出発点」として考えると、上司の言葉も少し違って聞こえてくるかもしれませんね。今いる環境で安心できる仲間やコミュニティを作ることも、立派な「成長への準備」と言えそうですよ。
■ 今日のまとめ
- コンフォートゾーンはビジネスでよく使われる言葉ですが、実は理論的に厳密に検証されたフレームワークではなく、冒険教育の現場を起点に広まった考え方です。
- コンフォートゾーンはただ「出るべきもの」ではなく、安心して学べる出発点として機能します。心理的安全性の高い場や実践共同体(学び合うコミュニティ)がそのコンフォートゾーンになり得ます。
- 松本先生の論文では、実践共同体をコンフォートゾーンの一つとして位置づけることが提唱されています。安心感と学びの機会の両方を備えたコミュニティが、越境・挑戦の土台となると考えられています。
■ 出典・注意事項
- 松本雄一(2024)「コンフォートゾーン理論と実践共同体」『商学論究』関西学院大学 http://www.matsuyu.org/ritsumeikan/matsumoto2024a.pdf
- 【注意事項】本論文は理論的・文献的考察(レビューおよび概念整理)であり、実験や調査による因果関係の検証ではありません。「コンフォートゾーンがあると成長できる」といった因果的な結論は本研究から導けません。
- 【注意事項】コンフォートゾーンという概念自体が理論的に厳密に定義・検証されたものではない点(Brown, 2008)が論文内でも明示されており、知見の適用には一定の留保が必要です。
研究自体の紹介はこちら😊
コンフォートゾーン理論と実践共同体
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-02-23-1740348002/